個人事業主や法人経営者として事業を運営していく上で、避けて通れないのが「税金」の問題です。日々の取引を記録し、法律に基づいて利益を計算し、年に一度、申告と納税を行う。この一連の税務会計プロセスは、事業を継続する上で不可欠な義務です。
しかし、多くの経営者の本音は、「面倒な経理作業よりも、本業であるビジネスに集中したい」というものでしょう。日々の売上管理や経費精算、領収書の山に頭を悩ませ、確定申告の時期が近づくと憂鬱になる。そんな経験は、誰しもあるはずです。
この煩雑な経理業務を、専門家が代わりに行ってくれるサービスが「記帳代行」です。記帳代行を活用することは、経営者が本来集中すべきコア業務にリソースを割くための、重要な経営判断となり得ます。
しかし、記帳代行を依頼すると言っても、「どこに頼めば良いのか」「費用はいくらかかるのか」「丸投げしてしまって大丈夫なのか」といった疑問や不安がつきまといます。料金の安さだけで選んでしまい、サービスの質が低かったり、結局税務申告で困ってしまったりするケースも少なくありません。
この記事では、記帳代行の基本的な知識から、料金相場、依頼するメリット、そして最適な依頼先である税理士の探し方までを、網羅的かつ徹底的に解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたは記帳代行の価値を深く理解し、自社にとって最適な選択をするための、確かな知識を手にしているはずです。
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記帳代行料金の相場は?依頼によるメリットなど徹底解説
記帳の目的
記帳代行を理解する前に、まず、なぜ「記帳」そのものが重要なのか、その目的を再確認する必要があります。記帳とは、単なるルーチン作業ではなく、経営の根幹を成す、以下の三つの重要な目的を持った活動です。
正確な税務申告のため
記帳の最も基本的かつ法的な目的は、正確な税務申告を行うためです。 事業で得た所得(儲け)に対しては、所得税や法人税、消費税などを納める義務があります。その税額を計算する大前提となるのが、日々の取引を記録した帳簿です。この帳簿がなければ、税務署に提出する決算書や申告書を作成することができません。
特に、個人事業主が大きな節税メリットである「青色申告特別控除(最大65万円)」を受けるためには、正規の簿記の原則(複式簿記)に従った正確な記帳が、法律で義務付けられています。記帳は、適正な納税と、節税のメリット享受の、両方のスタートラインなのです。
経営状況の把握のため
記帳のもう一つの重要な目的は、自社の経営状況をリアルタイムで把握することです。 正確な帳簿がなければ、「今月はどれだけ儲かったのか」「何に経費を使いすぎているのか」「手元の資金はあとどれくらい持つのか」といった、経営判断に不可欠な情報を、客観的に把握できません。
記帳によって作成される試算表(月次の成績表)や決算書は、経営者にとっての「羅針盤」です。この羅針盤なしに、感覚だけで事業という航海に出るのは、非常に危険です。記帳は、データに基づいた的確な経営判断(データドリブン経営)の基礎となります。
金融機関の信用獲得のため
事業を成長させる上では、金融機関からの融資(資金調達)が必要になる場面が、必ず訪れます。 金融機関が融資を審査する際に、最も重視するのが「決算書」や「試算表」です。日頃から正確な記帳が行われ、信頼性の高い財務資料を迅速に提出できる企業は、金融機関からの信用も高まります。「数字で経営状況をきちんと説明できる会社」と「どんぶり勘定で説明できない会社」では、融資の可否や条件に、天と地ほどの差が出ます。記帳は、社会的な信用を獲得するための基礎でもあるのです。
記帳代行とは何か?
記帳代行とは、その名の通り、事業者(経営者)が行うべき会計帳簿の作成(記帳)を、本人に代わって、専門家が代行するサービスを指します。
具体的なサービス内容
記帳代行の基本的な流れは、以下のようになります。 経営者は、日々の事業活動で発生した資料、具体的には、領収書、請求書(売上・仕入とも)、銀行の預金通帳のコピー(またはクラウド連携データ)、クレジットカードの利用明細などを、一定期間分(通常は1ヶ月分)まとめて、依頼先に送付します。
依頼先は、それらの「原始資料」を基に、会計ソフトへ仕訳データを入力し、総勘定元帳や、月次試算表といった会計帳簿を作成し、経営者に報告します。
どこまでを「代行」と呼ぶか
「記帳代行」という言葉が指すサービス範囲は、依頼先によって異なります。
会計ソフトへの入力作業
最も基本的な定義は、会計ソフトへの「データ入力」作業そのものです。預かった資料を、簿記のルールに従って、淡々と入力していく作業です。
領収書の整理・ファイリング
入力の前段階である、バラバラの領収書を日付順に並べたり、台紙に貼り付けたりする「整理・ファイリング」業務から請け負う場合もあります。当然、作業工数が増えるため、料金は高くなります。
振込代行・請求書発行
さらに踏み込んで、経理業務全般を代行するサービスもあります。従業員の給与計算、取引先への振込代行、顧客への請求書発行までを請け負う、いわば「経理部門の完全なアウトソーシング」です。
税理士に依頼する場合の「記帳代行」は、一般的に「会計ソフトへの入力」と、その結果である「試算表の作成」までを指すことが多いです。請求書発行や振込代行は、オプションサービスとしている事務所がほとんどです。
記帳代行を依頼できる先
記帳代行サービスを提供している事業者は、いくつかあります。それぞれ特徴が異なるため、自社のニーズに合わせて選ぶ必要があります。
税理士・会計事務所
最も代表的で、推奨される依頼先が、税理士や会計事務所です。 税理士は、税務の独占専門家であるため、記帳代行から、その先の決算申告、税務相談、節税対策までを、ワンストップで依頼できるのが最大の強みです。単なる入力作業だけでなく、その仕訳が税務上問題ないか(経費として認められるかなど)をプロの目で判断しながら処理してくれるため、申告時の安心感が全く違います。
記帳代行専門会社
税理士事務所とは異なり、税務申告や税務相談は行わず、記帳代行という「作業」そのものに特化した会社です。 税理士事務所よりも安価な料金設定であることが多く、「とにかくコストを抑えて、入力作業だけを外注したい」というニーズに適しています。ただし、作成された帳簿を基にした税務申告は、別途税理士に依頼する必要がある(あるいは、提携税理士への取次のみ)ため、二度手間になる可能性もあります。
オンライン(クラウドソーシング)
近年は、クラウドソーシングサイトなどを通じて、フリーランスの経理経験者や、簿記資格保有者に、個別に記帳代行を依頼する方法もあります。 費用は最も安く抑えられる可能性がありますが、個人のスキルや信頼性に大きく依存します。特に、会社の財務情報という機密性の高いデータを扱うため、セキュリティ面でのリスク管理(契約書の締結など)が不可欠であり、品質の担保も難しいため、慎重な判断が必要です。
商工会議所・青色申告会
地域の商工会議所や青色申告会でも、会員向けサービスの一環として、記帳指導や安価な記帳代行サービスを提供している場合があります。個人事業主や小規模事業者にとっては、身近な相談先の一つとなります。
記帳代行料の相場
経営者が最も気になるのが、「記帳代行料の相場」でしょう。前述の通り、税理士報酬は自由化されているため、事務所によって価格設定は様々ですが、一定の目安は存在します。
記帳代行料の一般的な考え方
記帳代行料は、基本的に「作業量」に応じて変動します。その作業量を測る指標として、最も一般的に使われるのが「仕訳数(しわけすう)」です。 「仕訳」とは、簿記のルールに基づいた取引の記録単位のことで、領収書1枚や、通帳の1行が、1仕訳(あるいは数仕訳)に相当すると考えられます。 「1仕訳あたり〇〇円(例:50円~100円)」という従量課金制の事務所もありますが、多くの場合は、「月100仕訳までなら、月額〇〇円」といったように、仕訳数に応じた段階的な月額料金が設定されています。
個人事業主の費用相場
個人事業主が、記帳代行を税理士に依頼する場合の「月額」の相場です。(決算申告料は別途)
- 月50仕訳未満(売上規模小): 月額 8,000円 ~ 1万5,000円程度
- 月50~100仕訳程度(一般的): 月額 1万円 ~ 2万円程度
- 月100~200仕訳程度: 月額 1万5,000円 ~ 3万円程度
- 月200仕訳以上: 月額 3万円以上(個別見積もり)
法人の費用相場
法人は、個人事業主よりも会計処理が複雑(複式簿記が必須)であり、消費税申告の論点も絡むため、一般的に相場は高くなります。(決算申告料は別途)
- 月100仕訳未満(創業期など): 月額 1万5,000円 ~ 2万5,000円程度
- 月100~300仕訳程度: 月額 2万円 ~ 4万円程度
- 月300仕訳以上: 月額 4万円以上(個別見積もり)
注意点:顧問料と記帳代行料の関係
税理士に依頼する場合、この「記帳代行料」が、「月額顧問料」に含まれているのか、別途発生するのかを、必ず確認する必要があります。 「月額顧問料1万円」と安価に見えても、それは記帳を自分で行う「自計化」が前提のプランであり、記帳代行を頼むと「記帳代行料2万円」が追加され、結局月額3万円になる、というケースは非常に多いです。
「記帳代行料込みで月額いくらか」を明確に確認することが重要です。
記帳代行の契約形態と料金が変動する理由
同じ記帳代行でも、契約形態や依頼内容によって、料金は大きく変動します。その主な要因を解説します。
契約形態:スポット契約 vs 顧問契約
記帳代行の依頼には、大きく分けて二つの契約形態があります。
スポット契約(決算申告パック)
日々の記帳は行わず、年に一度、決算期が近づいてから、「一年分の領収書をまとめて渡す」という形態です。これは、「記帳代行+決算申告」のスポット契約となります。 税理士にとっては、一年分の作業が一時期に集中するため、負担が大きく、料金は割高になる傾向があります。個人事業主で15万円~30万円、法人の場合で25万円~40万円程度が相場となることが多いです。また、期中の経営アドバイスは一切受けられません。
顧問契約(月次)
毎月資料を提出し、月単位で記帳と試算表の作成を行ってもらう形態です。これが、一般的な顧問契約における記帳代行です。 税理士側も作業を平準化できるため、スポット契約よりも年間のトータルコストは安くなることが多いです。何よりも、経営者が毎月、経営状況を把握できるメリットがあります。
料金が変動する主な要因
月額の記帳代行料が変動する主な理由は、以下の通りです。
取引量(仕訳数)
前述の通り、これが最大の変動要因です。仕訳数が多ければ多いほど、入力の手間がかかるため、料金は高くなります。
訪問の有無(オンライン完結)
税理士に毎月訪問してもらい、対面で資料を渡したり、報告を受けたりする契約は、税理士の移動コストや拘束時間がかかるため、料金は高くなります。 資料の受け渡しを郵送やクラウドストレージで行い、報告もZoomなどのオンライン面談で完結させる「非対面型」のプランは、料金を安く設定している事務所が増えています。
資料の整理状況
これが意外な落とし穴です。領収書を日付順にきれいにファイリングして渡す場合と、ぐちゃぐちゃのままビニール袋で渡す場合とでは、税理士側の整理の手間が全く異なります。 資料の整理状況が悪いと、「資料整理料」として別途追加料金を請求されるか、記帳代行料そのものが高く設定される原因となります。
クラウド会計の活用度
最近の主流は、クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワード クラウド)の活用です。銀行口座やクレジットカードを連携させる(API連携)ことで、取引データが自動で取り込まれ、記帳作業のかなりの部分が自動化されます。 このクラウド会計を前提とした記帳代行プランは、従来の入力作業よりも安価に設定されていることが多いです。
業種の特殊性
飲食業(レジの締め作業が複雑)、建設業(現場ごとの原価管理が必要)、医療(保険診療と自由診療の区分)など、業種特有の複雑な経理処理が必要な場合、一般的な記帳代行料よりも高く設定されることがあります。
記帳代行を外部へ依頼する際に気をつけるべき点
記帳代行はメリットが大きい反面、会社の重要な内部情報を外部に預ける行為でもあります。依頼する際には、いくつかの点に注意が必要です。
情報漏洩のリスク
領収書や通帳コピーといった資料は、会社の取引情報や経営者の個人情報が詰まった、機密情報の塊です。 依頼先が信頼できるか、プライバシーマーク(Pマーク)の取得など、個人情報の管理体制がしっかりしているかを確認する必要があります。特に、安価な海外の事業者や、個人のフリーランスに依頼する場合は、セキュリティ体制を厳しくチェックすべきです。
コミュニケーションの齟齬(そご)
記帳作業中、「この領収書の使い道は?」「この入金は売上か?」といった不明点が、必ず発生します。 こうした疑問点に対して、迅速かつ円滑にコミュニケーション(電話、メール、チャットなど)が取れる体制でないと、記帳作業がストップしてしまい、月次決算が遅れる原因となります。
経営感覚の欠如(丸投げの弊害)
記帳代行を依頼し、経理作業から完全に解放されると、経営者自身が、自社の数字に全く無関心になってしまうリスクがあります。 「税理士に任せているから大丈夫」と、試算表や決算書に一切目を通さなくなると、経営判断の感覚が鈍り、資金繰りの悪化や業績不振の兆候を見逃すことにも繋がりかねません。 記帳代行はあくまで「作業」の代行であり、最終的な「経営判断」は経営者の責任である、という意識を失ってはいけません。
記帳代行は税理士がオススメな理由
記帳代行を依頼できる先はいくつかありますが、なぜ税理士(会計事務所)が最も推奨されるのでしょうか。それには、明確な理由があります。
税務の専門家としての信頼性と正確性
記帳は、税務申告の基礎となる作業です。税理士は、税法のプロフェッショナルであり、どの支出が経費として認められ、どの勘定科目で処理すべきかを熟知しています。 単なる入力作業者(記帳代行専門会社やフリーランス)とは異なり、税務調査を常に見据えた「正確な」記帳を行ってくれるため、申告書の信頼性が根本的に異なります。また、税理士には法律で厳格な「守秘義務」が課せられており、情報漏洩のリスクも最小限に抑えられます。
決算申告までワンストップ
記帳代行専門会社に依頼した場合、作成された帳簿を基に、結局、決算申告は別途税理士に依頼する必要があります。これでは、二度手間であり、コストも割高になる可能性があります。 最初から税理士に依頼しておけば、日々の記帳から、年に一度の決算申告、そして税務署への提出まで、全てのプロセスをワンストップで、シームレスに任せることができます。
節税アドバイスの付加価値
記帳代行専門会社は、入力作業は行いますが、「こうした方が節税になりますよ」といった税務アドバイスを行うことは、法律上(税理士法)できません。 税理士に依頼すれば、記帳を通じてあなたの事業の状況を把握した上で、「この特例が使えそうです」「こういう経費計上が漏れています」といった、節税に繋がる付加価値の高いアドバイスを、日常的に受けることができます。
税務調査の安心感
万が一、税務調査が入った場合、記帳代行専門会社は対応してくれません。 税理士に記帳代行から依頼していれば、その税理士が「私がこの帳簿を作成しました」と、責任を持って調査に立ち会い、あなたの代理人として、調査官の質問に堂々と対応してくれます。この安心感は、他の依頼先では得られない、税理士ならではの最大のメリットです。
こんな人は記帳代行を税理士へ依頼した方がよい
記帳代行を税理士に依頼することのメリットは大きいですが、特に以下のような状況にある経営者や個人事業主は、積極的に検討すべきです。
本業が多忙で経理に手が回らない経営者
これが、最も典型的なケースです。経営者の時間は有限です。「経理作業に時間を取られて、売上を上げるための営業活動ができない」のでは、本末転倒です。あなたの時給がいくらであるかを考えた時、その時間で生み出せるはずの利益と、記帳代行料を比較し、合理的な判断を下すべきです。
簿記や会計の知識が全くない人
「簿記のことは、さっぱり分からない」「数字を見るだけで頭が痛くなる」。こうした方々が、無理に自分で記帳を行うと、多大な時間がかかる上に、間違いだらけの帳簿が出来上がる可能性が高いです。 苦手なことは潔く専門家に任せ、自らは得意な分野で価値を発揮することに集中する。これは、非常に賢明な経営判断です。
経理担当者を雇うほどの余裕はないが作業からは解放されたい
事業規模が大きくなり、経理作業は増えたが、専任の経理スタッフを一人雇用するほどの余裕(人件費や社会保険料の負担)はまだない。 このような「中規模」の事業者にとって、記帳代行は、経理担当者を一人雇うよりも、はるかに安価なコストで、プロフェッショナルの経理機能を手に入れることができる、費用対効果の非常に高い選択肢となります。
正確な経営状況を把握したいが自分でやるのは不安
「自分で会計ソフトに入力してみたが、この処理で本当に合っているのか、自信がない」。間違った数字を基に経営判断を下すのは危険です。 税理士に記帳(または記帳レビュー)を依頼することで、毎月、専門家のお墨付きを得た、信頼できる経営データ(試算表)を手に入れることができます。
記帳代行を税理士へ依頼するタイミング
「いつから税理士に記帳代行を頼むべきか」。その最適なタイミングは、事業のステージによって異なります。
事業の開始(開業・法人設立)時
これが、最も理想的なタイミングです。 事業をスタートする際、開業届や青色申告承認申請書といった税務署への届出と同時に、税理士と契約し、記帳のルールを最初から決めてしまうのが、最も効率的です。 特に、創業融資を受ける場合は、事業計画書の作成支援も併せて依頼できるため、スタートダッシュを成功させるためにも、開業時の依頼を強くお勧めします。
経理作業が「負担」になった時
開業当初は自分で記帳していたが、事業が軌道に乗り、本業が忙しくなるにつれて、領収書が溜まりがちになってきた。「経理作業が、楽しい本業の時間を奪うストレスになっている」。そう感じ始めた時が、依頼する絶好のタイミングです。
売上が1000万円を超えそうな時
個人事業主の場合、年間の課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納税義務が発生します。 消費税の申告は非常に複雑であり、記帳の精度もより高く求められます。「1,000万円の壁」が見えてきたタイミングで、税理士に相談し、記帳代行も含めたサポートを依頼するのが賢明です。
決算期が近づく前
「今年は忙しくて、一年分の記帳が手つかずだ」。そう気づいたのが、決算期(個人の場合は12月)であれば、すぐにでも税理士に相談すべきです。 期限ギリギリ(2月や3月)になると、「特急料金」がかかったり、依頼自体を断られたりする可能性があります。手遅れになる前に、早めに相談しましょう。
記帳代行に対応できる税理士を探す方法
記帳代行は、多くの税理士事務所が提供する基本的なサービスですが、その品質や料金、スタイルは様々です。自社に合ったパートナーを見つけるための、具体的な探し方を紹介します。
インターネット検索
「記帳代行 税理士 〇〇(地域名)」「クラウド会計 記帳代行」「〇〇(業種名) 記帳代行」といったキーワードで検索します。 特に、「クラウド会計(freee, MF)に完全対応」「記帳代行料 月額〇〇円から」といった、記帳代行サービスを前面に打ち出している事務所は、効率的な業務フローを持っている可能性が高いです。
税理士紹介サービス
「記帳代行を、予算月額〇〇円でお願いしたい」「クラウド会計に強く、レスポンスの速い税理士を」といった具体的な要望を、専門のコーディネーターに伝えることで、あなたのニーズに合った税理士事務所を、複数、無料で紹介してもらえます。
知人・同業者からの紹介
既に税理士に記帳代行を依頼している、同業の経営者仲間からの紹介は、信頼性が高いです。「あの事務所は、資料を送るだけで全部やってくれるから楽だ」といった、リアルな評判を聞くことができます。
記帳代行に対応できる税理士を選ぶポイント
候補となる税理士と面談する際には、料金の安さだけでなく、以下のポイントを総合的にチェックし、長期的な関係を築けるかを見極めましょう。
記帳代行の料金体系の明確さ
これが非常に重要です。「月額顧問料」と「記帳代行料」の関係が明確か。「記帳代行料」は、何(仕訳数、取引量など)を基準に、いくらなのか。 「領収書100枚までは月額〇〇円、超えたら1枚〇〇円」といったように、料金体系が具体的で、透明性が高い事務所を選びましょう。
クラウド会計への対応力
現代の効率的な記帳代行は、クラウド会計ソフトの活用が前提です。 税理士が、freeeやマネーフォワード クラウドといった主要なソフトに精通しているか。銀行口座やクレジットカードとのAPI連携を、積極的に推奨・サポートしてくれるか。 旧来の事務所指定の会計ソフトや、紙ベースのやり取りに固執する事務所は、業務効率が悪く、料金も割高になる可能性があります。
コミュニケーションの手段と頻度
記帳代行を依頼すると、日々のやり取りは、資料の受け渡しや、不明点の確認が中心になります。 「資料の受け渡しは、郵送か、スキャンデータか、クラウドストレージか」「不明点の質問は、電話か、メールか、チャットツールか」。 あなたの希望するコミュニケーションスタイル(例:スピーディーなチャット対応を希望)と、税理士のスタイルが合っているかを確認しましょう。
サービス範囲(付加価値)の確認
「記帳代行料」だけで契約した場合、税理士からの積極的なアドバイスは期待できないかもしれません。 「記帳代行料」と「月額顧問料」がセットになっているプランであれば、「記帳」だけでなく、「月次報告」や「経営相談」「節税相談」が、どこまで含まれているのかを、明確に確認することが重要です。
記帳代行に関してよくある質問の例と回答
ここでは、記帳代行を税理士に依頼する際によくある疑問と、その回答をまとめました。
Q1. 領収書を丸投げするだけで、本当に大丈夫ですか?
A1. はい、大丈夫です。それが「記帳代行(丸投げ)」サービスです。ただし、経営者として最低限行っていただく作業があります。それは、「全ての領収書や請求書、通帳のコピーなどを、漏れなく税理士に渡す」ことです。 また、税理士から「この領収書は、何に使ったものですか?」と質問が来た際には、誠実に回答する必要があります。これさえ守っていただければ、後の会計処理と帳簿作成は、全て専門家である税理士が責任を持って行います。
Q2. 記帳代行と自計化(レビュー)は、どちらが良いですか?
A2. これは、あなたの「時間」と「コスト」の、どちらを優先するかによります。
- **記帳代行(丸投げ)**は、費用は高くなりますが、あなたの時間を一切奪いません。本業に100%集中したい方に向いています。
- **自計化(レビュー)**は、月額費用を安く抑えられ、自社でリアルタイムに数字を把握できるメリットがあります。ただし、**ご自身で入力する手間(時間)**が発生します。 どちらが良いかは、あなたの事業ステージや性格によりますので、税理士と相談して決めるのが良いでしょう。
Q3. 顧問契約と記帳代行は、別物ですか?
A3. はい、別物として考えた方が明確です。
- 顧問契約: 毎月の税務相談や、会計データのチェック(レビュー)、経営アドバイスに対する報酬です。
- 記帳代行: 会計ソフトへの「入力作業」そのものに対する報酬です。 事務所によっては、これらを「月額顧問料(記帳代行料込み)」として、一つのパッケージにしている場合もあります。見積もりを見る際は、どこまでの作業が含まれているのかを、必ず確認してください。
Q4. 料金を安く抑える方法はありますか?
A4. あります。
- 自計化する: 記帳代行を頼まず、自分でクラウド会計ソフトに入力する。
- 資料を整理する: 領収書を日付順にきれいに貼り、通帳のコピーも用意するなど、税理士の作業負担を減らす。
- オンライン完結にする: 訪問(対面)を求めず、やり取りをチャットやZoomに限定する。 これらの工夫で、費用は抑えられる可能性が高いです。
まとめ
記帳代行。それは、多くの経営者が抱える「面倒な経理作業」という悩みから解放され、事業の成長に不可欠な「時間」を生み出すための、極めて有効な手段です。
この記事では、記帳代行の費用相場がどのように決まるのか、そしてその依頼先としてなぜ税理士が最適なのかについて、詳しく解説してきました。
記帳代行の費用は、仕訳数、記帳のレベル、訪問の有無など、多くの要因によって変動します。しかし、提示された金額の「安さ」だけで判断してはいけません。 記帳代行を、税務の専門家である税理士に依頼する真の価値は、単なる入力作業の代行に留まらない、「申告の正確性(税務リスクの回避)」、「節税アドバイス(キャッシュフローの最大化)」、そして「決算申告までのワンストップ対応」という、計り知れない付加価値にあります。
税理士に支払う記帳代行料は、コストではなく、あなたの貴重な時間を本業に取り戻し、事業の健全な成長をサポートするための、戦略的な「投資」です。
この記事が、あなたの税理士選び、そして記帳代行という選択肢を検討する上での、確かな羅針盤となり、あなたの事業が輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば、幸いです。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
