終身雇用制度の揺らぎや、長引く物価上昇、そして政府による働き方改革の推進を背景に、日本国内における労働環境は劇的な変化を遂げています。かつては「一つの会社に滅私奉公する」ことが美徳とされ、副業は禁止されていることが当たり前でした。しかし現在では、本業での収入に加え、自身のスキルや空き時間を活用して第二、第三の収入源を確保する「副業」が、キャリア形成や生活防衛の手段として定着しつつあります。 平日の夜にプログラミングやデザインの案件をこなす方、週末に飲食店でアルバイトをする方、あるいは趣味のハンドメイド作品をオンラインで販売する方、Uber Eatsなどのギグワークに従事する方など、その形態は多種多様です。
収入の柱が増えることは、経済的な余裕と精神的な安定をもたらしますが、同時に「納税者」としての責任も複雑化させます。会社員であれば、通常は年末調整によって税務手続きが完結するため、税金の仕組みを意識する機会は少ないものです。しかし、副業を始めたその瞬間から、あなたは自分自身で所得を計算し、納税額を確定させる必要性に迫られることになります。 「少しくらいなら申告しなくても大丈夫だろう」「会社にバレたくないから黙っておこう」といった安易な判断は、後に無申告加算税などの重いペナルティを招くだけでなく、住民税の手続き上のミスによって本業の会社に副業が発覚し、社内処分を受けるといった深刻なトラブルに発展しかねません。
この記事では、副業している人が直面する「確定申告」という壁について、その義務の判定基準から、会社にバレないための住民税対策、経費の考え方、そして税理士活用の是非に至るまで、具体的な金額の変動に左右されない税法の本質的な考え方を軸に、教科書レベルの深度で徹底的に解説していきます。
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副業している人は確定申告必要か?確定申告のポイントなど徹底解説
副業している人は確定申告が必要か?
副業している人にとって、確定申告が必要かどうかという問いに対する答えは、単純な「イエス」か「ノー」ではありません。その判断は、「どのような契約形態で収入を得ているか(所得の種類)」と「いくら稼ぎ、いくら経費がかかったか(所得の金額)」という二つの要素によって決まります。 大きく分けて、副業が「アルバイトなどの給与所得」である場合と、「業務委託などの事業所得・雑所得」である場合の二つのパターンが存在します。どちらの場合も、確定申告の判定基準となるのは、銀行口座に振り込まれた手取り額ではなく、額面の「収入金額」またはそこから経費を差し引いた「所得金額」です。
パターン1:副業が「給与所得」の場合(パート・アルバイトなど)
本業で正社員として働きながら、休日や夜間に別の会社でアルバイトやパートをしている場合、または二箇所以上の会社で役員報酬を得ている場合などがこれに該当します。このケースでは、すべての収入が「給与所得」として分類されます。 日本の税制では、「年末調整」を受けられるのは、原則として1人につき1社(主たる給与の支払者)のみと厳格に定められています。したがって、副業先(従たる給与の支払者)では年末調整が行われません。副業先の給与からは、「乙欄(おつらん)」と呼ばれる、通常よりも高い税率で所得税が源泉徴収(天引き)されています。
この場合、以下の条件に当てはまると、法律上、確定申告を行う義務が発生します。 「従たる給与(副業の給与)の収入金額と、それ以外の所得金額の合計額が、国が定める一定の基準額(いわゆる副業の申告不要ライン)を超える場合」
つまり、副業アルバイトの年収が一定額を超えている場合、確定申告が必要です。 しかし、ここで非常に重要な視点があります。前述の通り、副業先の給与は高い税率で天引きされています。そのため、たとえ副業の給与が少額で、法律上の「申告義務」がない場合であっても、確定申告を行って本業の給与と合算し、正しい税率で再計算することで、払いすぎていた税金が還付される(戻ってくる)可能性が極めて高いのです。 多くの人が「義務がないから申告しない」という選択をしますが、これは「戻ってくるはずのお金を放棄している」のと同じ状態です。したがって、副業が給与所得である場合は、義務の有無にかかわらず、確定申告を「するべき」であると強く推奨されます。
パターン2:副業が「事業所得」または「雑所得」の場合(業務委託、フリマ、投資など)
会社員として給与をもらいながら、雇用契約を結ばずにフリーランスとして報酬を得ている場合がこれに該当します。例えば、Webライティング、動画編集、ウーバーイーツなどの配達員、アフィリエイト、せどり、ハンドメイド販売、暗号資産(仮想通貨)取引などが含まれます。 この副業収入は、雇用契約に基づく「給与所得」ではなく、自営業としての「事業所得」または「雑所得」に分類されます。
この場合、以下の条件で確定申告が必要になります。 「本業の給与所得以外の所得(副業の総収入金額 - 必要経費)の合計額が、国が定める一定の基準額を超える場合」
ここで最も注意すべき点は、「収入(売上)」ではなく「所得(利益)」で判断するというルールです。 例えば、せどり(転売)で年間の売上が数百万円あったとしても、商品の仕入れ代金や送料、梱包資材費、販売手数料などの経費を差し引いた「利益(所得)」が基準額以下であれば、税務署への確定申告は不要となります。 逆に、売上はそこまで大きくなくても、経費がほとんどかからない仕事(原価のかからないコンサルティングやアフィリエイトなど)であれば、所得が基準額を超えやすく、申告義務が発生する可能性が高まります。
住民税の申告に関する重大な注意点(落とし穴)
多くの副業している人が陥る最大の誤解がここにあります。「所得税の確定申告が不要(所得が基準額以下)なら、役所への手続きは一切不要で、誰にもバレない」と考えてしまうことです。 しかし、これはあくまで国税である「所得税」に限ったルールです。 皆様がお住まいの地域に納める「住民税(地方税)」には、所得税のような「少額不申告の特例」や「申告不要制度」は存在しません。副業による所得が1円でも発生していれば、別途、お住まいの市区町村の役所へ「住民税の申告」を行う義務があります。
もし、所得税の確定申告をせず、住民税の申告もしなかった場合どうなるでしょうか。 役所はあなたの副業収入を把握できないため、所得証明書(課税証明書)には本業の収入しか記載されません。これだけなら問題ないように思えますが、もし後日、税務署の調査や、支払調書の照合などで副業収入が明るみに出た場合、過去に遡って住民税が課税されます。その際、修正された住民税の通知が本業の会社に送られることで、「住民税の額が合わない」という理由から副業の事実が発覚するリスクがあります。 「所得税は申告不要でも、住民税は申告必須」。この原則を絶対に忘れないようにしてください。
確定申告の提出期限
確定申告には、法律で定められた厳格な期限が存在します。これを過ぎると様々なデメリットが発生するため、スケジュール管理は非常に重要です。
原則的な申告期間(所得税)
所得税の確定申告期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までと定められています。対象となるのは、前年の1月1日から12月31日までの1年間に発生したすべての所得です。 例えば、ある年の1月1日から12月31日までに稼いだ副業の収入について、翌年の2月中旬から3月中旬の間に申告を行います。提出期限日が土曜日、日曜日、または祝日に重なる場合は、その翌平日(月曜日など)が期限となります。 この期間中、税務署の窓口は非常に混雑し、数時間待ちになることも珍しくありません。平日の日中に本業がある副業している人にとっては、税務署に行く時間を作ること自体が困難でしょう。そのため、近年では自宅のパソコンやスマートフォンから24時間いつでも申告ができるe-Tax(電子申告)の利用が強く推奨されています。
還付申告の期間(5年間の猶予)
前述したように、副業がアルバイトなどの給与所得である場合や、原稿料などで源泉徴収されている業務委託の場合、「税金を払いすぎている」ケースが多く、確定申告によって税金が戻ってくる「還付申告」になることがよくあります。 この還付申告については、通常の申告期間(2月16日〜)を待つ必要はありません。対象となる年の翌年1月1日から、すぐに申告を行うことが可能です。 さらに、還付申告には「5年間」という長い猶予期間が設けられています。つまり、過去に副業をしていて申告を忘れていたとしても、5年以内であれば遡って申告を行い、払いすぎた税金を取り戻すことができるのです。「数年前のアルバイトの源泉徴収票が出てきた」という場合は、諦めずに申告を検討すべきです。
納税の期限
申告によって税金を納めることになった場合(副業の利益が大きく、本業の給与から天引きされた税金だけでは足りない場合など)、申告書の提出期限と同じ日までに納税を完了させる必要があります。 つまり、3月15日が申告期限であれば、その日までに金融機関や税務署で現金を納めるか、あるいはキャッシュレス納付などを行う必要があります。納付が1日でも遅れると、延滞税の対象となります。 ただし、申告時に「振替納税(口座振替)」の手続きを行っておけば、実際の引き落とし日は4月中旬頃になります。これにより、資金繰りに約1ヶ月の猶予が生まれるため、納税が必要な場合は振替納税の利用をお勧めします。
副業している人が確定申告を行わない場合のペナルティ
「少額の副業だから税務署も見ていないだろう」「現金手渡しだから記録に残らないだろう」と考えるのは極めて危険です。日本の税務行政は、マイナンバー制度の導入やデジタル化により、個人の所得捕捉能力を年々高めています。 給与を支払う企業は、必ず役所に「給与支払報告書」を提出しており、行政は誰がどこでいくら稼いでいるかを正確に把握しています。また、業務委託の場合も、一定額を超えれば「支払調書」が税務署に提出されますし、近年ではシェアリングエコノミーのプラットフォーム事業者に対する情報照会も活発に行われています。 無申告が発覚した場合、以下のような厳しいペナルティが科されます。
無申告加算税と厳格化
法律で定められた期限内に確定申告をしなかった場合、本来納めるべき税額に上乗せして「無申告加算税」という罰金的な税金が課されます。 このペナルティの税率は一律ではなく、納付すべき税額の多寡によって段階的に設定されています。原則として、納付税額の一定割合が加算されますが、近年の税制改正により、高額な無申告に対するペナルティがさらに強化されました。 税務署から指摘を受ける前に、自ら過ちに気づいて自主的に期限後申告をした場合は、ペナルティの税率は軽減されます。しかし、税務調査の事前通知を受けた後や、調査によって指摘された後では、より重い税率が適用されます。
延滞税
納付期限の翌日から実際に税金を納付するまでの日数に応じて、利息に相当する「延滞税」が発生します。延滞税の割合は年によって変動しますが、納付が遅れれば遅れるほど利率が跳ね上がる仕組みになっています。長期間放置すると、本税の金額に迫るほどの延滞税がかかるケースもあり、経済的なダメージは計り知れません。サラ金並みの金利が適用される期間もあるため、決して侮れません。
重加算税
単に申告を忘れていただけでなく、副業の売上を意図的に隠蔽したり(二重帳簿を作る、売上の一部を個人の別口座に入れて隠すなど)、架空の経費(実際には存在しない外注費や、私的な旅行費用を経費にするなど)を計上したりといった悪質な仮装・隠蔽行為があったと認定された場合は、無申告加算税に代わって「重加算税」が課されます。この税率は行政処分の中でも極めて高い数値に設定されており、税務調査において最も重いペナルティです。
本業の会社への発覚リスク(社会的制裁)
副業している人にとって、税務署からのペナルティ以上に恐ろしいのが、「本業の会社に副業がバレる」ことではないでしょうか。 確定申告(または住民税の申告)を適切に行わないと、役所は「すべての所得を合算して住民税を計算」し、その決定通知書を「主たる給与の支払者(本業の会社)」に送付します(特別徴収の仕組み)。 会社の経理担当者は、給与の額に対して住民税額が不自然に高いことに気づきます。「この社員は、うちの給与だけでは計算が合わない。他にも収入があるはずだ」と推測され、副業が発覚するのです。 就業規則で副業が禁止されている会社であれば、懲戒処分や解雇の対象となる可能性もあります。また、副業が解禁されている会社であっても、無用な詮索を受けたり、本業をおろそかにしていると疑われたりするリスクがあります。これらの社会的・職業的なリスクを回避するためにも、適切な申告手続きが不可欠なのです。
副業している人は自分で確定申告を行うことが可能か?
「確定申告は難しそう」「専門家じゃないとできない」「簿記なんてわからない」というイメージを持つ方も多いですが、結論から申し上げますと、副業している人の確定申告は、多くのケースでご自身で行うことが十分に可能です。特に、事業規模がそこまで大きくない場合や、給与のみの掛け持ちであれば、専門的な簿記の知識はほとんど必要ありません。
「給与+給与」の場合(難易度:低)
本業以外にアルバイトをしているケースなどは、最も簡単です。必要な作業は、両方の会社から交付された「源泉徴収票」を手元に用意し、その中に記載されている「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」などの数字を、申告書の所定の欄に転記するだけです。 国税庁が提供しているウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に従って源泉徴収票の数字を入力するだけで、自動的に税額が計算され、申告書が完成します。電卓を叩く必要すらありません。
「給与+事業・雑所得」の場合(難易度:中)
副業で給与以外の収入(事業所得や雑所得)がある場合は、少し手間がかかります。なぜなら、副業にかかった「経費」を自分で集計し、所得を計算しなければならないからです。 領収書を整理し、費目(消耗品費、旅費交通費など)ごとに集計して、「売上-経費=所得」を算出します。しかし、これも取引数が少なければ、お小遣い帳レベルの管理でも対応できる場合が多く、市販のクラウド会計ソフトなどを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込んで帳簿を作成できるため、専門知識がなくても完了させることができます。 最近の会計ソフトは、スマホで領収書を撮影するだけで日付や金額を読み取ってくれる機能も充実しており、通勤時間などのスキマ時間を使って作業を進めることも可能です。
副業している人が自分で確定申告を行うことメリット
コストがかからない(経済的メリット)
最大のメリットは、やはり費用です。税理士に確定申告を依頼すると、最低でも数万円、内容によっては十数万円の費用がかかります。副業の収入が月数万円程度の場合、税理士報酬を払うと手残りの利益がほとんどなくなってしまう、あるいは赤字になってしまう可能性があります。自分で行えば、費用は無料、もしくは会計ソフト代などの数千円〜1万円程度で済みます。コストパフォーマンスを考えれば、自分で行うメリットは非常に大きいです。
税金と社会保険の仕組みを理解できる(金融リテラシー向上)
自分で申告書を作成することで、「いくら稼ぐといくら税金が引かれるのか」「年末調整では何が控除されているのか」「医療費控除やふるさと納税がどれくらいお得なのか」といった、日本の税金の仕組みを肌感覚で理解できるようになります。 この知識は、単に申告を済ませるだけでなく、将来のキャリアプランやライフプラン、資産形成を考える上で非常に役立つ「一生モノの知識」となります。自分が払っている税金の中身を知ることは、お金に対する意識を変える第一歩です。また、独立起業を考えている人にとっては、良い予行演習にもなります。
副業している人が自分で確定申告を行うことデメリット
手間と時間がかかる(時間的コスト)
慣れていないと、書類の準備や入力方法の確認、e-Taxのセットアップなどに多くの時間がかかります。特に平日は本業、休日は副業と忙しく働いている副業している人にとって、確定申告のための時間を捻出するのは大きな負担です。貴重な休日を申告作業で潰してしまうことになります。初めての申告では、用語の意味を調べるだけでも一苦労かもしれません。
税務上の判断ミス
経費の計上範囲(どこまでが経費になるか)や、所得区分の判断(雑所得か事業所得か)など、税務上の判断を誤ると、後で税務署から否認されたり、修正申告を求められたりするリスクがあります。特に家事按分(自宅の家賃や光熱費の一部を経費にすること)の割合などは、客観的かつ合理的な根拠が必要ですが、自分に都合の良い解釈をしてしまいがちです。
副業している人が自分で確定申告をするための流れ
自分で確定申告を行う際の具体的なステップを解説します。流れを把握していれば、恐れることはありません。
ステップ1:必要書類の収集(1月〜2月上旬)
まず、申告に必要な書類をすべて集めます。
- 源泉徴収票: 1月から12月までの間に収入があった「すべての勤務先」から取り寄せます。年の途中で退職した会社がある場合も、その会社の源泉徴収票が必要です。本業の源泉徴収票は、通常12月か1月の給与明細と一緒に渡されます。
- 支払調書: 業務委託の場合、クライアントから送られてくることがあります(必須書類ではありませんが、計算の根拠になります)。
- 売上の記録: 支払調書がない場合は、通帳の入金記録や、ウーバーイーツ、クラウドソーシングなどの管理画面から売上レポートをダウンロードします。
ステップ2:経費と控除の整理
副業(事業・雑所得)がある場合は、経費の領収書やレシートを整理し、費目(交通費、消耗品費など)ごとに集計します。Excelなどで一覧表を作っておくと便利です。 また、所得から差し引ける「控除」の書類も用意します。本業の年末調整で提出し忘れた「生命保険料控除証明書」や、医療費控除を受けるための「医療費の領収書」、ふるさと納税の「寄附金受領証明書」などが該当します。 ※ふるさと納税で「ワンストップ特例」を申請していた場合でも、確定申告を行うとワンストップ特例はすべて無効になります。そのため、確定申告の際には、ワンストップ申請分も含めた「すべての寄附金」について改めて申告する必要があります。これを忘れると控除が受けられなくなるので要注意です。
ステップ3:申告書の作成(2月中旬〜)
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や、市販の会計ソフトを使って申告書を作成します。
- 給与所得の入力: メインとサブ、すべての源泉徴収票の内容(支払金額、源泉徴収税額など)を正確に入力します。
- 副業所得の入力: 事業所得や雑所得の画面で、集計した売上と経費を入力します。
- 所得控除の入力: 医療費控除や寄附金控除などを入力します。
- 住民税の選択: ここが最重要ポイントです。 申告書の作成画面で「住民税の徴収方法の選択」という項目が出てきたら、必ず**「自分で納付」(普通徴収)**にチェックを入れます。これにより、副業分の住民税は自宅に納付書が届くようになり、会社の給与からは引かれなくなります。
ステップ4:提出と還付・納税(〜3月15日)
作成したデータをe-Taxで送信するか、印刷して税務署に郵送・持参します。還付金がある場合は、申告書に記載した指定口座に、約1ヶ月〜1ヶ月半後に振り込まれます。納税が必要な場合は、期限内に納付手続きを行います。コンビニ納付(QRコード作成)やクレジットカード納付も可能です。
副業している人が自分で確定申告をするために必要な資料等
申告作業を始める前に、手元に以下の資料を揃えておくとスムーズです。
収入を証明する書類
- 源泉徴収票(原本またはデータ): 副業している全ての勤務先分。手元にない場合は、早急に勤務先の経理担当者に再発行を依頼してください。
- 支払調書: 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など。デザイン料、原稿料、講演料などは発行されることが多いです。
- 売上の記録: 請求書の控え、通帳の記帳、売上管理表、プラットフォームの入金履歴など。
経費の領収書・レシート(給与所得以外の副業がある場合)
- 交通費: 電車、バス、タクシー代など。Suicaなどの履歴も可(ただしプライベート利用と分ける必要あり)。
- 通信費: スマホ代、インターネット代(業務使用分のみ家事按分)。
- 消耗品費: PC、インク、用紙、作業に必要な道具など(10万円未満のもの)。
- 図書研修費: 業務に関連する書籍、セミナー参加費、オンラインサロン会費など。
- 地代家賃: 自宅を仕事場にしている場合の家賃(業務使用分のみ家事按分)。
- 接待交際費: クライアントとの打ち合わせ飲食代など(誰と何のために行ったかのメモが必要)。
控除証明書・その他
- 医療費の領収書: 医療費控除明細書を作成するために必要。家族分も合算できます。
- 寄附金受領証明書: ふるさと納税等の証明書。
- マイナンバーカード: e-Taxでの送信や本人確認に必要。スマホで読み取るために暗証番号も確認しておきましょう。
- 銀行口座の情報: 還付金の受取用、または振替納税用。本人名義のものに限ります。
副業している人が税理士を活用するメリット
自分で行うことが可能な確定申告ですが、状況によっては税理士の活用が視野に入ります。
手間の削減と本業への集中
忙しい副業生活の中で、領収書の整理や申告書の作成を丸投げできるのは大きなメリットです。 休日は体を休めたり、家族と過ごしたり、あるいはさらに副業で稼いだりするための時間です。慣れない申告作業に貴重な時間を奪われることなく、自分のライフスタイルを守ることができます。「時は金なり」と考えるなら、アウトソーシングは合理的な投資です。
最適な節税と還付金の最大化
税理士は税金のプロフェッショナルです。「家事按分」の適切な割合の算出や、見落としがちな控除の指摘、あるいは青色申告の活用提案などを受けることで、税金を適正に抑え、還付金を最大化できる可能性があります。また、インボイス制度への対応や、将来的な法人化のタイミングなど、経営的なアドバイスも受けられます。結果として、税理士報酬を支払っても、節税効果や事業成長のアドバイスでお釣りが来るケースもあります。
副業している人が税理士を活用するデメリット
コストが見合わない場合がある
やはり費用がネックになります。副業の収入が月数万円程度、年間数十万円程度の場合、税理士報酬を払うと手残りがほとんどなくなってしまう可能性があります。 自分の時給単価と税理士報酬を天秤にかけ、コストパフォーマンスを慎重に検討する必要があります。ただし、「安心料」や「勉強代」として割り切る考え方もあります。
副業している人が税理士へ依頼する場合の費用相場
副業している人の確定申告依頼は、事業規模や依頼内容によって相場が異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
給与+給与(源泉徴収票のみ)の場合
計算が単純であり、記帳作業も発生しないため、比較的安価です。
- 2万円 〜 5万円程度 この金額で、面倒な手続きと「会社バレ対策」の安心を買えると考えれば、決して高くはない投資と言えるでしょう。
給与+副業(事業・雑所得)の場合
領収書の集計(記帳代行)が必要かどうか、売上規模がどれくらいかで変わります。
- 申告書作成のみ(集計は自分で済ませている場合): 5万円〜10万円程度
- 丸投げ(領収書を渡して記帳から依頼する場合): 10万円〜15万円程度 売上規模が大きくなったり、消費税の申告が必要になったりすると、費用も上がる傾向にあります。また、不動産所得がある場合や、暗号資産(仮想通貨)の計算が含まれる場合は、計算が複雑になるため別途見積もりとなることが多いです。
副業している人が税理士を探す方法
自分に合った税理士を見つけるためのルートを紹介します。
税理士紹介サイトの利用
「税理士ドットコム」や「ミツモア」などのマッチングサービスを利用します。「副業の確定申告」「個人の確定申告」などの条件で検索し、見積もりを取ることができます。多くの税理士の中から、個人の少額案件でも歓迎してくれる事務所を効率的に探せます。複数の見積もりを比較できるため、相場感も掴みやすいです。
Web検索
Googleなどで「地域名 + 副業確定申告 + 税理士」といったキーワードで検索します。ホームページで「副業バレ対策」や「会社員の確定申告歓迎」を謳っている事務所は、副業している人の事情に詳しく、ノウハウが豊富である可能性が高いです。ブログやSNSで情報発信をしている税理士なら、人柄も事前に知ることができます。
副業している人が税理士を選ぶ際のポイント
個人の確定申告に積極的か
税理士の中には「法人の顧問契約」をメインとしており、個人のスポット(単発)申告を受けていない、あるいは積極的ではない事務所もあります。個人の副業案件を歓迎しているか、ホームページや問い合わせ時の対応で確認しましょう。問い合わせのレスポンスが早いかどうかも、信頼できるかどうかの重要な指標です。
電子申告(e-Tax)対応
還付金を早く受け取るため、また源泉徴収票などの原本添付を省略するために、e-Taxでの申告に対応している事務所を選びましょう。現在はほとんどの事務所が対応していますが、念のため確認しておくと安心です。また、LINEやチャットツールでの連絡が可能かなど、コミュニケーションの取りやすさも確認しておくと良いでしょう。
まとめ
副業している人にとって、確定申告は一見すると「面倒な義務」や「リスクの種」に見えるかもしれません。しかし、正しく理解すれば、それは「払いすぎた税金を取り戻すチャンス」であり、「自分の働き方を守るための盾」でもあります。
副業先で引かれている「乙欄」の源泉徴収税額は、多くの場合、本来払うべき額よりも高めに設定されています。申告をすることで、数万円、時には十数万円単位のお金が戻ってくることも珍しくありません。これは、あなたが汗水流して稼いだ大切なお金です。国に預けたままにするのはもったいないことです。
まずは、自分の働き方と年収を確認し、申告が必要かどうか、還付の可能性があるかどうかをチェックしましょう。 少額であれば、クラウド会計ソフトなどを使って自分で申告するのがコスト面で有利です。その際は、くれぐれも「住民税の自分で納付」のチェックを忘れないように、慎重に手続きを進めてください。 もし、副業の規模が大きかったり、会社バレを極端に恐れていたり、時間が全く取れない場合は、税理士というプロの力を借りることも賢い選択肢です。
正しい知識を持って確定申告を行い、副業という挑戦的な働き方の努力が正当に報われるよう、しっかりととお金の管理を行いましょう。あなたの豊かな生活とキャリアを守るために、確定申告を味方につけてください。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
