医師として長年の勤務経験を経て、自身の理想とする医療を実現するためにクリニックを開業することは、人生における大きな挑戦であり、到達点の一つでもあります。しかし、高い医療技術や患者への情熱だけでは、クリニックの経営を軌道に乗せ、安定的に継続させていくことは困難です。開業には莫大な資金が必要となり、開業後にはスタッフの雇用や日々の経理処理、そして複雑な税務申告といった、医療行為以外の経営者としての業務が山積しているからです。
このような状況下で、院長先生の強力なパートナーとなり得るのが税理士です。ただし、どの税理士でも良いわけではありません。医療業界特有の制度や商慣習に精通し、開業前から開業後まで伴走してくれる「クリニックに強い税理士」を選ぶことが、成功への近道となります。本記事では、クリニック開業を成功に導くための税理士選びについて、その役割やメリット、具体的な選び方から契約の流れに至るまで、網羅的に解説していきます。
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クリニック開業を成功させるために税理士を選ぶ最適な方法
クリニックの開業時に税理士が提供するサービス
クリニックの開業準備は、多岐にわたるタスクを短期間でこなす必要があります。物件選定から内装工事、医療機器の導入、スタッフ採用、そして行政への届出などです。この激動の時期において、税理士は単なる計算代行屋ではありません。開業コンサルタントとしての役割を果たします。具体的にどのようなサービスが提供されるのかを詳しく見ていきましょう。
創業計画書の作成支援
まず最も重要となるのが、創業計画書の作成支援です。開業にあたっては自己資金だけで賄えるケースは稀です。多くのドクターが銀行や日本政策金融公庫からの融資を必要とします。金融機関が融資を決定する最大の判断材料となるのが創業計画書です。
ここには開業の動機や医師としての経歴だけでなく、具体的な数値を論理的に落とし込む必要があります。診療圏調査に基づいた来院患者数の予測、診療単価の設定、人件費や家賃などの経費予測、そして返済計画などです。医療に特化した税理士は、近隣の競合状況や診療科目ごとの平均的な数値を熟知しています。そのため、金融機関が納得する現実的かつ説得力のある事業計画を共に作り上げることができます。
資金調達と融資のサポート
次に、資金調達と融資のサポートが挙げられます。創業計画書ができあがっても、手続きに戸惑うドクターは少なくありません。どの金融機関にどのように申し込めば良いのか、金利や返済期間の交渉はどうすれば良いのかといった点です。
税理士は、日本政策金融公庫や地元の信用金庫、メガバンクなどとのパイプを持っています。ドクターの状況に合わせて最適な融資先を選定し紹介してくれます。また、融資面談に同席して補足説明を行うなど、審査を有利に進めるためのサポートを行います。
官公庁への各種届出の代行
さらに、官公庁への各種届出の代行も重要な業務です。クリニックを開業するためには、期限厳守の書類が多数存在します。保健所への開設届、厚生局への保険医療機関指定申請、税務署への開業届や青色申告承認申請書などです。
特に保険医療機関の指定申請は重要です。提出期限や記載内容に不備があると保険診療を開始できる日が遅れてしまいます。これは経営に直撃する大きな損失を生んでしまいます。税理士はこれらのスケジュールを管理し、行政書士や社会保険労務士と連携しながら漏れなく手続きを進める司令塔の役割を担います。
設備投資と不動産契約へのアドバイス
加えて、医療機器の選定や不動産契約に対する財務的なアドバイスも行います。医療機器は高額な投資となります。購入するのかリースにするのかによって、初期費用や月々のキャッシュフロー、そして節税効果が大きく異なります。税理士は長期的な資金繰りをシミュレーションし、どちらの選択が経営にとって有利かを助言します。物件契約においても、家賃の適正価格や契約条件が経営を圧迫しないか、内装工事費の減価償却はどうなるかといった視点からチェックを行います。
クリニックの開業後に税理士が提供するサービス
無事に開業を迎えた後も税理士の役割は終わりません。むしろ日々の診療を行いながら経営を安定させていくフェーズこそ、税理士のサポートが不可欠となります。開業後の主なサービスは、経理の適正化と経営状態のモニタリング、そして節税対策です。
記帳代行と月次決算
基本となるのは、日々の記帳代行と月次決算です。診療が終わった後に院長自らが領収書を整理し会計ソフトに入力することは、体力的にも時間的にも大きな負担となります。多くの税理士事務所では、領収書や通帳のコピーを預かることで記帳を代行するサービスを提供しています。
そして毎月、あるいは数ヶ月ごとに試算表を作成します。クリニックの売上や経費、利益の状況を報告するのです。これにより、院長はタイムリーに自院の経営状態を把握できます。広告宣伝費のかけ方やスタッフの採用計画などの経営判断を的確に行うことができます。
確定申告と税務調査への対応
次に、確定申告と税務調査への対応です。個人のクリニックであれば年に一度の所得税の確定申告、医療法人であれば法人税の申告が必要です。医療機関の税務は一般企業とは異なる特殊な論点が多く存在します。社会保険診療報酬と自由診療収入の区分や、概算経費率の特例措置(措置法26条)の適用判断などです。
税理士はこれらの専門知識を駆使して正確な申告書を作成します。また、医療機関は高収益体質であることが多く、税務調査の対象になりやすい業種の一つです。万が一税務調査が入った際には税理士が立ち会います。調査官の指摘に対して法的な根拠を持って反論や説明を行い、院長を守ります。
経営分析とコンサルティング
さらに、経営分析とコンサルティングも重要なサービスです。医療特化の税理士は多くのクリニックのデータを持っています。そのため、自院の数値が業界平均と比較してどうなのかを分析できます。「材料費率が高すぎる」「人件費のバランスが悪い」「リコール率が低い」といった課題を数字から読み解き、改善策を提案します。単なる計算屋ではなく、経営参謀としての役割が期待されます。
医療法人化のシミュレーション
将来を見据えた医療法人化のシミュレーションも行います。所得が増えてくると、個人事業主のままでは税負担が重くなります。税理士は、所得税と法人税の税率差や社会保険料の負担増などを総合的にシミュレーションします。どのタイミングで医療法人化すべきか、あるいは法人化しない方が良いのかをアドバイスします。法人化の手続きは非常に複雑で期間も長いため、計画的な準備が必要です。
人事労務周りのサポート
最後に、人事労務周りのサポートも欠かせません。給与計算や年末調整はもちろんのこと、スタッフの採用や退職に伴う手続き、就業規則の作成などについて対応します。これらは提携する社会保険労務士と連携して行われます。クリニック経営においてスタッフの問題は避けて通れません。労務リスクを未然に防ぐアドバイスは非常に価値があります。
クリニックの開業時に税理士へ依頼するメリット
開業時から税理士に関与してもらうことには、コスト以上の大きなメリットがあります。それは単に事務作業を減らすというだけでなく、経営の成功確率を高めるための投資と言えます。
診療業務と集患活動への集中
最大のメリットは、院長が診療業務と集患活動に専念できることです。開業当初は患者さんにクリニックを知ってもらい、信頼を獲得するために全力を注がなければなりません。そのような時期に、慣れない経理処理や役所への手続きに時間を奪われることは機会損失につながります。税理士にバックオフィス業務を任せることで、院長は医師としてのパフォーマンスを最大限に発揮し、患者満足度を高めることに集中できます。これは結果として早期の経営安定化をもたらします。
資金調達の成功率向上
次に、資金調達の成功率と条件が向上することが挙げられます。金融機関は医師の医療技術は評価できても、経営者としての資質は事業計画書や面談での受け答えで判断するしかありません。税理士の指導のもとで作成された緻密な事業計画書は、金融機関からの信頼性を高めます。
また、税理士が紹介者となることで融資担当者との交渉がスムーズに進みます。金利の優遇や融資額の増額、返済期間の延長といった有利な条件を引き出せる可能性が高まります。資金繰りの余裕は、開業初期の精神的な安定に直結します。
最適な節税対策の実施
また、適正かつ効果的な節税対策を初期段階から実施できることも大きなメリットです。税務の知識がないまま自己流で経理を行っていると、計上できるはずの経費を漏らしていたり、青色申告の特典を十分に活用できていなかったりします。知らず知らずのうちに損をしているケースが多々あります。
また、開業費の償却方法や家族への給与支払いなど、開業時にしかできない、あるいは開業時に決めておくべき税務判断も数多くあります。税理士がいれば、法令の範囲内で最大限の節税効果を得られるスキームを構築することができます。
メンタル面での支え
さらに、経営の良き相談相手を確保できるという点も見逃せません。開業医は孤独な立場に置かれがちです。スタッフや家族には相談しにくい経営上の悩みや不安があります。例えばスタッフとの人間関係や将来の展望、個人的な資産形成などです。
これらについて、守秘義務を持つ第三者であり、かつ多くの事例を知る専門家である税理士に相談できることは、メンタル面での大きな支えとなります。客観的な数字に基づいたアドバイスは、感情的な判断ミスを防ぎ冷静な経営判断を促してくれます。
クリニックにおける税理士の費用相場
税理士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのかは気になるところです。費用は依頼する業務内容やクリニックの規模、地域によって異なりますが、一般的な相場を知っておくことは適正な契約を結ぶために重要です。
開業支援(スポット契約)の費用
まず、開業支援(スポット契約)の費用についてです。開業前の創業計画書作成支援や融資対策、各種届出の代行のみを依頼する場合です。着手金と成功報酬を合わせて数十万円から、融資額の数パーセントといった料金設定が一般的です。
ただし、開業後の顧問契約を結ぶことを前提としている場合は、開業支援料を無料または格安に設定している税理士事務所も多くあります。初期費用を抑えたい場合は、顧問契約とセットでの依頼を検討すると良いでしょう。
開業後の顧問料と決算料
次に、開業後の顧問料(月額報酬)と決算料です。個人のクリニックの場合、月額顧問料は3万円から5万円程度が相場です。これには毎月の巡回監査や税務相談、試算表の作成などが含まれます。そして年に一度の確定申告料として、月額顧問料の4ヶ月分から6ヶ月分程度がかかります。つまり、年間トータルでは50万円から100万円程度が目安となります。売上規模が大きくなったり分院展開をしたりすると、顧問料は上がっていきます。
オプション費用の有無
ここにオプション費用が加算される場合があります。最も一般的なのが記帳代行料です。領収書の整理から会計ソフトへの入力をすべて依頼する場合、月額1万円から3万円程度が上乗せされます。また、スタッフの給与計算や年末調整を依頼する場合は、従業員数に応じた料金が発生します。消費税の申告が必要な場合も別途料金がかかることがあります。
医療法人化の費用
将来的に医療法人化する際の費用についても触れておきましょう。医療法人設立の認可申請は非常に複雑なため、スポット業務として50万円から100万円程度の費用がかかることが一般的です。また、医療法人化後は会計処理が複雑になるため、月額顧問料も個人時代より高くなります。5万円から10万円程度になることが多いです。
費用については「安ければ良い」というものではありません。相場より極端に安い場合は、訪問頻度が少なかったり、医療特有の処理に対応していなかったり、担当者が資格を持たない職員だったりする可能性があります。逆に高額な場合は、高度なコンサルティングサービスが含まれていることがあります。提示された金額にどのようなサービスが含まれているのかを詳細に確認し、費用対効果を見極めることが大切です。
クリニックの開業に強い税理士の探し方
「クリニックに強い」と謳う税理士は数多く存在しますが、本当に実力のある税理士と出会うにはどうすれば良いのでしょうか。主な探し方にはいくつかのアプローチがあります。
知人や先輩医師からの紹介
一つ目は、知人や先輩医師からの紹介です。すでに開業して成功している先輩医師が契約している税理士であれば、医療業界への理解度やサービス品質についてある程度の保証があります。実際にどのようなサポートを受けているのか、レスポンスは早いか、相性はどうかなどを直接聞くことができるため、ミスマッチのリスクを減らせます。ただし、紹介された手前断りづらくなるというデメリットもあります。紹介を受ける際はあくまで候補の一人として面談させてほしいと伝えるのが無難です。
関連業者からの紹介
二つ目は、医療機器メーカーや医薬品卸業者、ハウスメーカーなどの開業支援担当者からの紹介です。彼らは日常的に多くのクリニックの開業に関わっており、各地域で評判の良い税理士の情報を持っています。特に医療機器のリースや融資に関連して、金融機関との交渉に強い税理士を知っていることが多いです。彼らからの紹介はビジネスライクな関係であるため、比較検討もしやすいでしょう。
インターネット検索とポータルサイト
三つ目は、インターネット検索や専門ポータルサイトの活用です。「地名 + クリニック + 税理士」などで検索すると、多くの税理士事務所のホームページがヒットします。ホームページを見る際は、医療機関の顧問実績数やクリニック経営に関するコラム記事の充実度、院長先生のインタビュー動画などをチェックします。本当に医療に特化しているかを見極めるためです。また、税理士紹介サイトを利用すれば、医療に強い税理士を条件付きで複数紹介してもらい比較検討することができます。
税理士紹介会社の活用
四つ目は、税理士紹介会社の活用です。コーディネーターが間に入り、クリニックの規模や要望、予算などをヒアリングした上で最適な税理士をマッチングしてくれます。紹介会社は登録している税理士の得意分野や人柄を把握しているため、自分で探す手間が省けます。契約に至るまでは無料であることが多いため、効率的に探したい場合に有効です。ただし、紹介会社に登録していない優秀な税理士もいるため、他の方法と併用するのが良いでしょう。
クリニックの開業に強い税理士を選ぶポイント
数ある候補の中から自院に最適な税理士を選び抜くためには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。面談の際には以下の点を確認するようにしましょう。
医療業界への専門知識と実績
まず第一に、医療業界への専門知識と実績です。医療機関の税務は一般企業とは大きく異なります。社会保険診療報酬の非課税扱いや、措置法26条の適用判断、医療法人の制度など、専門的な知識がないと適切な処理ができません。面談時には「顧問先の何割が医療機関か」「最近の診療報酬改定についてどう考えているか」「医療法人化のメリット・デメリットをどう説明するか」といった質問を投げかけてみましょう。その回答の的確さを確認します。医療用語が通じるかどうかも基本的ながら重要なポイントです。
融資実績と金融機関とのパイプ
次に、融資実績と金融機関とのパイプです。開業時の最大のハードルである資金調達において、どれだけ頼りになるかを確認します。過去にどのくらいの融資を通してきたか、地元の金融機関の担当者と直接連絡が取れる関係にあるかなどを聞くと良いでしょう。「先生の計画なら、〇〇銀行の〇〇支店長に話を通せばスムーズかもしれません」といった具体的な提案が出てくる税理士は頼りになります。
コミュニケーション能力と相性
コミュニケーション能力と相性も極めて重要です。税理士とは長期間にわたって経営の深い部分を共有する関係になります。専門用語を並べ立てるのではなく、院長にわかりやすい言葉で説明してくれるか。質問に対して誠実に答えてくれるか。レスポンスは早いかを見極めます。また、院長の話をじっくり聞いてくれる「聞き上手」であるか、それとも一方的に自分の考えを押し付けてくるタイプかもチェックしましょう。フィーリングが合うかどうかが、ストレスなく付き合っていくための鍵となります。
料金体系の明瞭さ
料金体系の明瞭さも確認が必要です。顧問料の中に記帳代行や年末調整、税務調査立会いなどが含まれているのか、それとも別料金なのか。これを明確にしておかないと、後で追加請求が発生してトラブルになることがあります。見積書を提示してもらい、業務範囲と料金の内訳を細かく確認しましょう。
将来的な展望を見据えた提案力
最後に、将来的な展望を見据えた提案力があるかどうかもポイントです。開業当初のサポートだけでなく、経営が軌道に乗った後の節税対策、医療法人化、分院展開、そして最終的な事業承継や相続までを見据えて、長期的な視点でアドバイスをくれる税理士を選びたいものです。「まずは開業を成功させましょう」だけでなく、「5年後、10年後にこうなるために、今からこういう準備をしておきましょう」と提案してくれる税理士は、真のパートナーとなり得ます。
クリニックの開業に強い税理士と契約するまでの流れ
良い税理士と出会い、契約に至るまでの一般的なプロセスを解説します。
問い合わせと面談予約
まずは、問い合わせと面談予約です。ホームページや紹介を通じて気になった税理士事務所に連絡を入れます。この際、開業予定地や診療科目、開業時期などの基本情報を伝えます。複数の税理士と比較検討したい場合は、その旨も正直に伝えて構いません。3社程度と面談することをお勧めします。
初回面談とヒアリング
次に、初回面談とヒアリングが行われます。多くの事務所では初回相談は無料です。ここでは、院長の開業動機や理念、目指すクリニック像、資金計画の現状などを税理士に伝えます。同時に、前述した選定ポイント(専門知識、実績、相性など)をチェックします。税理士の方からも、具体的な開業支援の内容や、過去の事例に基づいたアドバイスがあるはずです。この時の対応の丁寧さや、話していて安心感があるかどうかが重要な判断材料となります。
提案と見積もりの提示
面談後、提案と見積もりの提示を受けます。面談でのヒアリング内容に基づき、税理士から具体的な支援内容と、開業前・開業後の報酬見積もりが提示されます。この際、契約に含まれる業務範囲(記帳代行の有無、訪問頻度、給与計算など)をしっかりと確認し、不明点は遠慮なく質問してクリアにしておきましょう。複数の事務所から見積もりを取っている場合は、金額だけでなくサービス内容のバランスを見て比較します。
契約内容の確認と締結
最後に、契約内容の確認と締結です。提案内容と金額に納得し、相性も問題ないと判断したら、顧問契約を締結します。契約書には、契約期間、報酬額、支払時期、業務範囲、解約条項などが記載されています。特に解約条項については、万が一相性が合わなかった場合にスムーズに契約解除できるかを確認しておくと安心です。契約締結後は、速やかに開業準備の具体的な作業へと移行していきます。
クリニックの開業に強い税理士を選ぶ際によくある質問の例と回答
ここでは、税理士選びの際によくある質問とその回答例を挙げます。
Q. 開業のどれくらい前から税理士に相談すべきですか? A. できるだけ早い段階、具体的には物件探しの段階や事業計画をぼんやりと考え始めた時期から相談することをお勧めします。物件の賃料相場の妥当性や、内装工事費の予算感、融資の申し込み時期など、初期段階から税理士のアドバイスを受けることで、無駄な出費を抑え、スムーズに開業準備を進めることができます。遅くとも融資申し込みの3ヶ月前には相談を開始すべきです。
Q. 顧問料が安い税理士でも大丈夫ですか? A. 顧問料が安いにはそれなりの理由があります。訪問頻度が少ない、記帳代行が含まれていない、担当者が資格を持たない職員である、医療特化ではないため専門知識が浅い、などが考えられます。開業初期は資金を節約したい気持ちはわかりますが、税務上のミスによる追徴課税リスクや、融資失敗による開業延期のリスクを考えると、多少費用がかかっても医療に強い実績のある税理士を選ぶ方が、長期的にはコストパフォーマンスが良い場合が多いです。
Q. 遠方の税理士でも問題ないですか? A. 最近はZoomなどのオンライン会議システムやクラウド会計ソフト、データの共有ツールが発達しているため、物理的な距離は以前ほど問題にならなくなりました。近隣に医療に強い税理士がいない場合は、全国対応している医療特化の税理士を選ぶのも有効な選択肢です。ただし、融資面談への同席や税務調査時の対応など、緊急時にすぐに駆けつけてもらえるか、交通費はどうなるかなどは事前に確認しておく必要があります。対面でのコミュニケーションを重視する場合は、通える範囲の税理士が良いでしょう。
Q. 医療法人化はいつすべきですか? A. 一般的には、院長の所得(利益から経費を引いた額)が1,800万円を超えたあたりから、あるいは手元に残る資金(年間利益)が一定額を超え、節税メリットが社会保険料の負担増を上回るようになった時期が検討のタイミングと言われています。しかし、これはあくまで目安であり、家族構成や将来のビジョン、分院展開の計画などによって最適なタイミングは異なります。医療に強い税理士であれば、毎年の決算時にシミュレーションを行い、最適な時期を提案してくれます。
Q. 今の税理士が医療に詳しくないようですが、変更しても良いでしょうか? A. はい、変更を検討すべきです。医療経営は専門性が高く、一般的な知識だけでは適切な節税や経営アドバイスができません。税理士を変更することで、これまで見落とされていた経費が計上できたり、経営分析によって収益が改善したりするケースは多々あります。セカンドオピニオンとして医療特化の税理士に相談してみるのも一つの方法です。
まとめ
クリニックの開業は、医師としての理想を実現するための第一歩です。しかし同時に経営者としての厳しい道のりの始まりでもあります。診療に専念し、患者さんに最良の医療を提供し続けるためには、経営基盤の安定が不可欠です。その基盤作りを支えるのが、医療業界に精通した税理士です。
最適な税理士を選ぶことは、単なる事務処理の委託先を選ぶことではありません。開業時の資金調達から、日々の経営管理、節税対策、そして将来の医療法人化や事業承継に至るまで、ドクターの人生に寄り添い共に歩むパートナーを選ぶことです。
費用だけで選ぶのではなく、医療への専門性、融資の実績、そして何より「この人となら何でも相談できる」と思える信頼関係を重視してください。本記事が、先生方の夢を実現するための最良のパートナー選びの一助となれば幸いです。開業準備は大変な労力を伴いますが、強力な味方を見つけ、素晴らしいクリニックを築き上げてください。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
