税理士へ記帳代行を丸投げする方法

税務

本記事では、記帳代行を丸投げしたい経営者にとって税理士へ記帳代行を依頼すべきかどうか、依頼する際の費用やメリット等について詳細に記載しております。具体的に、税理士を探すにあたって、どのようなサービスだとどのぐらいの費用が適正なのかについて記載します。

本記事を読んでいただくことで、記帳代行について税理士をつけるかどうか迷っている方が、税理士と相談できる内容を明確に理解するとともに税理士と契約する際に適正な費用の水準を理解し、税理士を選ぶ判断軸を得ることができた上で、税理士と契約するかどうかを判断することができるようになります。

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  1. 記帳代行とは?
  2. 記帳代行の役割
    1. 取引を分類し記録すること
    2. 財務会計データの作成
    3. ミスの発見と修正
  3. 記帳を丸投げする場合のサービス内容
    1. 日々の記帳
    2. 決算作成
    3. 決算書に基づくアドバイス
    4. 税務申告のための税理士との連携
  4. 記帳代行を依頼するメリット
    1. 費用を抑えつつ記帳業務を依頼できる
    2. 記帳に関する手間を削減することができる
  5. 記帳代行を依頼するデメリット
    1. 税務に関する処理にハードルあり
  6. 記帳代行丸投げするメリット
    1. 記帳を外部に依頼することで本業へ集中できる
    2. 記帳のミスがなくなる
  7. 記帳代行を税理士等へ丸投げするデメリット
    1. コスト対効果が合うか
    2. 月次決算で素早く業績を見れない
  8. 記帳代行を丸投げする場合の留意点
    1. 自社にナレッジが貯まらない
    2. 税理士との連携がスムーズにいかない
    3. 節税ができない可能性
  9. 記帳代行は誰に依頼することができるのか?
    1. 記帳代行会社へ記帳を依頼するメリット(税理士が関与していないケース)
    2. 税理士事務所へ記帳を依頼するメリット
  10. 記帳代行を依頼する場合のおすすめは?
  11. 記帳代行会社+税理士のスポット相談は活用可能か?
  12. 税理士へ記帳代行を依頼するベストなタイミングとは?
    1. 法人設立のタイミング
    2. 消費税の課税事業者になるタイミング
    3. その他
  13. 記帳代行の丸投げを税理士へ依頼する方法
    1. 作業範囲を決める
    2. 決算の頻度・タイミング
  14. 記帳代行で税理士を選ぶポイント
    1. 税理士への記帳代行料金
    2. 相性
    3. 事業計画
    4. 内製化の計画
  15. 記帳代行は税理士へ丸投げ可能か?
  16. 税理士の記帳代行料金・顧問報酬に関する相場
    1. 税理士の相談料:価格が決まる要因
    2. 税理士の相談料:一般的な相場感
    3. 税理士の相談料:その他
    4. 税理士の記帳代行料金
  17. 記帳代行の支払料金は経費にできるのか?
  18. 記帳代行以外で税理士に相談できること
    1. 確定申告・税務顧問・記帳サービス
    2. 会社設立・起業支援
    3. 月次決算
    4. 経理アウトソーシング
    5. クラウド会計導入支援
    6. 管理会計の導入
    7. 相続申告や事業承継の検討
    8. その他:税務調査対応・セミナー・事業計画作成支援など
  19. まとめ

記帳代行とは?

記帳代行とはそもそもなんでしょうか?記帳代行とは決算や税務申告を作る元となる帳簿を作成する業務を外部へ委託することです。もちろん自社でも記帳業務を行うことは可能ですが、簿記に関する知識がないとそもそも会計ソフト等を使いこなせず記帳ができないことや、決算や税務申告を見据えると税務知識等がないと正しい帳簿作成をすることができないため、一般的には年商が一定大きくなってきた段階で税理士等の外部へ記帳業務を委託することが多いかと思います。

なお、記帳業務に基づいて作成された帳簿を土台として、まずは年間の決算書を作ることになります。貸借対照表と損益計算書です。貸借対照表は期末時点の会社の財務状況を示した書類になります。損益計算書は1年間の会社の経営成績(売上がいくらで、利益がいくらになったのか)を示す書類となります。この決算書を土台にして税務申告書は作成されることになります。そのため一言税務申告書と言っても、帳簿作成と決算書の作成の両方を行わないと辿り着けないということにご留意いただければと思います。

記帳代行の役割

取引を分類し記録すること

記帳においては、取引別に経理ルールに基づいて記録していくことが求められます。記帳は根拠となる証憑がスタートになりますが、それがどのような会計上の科目なのかに分類し、会計ソフトで記録されることになります。

財務会計データの作成

上記の記帳の積み上げとして、月次決算書を作成することになります。この月次決算書を積み上げたものが、四半期の決算書であったり、年度の決算書となるわけです。

ミスの発見と修正

記帳を行うにあたっても記帳作業者のみが対応するのではなく、一般的にはレビュー担当がついてダブルチェックを行うことで記帳の正確性を担保します。

記帳を丸投げする場合のサービス内容

日々の記帳

前述の通り、日々の証憑に基づいて記録を行なってもらいます。

決算作成

月次決算や年度決算など記帳結果を整理した決算書を作成してもらいます。

決算書に基づくアドバイス

毎月の決算書に基づく経営改善のためのアドバイスがあります。

税務申告のための税理士との連携

記帳代行を誰に依頼するかによりますが、税理士の場合は税理士が税務申告を行うため問題ないですが、記帳代行会社の場合は税理士と連携する必要があります。

記帳代行を依頼するメリット

費用を抑えつつ記帳業務を依頼できる

記帳代行業務自体は、一般的にそこまで高額にはならないため、自社で経理人材を採用して育成するよりも、記帳代行を依頼した方が費用を抑えられる可能性が高いです。

記帳に関する手間を削減することができる

知識がない経営者が記帳を行う場合、どうしても効率の面で時間がかかってしまうことが多いかと思います。記帳代行を依頼する場合、記帳に関する手間が全て削減できるのと、最新の会計処理に関してもアップデートしてくれるので経営者自ら会計・経理の勉強に時間を費やす必要がないというメリットがあります。結果として本業に集中することが可能となるため、本業である顧客獲得の施策に時間を費やし、売上・利益アップを実現させることが可能となるのです。

記帳代行を依頼するデメリット

税務に関する処理にハードルあり

税理士へ依頼せず記帳代行会社に依頼する場合は、税務の知見は税理士へ依存するため、記帳の制度やコミュニケーションが複雑になる可能性があります。

記帳代行丸投げするメリット

そもそも記帳代行を丸投げするメリットはなんでしょうか?

記帳を外部に依頼することで本業へ集中できる

記帳代行に取られる時間を外部へ依頼することで、本業に時間を使うことが可能です。

記帳のミスがなくなる

知識がない人が記帳を行う場合、記帳ミスが起こることは結構多いものです。特に税務に関する記帳を誤る場合には、そのまま確定申告書も誤った状態で作成・提出されてしまうため、税金インパクトも発生してしまいます。記帳代行を依頼する場合は、このような記帳ミスをなくすことができるので、税額についても損をすることはなくなるでしょう。またミスしていないか、という不安状態からも解消されますので、不安になっている無駄な時間を削ることができ、精神的に安定して経営を行うことが可能となるのです。

記帳代行を税理士等へ丸投げするデメリット

コスト対効果が合うか

小規模な副業でも確定申告を行う必要がありますが、収入が年間で数十万円しかないのに税理士へ数十万円の報酬を支払うのはあまり割に合わないかと思います。また収入が数十万円の場合は確定申告の内容も難易度が低い場合が多いので、ご自身でされた方がコスト対効果が良いかと思います。

月次決算で素早く業績を見れない

月次決算を依頼することも記帳代行では可能ですが、一方で月次決算をリアルタイムでお願いするとその分だけ報酬は高くなります。また1週間ごとに見たいなどになってくると対応している記帳代行会社や税理士事務所は少なく、より報酬が高くなってしまいます。高頻度で自社の業績を把握したい場合には、やはり記帳を内製化して専門人材を採用する必要があるでしょう。

記帳代行を丸投げする場合の留意点

自社にナレッジが貯まらない

記帳代行の場合、基本的に帳簿作りは税理士事務所等へ丸投げになってしまうため、いざ自社で業務を行おうと思った場合に、自社内でできなくなってしまいます。そのため、外部から経理の専門家を雇うなどの手当が出てくるので、今後会社を大きくしてIPOなども視野に入れたい、と思っている法人などは、最初は記帳代行で丸投げで良いと思いますが、資金調達が進んできた段階で、外部から専門人材を採用して内製化することも視野に入れると良いかと思います。

税理士との連携がスムーズにいかない

記帳代行の依頼先が税理士でない場合、記帳代行会社は税務業務ができないため、確定申告については税理士へ依頼する必要があります。その際記帳代行会社と税理士とのスムーズなコミュニケーションが必要ですが、記帳代行会社に知見や経験が少ない場合、税理士との連携がスムーズにいかないケースがあります。

節税ができない可能性

節税は記帳結果をリアルタイムで税理士と連携することで、税理士からさまざまな節税に関する提案を受けることができます。一方で、依頼先が税理士でない場合は記帳の結果が税理士へ連携されるまでにタイムラグが生じるため、節税の機会を逃す可能性があります。

記帳代行は誰に依頼することができるのか?

記帳代行については資格が不要なため、一般的には税理士事務所へ依頼するか、記帳代行会社(経理代行会社という場合もありますが)のいづれかに記帳代行をお願いすることになります。ややこしいのですが、記帳代行会社の経営自体を税理士が行っている場合もあるため、実質的に税理士事務所へ依頼しているのと変わらないケースもあります(例えば税務は税理士が代表を務める税理士事務所で行っていて、記帳業務は税理士が株主である株式会社で行っているケースが一般的です)。

記帳代行会社へ記帳を依頼するメリット(税理士が関与していないケース)

税理士が関与していない記帳代行会社へ記帳を依頼する場合ですが、一般的なメリットとしては料金の安さにあると思います。税理士は時給が高いため、税理士が関与していない場合その分だけ料金を抑えられる可能性があります。また、記帳業務以外にも、請求代行や給与計算代行など、記帳代行以外にも経理に関する業務のアウトソーシングサービスを行っていることも多いため、経理全般についてアウトソーシングしたい場合には記帳代行会社へ依頼するのはおすすめかと思います。

一方で、デメリットとしては税理士が関与していないために、税務については意識されずに記帳業務が進み、契約している顧問税理士が税務申告書類を作成する段階で修正するケースがあるため、税務視点からの処理ミスが完全に排除できない、結果として税理士料金が高くなるなどのデメリットは挙げられるかと思います。また適宜税理士へ記帳内容を踏まえての相談が行いづらいため、コミュニケーションに支障が出る可能性があります。

税理士事務所へ記帳を依頼するメリット

税理士事務所へ記帳を依頼するメリットとしては、税務の面まで意識して記帳業務を代行してくれる点です。記帳段階から意識することで、決算書作成や税務申告の段階で修正が不要になるため、結果効率的に作業を完了させることが可能となります(ミスも減ります)。また、税務と記帳を一体としてお願いするため記帳内容を前提とした税務相談ができ、コミュニケーションがスムーズになる点です。

デメリットとしては、記帳代行を税理士事務所へ依頼する場合担当するのが税理士だったりすると料金が高くなりがちなので、記帳の料金を抑えたい経営者からするとコスト面でデメリットが生じてしまいます。また税務を専門性としているため、経理代行等のアウトソーシングは受けないという事務所もありますので、経理業務を丸ごとアウトソーシングしたいという経営者にとっては物足りないものとなってしまいます。

記帳代行を依頼する場合のおすすめは?

記帳代行は、結論税理士事務所(もしくは税理士事務所が運営している記帳代行会社)へお願いするのがおすすめです。料金としては多少割高になってしまいますが、確定申告をしっかりと行いたい、節税までトータルでアドバイスが欲しい、という方にとっては税理士の存在が非常に重要になってきますし、やはり日々の取引から関与した方がスムーズなコミュニケーションをとることができます。

それでも費用を抑えるために記帳代行会社へ依頼する場合には、税理士との提携の有無や、どの程度スムーズに税理士とコミュニケーションが可能かを、しっかりとその記帳代行会社へ確認するようにしましょう。記帳代行の場合は単純作業ではないため、金額の相見積もり以外にも、税理士連携や過去の実績など料金以外に評価するポイントが様々あります。

記帳代行会社+税理士のスポット相談は活用可能か?

税理士月額料金をなるべく払いたくない、ある程度は自分で調べることができるので、わからない部分のみ教えてほしいという方もいらっしゃると思います。そのため一定の金額を払って税理士へスポット相談のみ依頼をしたいというニーズもあるかと思います。

ただしスポット相談のみは個人的にはあまりおすすめ致しません。その理由として、まず1つ目は税理士としては中長期のお付き合いの中で顧客の事業への深い理解や顧客のニーズを把握していくことになりますが、スポット相談ではこれを行うことができません。またスポット相談の場合時間や情報が限られてしまうため、どうしてもその範囲内の回答しかできません。加えて、顧客が相談の情報を準備することになりますが、当然顧客は税金の専門家ではないため、相談にあたって重要な前提情報や資料が漏れる可能性があります。顧問契約をしていれば税理士が日々顧客の動きを見ているためこのようなことは起こりませんが、スポット相談では顧客から提示された情報のみで判断せざる追えなくなります。

そのため、税理士としてスポット相談はそもそも引き受けていない(制限された情報や時間の中では専門家としての力を十分に発揮することができないため)、もしくは深いアドバイスはできないことを事前に顧客へ伝えるケースは多いかと思います。結局顧客として深いアドバイスを求めているのであれば、スポット相談ではなく顧問契約にしてしっかりと税理士に診てもらうのがベストだと考えます。

税理士へ記帳代行を依頼するベストなタイミングとは?

税理士へ依頼するベストなタイミングはいつになるのでしょうか?以下パターンをわけをして記載していきます。

法人設立のタイミング

まずは法人設立のタイミングです。法人税の申告書は個人の所得税の申告と異なり、作成の仕方がかなり複雑です。経営者ご自身でやるには難易度が高いため、税理士へ依頼することを前提に考えた方が良いです。そのため、会社摂理を検討する際が、税理士へ確定申告を依頼する良いタイミングと言えるでしょう。また以下の視点でも依頼をされたほうが良いと考えます。

まず一つ目が決算期の設定や各種定款の記載事項・資本金の設定の相談です。特に決算期は税務申告のタイミングに重要な影響を及ぼすため、慎重な検討が必要です。また資本金についても税金に大きな影響を与えるためいくらに設定すべきかは税理士と相談した方が良いかと思います。

また開業に生じた費用は税務上、創立費や開業費となり経費化することが可能です。どこまでの範囲が経費化できて、どのタイミングで経費にするのが良いのかは、経営者自信で考えるのは悩みどころだと思います。これを税理士に相談すればベストなタイミング含めてアドバイスもらえることでしょう。

ご自身で帳簿をつけられる場合には税理士から帳簿に関する指導を受けることができますし、領収書や請求書などの証憑類は保管が必要になってきますので、記録の仕方や保存の仕方含めて税理士からアドバイスを受けることができます。

さらに、シミュレーションを使ってそもそも会社設立をすべきなのか、個人事業主として続けるのが良いのかのアドバイスも税金の観点から受けることが可能なので、そもそも会社設立しても税制上はほとんどメリットがないケースというのもあるでしょう。

消費税の課税事業者になるタイミング

他には、年商が1000万円もしくはインボイス事業者になると消費税申告が必要になってきますが、この消費税申告は経理経験のない方にはかなりとっつきにくい内容になっているため、税理士でないとミスが発生する可能性があります。そのため、消費税申告を行うか否かは税理士へ依頼するタイミングの1つとなります。

その他

上記以外には、年商がある程度大きくなってきて、処理が複雑になってきた、もしくは節税も併せて検討したいなどのタイミングになるかと思います。年商が大きくなれば取引も大きいため、その分経理処理も複雑になってきます。ご自身で確定申告を対応されている場合はミスが増える可能性もあります。加えて節税も検討されることになると、税理士へ相談をした方が最適な処理を確認することができるでしょう。

記帳代行の丸投げを税理士へ依頼する方法

作業範囲を決める

税理士へ記帳代行を依頼する場合、まずは記帳する範囲を決めます。完全に丸投げする場合は税理士への証憑の送り方含め税理士と細かい調整を行う必要があります。

決算の頻度・タイミング

決算の頻度が月次で、かつ翌月の早いタイミングで出す場合は、その分だけ記帳代行料金が高くなる可能性があります。そのため、ご自身が必要な決算の頻度やどれぐらいのタイミングで必要かを検討する必要があります。

記帳代行で税理士を選ぶポイント

経営者が税理士を検討するためのポイントとして挙げられるものは、①税理士へ支払う費用、②税理士との相性・税理士の経験、③個人事業・法人を今後どれぐらい拡大していくか、④経営者自身で経理業務を行うかどうか、と思います。

税理士への記帳代行料金

①税理士へ支払う費用についてはわかりやすいですが、税理士に依頼することで確保できる時間や効果を勘案した際に、費用対効果があっているかどうかです。単純に数字的な効果だけでなく、税理士に任せているという安心感や本業に集中できるという時間確保の面もあるため、一概に数字面の費用対効果で考えるものではないかと思います。税理士の一般的は相場については後述します。

相性

②税理士との相性・税理士の経験、については中長期のおつきあいになるのである程度経営者の事業に対する理解があり、かつ経営者ご自身と相性の良い方を選んだ方が良いかと思います。相性は多くの税理士と面談して決めていくしかないかと思います。

事業計画

③個人事業・法人を今後どれぐらい拡大していくか、は①とも関係してきますが、現時点での業績だけで判断するのではなく今後事業を拡大予定であり、経理や税金周りの業務が複雑になることが見えているのであれば税理士へ依頼することも一案となります。

内製化の計画

④経営者自身で経理業務を行うか、については①の時間確保とも絡んできますが、税理士と契約しないということは経営者ご自身で確定申告書を作成・提出することになるため、それに必要な勉強を本業と並行して行うことになるということです。時間は有限のため、本業に集中して事業を拡大することを優先する方が、結果としては良いのではないかと思います。

記帳代行は税理士へ丸投げ可能か?

まず結論から行くと、丸投げ可能です。ただし前提があり、税理士が記帳や確定申告書を作成するにあたり、経営者へ様々な質問や資料・請求書などの証憑の提示を求めますが、それに誠実に対応されることです。まずこの対応が正しく行われない限り、正しい確定申告書が作成できませんので、せっかく税理士と契約したとしてもあまり意味がなくなってしまいます。特に無申告の場合、数年前の取引を思い出したり、書類を探さなけれなならないため、通常の税理士とのやり取りよりハードルが上がります。ですが、せっかくお金を払って依頼するのですから、しっかりと対応するようにしましょう。

また仮に税務調査が入る場合にも、税理士との密な連携は大変重要になってきます。税理士に任せているから全く何もしないし税理士ともコミュニケーションは取らないという状況ですと、税理士側も税務調査官に対して的確に回答が難しくなるケースもあるため、税務調査が行われ、かつ税理士が立会を行う場合には、事前にお互いしっかりとコミュニケーションをとり準備するようにしましょう。

税理士の記帳代行料金・顧問報酬に関する相場

税理士事務所における記帳代行料金を考える前に、税理士の報酬形態を大まかに説明したいと思います。顧問契約を締結する場合は、月額料金と決算時に決算料金(税務申告代金を含んでいることが多い)を請求される場合が多いです。顧問契約がない場合は月額料金はなく決算料金のみで請求されることになります。その他スポット相談や相続税などの顧問が不要で申告のみの場合も、1回のみ料金を請求されるパターンが多いかと思います。

上記の通り、税理士の月額というのは全体の報酬の中の一部を指しており、税理士へ支払う報酬全体で考えると月額だけでなく決算料金やスポット料金なども含めて考える必要があります。以降は、月額だけでなく税理士全体の報酬に焦点を当てて記載をしていきます。

税理士の相談料:価格が決まる要因

税理士の相談料ですが、統一的なものはなく、個々の事務所によって異なるのが実情です。ではどのような要因で値段が変わってくるのかですが、いくつか相談料を決定する要素があります。

まずそもそも税理士の相談料の体系ですが、月額の税務顧問料と年末の確定申告料金が基本料金としてあり、これに加えてオプション料金が加算される仕組みになっています。まず基本料金部分ですが、顧客の難易度や取引量によって異なってくることが多いです。どのようにこれを図るかというと、一番多くのパターンは業種と年商で値段を決めていることが多いです。例えば業種でいくと、物を取り扱わないサービス業よりも固定資産や在庫を抱える製造表の方が処理が複雑化するのと同時に取引量も増えるため、価格は上乗せされる傾向にあります。また年商についても一般的に同じ業種であれば年商が大きい方が取引量は多く、処理も複雑化し難易度が上がるため、価格は上乗せされる傾向にあります。

続いてオプションですが、例えば帳簿作成を行う記帳を税理士に代行してもらう場合は税務顧問と別途値段が加算されることが多いです(一般的には月額で支払)。また、確定申告以外の作業、例えば年末調整や償却資産税なども申告等を税理士へ依頼する場合には、追加で料金がかかることが一般的です。オプションについても価格の決まり方は基本料金と同じで、作業量が多くなってくると値段は上がりますし、取引の難易度が上がると値段は上がることになります。

また、基本料金に何が含まれているかについても税理士によって異なっておりまして、例えば税務関係の届出は基本料金の範囲に入っているが、資金調達や補助金のサポートなどは別途オプションとなるような場合です。必ず契約前には基本料金にはサービスとして何が含まれていて、何がオプションになるのかは確認された方が良いでしょう。

税理士の相談料:一般的な相場感

経営者が税理士へ依頼する際に、2つの方法があります。1つ目は、税務顧問として税理士と契約して1年を通して税務アドバイスをもらいながら、決算期末には決算書の作成と確定申告書の作成・提出を依頼する方法です(ケースによっては記帳代行も税理士へ依頼します)。2つ目は、決算申告のみを決算期末に税理士へ依頼する方法です。この場合、決算期末前の期中については税務アドバイスを税理士からもらうことはできず、決算申告のタイミングで併せて税理士と相談しながら確定申告を進めていくことになります。

決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用として、概ね20万円〜となるケースが多いように思います(年商や業種などによって最低料金は当然異なってきます)。もちろん、取引数や取引の複雑性によっても報酬金額は変わってくるため、必ず全ての方が20万円〜ということはないことにご留意ください。

仮に顧問契約で年間の契約を結んでいたとしても、一般的な税理士との契約では月額の顧問料報酬と、決算申告は別途料金が課されることが多いです(顧問料報酬の数ヶ月分ということが多いかと思います)。この場合、決算申告のみを依頼するよりも顧問契約している決算申告の方が安いことが多いです。月額顧問報酬についても、業種や年商、取引数などによって大きく異なりますが、概ね2〜3万円以上で決算申告料金が15万円〜という場合が多いように思われます。

業界が複雑な場合は取引やオペレーションが他の業種等と比較して複雑になる傾向になることから、上記の水準よりももう少し高くなることが予想されます。おすすめとしては、やはり顧問税理士契約を締結することにより定期的に税制面でのアドバイスを受けられるようにしておくことです。

上記に加えて相続税の相場についても解説します。概ね相続対象となる遺産総額の0.5~1%が税理士へ支払う値段だと考えると良いでしょう。ただし税理士の値段設定としては遺産総額の規模別に固定金額の料金を基本料金として設定しているところが多いようで、この基本料金も相続人の数や相続財産の複雑性などの難易度によって変わってきます。

以上述べてきたもの以外に、税理士へのスポット有料相談というものあります。これは、顧客から税務に関して質問したいことを、1時間いくら、という形式で税理士に支払い相談にのってもらうものです。30分5,000円〜1時間1万円が相場としては一般的なように思います。

税理士の相談料:その他

上記以外に値段の考え方として、①初回面談料金、②時間単価チャージ制度、③成功報酬、④コンサルティングフィー、などがあります。①については初回面談は無料なことが多いですが相談の内容によっては有料になるケースもありますので、事前に確認をしておくようにしましょう。②については一般的にはあまり発生しないかと思いますが、顧客が大手だったりすると時間単価でいくら、と設定してこれに稼働した時間をかけて請求する時間単価制というものがあります。③の成功報酬は例えば税理士が介在することで節税できた部分に対して一定割合を成功報酬として支払うパターンです。この場合でも固定で支払う部分と成功報酬で支払う部分の2つに分かれているケースもあります。④については、具体的に法人化の支援やM&A/事業承継、経営相談、資金調達・補助金サポートが挙げられます。内容によって固定金額だったり成功報酬だったりします。

税理士の記帳代行料金

今回のテーマになっている記帳代行料金についてはどうでしょうか?一般的には仕訳の数によって値段が変動することが多いかと思います。例えば50仕訳までで月額10,000円〜、以降は50仕訳ごとに+月額10,000円などの料金体系を取っていることが多いです。

地域や業種によってもこの値段は変動します。例えば業種で行くと、海外が絡むような取引が多い業種であれば英語対応が必要になってくるので、例えば50仕訳までで月額20,000円〜など、通常の料金よりも記帳代行料金が加算されることが多いかと思います。

記帳代行の支払料金は経費にできるのか?

記帳代行サービスを税理士へ依頼する場合、その支払った報酬は経費にできるのでしょうか?結論は経費にすることが可能です。税理士から入手する請求書を保管するのと当時に、個人の税理士の場合は源泉徴収が必要になってくるため、支払い金額に留意すると共に、源泉徴収の納付を忘れないようにしましょう。また、税理士報酬についてはしっかりと記帳において仕訳をおこなって帳簿に記録する必要があります。源泉徴収の有無によって仕訳の仕方も変わってくるため、仕訳を行う際には税理士へ相談するようにしましょう。

記帳代行以外で税理士に相談できること

そもそも税理士と契約することによって、税理士を探されている方々は、どのようなサービスを受けることができるのでしょうか?

確定申告・税務顧問・記帳サービス

まずは確定申告です。これは、原則年1回、税務署へ提出する税額を計算した書類になります。個人で開業されている方含めて提出が必要になります。税理士と聞くとまずはこの確定申告の代行を想像される方が多いのではないかと思います。確定申告は確定申告書類を作成するのみならず、その土台となる帳簿の作成や年間の数字結果を示した貸借対照表や損益計算書(併せて決算書)を作成する必要がありまして、全て確定申告書作成に必要な基礎的な書類となります。帳簿や決算書についても税理士へ依頼することが可能です。納税に関する予測データを依頼することもあります。

また、確定申告と併せて月次の税務顧問や記帳サービス(実際に税理士側で記帳する場合と、顧客側で記帳したものを税理士側でレビューする記帳支援の2つがある)があります。税務顧問は確定申告に向けて、毎月顧客から税務に関連する相談を税理士にできるサービスになります。確定申告のみの依頼の場合は、決算以外のタイミングで発生した税務に関連する相談を税理士に適宜できなかったりとさまざまな制約が発生することが多いので、税務顧問とセットで確定申告を税理士に依頼するパターンもあります。

また記帳代行に関しては、日々の帳簿作成を行うもので、経営者がご自身で対応されるパターンと、税理士側が記帳代行という形で対応するパターンに分かれます。当然記帳代行に関する料金が発生するため、料金と労力の見合いで税理士へ記帳代行を依頼するかどうかを判断することになりますが、最近はクラウド会計も普及してきており、ITが得意な経営者はクレジットカードや銀行口座を連携して記帳はご自身で対応し、記帳支援という形で税理士にチェックをしてもらうパターンも増えてきているように思います。

会社設立・起業支援

会社設立や開業前から実際の会社設立・開業を税理士が支援するパターンもあります。会社設立・開業においては、資金調達のニーズや会社設立手続きそのもののニーズ、各種税務に関する届出のサポートなど、サポート範囲が多岐に及びます。税理士だけでは対応できない部分もあるため、司法書士や行政書士、社会保険労務士などさまざまな士業と連携しながらサービスを提供しています。

月次決算

毎月の損益の状況を把握し、経営として問題ないかどうかを確認するために、月次決算書というものを使うことがあります。確定申告書と異なり必ず作成しなくてはならないものではありませんが、経営の状況をリアルタイムで把握するためには必要なものになります。この月次決算についても税理士に依頼することが可能です。月次試算表という言葉で呼んだりすることもあります。

経理アウトソーシング

帳簿作成や月次決算も経理業務ではありますが、経理全体の中の一部の業務になります。経理業務はそのほかに、請求している金額の入金処理や支払処理、その他給与計算など、お金に関するあらゆる業務があります。経営していると、この辺りの重要だけど本業ではない業務に時間を取られることが多いかと思いますが、このような業務を税理士へ委託することができます。

クラウド会計導入支援

税理士はクラウドソフトを使って顧客へサービスを提供することが多いため、顧客自身が自らクラウドソフトを入れたいというニーズにも応えることが可能です。特に経営者ご自身で数字はしっかり管理したいからクラウド会計ソフトを導入したいという場合、システム会社だと会計や税金の細かいルール設定まで対応できないケースがあるため、税理士にサポートを依頼するケースもあります。

管理会計の導入

月次決算とも関係してきますが、財務データを分析して経営に役立てたいなどのニーズがあるかと思います。このように経営の分析に役立つ数字を作成して管理することを管理会計と呼んだりしますが、この導入支援を税理士へ依頼するケースもあります。

相続申告や事業承継の検討

経営が安定してきて将来はご子息に相続というケースで、事業承継を考えることになるかと思います。相続や贈与・事業承継については税金の問題が大きく影響を与えるため、税理士の関与はかなり重要だと言えます。また事業承継の一つのやり方としてM&Aで他の経営者への売却等も可能性としてはあるかと思いますので、この辺りも税理士のサポート領域となります。

また事業承継までなかったとしても相続税というものは発生しますので、相続対策が重要になります。相続・贈与の仕方によって税金の発生金額が異なってくるのと、税制は非常に複雑なので、税理士を活用して節税を実現する経営者も増えてきているように思います。

その他:税務調査対応・セミナー・事業計画作成支援など

上記以外の業務として、税務調査の対応(税務調査の立ち合い)から、税金に関するセミナーの提供、補助金などで必要になってくる事業計画の作成支援など、さまざまなサービスを税理士は展開しております。制度対応として、認定支援機関となっている税理士もあります。

その他社会保険労務士や行政書士、司法書士などの資格を持っている税理士であれば、給与計算や労務に関する各種届出のサポート、もしくは許認可申請・登記申請サポートなど、税務にとどまらず、幅広いサービスを展開しております。経営に強い税理士であれば税務のみならず数字面を切り口にした経営コンサルティングを提供している場合もあるでしょう。

まとめ

以上、税理士へ記帳代行を丸投げする際の検討ポイントについて記載をしてきました。皆様もこちらの記事を参考に、税理士探しにお役立てしてください。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。