本記事では、クリニックや医院の事業承継について、事業承継を行うためにはどのように進めていけば良いのか、事業承継を円滑に進めるためのポイントは、事業承継を行うためでの第3者譲渡とは、などについて解説を行なっていきます。本記事をご覧いただくことで、クリニック・医院の事業承継の基礎知識を学ぶことができます。
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クリニック・医院の事業承継についてポイントを徹底解説
- クリニック・医院の事業承継とは何か?
- クリニック・医院の事業承継の現状とは?
- クリニック・医院の事業承継の方法について
- クリニック・医院の事業承継の手続きや流れ
- クリニック・医院の事業承継のポイント
- クリニック・医院の事業承継は専門家に依頼すべきか?
- クリニック・医院の事業承継を専門家へ依頼するメリット
- クリニック・医院の事業承継を専門家へ依頼するデメリット
- クリニック・医院の事業承継を依頼できる専門家の種類
- クリニック・医院の事業承継を依頼できる専門家の費用相場
- クリニック・医院の事業承継を専門家に依頼する際の注意点
- クリニック・医院の事業承継を専門家に依頼した方が良いケース
- クリニック・医院の事業承継の開設形態により異なるポイント
- まとめ:クリニック・医院の事業承継のポイント総括
クリニック・医院の事業承継とは何か?
医療機関の特性を踏まえた事業承継の重要性
一般企業の事業承継と異なり、クリニックや医院といった医療機関の事業承継は、医療法や税法、地域医療への貢献度、保健医療制度など、複雑な法的・制度的な背景の上に成り立っています。単なる「経営者の交代」や「後継者への譲渡」という枠を超えて、患者の継続的な医療の提供や、従業員の雇用維持、地域社会との関係性を保ちながら、慎重かつ戦略的に進めていく必要があります。
また、医療機関は開業医一人に依存するケースが多いため、院長の健康問題や高齢化などが直接経営に影響を与えやすいという特徴があります。こうした状況を踏まえると、事業承継は突発的な事態が起こる前に計画的に準備しておくことが求められるのです。
事業承継の定義とその範囲
クリニック・医院における事業承継とは、現経営者である院長が、診療所の運営権・医療設備・不動産・患者基盤・スタッフ・ノウハウといった経営資源を後継者に引き継ぐプロセスを指します。これには以下のようなさまざまな資産と権利義務が含まれます。
- 診療報酬請求に関する権利
- 医療機器・備品の使用権
- スタッフとの雇用関係
- 医療法人格(法人化している場合)
- 地域医療との連携体制
- 開設許可、施設基準等の行政的認可の引き継ぎ
事業承継は、後継者が親族である場合もあれば、医療法人内の勤務医、またはまったくの第三者であるケースもあります。承継方法によって手続きや税務対応、リスクも異なってくるため、個別性の高い計画が必要です。
経営の継続性と医療の質の確保
事業承継で最も重要視されるべきは、「経営の継続性」と「医療の質の維持」です。承継が不透明であると、患者や地域住民の信頼を損ね、通院離れが発生する可能性があります。また、スタッフも将来に不安を感じて離職する可能性があるため、承継の意図や方針はできるだけ早期に共有することが望ましいです。
このように、事業承継とは単に資産を引き継ぐだけではなく、地域に根ざした医療提供体制を崩さずに次世代にバトンを渡す重要な社会的責任を伴ったプロジェクトなのです。
クリニック・医院の事業承継の現状とは?
日本の医療業界が抱える後継者問題
日本全国で診療所やクリニックの経営者が高齢化を迎えつつあります。厚生労働省の統計によると、診療所を開設・運営している医師の約3割以上が60歳を超えており、今後10〜15年の間に多くのクリニックが「事業承継か閉院か」という選択を迫られると予想されています。この現象は都市部だけでなく、特に地方の医療提供体制において深刻であり、地域医療の空洞化が懸念されています。
事業承継が進まない要因
クリニックや医院の事業承継がスムーズに進まない理由はいくつかあります。
第一に、後継者となる人材が確保できないことが大きな障壁となっています。医師資格を持つ子どもがいるケースでも、必ずしも親の医院を継ぐことを希望するとは限らず、勤務医としてのキャリアを選ぶ場合や、別の地域で開業を志向する場合も少なくありません。
第二に、クリニックの財務状況や設備の老朽化、患者数の減少など、事業そのものの魅力が低下していることも影響しています。買い手側から見れば、将来的な収益性が見込めない医院に対して積極的に事業承継を希望するモチベーションは低くなります。
第三に、経営者自身が承継に対する意識を持たず、計画的に準備を進めていないという現実があります。「まだ元気だから大丈夫」と考えているうちに体調を崩し、急な閉院に追い込まれるケースも存在します。
承継支援制度やマッチングサービスの普及
こうした状況を受け、国や自治体、また民間企業による支援体制が徐々に整備されつつあります。特に医療特化型のM&A支援会社や、クリニック専門のマッチングサービスが拡充しており、第三者承継が現実的な選択肢として認知され始めています。
さらに、税理士・会計士・医療経営コンサルタント・弁護士などの専門家による包括的な支援も拡大しており、「医療法人化のサポート」「相続税対策」「不動産の名義変更」「スタッフの雇用継続支援」など、各分野で実践的なノウハウが蓄積されています。
地域格差と後継者不在問題の深刻さ
都市部では承継先候補が比較的見つかりやすい一方、地方では医師の絶対数が少なく、後継者が見つからないまま閉院に至る事例も珍しくありません。このような地域間格差は、医療の公平性・アクセス性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
地方自治体によっては「医師確保プロジェクト」や「地域医療承継促進プログラム」などを展開し、Uターン・Iターン開業医の誘致や補助金支給を行うなどして、地域医療体制の維持に努めています。
今後の展望
今後の日本の医療環境を考える上で、クリニック・医院の円滑な事業承継は重要な課題となります。診療所の事業価値を見極める制度や、医師以外の経営者(医療法人理事)との役割分担を明確にするなど、より柔軟で持続可能な承継体制が求められています。医療制度の変化にも対応しながら、承継支援の在り方も時代と共に進化する必要があるのです。
クリニック・医院の事業承継の方法について
クリニック・医院の事業承継には、いくつかの方法があります。いずれもそれぞれに特徴と課題があり、経営者自身の意向や診療所の状況、後継者の有無などにより、最適な方法は異なります。以下では、主要な承継方法について詳しく解説します。
親族内承継(親子・兄弟姉妹など)
親族内承継は、従来から最も一般的な事業承継の形です。特に医師である子どもがいる場合には、クリニックを次世代に引き継ぐケースが多く見られます。
この形態では、経営理念や診療スタイルが自然に引き継がれることが多く、スタッフや患者からの信頼関係も比較的スムーズに維持されやすい利点があります。また、親族間での無償譲渡や生前贈与を活用することも可能であり、税務上の対策もしやすい傾向があります。
一方で、相続税や贈与税の負担、兄弟姉妹間の資産配分の問題、医療法人化している場合の持分評価など、専門的な調整が必要な点も多く存在します。
院内承継(従業員や勤務医への承継)
勤務医として長年勤めてきた医師や、信頼のおけるスタッフにクリニックの経営を引き継ぐ方法も増加傾向にあります。これは「院内承継」または「内部承継」と呼ばれ、患者や従業員にとって安心感のある承継スタイルです。
内部に事情をよく理解している人が経営を引き継ぐため、診療の継続性が保たれやすい反面、後継者に開業資金や運転資金を用意できるかどうかが課題となります。また、第三者への承継と異なり、外部評価に基づく適正な譲渡価格を算出することが難しく、承継時の交渉が長引くこともあります。
第三者承継(外部医師や法人への売却)
後継者が家族や院内にいない場合、外部の医師や医療法人に事業を譲渡する「第三者承継」が選択肢となります。これはいわゆる医療M&Aの一種であり、近年では特に都市部や郊外地域を中心に急速に普及しています。
第三者承継の大きな利点は、後継者不在でも診療所の価値を次の経営者に引き継げるという点です。また、譲渡によってまとまった資金を確保できるため、老後資金の確保や生活設計にも有利です。
ただし、適正なマッチング先を見つけるには一定の時間と労力が必要であり、秘密保持や契約書の整備、医療機関特有の許認可手続きなど、専門家の介入が不可欠です。また、譲渡後に方針が大きく変わることで、患者やスタッフが動揺するリスクもあるため、事前の説明や引き継ぎの工夫が求められます。
医療法人の事業承継
すでに医療法人化されているクリニックの場合、その法人格を維持したまま承継を進めるケースもあります。法人格があることで、開設許可や医療報酬請求権、スタッフ雇用の継続などのメリットを活かしやすく、承継後の運営が比較的スムーズです。
ただし、医療法人特有の制約(持分なし法人への移行や定款変更、理事の資格要件等)に加え、法人の持分評価や税務上の課題も大きく、慎重な対応が求められます。特に出資持分のある旧医療法人を承継する場合には、後継者に対して多額の贈与税・相続税が発生する可能性があるため、専門家の助言を受けるべきでしょう。
クリニック・医院の事業承継の手続きや流れ
クリニック・医院の事業承継は、単に後継者を決めるだけでは完了しません。医療機関特有の法規制や行政手続き、関係者との調整、財務処理など、多くの段階を経て初めて円滑な承継が実現します。この章では、承継プロジェクトの一連の流れを具体的に解説します。
事業承継の検討・意志決定
最初のステップは、経営者自身が「事業承継をいつ、どのように行うか」を考えることから始まります。将来的に引退を考えているのであれば、5年〜10年前から準備を開始することが望ましいです。
誰に継がせたいのか(親族か、院内のスタッフか、それとも外部の第三者か)、自身の引退後のライフプランはどうするか、診療所の価値はどれくらいかといった視点を整理しておくことで、承継の方向性が明確になります。
現状分析・事業評価の実施
続いて、自院の経営状態を正確に把握する作業に入ります。これは、承継する相手に対しても信頼性を示す重要な準備段階です。
財務諸表の整理、過去数年の診療報酬実績、患者数の推移、スタッフの雇用状況、建物や医療機器の価値評価などを総合的に行い、クリニックとしての事業価値を可視化します。この段階で、必要に応じて会計士や税理士、医療コンサルタントの助言を受けるとよいでしょう。
後継者の選定と条件調整
候補となる後継者に対して、クリニックの将来像や承継のタイミング、承継方法(譲渡か贈与か)などについて意見交換を行います。このプロセスでは、後継者の意志と能力、経営資源を正確に評価し、両者が納得する形で条件をすり合わせていくことが重要です。
第三者承継の場合には、M&A仲介会社や医療系のマッチングプラットフォームを利用し、買い手候補を探す段階になります。複数の候補者と面談を重ね、価値観や診療理念の共有が可能な相手を慎重に選定します。
法的・税務・行政手続きの準備
承継方法が決まったら、具体的な手続きに入ります。以下は、一般的な承継時に必要となる主な手続きです:
- 事業譲渡契約書や贈与契約書の作成
- 医療法人の定款変更や理事交代手続き
- 保健所への開設者変更届
- 診療報酬請求権の承継(レセプト請求の名義変更)
- 不動産や機器などの資産名義変更
- 雇用契約・労働条件の見直し
これらの手続きは、多くの書類作成や行政対応が発生するため、医療法や税法に詳しい専門家の支援が不可欠です。特に医療法人の承継の場合には、都道府県への事前相談が必要になることもあります。
社内外への周知・引き継ぎの実施
承継が決定した後は、スタッフや患者、関係医療機関などに対して丁寧な情報提供を行う必要があります。突然の交代では信頼を失う可能性があるため、引き継ぎ期間を一定程度設け、旧経営者と新経営者が並行して診療を行うなど、スムーズな移行を図る工夫が求められます。
診療体制や方針に大きな変化がないことを丁寧に説明することで、患者離れやスタッフの不安を最小限に抑えることが可能です。
承継後のフォローアップ
承継が完了した後も、新たな経営者を支援する体制を維持することが望まれます。特に院長が引退後も顧問的な立場でサポートを続けることで、承継後の経営リスクを軽減できます。
また、経営体制の整備や設備投資の見直しなど、将来に向けた戦略を早期に立て直すことで、承継の成功率を高めることが可能となります。
クリニック・医院の事業承継のポイント
クリニック・医院の事業承継は、単なる「引き継ぎ」にとどまりません。経営と医療の両面で大きな転換点となるため、失敗すれば患者離れやスタッフの流出、地域医療の喪失につながる可能性もあります。この章では、事業承継を成功させるために意識しておくべき重要なポイントを解説します。
承継には十分な時間をかけること
事業承継における最大の失敗要因のひとつが、「準備不足」です。経営者が高齢であることは分かっていても、日々の診療に追われてつい後回しになり、いざ体調不良や急病などが起こったときには対応が間に合わないというケースが多く見られます。
理想的には、事業承継は引退予定の「5〜10年前」から準備を始めるべきとされています。この期間に、財務整理、承継方法の選定、後継者育成、行政手続き、スタッフや患者への周知などを計画的に進めることが成功のカギとなります。
後継者の「適性」と「意欲」を見極める
事業承継は、単に医師免許を持っているだけではうまくいきません。後継者にとっても、経営者としての資質、地域との関係構築能力、スタッフをまとめる人間力など、幅広いスキルが求められます。
特に親族に承継する場合は、「家族だから」という理由だけで任せてしまうと、トラブルのもとになります。本人が医院の将来に対して明確なビジョンを持ち、かつ本気で継ぐ意志があるかどうかをしっかり見極めたうえで、継承の準備を進める必要があります。
医療機関特有のリスクへの対応
クリニックの承継では、他業種の事業承継と異なるリスクがあります。たとえば、診療報酬制度の改定や地域医療計画の見直しによって、経営に直接的な影響が生じることもあります。
また、スタッフの高齢化や、地域における患者数の変動、電子カルテ・レセプトシステムの移行など、医療技術やICTの進化も踏まえたうえで、承継後の医療提供体制をどう再構築するかが重要になります。
法的・税務面の対策は専門家と連携する
事業承継には、医療法・税法・労働法など多岐にわたる法律が絡みます。これをすべて経営者だけで対応しようとすると、重大なミスや漏れが生じるリスクが高まります。
特に注意が必要なのは、以下のような法務・税務の問題です。
- 医療法人の持分評価と譲渡税
- 不動産や医療機器の所有権移転手続き
- スタッフの雇用契約更新
- 開設者名義の変更(保健所や厚労省への届出)
- 贈与税や相続税の軽減措置の活用
これらに対応するには、医療系に精通した税理士・弁護士・行政書士などの協力が不可欠です。
「地域との関係」を引き継ぐ姿勢
忘れてはならないのが、地域社会とのつながりです。長年にわたって診療を行ってきた医院には、患者・近隣住民・近隣病院・介護施設などとの厚い信頼関係があります。これを無視して承継を進めてしまうと、患者の離反や信頼の失墜につながりかねません。
承継後の経営者が地域との連携をどう築いていくか、あるいは旧経営者がその橋渡しをどこまでサポートできるかは、事業継続の大きな要素となります。
クリニック・医院の事業承継は専門家に依頼すべきか?
クリニックや医院の事業承継は、医療法や税法、労務管理、行政手続きなど、多くの専門知識を要する分野です。特に医療機関特有の許認可や医療法人制度、診療報酬請求の名義変更といった手続きは、一般の事業とは異なるため、自力で対応することは難しいのが実情です。
この章では、専門家への依頼が本当に必要なのかどうか、検討すべき観点から掘り下げていきます。
自力での承継はどこまで可能か?
小規模な個人診療所で、親族内での承継(たとえば親から子への譲渡)を行う場合には、最低限の知識と手続きを踏めば、ある程度自力での対応も可能です。特に開設届や名義変更の書類など、行政機関の窓口で案内される内容については、丁寧に調べれば自分でも進められる部分もあります。
ただし、これはあくまで「形式的な手続き」に限定されるケースであり、実際には以下のような「専門的・複雑な問題」がついて回ります。
- 医療法人の株式や持分の評価
- 財産評価と相続税対策
- 事業譲渡契約書の作成と法的リスク
- レセプトシステムや医療機器の契約変更
- 人事制度や就業規則の整備
これらの点で適切な判断や処理ができない場合、後々重大なトラブルや税負担、訴訟リスクにつながる恐れがあります。
なぜ専門家の関与が求められるのか
医療機関の事業承継は、以下の3つの理由から、専門家の関与が強く求められます。
- 制度・法律が複雑であること
医療法、医療法人制度、労働法、民法、会社法、税法など、関係する法律が多岐にわたります。特に医療法人には特別なガイドラインや設立要件があり、法人形態によっても手続きが異なります。 - 関係者が多く、利害調整が必要であること
後継者だけでなく、職員、家族、患者、地域医療機関、行政機関など、さまざまな関係者が関与します。単に法律を守るだけでなく、調整・交渉スキルも問われるため、経験豊富な専門家の調整能力が活きます。 - 承継後のトラブル予防が必要であること
たとえば、「贈与税の課税対象だった」「契約内容が曖昧で訴訟になった」「スタッフが一斉退職した」といった、承継後の想定外の問題は少なくありません。こうした事態を未然に防ぐためにも、事前のリスク分析と計画が必要不可欠です。
専門家を活用することで得られる価値
専門家に依頼することで、単に手続きを代行してもらうだけでなく、承継全体の戦略構築や、経営・税務の最適化も図れます。たとえば次のような支援を受けることができます。
- 適正な事業評価と譲渡価格の算定
- 医療法人の理事変更や持分の整理
- 相続・贈与に関する節税シミュレーション
- スタッフ・患者への承継告知文案の作成
- 契約や登記、届出書類のリーガルチェック
さらに、事業承継後の「第二創業」支援や、「経営計画の見直し」「収益改善アドバイス」など、承継後の発展まで見据えた包括的なサポートが得られる点も、専門家に依頼する大きなメリットです。
クリニック・医院の事業承継を専門家へ依頼するメリット
専門家にクリニックや医院の事業承継を依頼することは、多くの面で大きな効果をもたらします。前章では、なぜ専門家が必要なのかを説明しましたが、本章では、実際に依頼することで得られる「具体的なメリット」に焦点を当てて解説します。
1. 手続きや制度対応のミスを防げる
医療機関の事業承継には、医療法や医療法人制度、厚生局への手続き、保健所への届出など、煩雑な制度的要件が多数あります。これらは一つでも抜け漏れがあると、診療報酬の請求ができなかったり、許認可の不備で営業停止になるおそれもあります。
専門家、特に医療法務に精通した行政書士や医療法人専門の司法書士であれば、必要な提出書類や届出、期限、関係機関との調整を的確に進めることができ、承継における事務的リスクを大幅に軽減できます。
2. 税金対策による財産保全が可能
事業承継で特に問題になるのが、贈与税・相続税・譲渡所得税といった税負担です。評価額によっては、多額の納税義務が発生し、承継者が資金繰りに苦しむ事例もあります。
税理士や公認会計士の支援を受ければ、医療法人の持分整理や株式評価、資産のスムーズな移転、非課税枠や特例制度の活用など、節税対策を事前に講じることが可能です。財産を無理なく後継者に引き継ぐためには、専門的な税務ノウハウが不可欠です。
3. 適正なクリニック評価と売却価格の設定ができる
第三者に医院を譲渡する場合、「いくらで売るべきか」が非常に重要になります。適正価格より安すぎれば損失になりますし、高すぎれば買い手がつきません。
医療業界に特化したM&Aアドバイザーや経営コンサルタントに依頼することで、地域の医療需要、診療実績、利益水準、不動産価値、将来の伸びしろなどを加味しながら、専門的な事業評価(バリュエーション)を受けることができます。適正な価格での交渉材料にもなるため、公平性を保ちつつ、売主にも買主にも納得できる条件を整えやすくなります。
4. スムーズな引き継ぎと周囲への配慮が可能
承継時には、スタッフや患者、関係機関などへの「周知と信頼維持」が重要なテーマです。経営者が一方的に交代するのではなく、「なぜ変わるのか」「今後どうなるのか」を丁寧に説明することで、安心してもらう必要があります。
このようなプロセスを円滑に進めるには、第三者的立場の専門家が間に入り、周囲との調整を行うことが有効です。また、トラブル時には法的助言を受けながら交渉を行うことも可能となり、感情的な衝突を回避しやすくなります。
5. 医院の「第二創業」支援が可能になる
事業承継はゴールではなく、あくまで新たなスタートです。後継者が承継後に経営方針を見直し、新たな診療科を追加したり、ICTを導入したり、地域連携を強化することで、クリニックの成長軌道に乗せることも可能です。
経営コンサルタントや事業再生専門家の支援を受けることで、承継後の経営計画や事業戦略の策定を行い、第二創業としての成功確率を高めることができます。これにより、単なる「延命的な承継」ではなく、「価値を高める承継」が実現できます。
クリニック・医院の事業承継を専門家へ依頼するデメリット
専門家に事業承継を依頼することは多くのメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットや注意点も存在します。本章では、依頼に際して考慮すべきポイントを整理し、より良い選択ができるよう解説します。
1. コストがかかること
専門家に依頼する最大のデメリットは「費用負担」です。医療法人の事業承継は複雑で手間も多いため、税理士、弁護士、行政書士、コンサルタントなど複数の専門家を同時に利用する場合が多く、トータルで数十万円から数百万円に及ぶことも珍しくありません。
費用が高額になる場合、承継後の経営資金に影響が出る可能性もあるため、予算とのバランスを考慮しながら、依頼範囲や内容を調整することが重要です。
2. 専門家選びの難しさ
医療機関の事業承継に精通した専門家は多くはありません。また、同じ専門家でも得意分野や対応品質にばらつきがあるため、適切なパートナーを選ぶことが簡単ではありません。
相性やコミュニケーションの取りやすさ、過去の実績なども考慮しつつ、複数の候補者を比較検討することが推奨されます。専門家選びに失敗すると、承継が遅延したり、ミスが生じるリスクが高まります。
3. 経営者自身の負担感が減る反面、主体性が薄れる恐れ
専門家に任せすぎると、経営者自身の承継に対する理解や責任感が希薄になることがあります。承継の意思決定は最終的に経営者自身が行うものですが、専門家に丸投げすることで、重要な判断を見落とすリスクもあるのです。
また、後継者への想い、医院の理念や地域医療への貢献という視点が薄れてしまい、「形だけの承継」になってしまうことも考えられます。
4. 手続きの進行が外部に依存しすぎるリスク
専門家の手続きスピードや対応状況に依存するため、進行が遅れる場合もあります。特に繁忙期や専門家が複数の案件を抱えている場合は、タイムリーな対応が受けられず、承継計画全体に影響を及ぼすこともあります。
依頼者としては定期的に状況を確認し、必要に応じてコミュニケーションを密に取ることが重要です。
クリニック・医院の事業承継を依頼できる専門家の種類
クリニックや医院の事業承継は、多岐にわたる専門知識が必要なため、複数の専門家の力を借りることが一般的です。本章では、事業承継に関わる主な専門家の種類とそれぞれの役割について詳しく解説します。
1. 税理士
税理士は、事業承継における税務面の専門家です。贈与税や相続税、譲渡所得税の計算や節税対策、税務申告の代行を担当します。医療法人の資産評価や持分の評価、税務調査の対応も税理士の重要な役割です。
また、適切な節税スキームの提案やキャッシュフローの見直しを通じて、後継者の負担を軽減することが期待されます。
2. 弁護士
弁護士は、契約書作成やリーガルチェック、紛争解決を担う法務の専門家です。事業承継契約書や株式譲渡契約書の作成、遺産分割協議の法的支援、トラブル発生時の交渉や訴訟対応が主な役割です。
医療法人における法人運営の法律面での助言も提供し、承継過程でのリスクマネジメントを行います。
3. 行政書士
行政書士は、許認可申請や届出書類の作成を専門としています。医療機関の開設届、名義変更、保健所や厚生局への各種申請を代行し、行政手続きの円滑な遂行をサポートします。
特に医療法人の設立・変更手続きでは行政書士の役割が大きく、行政との調整も重要な仕事です。
4. 司法書士
司法書士は、不動産登記や法人登記の専門家です。医療機関の土地や建物の所有権移転登記、医療法人の理事変更登記や本店所在地変更登記を担当します。
これらの登記手続きは法律上の要件が厳しいため、正確かつ迅速な処理が求められます。
5. 医療経営コンサルタント
医療経営コンサルタントは、経営戦略の立案やM&A支援、事業承継計画の策定を行う専門家です。クリニックの価値評価や後継者育成支援、経営改善のアドバイスを提供し、承継後のスムーズな経営継続に貢献します。
また、地域医療ネットワークの構築や診療体制の再編成なども支援範囲に含まれます。
6. M&Aアドバイザー
医療機関専門のM&Aアドバイザーは、第三者への譲渡や買収の仲介を行います。買い手探しや交渉、契約締結のサポートを行い、適正な譲渡価格の算定も行います。
売り手・買い手双方の利益を調整し、円滑な取引成立を目指します。
クリニック・医院の事業承継を依頼できる専門家の費用相場
クリニックや医院の事業承継にあたって専門家へ依頼する場合、費用は依頼内容や専門家の種類によって大きく異なります。本章では、各専門家の一般的な費用相場とその特徴について解説し、依頼時の費用見積もりの参考にしていただければと思います。
1. 税理士の費用相場
税理士の費用は、承継に関する相談料、税務申告代行、節税対策の設計などで変動します。一般的には、
- 初回相談料:無料~3万円程度
- 事業承継対策の基本プラン:20万円~50万円程度
- 税務申告・申請の代行(相続税申告等):50万円~数百万円(資産規模により変動)
税理士費用は資産規模や案件の複雑さで幅があります。特に相続税申告が絡むと費用が高額になる傾向があります。
2. 弁護士の費用相場
弁護士費用は、契約書作成や交渉、訴訟対応など業務内容により大きく変動します。
- 相談料:無料~1万円/30分程度
- 契約書作成:10万円~30万円程度
- 交渉・調停対応:着手金20万円~+成功報酬(案件による)
- 訴訟対応:数十万円~数百万円(内容による)
依頼範囲が広がると費用も増加しますが、リスク軽減に重要な役割を果たします。
3. 行政書士の費用相場
行政書士の料金は、許認可申請や届出代行が中心です。
- 相談料:無料~1万円程度
- 許認可申請・届出代行:5万円~20万円程度(案件により変動)
- 医療法人設立・変更手続き:20万円~50万円程度
比較的リーズナブルな料金で依頼できるケースが多いです。
4. 司法書士の費用相場
司法書士は登記手続きが主な業務です。
- 相談料:無料~1万円程度
- 登記手続き代行費用:10万円~30万円程度(登記内容による)
- 不動産登記+法人登記を同時に依頼する場合は合算
登記関連の費用は、報酬と別に登録免許税(国に支払う税金)が発生します。
5. 医療経営コンサルタントの費用相場
経営コンサルティングは、アドバイス内容や期間によって幅があります。
- 相談料・初期診断:無料~10万円程度
- 月額顧問料:10万円~30万円程度
- 事業承継計画作成・M&A支援:数十万円~100万円超えもあり
承継計画の策定や経営改善を一体的にサポートするため、長期的な費用を考慮する必要があります。
6. M&Aアドバイザーの費用相場
M&Aに関しては、成功報酬型が主流です。
- 着手金:無料~数十万円程度
- 成功報酬:譲渡額の3%~10%程度が一般的
譲渡価格が高いほど報酬額も大きくなりますが、適正価格での譲渡や交渉支援の価値を考慮すると妥当とされます。
依頼の際は、見積もりを複数社から取得し、内容や費用の透明性をしっかり確認しましょう。費用だけでなく、実績や対応力も考慮することが大切です。
クリニック・医院の事業承継を専門家に依頼する際の注意点
クリニックや医院の事業承継は、単なる経営の引き継ぎだけでなく、税務・法務・経営面など多岐にわたる専門的な知識と手続きが求められる非常に複雑なプロセスです。そのため、専門家に依頼することは成功の重要な鍵となりますが、専門家選びや依頼の仕方を誤ると、かえってトラブルや失敗を招きかねません。本章では、専門家に依頼する際に特に注意すべきポイントを深掘りし、依頼者側が押さえておくべき心構えと具体的な注意点を詳細に解説します。
1. 専門家の選定は慎重かつ多角的に行うこと
医療機関の事業承継は、税務・法務・行政手続き・経営戦略など複数分野にわたります。そのため、税理士、弁護士、行政書士、司法書士、医療経営コンサルタントといった多種多様な専門家から適切なパートナーを選ぶことが重要です。
しかし専門家にも得意分野や経験の差があり、単に料金が安いから、あるいは紹介だからという理由だけで選ぶのは危険です。特に医療業界の承継案件に慣れているか、過去に同様の実績を持つか、さらにコミュニケーションが円滑かどうかを総合的に見極めることが成功の前提となります。
また、複数の専門家が絡む場合は、その連携力やチームワークもチェックすべきポイントです。独立個別で動くのではなく、依頼者の全体像を把握し、横断的な支援が可能かどうかも重要です。
2. 依頼範囲や費用、スケジュールを契約前に明確に
専門家に依頼する場合、費用面や業務範囲を曖昧なまま進めると、後から追加費用が発生したり、想定外の業務が加わって混乱を招くことがあります。したがって、最初の段階で「何を依頼するのか」「費用はいくらか」「どのくらいの期間で完了するのか」をできるだけ詳細に契約書や見積書に明記してもらいましょう。
特に医療法人の承継では、法人形態の変更、土地・建物の登記変更、医療許認可の申請、税務申告など複数の手続きが絡むため、それぞれの担当範囲を明確に分け、重複や抜け漏れを防ぐ必要があります。
また、費用に関しては「成功報酬」「着手金」「顧問料」など複数の料金形態が混在することも多いので、全体のコスト感をしっかり把握し、予算とのバランスを検討しましょう。
3. 経営者・承継者自身も主体的に関与すること
専門家に任せきりにするケースは少なくありませんが、事業承継は経営者や後継者の強い意志と関与なしには成功しません。専門家はあくまでサポート役であり、最終的な意思決定は経営者自身が行うべきものです。
また、専門家が提案する税務対策や法的手続きが医院の理念や経営方針と合致しているか、後継者の意思やビジョンと整合しているかをしっかり確認しましょう。コミュニケーション不足や理解不足は、承継後の経営トラブルの原因になることもあります。
さらに、経営者自身が承継の意義や今後のビジョンを後継者に伝え、地域医療への貢献といった理念を共有することが、医院の持続的発展には欠かせません。
4. 定期的に進捗を確認し、疑問点は早めに相談・解消する
専門家に依頼したからといって、すべてを任せて放置するのは危険です。手続きの進捗状況は定期的に確認し、疑問や不安があれば早期に専門家に相談しましょう。
特に承継は多くの関係者が関わるため、コミュニケーションが不足すると認識のズレが生じやすく、最悪の場合は重要な手続きの遅延や失敗につながります。担当者と密に連絡を取り、透明性の高い進行管理を心がけましょう。
また、場合によっては専門家の対応が遅い、連絡が取りづらいなどの問題も起こり得ます。その際は改善を求めるか、必要に応じて専門家の変更も検討する柔軟性も持つべきです。
5. 複数専門家の連携調整役を依頼者自身が担う必要性
クリニック・医院の事業承継では、税理士、弁護士、行政書士、司法書士など複数の専門家が関与することがほとんどです。しかし、それぞれの専門家は自分の担当範囲に専念するため、連携や情報共有が十分でないケースがあります。
情報が断片化したままでは、手続きの重複や抜け漏れ、矛盾が生じるリスクが高まります。そのため依頼者が各専門家の調整役となり、全体のスケジュール管理や情報共有を促進する役割を果たすことが不可欠です。
専門家間の橋渡しをすることで、スムーズでミスのない承継手続きが実現します。専門家チームのコーディネートは、承継成功のキーポイントの一つです。
以上のように、専門家に依頼する際は「選定の慎重さ」「依頼範囲と費用の明確化」「経営者自身の積極的関与」「進捗管理」「専門家間の調整」という五つのポイントを特に意識することが重要です。これらを踏まえて準備を進めることで、安心してスムーズな事業承継を実現できるでしょう。
クリニック・医院の事業承継を専門家に依頼した方が良いケース
クリニックや医院の事業承継は複雑な手続きと多様な課題が伴うため、すべてを自力で進めるのは困難な場合が多いです。専門家に依頼したほうがスムーズに進行し、リスクを軽減できる場面が多々あります。本章では、どのようなケースで専門家の力を借りるべきかを具体的に解説します。
1. 複雑な税務問題が絡む場合
医療機関の承継では相続税や贈与税、譲渡所得税といった税務問題が必ず発生します。特に、相続税の申告や節税対策は非常に複雑で、専門知識を持つ税理士に依頼しないと重大なミスや税務調査のリスクを招きかねません。
また、医療法人の場合は持分評価や非営利性の問題も絡み、個人事業主の承継とは異なる特有の税務対応が求められます。税理士への早期相談と依頼が望ましいです。
2. 法律面のリスクや紛争が懸念される場合
事業承継契約書や株式譲渡契約書の作成、遺産分割協議、関係者間のトラブル防止など、法的リスクを伴う場面では弁護士の専門的支援が不可欠です。専門家のチェックなしで契約を進めると、後々大きな紛争に発展する恐れがあります。
特に複数の相続人や後継者候補がいる場合、法的な調整と合意形成には弁護士の介入が有効です。
3. 医療法人の設立・変更や許認可申請が必要な場合
医療法人の形態変更や理事の変更、本店移転、医療機関の新規開設や名義変更など、行政手続きが複雑な場合は行政書士への依頼が望ましいです。専門的な知識と豊富な経験がないと、書類不備や申請遅延により医療提供に支障が出ることもあります。
行政との折衝や書類作成に不安がある場合は、早めの依頼を検討してください。
4. 不動産の名義変更や登記手続きが必要な場合
クリニックの土地や建物の所有権移転登記、医療法人の登記変更などが必要な場合は司法書士への依頼が基本です。法的な書類作成と登記申請は専門性が高く、間違いがあると手続きが遅れるだけでなく権利関係に影響を及ぼします。
信頼できる司法書士に正確かつ迅速に処理してもらうことが重要です。
5. 承継後の経営戦略や組織体制の見直しが必要な場合
後継者が経営経験に乏しい場合や、新たな経営戦略の立案、診療体制の再編成、スタッフの教育などが課題となるケースでは医療経営コンサルタントの支援が役立ちます。承継だけでなく、その後の持続的な発展を見据えた包括的なサポートを受けられます。
また、M&Aによる第三者承継を検討している場合は、医療機関に特化したM&Aアドバイザーの力が不可欠です。
専門家を活用することで、手続きの確実性が高まり、経営リスクを大幅に減らせます。自力での対応が難しい部分は躊躇せず専門家に依頼し、安心かつ円滑な事業承継を実現しましょう。
クリニック・医院の事業承継の開設形態により異なるポイント
クリニックや医院の事業承継を考える際、開設形態の違いによって承継の方法や手続き、注意点が大きく異なります。個人開業医としての診療所と医療法人形態で運営している医院では、法的な枠組みや税務処理、承継後の運営体制にも差があるため、形態別にポイントを理解しておくことが重要です。
1. 個人開業医(診療所)の事業承継の特徴
個人事業主としてクリニックを運営している場合、事業承継は主に「事業資産の譲渡」や「診療権の引き継ぎ」が中心となります。個人の診療所は法人格を持たないため、医院の資産や設備、患者リスト、診療ノウハウなどを後継者に譲渡する形となります。
この場合、税務的には譲渡所得税の問題が発生しやすく、特に設備や不動産の譲渡では高額な税負担となることがあります。相続税や贈与税の課題もあり、後継者への事業継承をスムーズに進めるためには、事前の資産評価や節税対策が必要です。
また、診療所の開設許可は原則として医師個人に帰属するため、後継者が異なる医師である場合、新たに開設許可申請が必要となる点も留意すべき重要な事項です。
2. 医療法人の事業承継の特徴
医療法人として運営している場合、法人格が継続するため、経営権の移譲は法人の理事長や理事の交代、株式(持分)譲渡といった形で行われます。医療法人の形態には株式会社のような持分会社と、非営利型の社団法人型など複数種類がありますが、いずれも法人格が存続するため、医院の運営自体は途切れません。
医療法人の承継においては、法人内部の規定や定款に基づく手続きが必要です。例えば、理事の選任や変更には理事会や社員総会の承認が求められ、行政への届出も欠かせません。
税務面では法人の譲渡所得は発生しませんが、医療法人の持分が譲渡可能な場合や、資産の分割に伴う税務処理は注意が必要です。医療法人の非営利性を維持しつつ、効率的な承継を実現するためには、専門家の助言が不可欠です。
3. 開設形態による承継後の課題の違い
個人診療所の場合、後継者が新たに開設許可を取得し直す必要があることから、患者の信頼を維持しながら運営を軌道に乗せるまで時間やコストがかかります。引き継ぎの段階で患者との関係性をしっかり継続するためのコミュニケーションが重要です。
一方で医療法人の場合は法人自体が継続するため、行政との手続きは煩雑になるものの患者への影響は比較的小さく、承継後も安定した運営が期待できます。ただし、法人内部の意思決定プロセスや規定に従うため、柔軟な経営判断が難しい場合もあります。
4. 物件や資産の扱いの違い
個人開業の場合、医院の土地や建物、診療機器は個人の資産として所有しているケースが多く、これらの資産の移転には不動産登記の名義変更や機器の譲渡手続きが必要です。相続や譲渡時の評価額が高くなりやすく、税務対策が重要になります。
医療法人の場合、資産は法人所有となるため、所有権の移動は発生しませんが、理事や株主の変更に伴う法人内の規定対応が必要です。
このように、クリニック・医院の事業承継では、開設形態ごとに異なる特性や留意点があり、それぞれに適した承継計画を立てることが成功のポイントとなります。承継にあたっては、形態ごとの法的・税務的な違いを理解し、専門家の助言を得ながら慎重に進めることが求められます。
まとめ:クリニック・医院の事業承継のポイント総括
クリニックや医院の事業承継は、単なる経営の引き継ぎに留まらず、地域医療の継続、患者の信頼維持、経営の安定化など多方面にわたる重要な課題を含んでいます。本稿で解説した内容を振り返りながら、承継を成功させるための要点を整理していきます。
1. 事業承継とは何かを正しく理解する
事業承継は経営権の移譲だけでなく、診療ノウハウ、患者との関係性、スタッフの信頼など無形資産の引き継ぎも含まれます。単に資産を譲渡するだけではなく、地域医療を担う使命感を共有し、医院の価値を未来に繋げるプロセスであることを認識しましょう。
2. 現状把握と問題点の整理を徹底する
承継準備の第一歩は、自院の現状を正確に把握することです。経営状況、資産評価、後継者の準備状況、従業員の意向、地域の医療環境など多角的に分析し、課題やリスクを明確にすることが重要です。
3. 承継の方法は状況に応じて適切に選択する
親族内承継、親族外承継、第三者承継など複数の承継パターンがあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、自院の事情に合った方法を選び、計画的に準備を進めることが成功の鍵です。
4. 手続きや流れを理解し、段階的に対応する
承継には、経営権の譲渡、法的手続き、税務申告、医療機関の許認可申請など複雑な手順が伴います。手続きの流れをしっかり把握し、余裕を持ったスケジュールで対応することが必要です。
5. 専門家の活用は成功の大きな要因
税理士、弁護士、行政書士、司法書士、医療経営コンサルタントなど各専門家の適切な支援を得ることで、複雑な問題を円滑に解決できます。専門家は単なる手続きの代行者ではなく、戦略的パートナーとして位置づけるべきです。
6. 経営者・後継者の主体的関与を忘れない
承継は他人任せにせず、経営者自身が積極的に関与し、後継者とビジョンや理念を共有することが、医院の継続的な発展に繋がります。コミュニケーションを密にして信頼関係を築くことが大切です。
7. 開設形態に応じた対応を行う
個人開業か医療法人かで承継の手続きや税務処理、運営方法は大きく異なります。形態ごとの特徴を理解し、それに沿った承継計画を立てることで、スムーズな移行が可能になります。
クリニック・医院の事業承継は医療機関の未来を左右する重大な課題です。早期に準備を始め、専門家の知見を活用しながら、最善の形で次世代へと繋いでいきましょう。患者と地域社会からの信頼を守り、地域医療の担い手としての責務を果たすためにも、計画的かつ慎重な対応が不可欠です。
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この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
