マンション管理組合で公認会計士監査を活用する方法

監査

マンションという居住形態が日本に定着してから長い年月が経過し、建物の老朽化や居住者の高齢化といった「二つの老い」が社会問題として顕在化する中で、マンション管理組合の運営にはこれまで以上の透明性と確実性が求められるようになっています。特に金銭管理において不正やミスが発生することは、管理組合の存続そのものを揺るがす重大な事態になりかねません。そこで注目されているのが、会計のプロフェッショナルである公認会計士による外部監査の導入です。

本記事では、マンション管理組合における公認会計士監査の活用方法について、その基礎知識から具体的なメリット、依頼時のポイントに至るまでを網羅的に解説します。

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マンション管理組合で公認会計士監査を活用する方法

  1. マンション管理組合とは?
    1. 管理組合の法的定義と役割
    2. 理事会と監事の機能
  2. マンション管理組合で監査が必要なケース
    1. 大規模な修繕積立金が動く場合
    2. 管理会社や理事会の不正が疑われる場合
    3. 管理組合の規模が大きく取引が複雑な場合
  3. マンション管理組合の監査で公認会計士を利用するメリット
    1. 独立性と客観性の確保
    2. 高度な専門知識による不正・ミスの発見
    3. 組合員への説明責任と信頼の向上
  4. マンション管理組合の監査を行う上でのチェックポイント
    1. 現金および預金の残高確認
    2. 管理費等の未収金の状況
    3. 支出の証憑類との突合
    4. 区分経理の遵守状況
  5. マンション管理組合は公認会計士を使わなくても監査可能か?
    1. 監事による内部監査の限界
    2. 専門家監査への移行のタイミング
  6. マンション管理組合が公認会計士へ依頼する際の費用相場
    1. 費用を決定する要因
    2. 戸数規模別の概算費用
  7. マンション管理組合が公認会計士を探す方法
    1. インターネットや専門サイトの活用
    2. 日本公認会計士協会の検索システム
    3. 管理会社からの紹介には注意が必要
  8. マンション管理組合が公認会計士を選ぶ際のポイント
    1. マンション管理業界への知見と実績
    2. コミュニケーション能力とわかりやすい説明
    3. 独立性と倫理観の保持
  9. マンション管理組合が公認会計士へ依頼する際によくある質問の例と回答
    1. 監査で不正が見つかったらどうなるのか?
    2. 監査は毎年依頼しなければならないのか?
    3. 監査費用は誰が負担するのか?
  10. まとめ

マンション管理組合とは?

管理組合の法的定義と役割

マンション管理組合とは、分譲マンションなどの区分所有建物において、建物や敷地および附属施設の管理を行うために区分所有者全員で構成される団体のことを指します。これは「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に基づき、マンションを購入し区分所有者となった時点で、本人の意思に関わらず自動的に構成員となります。つまりマンションを購入するということは、同時に管理組合という組織の一員になり、その運営に対する責任と権利を有することを意味します。

管理組合の主な役割は、居住者が快適に生活できる環境を維持し、かつ資産としてのマンションの価値を保全することにあります。具体的には共用部分の清掃や設備の保守点検といった日常的な管理業務から、十数年に一度行われる大規模修繕工事の計画と実施、さらには管理規約の策定や変更など多岐にわたります。これらを遂行するためには資金が必要であり、区分所有者から毎月徴収する管理費や修繕積立金の管理が極めて重要な業務となります。

理事会と監事の機能

管理組合の運営は、基本的には区分所有者全員が参加する総会によって最高意思決定が行われますが、日々の業務執行を全員で行うことは現実的ではありません。そこで、組合員の中から選出された役員によって構成される「理事会」が設置され、総会で決議された事項や日常的な管理業務を執行します。理事長は管理組合を代表し、業務を統括する役割を担います。

一方で、理事会の業務執行や財産の状況をチェックする役割として設置されるのが「監事」です。監事は理事会からは独立した立場で、会計監査および業務監査を行う権限を持っています。しかしながら、多くの管理組合において監事は輪番制や抽選で選ばれることが多く、会計や法律の専門知識を持たない一般の居住者が就任するケースが大半です。そのため、形式的なチェックにとどまってしまうことが多く、ここに外部専門家である公認会計士の監査が必要とされる背景があります。

マンション管理組合で監査が必要なケース

大規模な修繕積立金が動く場合

マンション管理において最も巨額の資金が動くのが大規模修繕工事です。外壁の塗装や屋上の防水、給排水管の更新などには億単位の資金が必要となることも珍しくありません。このような多額の資金支出が伴うタイミングでは、不正や不適切な会計処理が発生するリスクが高まります。工事費用の水増しや業者との癒着、あるいは積立金の目的外流用などが懸念されるため、第三者の目による厳格なチェックが不可欠となります。特に大規模修繕工事の前後は資金の動きが激しくなるため、会計監査の重要性が飛躍的に高まるケースと言えるでしょう。

管理会社や理事会の不正が疑われる場合

残念ながら、マンション管理組合の資金が横領される事件は後を絶ちません。管理会社の担当者が管理組合の口座から現金を着服したり、理事長が独断で組合の資金を私的に流用したりするケースが実際に発生しています。通帳の残高と帳簿が合わない、使途不明金がある、領収書が存在しない出金があるといった兆候が見られた場合や、特定の役員が長期間にわたり会計を担当し続けており周囲が口出しできない雰囲気がある場合などは、早急に詳細な監査を行う必要があります。内部の人間関係やしがらみにとらわれない外部の公認会計士による監査を入れることで、事実関係を客観的に明らかにし、被害の拡大を防ぐことができます。

管理組合の規模が大きく取引が複雑な場合

タワーマンションや数百戸を超える大規模マンション、あるいは店舗や商業施設が併設されている複合用途型マンションでは、管理組合の会計規模が中小企業のそれをも上回ることがあります。収支の項目が多岐にわたり、消費税の課税事業者に該当するケースや収益事業を行っているケースなど、会計処理自体が高度で複雑になります。このような環境下では、会計の知識を持たない居住者が監事としてチェックを行うことには限界があります。ミスや処理漏れを防ぎ、税務リスクを回避するためにも、専門家による定期的な監査が必要となる典型的なケースです。

マンション管理組合の監査で公認会計士を利用するメリット

独立性と客観性の確保

公認会計士に監査を依頼する最大のメリットは、その独立性と客観性にあります。管理組合内部の人間である監事が監査を行う場合、どうしても近所付き合いや人間関係への配慮が働き、厳しい指摘がしにくくなる傾向があります。また、管理会社に監査の補助を依頼している場合、管理会社自身のミスや不正を管理会社自身がチェックするという利益相反の状態になりかねません。

公認会計士は管理組合や管理会社とは利害関係のない第三者です。専門家としての倫理規定に基づき、客観的な事実と証拠に基づいて監査を行います。「なあなあ」で済ませることなく、不適切な会計処理や不明瞭な支出があれば明確に指摘し、改善を促すことができます。この厳格な姿勢が、管理組合運営の健全化に直結します。

高度な専門知識による不正・ミスの発見

公認会計士は会計と監査のスペシャリストです。彼らは財務諸表の数字の整合性をチェックするだけでなく、その背後にある取引の実態や内部統制の有効性までを見極める能力を持っています。例えば、架空の請求書による支出や、銀行印と通帳の管理状況の不備、未収金の管理における手続き上のミスなど、素人では見逃してしまいがちな問題点を的確に発見します。

また、単なる計算ミスや記帳ミスの指摘にとどまらず、なぜそのようなミスが起きたのかという原因を分析し、再発防止のための業務フローの改善提案を受けることも可能です。これにより、管理組合の会計レベル全体が底上げされ、よりミスの起きにくい強固な体制を構築することができます。

組合員への説明責任と信頼の向上

管理組合の運営において最も重要な資産は、組合員(居住者)からの信頼です。管理費や修繕積立金が正しく使われているかどうかわからないという疑念は、組合員の無関心や非協力、さらには管理費の滞納といった問題を引き起こす原因となります。公認会計士による監査報告書は、会計処理が適正に行われていることを専門家が証明する「お墨付き」となります。

総会において公認会計士の署名が入った監査報告書が提示されることは、理事会の運営が適正であることを強力に裏付けるものであり、組合員の安心感を醸成します。透明性の高い運営が行われていることが周知されれば、組合員の管理組合活動への関心や協力体制も自然と高まり、結果としてマンション全体の資産価値維持にも寄与することになります。

マンション管理組合の監査を行う上でのチェックポイント

現金および預金の残高確認

監査の基本にして最重要項目が、現金と預金の残高確認です。会計帳簿上の残高と、実際の通帳の残高や手元にある現金の有高が完全に一致しているかを検証します。公認会計士による監査では、単に通帳のコピーを見るだけでなく、必要に応じて金融機関に対して「残高確認書」の発行を依頼し、銀行が証明する残高と帳簿残高を直接照合することもあります。

また、通帳と銀行届出印が適切に分別管理されているか、理事長印の押印プロセスがルール通りに行われているかといった、現預金の管理体制そのものもチェック対象となります。小口現金を保有している場合は、その保管状況や出納帳の記載内容、領収書との突合などを通じて、不明金が生じていないかを厳密に確認します。

管理費等の未収金の状況

管理費や修繕積立金の滞納は、管理組合の資金繰りを圧迫するだけでなく、公平性の観点からも大きな問題です。監査においては、貸借対照表に計上されている未収金の金額が正しいか、そして長期滞納者に対する督促などの回収努力が適切に行われているかを確認します。

具体的には、滞納月数の推移や督促状の発送履歴、法的措置の検討状況などをチェックします。会計処理として、回収不能な債権がいつまでも資産として計上されていないか、あるいは逆に回収されたはずの金銭が未収金のままになっていないか(着服の可能性)といった点にも注意を払います。未収金管理台帳と会計帳簿の整合性を確認することは、不正防止の観点からも重要です。

支出の証憑類との突合

すべての支出には、その正当性を証明する「証憑(しょうひょう)」が必要です。請求書、領収書、契約書、工事完了報告書、理事会の議事録などがこれに該当します。監査では、会計帳簿に記録されている支出取引をランダム、あるいは金額の大きなものを中心に抽出し、それらに対応する証憑類が完備されているかを確認します。

例えば、修繕工事費が支出されている場合、理事会での承認議事録、業者との契約書、工事完了後の検収書、そして業者からの請求書と振込記録が一貫しているかをチェックします。承認されていない支出や、架空の業者への支払い、金額の改ざんなどがないかを徹底的に検証することで、支出の透明性を担保します。

区分経理の遵守状況

マンション管理組合の会計は、日常の管理業務に関わる「管理費会計」と、将来の修繕に備える「修繕積立金会計」に区分して経理することが原則とされています。監査においては、この区分経理が厳格に守られているかを確認します。

具体的には、管理費会計の赤字を埋めるために修繕積立金会計から安易に資金を流用していないか、あるいはそれぞれの会計で負担すべき費用が正しく計上されているかをチェックします。修繕積立金は将来の大規模修繕のための重要な資金であり、日常経費への流用は将来の資金不足を招く危険な行為です。この区分が適切になされているかを確認することは、管理組合の長期的な財政健全性を守る上で欠かせないポイントです。

マンション管理組合は公認会計士を使わなくても監査可能か?

監事による内部監査の限界

法律上、マンション管理組合の監査は必ずしも公認会計士が行わなければならないわけではありません。多くの管理組合では、管理規約に基づき選任された組合員である監事が監査を行っています。しかし、前述の通り監事は会計の専門家ではないことが多く、その監査は「通帳と帳簿の数字が合っているか」「領収書が揃っているか」といった形式的な確認にとどまりがちです。

また、同じマンションに住む居住者同士であるため、理事会の運営に対して厳しい意見を言いにくいという心理的な障壁も存在します。さらに、近年ではマンション管理の法規制や会計基準が複雑化しており、一般の居住者がそのすべてを理解し、適切な監査を行うことは極めて困難になっています。形式的な監査では不正や重大なミスを見抜くことは難しく、リスク管理としては不十分と言わざるを得ません。

専門家監査への移行のタイミング

では、どのようなタイミングで公認会計士監査への移行を検討すべきでしょうか。一つの目安は、管理組合の規模や資金量が、素人の手に負える範囲を超えた時です。例えば、総戸数が一定以上(例えば100戸以上)の場合や、修繕積立金の残高が数億円規模になった場合は、外部監査の導入を積極的に検討すべきです。

また、大規模修繕工事を控えている時期や、管理会社を変更した直後、あるいは理事会の役員が長期間固定化している場合なども、透明性を確保するために外部の目を入れる良いタイミングです。さらに、近年では「マンション管理適正評価制度」などが導入されており、外部監査を受けていることがマンションの評価向上につながるケースもあります。資産価値の維持向上という観点から、コストをかけてでも専門家を入れるという判断をする管理組合が増えています。

マンション管理組合が公認会計士へ依頼する際の費用相場

費用を決定する要因

公認会計士による監査報酬は一律ではなく、いくつかの要因によって変動します。主な要因としては、マンションの総戸数、会計の複雑さ(収益事業の有無など)、監査にかける時間と日数、作成する報告書の種類などが挙げられます。また、管理会社が作成する会計資料の精度が高い場合は監査にかかる時間が短縮されるため費用が抑えられる傾向にありますが、逆に資料が整理されていない場合は追加の作業工数が発生し、費用が高くなることもあります。

戸数規模別の概算費用

あくまで一般的な目安ですが、小規模から中規模のマンション(50戸〜100戸程度)であれば、年間の監査報酬は10万円から30万円程度が相場となることが多いようです。この規模であれば、監査に要する日数は1日から2日程度で済むケースが一般的です。

一方、大規模マンションやタワーマンション(数百戸以上)になると、取引量が膨大になるため、監査報酬も30万円から50万円、場合によっては100万円を超えることもあります。特に商業施設との複合用途などの場合はさらに費用が上がります。この費用を高いと感じるか安いと感じるかは、一戸あたりの負担額で考えると判断しやすくなります。例えば年間20万円の監査報酬であれば、100戸のマンションなら一戸あたりの負担は年間2,000円、月額にして約166円です。この金額で安心と透明性が買えるとすれば、決して高い投資ではないと考えることができます。

マンション管理組合が公認会計士を探す方法

インターネットや専門サイトの活用

最も手軽な方法は、インターネット検索を利用することです。「マンション管理組合 監査 公認会計士」「地域名 マンション監査」などのキーワードで検索すれば、マンション監査に力を入れている公認会計士事務所のウェブサイトが見つかります。また、マンション管理士や弁護士など、マンション問題に取り組む専門家のネットワークを通じて紹介を受けることも可能です。

近年では、マンション管理組合向けのサービス比較サイトや、専門家とのマッチングサイトも存在します。これらのサイトを活用することで、複数の公認会計士から見積もりを取り、比較検討することができます。ただし、ウェブサイトの情報だけでは人柄や実際の対応能力まではわからないため、必ず面談を行うことが重要です。

日本公認会計士協会の検索システム

日本公認会計士協会(JICPA)は、公認会計士の職能団体であり、会員である公認会計士の検索システムを提供しています。協会のウェブサイトから、地域や得意分野を指定して公認会計士を探すことができます。また、協会には「非営利法人委員会」など、マンション管理組合を含む非営利組織の監査に関する研究を行っている委員会もあり、そうした活動に参加している公認会計士は専門知識が豊富である可能性が高いと言えます。

管理会社からの紹介には注意が必要

管理会社から公認会計士を紹介してもらうという方法もありますが、これには注意が必要です。監査の目的の一つは、管理会社が作成した会計書類や業務遂行状況を第三者がチェックすることにあります。もし管理会社と密接な関係にある公認会計士が監査を行う場合、そこに「なれ合い」が生じ、厳しい指摘が行われない可能性があります。いわゆる「利益相反」のリスクです。

もちろん、すべての紹介が悪いわけではありませんが、管理会社から紹介を受ける場合は、その公認会計士が管理会社から完全に独立しているか、過去にどのような関係があるかを慎重に確認する必要があります。できれば、管理組合が主体となって独自に探した公認会計士を選任する方が、透明性の観点からは望ましいと言えます。

マンション管理組合が公認会計士を選ぶ際のポイント

マンション管理業界への知見と実績

公認会計士であれば誰でもマンション管理組合の監査ができるとは限りません。公認会計士の多くは一般企業の監査を主業務としており、マンション管理組合特有の会計ルールや法律(区分所有法、マンション標準管理規約など)に詳しくない場合もあります。

選定の際には、これまでにマンション管理組合の監査経験がどの程度あるか、マンション管理独自の会計基準や実務慣行に精通しているかを確認することが不可欠です。実績のある公認会計士であれば、単なる数字のチェックだけでなく、管理組合運営全般に関する有益なアドバイスも期待できます。

コミュニケーション能力とわかりやすい説明

監査結果を報告する相手は、会計の専門家ではない理事や一般の組合員です。専門用語を並べ立てた難解な報告書や説明では、監査の意味が十分に伝わりません。会計の知識がない人に対しても、何が問題でどう改善すべきかを、平易な言葉でわかりやすく説明できるコミュニケーション能力が求められます。

面談の際には、こちらの質問に対して丁寧に答えてくれるか、専門用語を使わずに説明しようとする姿勢があるかを確認しましょう。「親しみやすさ」や「相談しやすさ」も、長期的なパートナーシップを築く上では重要な要素です。

独立性と倫理観の保持

前述の通り、監査人としての独立性は絶対条件です。管理会社や特定の理事と私的な関係がないことはもちろん、職業的懐疑心を持って公正不偏な態度で業務に取り組む倫理観を持っているかを見極める必要があります。

契約前に、どのような方針で監査を行うのか、もし不正が見つかった場合にはどのように対応するのかといった点について質問し、その回答から誠実さや毅然とした態度を感じ取れるかを判断材料にします。管理組合の資産を守る番人として、信頼に足る人物であるかどうかを慎重に見極めましょう。

マンション管理組合が公認会計士へ依頼する際によくある質問の例と回答

監査で不正が見つかったらどうなるのか?

万が一、監査の過程で使い込みや横領などの不正が発覚した場合、公認会計士はまずその事実関係を証拠に基づいて確定させます。そして、監査報告書においてその旨を記載するか、あるいは理事会(理事長自身が不正に関与している疑いがある場合は監事)に対して直ちに報告を行います。

公認会計士は捜査機関ではないため、犯人を逮捕したり処罰したりする権限はありませんが、管理組合が損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置をとるために必要な客観的な証拠資料の整理や、事実認定のサポートを行うことができます。不正の発見はショッキングな出来事ですが、早期に発見し対処することで、被害の拡大を防ぎ、管理組合の正常化を図るための第一歩となります。

監査は毎年依頼しなければならないのか?

基本的には、毎年の決算期に合わせて定期的に監査を行うことが望ましいです。継続的に監査を受けることで、経年変化による異常値の発見が容易になり、また「常に見られている」という意識が働くため、不正の抑止効果が高まります。

しかし、予算の都合などで毎年の実施が難しい場合は、数年に一度のスポット監査や、大規模修繕工事の実施年度だけ監査を依頼するといった柔軟な利用方法も可能です。また、役員の交代時期に合わせて監査を入れることで、前任者の業務内容をクリアにしてから新体制に移行するという使い方も有効です。管理組合の事情に合わせて、最適な頻度やタイミングを公認会計士と相談すると良いでしょう。

監査費用は誰が負担するのか?

公認会計士による監査費用は、管理組合の運営経費として扱われます。一般的には「管理費会計」の中から支出されます。これは、監査が組合員全員の利益を守るための活動であり、共益費的な性格を持つためです。

監査の導入を決定するには、費用の支出を伴うため、通常は総会での決議が必要となります。理事会だけで勝手に決めて支出することはできません。総会で監査導入の必要性と費用対効果を説明し、組合員の承認を得て予算化するプロセスを経る必要があります。このプロセス自体が、組合員の管理意識を高めるきっかけにもなります。

まとめ

マンション管理組合における公認会計士監査の活用は、単なる会計帳簿のチェックにとどまらず、管理組合の運営全体を健全化し、資産価値を守るための強力な手段となります。

管理組合とは、居住者が共同で財産を管理する運命共同体のような組織です。しかし、その運営を担うのは会計のプロではない一般の居住者であり、管理会社任せになりがちな構造的な弱点を抱えています。そこに公認会計士という独立した第三者の専門家が介在することで、透明性が確保され、不正やミスのリスクが大幅に低減されます。

確かに費用の負担は発生しますが、それによって得られる「安心」と「信頼」、そして将来的なトラブルの回避というメリットは計り知れません。特に建物の高経年化が進み、修繕積立金の重要性が増している現代において、会計監査の重要性は今後ますます高まっていくでしょう。

自分たちの住まいを守り、次世代に良好な資産を引き継いでいくために、公認会計士監査の導入を検討することは、責任ある管理組合運営の第一歩と言えるのではないでしょうか。本記事が、より良いマンション管理を目指す皆様の一助となれば幸いです。

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この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。