クリニックが税理士に支払う顧問料の相場は?

税務

多くの医師にとって、自身のクリニックを開業し運営していくことは人生における大きな挑戦であり、また医師としての理想を実現するための重要なステップです。しかし、日々の診療業務に追われる中で、避けては通れないのが経営管理や税務会計の問題です。特にクリニックの会計は、保険診療と自由診療の区分や、独特な経費の考え方など、一般的な企業会計とは異なる専門的な知識が求められる分野です。

そのため、多くの院長先生は税理士と顧問契約を結び、税務や会計のサポートを受けています。そこで気になるのが「顧問料」です。税理士に支払う報酬は、クリニックの経営において固定費の一部となりますが、その相場がどの程度なのか、また金額に見合ったサービスが受けられているのか、判断に迷うことも少なくありません。安ければ良いというものではなく、かといって高額であれば必ずしも高品質なサービスが保証されるわけでもないのが、税理士選びの難しいところです。

本記事では、クリニック経営における税理士顧問料の相場や、その金額が決まる要因、さらには医療業界に特化した税理士を選ぶメリットなどについて、詳細に解説していきます。これから開業を考えている先生や、現在の税理士との契約見直しを検討されている先生にとって、有益な判断材料となるよう情報を網羅しました。

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クリニックが税理士に支払う顧問料の相場は?

クリニックの税理士顧問料の相場はどれぐらいか?

クリニックの税理士顧問料は、経営形態が個人事業主であるか、医療法人であるかによって大きく異なります。また、年間の売上規模や依頼する業務範囲によっても変動します。ここでは、それぞれのケースにおける一般的な相場観について詳しく見ていきましょう。

個人経営のクリニックの場合

開業したばかりのクリニックや、医師一人で運営しているような小規模なクリニックの多くは、個人事業主として経営されています。個人経営の場合、税理士顧問料の相場は、月額で約3万円から5万円程度が一般的です。これに加えて、年に一度の確定申告料として、月額顧問料の4ヶ月から6ヶ月分程度が必要となるケースが多いです。したがって、年間トータルでの支払額は、およそ50万円から80万円程度が目安となります。

ただし、これはあくまで記帳代行(領収書などを渡して会計ソフトへの入力を丸投げすること)を含まない、あるいは小規模な場合の金額です。記帳代行を依頼する場合や、消費税の申告が必要な場合、あるいはスタッフ数が多く給与計算などの付随業務が発生する場合は、これよりも高くなる傾向にあります。

開業初年度に関しては、売上がまだ安定していないことを考慮して、顧問料を低めに設定してくれる税理士事務所もあります。例えば、月額2万円程度からスタートし、売上が一定額を超えた段階で正規の料金に改定するといった契約形態です。このような柔軟な対応をしてくれるかどうかも、税理士選びの一つのポイントとなるでしょう。

医療法人の場合

経営が順調に推移し、節税や事業承継を見据えて「医療法人化」を行った場合、税理士顧問料の相場は上がります。医療法人の場合、月額顧問料の相場は5万円から10万円程度が一般的です。決算料も含めた年間のトータルコストは、80万円から150万円、規模によっては200万円を超えることも珍しくありません。

なぜ個人経営よりも高くなるのかというと、医療法人は個人事業主に比べて会計処理や税務申告の手続きが格段に複雑になるからです。法人の決算書作成に加え、都道府県への事業報告書の提出や、登記関係の手続きなど、求められる事務処理の量と専門性が増します。また、役員報酬の設定や、理事長個人と法人との間のお金の貸し借りなど、税務上のリスク管理もより慎重に行う必要があるため、税理士にかかる責任や負担も大きくなるのです。

年商規模による相場の変動

クリニックの規模を表す指標として「年商(年間医業収益)」がありますが、これも顧問料を決定する大きな要因です。

年商が5,000万円未満の小規模なクリニックであれば、前述した下限に近い金額で契約できることが多いでしょう。しかし、年商が1億円を超えてくると、取引数が増加し、消費税の計算も複雑になるため、顧問料は上昇します。さらに、分院展開をしていて年商が数億円規模になるような医療法人であれば、税理士には単なる税務処理だけでなく、グループ全体の経営管理や組織再編などの高度なコンサルティング能力が求められるため、月額数十万円という顧問料になることもあります。

このように、税理士顧問料の相場は「一律いくら」と決まっているものではなく、クリニックの成長ステージや規模感に合わせて段階的に変化していくものだと理解しておくことが重要です。

クリニックの税理士顧問料が決まる要素

税理士から提示される見積もり金額を見て、「なぜこの金額になるのか」と疑問に思うこともあるでしょう。顧問料は税理士の言い値で決まるわけではなく、いくつかの客観的な要素に基づいて算出されています。ここでは、顧問料を構成する主要な要素について深掘りしていきます。

年間売上高(医業収益)の規模

最もベースとなる要素は、クリニックの年間売上高です。売上が大きいということは、それだけ患者数が多く、仕入れや経費の支払いといった取引数も多いことを意味します。取引数が増えれば、税理士がチェックすべき領収書や請求書の枚数、通帳の明細行数が増加し、作業時間が長くなります。

また、売上が大きいクリニックほど、税務調査が入る可能性が高まり、調査官の目も厳しくなります。税理士としては、より慎重かつ精緻な監査を行う必要があるため、そのリスクと手間に見合った報酬を設定することになります。一般的に、売上が1億円、3億円、5億円といった節目を超えるごとに、顧問料のテーブルが上がっていくイメージを持つと良いでしょう。

訪問頻度と面談方法

税理士や担当者がクリニックを訪問し、院長と面談する頻度も顧問料に大きく影響します。かつては「毎月訪問」が基本でしたが、近年ではITツールの発達により、訪問頻度を減らしてコストを抑えるプランも増えています。

毎月訪問して綿密な打ち合わせを行うプランは、最も顧問料が高くなります。一方で、訪問は3ヶ月に1回、あるいは半年に1回とし、それ以外の月はメールや電話、Zoomなどのオンライン会議で対応するプランであれば、顧問料を安く抑えることができます。院長先生が「毎月顔を合わせて数字の説明を受けたい」と考えるか、「数字はデータで見られれば十分で、必要な時だけ相談できれば良い」と考えるかによって、選択すべきプランと費用が変わってきます。

記帳代行の有無

「記帳代行」とは、日々の領収書整理や会計ソフトへの入力を、税理士事務所に丸投げするサービスのことです。クリニック側で会計ソフトへの入力を済ませ(自計化)、税理士はその内容をチェックするだけであれば、顧問料は安くなります。

しかし、多忙な院長先生やスタッフが正確に会計入力を続けるのは負担が大きいため、記帳代行を依頼するケースも少なくありません。記帳代行を依頼する場合、月額で1万円から3万円程度、あるいは仕訳数(取引数)に応じた従量課金制で料金が加算されることが一般的です。自院の事務能力とコストのバランスを考えて選択する必要があります。

給与計算や年末調整などのオプション業務

スタッフを雇用しているクリニックでは、毎月の給与計算や年末調整の手続きが必要です。これらを税理士に依頼する場合、別途費用が発生します。

給与計算は、スタッフ一人あたり月額1,000円から2,000円程度が相場です。基本料金プラス人数分の料金という設定が多いです。年末調整についても同様に、基本料金プラス人数分の処理費用がかかります。社会保険の手続きなどは、税理士ではなく社会保険労務士の独占業務となるため、提携している社労士を紹介されるか、別途社労士と契約する必要がありますが、税理士事務所によってはワンストップで対応できる体制を整えているところもあります。

医療法人化支援などの特殊業務

通常の顧問契約の範囲を超えた、特殊な業務を依頼する場合も費用が発生します。代表的なものが「医療法人化」の支援です。医療法人の設立認可申請は非常に複雑で専門的な知識を要するため、通常の顧問料とは別に、数十万円から百万円程度のスポット報酬が必要となります。

その他にも、税務調査の立会い、事業承継対策、M&Aのサポート、融資のための事業計画書作成などは、通常は別料金となります。これらの業務が発生する可能性がある場合は、あらかじめ料金体系を確認しておくと安心です。

クリニックの税理士顧問料を細かく調整することは可能か?

税理士から提示された見積もりが予算オーバーだった場合や、経営状況に合わせてコストを削減したい場合、顧問料を調整することは可能なのでしょうか。結論から言えば、契約内容を見直すことで調整は可能です。単に「安くしてほしい」と値引き交渉をするのではなく、業務の分担や関わり方を変えることで、お互いに納得のいく形でコストダウンを図る方法があります。

業務の切り分けによるコストダウン

まず検討すべきは、税理士に依頼している業務のうち、院内で対応できるものがないかを見直すことです。最も効果が大きいのは「記帳代行」の部分です。これまで領収書を丸投げしていたものを、院内のスタッフや院長自身が会計ソフトに入力するようにすれば、その分の作業料をカットすることができます。

最近のクラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳を作成する機能が充実しており、簿記の知識がなくても比較的容易に入力が可能です。院内に事務作業が得意なスタッフがいれば、そのスタッフに入力を任せることで、税理士への支払いを減らすことができるでしょう。ただし、入力ミスが多いと修正作業に時間がかかり、かえって税理士の負担が増えてしまうこともあるため、導入時には税理士から初期指導を受けることをお勧めします。

訪問回数の見直し

次に検討すべきは、税理士の訪問頻度です。毎月訪問を受けている場合、それを「2ヶ月に1回」や「3ヶ月に1回」に減らすことで、顧問料の減額交渉が可能です。経営状態が安定していて、毎月緊急の相談事項がないのであれば、必ずしも毎月顔を合わせる必要はないかもしれません。

試算表(月次の決算書)はメールやチャットで送ってもらい、質問があれば電話やオンラインで済ませるというスタイルに変更することで、税理士側の移動時間や拘束時間を減らし、その分を顧問料に還元してもらうという考え方です。ただし、経営状況が悪化している時や、大きな設備投資を考えている時などは、密にコミュニケーションを取る必要があるため、安易に訪問回数を減らすべきではありません。

自計化の推進

前述の業務切り分けとも関連しますが、「自計化(じけいか)」を推進することは、コストダウンだけでなく、経営のスピードアップにもつながります。自計化とは、自社で会計ソフトを使って日々の経理処理を行うことです。

税理士に記帳を依頼していると、試算表が出来上がってくるまでに1ヶ月から2ヶ月のタイムラグが生じることがあります。これでは、現在の経営状態をリアルタイムで把握することができません。自計化を進めれば、日々の売上や経費の状況を即座に確認でき、迅速な経営判断が可能になります。税理士の役割を「記帳代行者」から「データのチェックとアドバイスを行う専門家」へとシフトさせることで、より付加価値の高いサービスを受けながら、コストパフォーマンスを向上させることができるのです。

オンライン対応の活用

新型コロナウイルスの流行以降、税理士業界でもZoomやTeamsなどを使ったオンライン面談が一般的になりました。税理士にとって、クライアント先への移動時間は大きなコスト要因です。オンライン面談であれば移動時間がゼロになるため、その分、顧問料を安く設定している事務所も増えています。

また、資料のやり取りも郵送や手渡しではなく、クラウドストレージや専用の共有ソフトを使うことで、郵送費や手間を削減できます。ITツールに抵抗がなければ、デジタル対応に積極的な税理士事務所を選び、フルオンライン型の顧問契約を結ぶことで、大幅なコストダウンが期待できるでしょう。

クリニックに強い・特化した税理士を活用するメリット

税理士にはそれぞれ得意分野があります。製造業に強い税理士、飲食業に強い税理士、そして「医療業界」に強い税理士です。クリニックの顧問税理士を選ぶ際は、費用だけでなく、この「専門性」が極めて重要になります。一般的な税理士と比べて、医療に特化した税理士を活用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

医療特有の税制や会計処理への精通

医療業界には、一般企業とは異なる独自の税制や会計ルールが存在します。例えば、「社会保険診療報酬の所得計算の特例(措置法26条)」という制度があります。これは、社会保険診療収入が5,000万円以下などの条件を満たす場合、実際の経費ではなく、法律で定められた概算経費率を使って所得を計算できるというものです。この制度を使うべきか、実額計算をするべきかの判定は、税額に大きな影響を与えます。

また、消費税においても、社会保険診療は非課税ですが、自由診療や物品販売は課税対象となるため、その区分や計算方法は複雑です。医療に詳しくない税理士の場合、これらの特例の適用漏れや、消費税の計算ミスが発生し、無駄な税金を払うことになったり、逆に税務調査で指摘を受けたりするリスクがあります。医療特化の税理士であれば、こうした専門的な論点を熟知しており、適正かつ有利な税務処理を行うことができます。

経営分析と増患対策へのアドバイス

医療に強い税理士は、単に税金の計算をするだけでなく、クリニックの経営状態を診断し、改善のためのアドバイスを提供してくれます。彼らは数多くのクリニックの顧問先を持っているため、診療科目ごとの平均的な売上、経費率、人件費率などのベンチマークデータを持っています。

「先生のクリニックは、同規模の他院と比べて材料費率が高すぎます」「人件費の割合が適正値を超えています」といった具体的な比較に基づいた指摘を受けることができます。さらに、集患(増患)のためのマーケティング施策や、ホームページの活用方法、リコール率を上げるための取り組みなど、経営改善に直結する具体的なノウハウを提供してくれることもあります。

医療法人化の適切なタイミング診断

クリニック経営において、医療法人化は大きな転機となります。節税効果や事業承継の円滑化など多くのメリットがありますが、社会保険への強制加入などのデメリットもあります。医療法人化すべきかどうか、またそのタイミングはいつが良いのかは、個々のクリニックの状況によって異なります。

医療に強い税理士は、将来の所得予測や家族構成、ライフプランなどを総合的に考慮し、最適な法人化のタイミングをシミュレーションしてくれます。また、煩雑な都道府県への認可申請手続きや、設立後の運営サポートもスムーズに行ってくれます。経験の浅い税理士に依頼すると、認可が下りるまでに時間がかかったり、設立後の運営でトラブルが発生したりする可能性があるため、この分野の実績は非常に重要です。

医療機器の導入や資金調達のサポート

最新の医療機器を導入したい、分院を出したい、といった際の資金調達も、税理士の腕の見せ所です。医療に強い税理士は、医療向けの融資制度や、銀行の審査基準を熟知しています。

事業計画書の作成支援はもちろん、金融機関の担当者を紹介してくれたり、面談に同席して交渉をサポートしてくれたりします。また、高額な医療機器を導入する際に、一括購入すべきかリースにすべきか、あるいは補助金や税制優遇(中小企業経営強化税制など)が使えないかといったアドバイスも的確に行います。

税務調査への対応力

クリニックは現金収入があり、高所得者が多いため、税務署の調査対象になりやすい業種の一つと言われています。税務調査が入った際、調査官はカルテと日計表の突合や、自費診療の計上漏れ、材料費の在庫管理などを厳しくチェックします。

医療に強い税理士は、税務署がどこを見るか、どのような指摘をしてくるかを熟知しています。日頃の記帳指導から税務調査を意識した対策を行い、いざ調査が入った際にも、院長の味方となって毅然と対応し、不当な課税を防いでくれます。この安心感は、専門特化型ならではの大きなメリットです。

クリニックに強い税理士を探す方法

では、実際にクリニックに強い税理士を探すにはどうすれば良いのでしょうか。知り合いの税理士に頼むのが一番手軽かもしれませんが、その人が必ずしも医療に詳しいとは限りません。ここでは、専門性の高い税理士と出会うための効果的なルートをいくつか紹介します。

医療関係者や先輩医師からの紹介

最も信頼性が高く、失敗が少ないのが「紹介」です。特に、すでに開業していて経営がうまくいっている先輩医師や、大学の同窓生からの紹介は有力です。「あの税理士さんは医療のことをよく分かっていて、相談しやすいよ」といった生の声は、何よりの判断材料になります。

ただし、紹介されたからといって無条件に契約するのではなく、自分のクリニックの規模や方針に合うかどうかは、必ず自分で面談をして確認する必要があります。また、紹介者の手前、断りづらくなったり、契約後に不満があっても言い出しにくくなったりするというデメリットも考慮しておく必要があります。

インターネット検索と専門サイトの活用

現代ではインターネット検索が最も一般的な方法です。「〇〇市 クリニック 税理士」「歯科医院 税理士 おすすめ」といったキーワードで検索すると、多くの税理士事務所のホームページがヒットします。

ホームページを見る際は、トップページに「医療特化」「クリニック専門」と大きく謳っているか、実績紹介やコラム記事に医療に関する専門的な内容が掲載されているかを確認しましょう。また、税理士検索サイトやマッチングサイトも便利です。条件を指定して検索でき、複数の事務所に一括で見積もり依頼を出すことも可能です。ただし、掲載されている情報が全てではないため、最終的には直接会って話をすることが不可欠です。

税理士紹介会社の利用

自分で探す時間がない、あるいはどうやって選べば良いか分からないという場合は、税理士紹介会社を利用するのも一つの手です。紹介会社のコーディネーターが、クリニックの要望(予算、地域、年齢、サービス内容など)をヒアリングし、条件に合った税理士を無料で紹介してくれます。

紹介会社は登録している税理士の得意分野や人柄を把握しているため、医療に強い税理士をピンポイントで提案してもらえる可能性が高いです。契約に至った場合、紹介料は税理士側が支払う仕組みになっていることが多いため、クリニック側の金銭的負担はありません。

医療機器メーカーや卸業者からの情報

開業準備中や日々の取引でお世話になっている、医療機器メーカーの担当者や医薬品卸の営業担当者(MS)も、意外な情報源となります。彼らは多くのクリニックに出入りしており、どの医院がどの税理士と付き合っているか、またその評判はどうあかといった現場の情報を持っています。

「開業に強い税理士さんを知りませんか?」と聞いてみると、過去に一緒に仕事をして信頼できる税理士や、評判の良い事務所を紹介してくれることがあります。彼らは自社の顧客であるドクターの成功を願っているため、親身になって情報提供してくれることが多いでしょう。

クリニックが税理士と契約する上での留意点

候補となる税理士が見つかったら、いよいよ契約に向けた話し合いになります。しかし、ここで焦って契約してしまうと、後々「こんなはずじゃなかった」というトラブルになりかねません。長く付き合っていくパートナーだからこそ、契約前に確認しておくべき重要なポイントがあります。

契約範囲の明確化

最もトラブルになりやすいのが、「どこまでの業務をやってくれるのか」という認識のズレです。「顧問料を払っているのだから、経理のことは全部やってくれると思っていた」という院長と、「契約は税務監査と申告だけで、記帳代行や給与計算は別料金です」という税理士との間での食い違いです。

見積もりをもらう段階で、以下の項目について、基本料金に含まれるのか、別料金なのか、あるいは対応不可なのかを明確に確認しましょう。 ・記帳代行 ・年末調整、法定調書の作成 ・償却資産税の申告 ・税務調査の立会い ・給与計算 ・社会保険の手続き(社労士業務の範囲) ・医療法人の届出関係 ・定期訪問の頻度と時間 これらの内容を明記した「業務委託契約書」を取り交わすことが重要です。

コミュニケーションの相性とレスポンス

税理士とは、お金や経営という非常にデリケートな話題を共有することになります。そのため、知識や実績だけでなく、「話しやすさ」や「価値観が合うか」といった相性も非常に大切です。偉そうな態度をとる、専門用語ばかり使って説明が分かりにくい、こちらの意図を汲み取ってくれない、といった税理士では、相談すること自体がストレスになってしまいます。

また、レスポンスの早さも重要なチェックポイントです。質問のメールを送っても数日間返信がないようでは、緊急時の対応に不安が残ります。面談時やメールのやり取りを通じて、誠実に対応してくれるか、フットワークは軽いかを見極めましょう。

担当者の経験と資格

税理士事務所と契約する場合、所長税理士が立派な経歴を持っていても、実際に担当するのは資格を持っていない職員や、経験の浅い新人であるケースが多々あります。担当者が誰になるのか、その人は医療業界の経験があるのか、税理士資格を持っているのかを事前に確認しておくべきです。

もし無資格のスタッフが担当になる場合でも、所長税理士によるチェック体制がしっかりしているか、重要な局面では所長が出てきてくれるかを確認しましょう。担当者の能力不足を感じた場合に、交代をお願いできるかどうかも聞いておくと安心です。

解約条項の確認

残念ながら、契約後にサービス内容に不満が出たり、経営方針が変わったりして、税理士を変更したくなる可能性もあります。その際にスムーズに解約できるよう、契約書の解約条項を確認しておきましょう。

「解約の申し出は〇ヶ月前までに行う」といった予告期間や、違約金の有無などをチェックします。また、解約時に会計データや預けている資料を速やかに返却してもらえるかどうかも重要なポイントです。立つ鳥跡を濁さず、お互いに気持ちよく契約を終了できるような条項になっているかを確認してください。

まとめ

クリニック経営において、税理士は単なる「税金の計算係」ではありません。複雑な医療税務を適正に処理し、リスクを回避する「守りの要」であると同時に、経営分析を通じて収益改善や成長戦略をサポートする「攻めのパートナー」でもあります。

顧問料の相場は、個人経営で月額3〜5万円、医療法人で5〜10万円程度が一般的ですが、売上規模や依頼する業務範囲によって大きく変動します。コストを抑えることも大切ですが、安さだけで選んでしまい、必要なアドバイスが得られなかったり、税務リスクを見落とされたりしては元も子もありません。

重要なのは、以下の3点です。

  1. 医療業界に特化した専門知識を持っているか
  2. 自院のニーズに合ったサービス内容と料金体系か
  3. 院長先生とコミュニケーションの相性が良く、信頼できるか

これらを見極めるためには、複数の税理士と面談し、比較検討することをお勧めします。また、現在の税理士に不満がある場合は、セカンドオピニオンを利用したり、思い切って変更を検討したりすることも、経営改善の一つの手段です。

クリニックの発展と院長先生の豊かな人生のために、最良のパートナーとなる税理士を見つけてください。

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この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。