本記事では、クリニックを開業される際に、どのように資金調達を行えばよいか、資金調達を成功させるためのポイントとは何か、について解説を行っていきます。本記事を参考にされることで、クリニック開業における資金調達を基礎知識を身につけることができます。
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クリニック開業で資金調達を行う方法とは?
クリニック開業において、具体的にどのような方法で資金調達を行うことになるのでしょうか?基本的に始めは個人事業主としてクリニック開業されるケースが大半だと思いますので、金融機関からの借り入れを活用することが多いかと思います。開業においてよく利用される金融機関借入は、公的機関である日本政策金融公庫が融資をする創業資金や、民間の金融機関が行う保証協会付きの融資の2つが主な先となります。創業融資の場合、日本政策金融公庫は7,200万円(運転資金目的は4,800万円)を限度として借り入れを行うことができます(限度額まで借り入れられるわけではなく、必要な資金や事業計画等によって借入限度額は決まります)。なお、どの日本政策金融公庫にはさまざまな貸付制度が存在しておりますが、借入者が決めて借入申請するのではなく、借入者からヒアリングを行った日本政策金融公庫側でどの融資に当てはまりそうかを判断した上で、融資を実行することになります。
保証協会付き融資というのは、全国信用保証協会連合会が金融機関が行う融資について、仮に支払いが不履行になった場合に保証をするという制度になります。借入者は全国信用保証協会連合会へ保証料を金融機関に支払う利息と共に支払う必要があります。また保証金額は100%ではなく、原則は80%になりますので、金融機関としても一定のリスクを負うことから、貸付に際しては金融機関及び全国信用保証協会連合会の両方の審査が必要となります。保証協会付ローンについても、無担保であれば8,000万円まで、有担保であれば2億8,000万円までが借入限度額となります(ただし月商倍率を見て保証協会側で貸付限度額を決めますので、これらの上限まで借入ができることでは無いことにご留意ください)。保証協会付ローンについてもさまざまな貸付制度がありますが、これも借入者が決められるものではなく、貸付元である金融機関と保証協会が話し合って、どの制度に当てはまりそうかを判断した上で、融資を実行する流れになります。
金融機関には上記の保証協会付のローンと、保証が全くついておらず100%金融機関のリスクで貸し出しを行うプロパー融資というものがあります。プロパー融資は一般的に、過去の損益の状況や現在の財務状態が優良であり、貸し倒れリスクが非常に低い場合のみ活用することができます。そのため、過去実績のない借入者は借りることができませんので、まずは日本政策金融公庫や保証協会付の借り入れを行い、返済実績を積んだ上で、プロパー融資に挑戦する形になります。
その他の開業時の資金調達手段として、リースを活用するパターンがあります。リースは金融機関からの融資とは異なり、医療機械や備品などの物に紐づいて融資が行われるため、運転資金等に活用することはできません。基本的にリースとなった機械や備品については、リース契約に基づいて毎月リース料金を支払うことになります。リースしている資産を最終的にリース会社へ返還するかどうかは、リース契約の内容で定まっています。全ての機械や備品を手元資金で購入すると初期負担が重たく、運転資金を十分に確保できない可能性もあることから、金融機関からの融資とリースを組み合わせることが一般的です。
クリニック開業時の資金調達について必要な金額とは?
クリニック開業時の資金調達について、金額はいくら調達すればよいのでしょうか?一般的には、数千万円から1億円程度と言われておりますが、クリニックの規模や導入する機械等によっても大きく異なってきますので、必要額は後述する、事業計画書を作成して必要な資金量及び返済計画を十分にたてた上で決める必要があります。あまりに余裕を持ちすぎて借りてしまうと、支払利息負担が重たくなり無駄なコストが発生してしまうこと、あまりに余裕がなさすぎて少なく借りてしまうと、最悪の場合資金ショートを起こしてしまいます。特にビジネスにおいては資金繰りが非常に重要になってきますので、資金ショートを起こして患者さんや取引先に迷惑をかけない運営が不可欠です。
クリニック開業の資金調達において提出する書類等
クリニック開業時において重要になってくる書類が事業計画書です。新規開業の場合、過去の実績数字等はないでしょうから、まずは事業計画書を作成し、金融機関へその合理性を説明していく必要があります。事業計画書とは、将来の損益を予測し、売上や売上に係る原価、結果としての利益を数字に表したものになります。必要に応じて損益予測だけでなく、損益と連動した予想財務状態(予想貸借対照表)を作成することもあります(数字の整合性を見るためには、財務状態についても予測数字を作った方が良いです)。
事業計画書は単なる予想ではなく、合理的な前提に基づいて論理的に作成されている必要があります。例えば、クリニックの規模に比して1日あたりの患者さんの想定される数や患者さんの平均単価が非現実的ではないかどうか、来院される患者さんに対して看護師や受付などの従業員は十分に計画されているか、またその採用・育成に係るコストが網羅的に計画されているか、損益予測等を踏まえて返済計画がしっかりと作成されているか(要は今回借りるお金がしっかりと返せる計画になっているかどうか)などが重要になってきます。金融機関側も金融のプロなので、論理的でない事業計画や数字の不整合などはすぐにわかってしまいますので、事業計画書を作成するにあたってはしっかりと作成しておく必要があります。
また開業後については、継続的に金融機関に対して毎年の決算書を作成して提出する必要があります。またその内容について金融機関から質問があった場合には適切に回答ができるようにしておく必要があります。決算書とは貸借対照表及び損益計算書を指します。貸借対照表は、毎年年度末のクリニックの財務状況を示した書類になります。損益計算書はクリニックの1年間の経営成績を示したもので具体的には売上高や原価、利益などが記載されることになります。この決算書は確定申告書の基礎にもなります。
クリニック開業の資金調達について誰に支援を求めれば良いか?
クリニック開業の資金調達については初めての経験だと思いますので、事業計画書の作成支援など誰に支援を求めれば良いのでしょうか?一番おすすめをしたいのは税理士になります。事業計画書や決算書は経理の高いレベルの知識が求められる業務であるため、深い財務知識を持たない人が作ったものは不整合だったり前提の矛盾があるなど、金融機関が満足できるレベルのものを作成することが難しいです。税理士の場合、この領域に深い知見と経験を持っているため、適切な前提に基づいて数字の整合性のある事業計画の策定支援が可能です。また、決算書についても貸借対照表や損益計算書を正しく作成できる経理知識と経験が必要になりますが、税理士は経理のプロでもありますので、金融機関が満足をする正しい決算書を作成することが可能となります。
なお、以前の記事で税理士の活用に関しては、クリニックに強い税理士を探す方法、という記事を出しておりますのでこちらも併せて参考ください。
クリニック開業で資金調達を成功させる方法のまとめ
以上のように、クリニック開業時に資金調達を行う上でのポイント等について解説を行ってきました。本記事をご参考にいただいて、ぜひクリニック開業の資金調達を成功させてください。
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この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。