漫画家の確定申告はどうすれば良いか? 現役税理士が徹底解説

税務

本記事⁨⁩では、漫画家の方が確定申告をする際に、どのようなポイントに気をつけて進めれば良いか、そもそも確定申告の対象なのか、確定申告をどのようにすれば良いのか、などの基本的な情報について解説をしていきます。税理士をお探しの方については、漫画家に強い税理士を探す方法、の記事も併せてご覧ください。

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漫画家の確定申告はどうすれば良いか? 現役税理士が徹底解説

漫画家は確定申告が必要か?

漫画家として出版社やプラットフォームから報酬を得ている場合、多くのケースで確定申告が必要となります。その義務の有無を判断する上で重要なのは、口座に振り込まれた金額ではなく、そこからアシスタント代や機材費などの経費を差し引いた「所得(利益)」がいくらあるかという点です。

専業漫画家(個人事業主)の場合

出版社と専属契約を結んだり、フリーランスとして複数の媒体で執筆したりしている専業漫画家の場合、1月1日から12月31日までの1年間の「事業所得」が、国が定める「基礎控除額」を超えた場合に確定申告が必要となります。

基礎控除額とは、すべての人に適用される「税金がかからない枠」のことですが、この金額は税制改正によって変動することがあります(実際に令和7年以降、この基準は見直されています)。重要なのは、ご自身の漫画事業による所得(原稿料+印税-必要経費)が、その年に適用される基礎控除額を上回っているかどうかです。売上が大きくても、アシスタントへの給与支払いやスタジオの家賃、高額なPC機材への投資などで経費がかさんでいれば、所得は低くなり、申告義務が生じないケースもあり得ます。

しかし、漫画家にとって確定申告は「義務」以上の意味を持ちます。なぜなら、出版社から支払われる原稿料や印税は、支払いの段階であらかじめ「源泉所得税」が差し引かれていることが一般的だからです。多くの場合、10.21%(1回の支払いが100万円を超える部分は20.42%)という税率で天引きされています。 漫画家は経費率(売上に対する経費の割合)が高くなりやすい職業です。そのため、実際に納めるべき税額よりも、源泉徴収で天引きされた金額の方が多くなっているケースが頻繁に発生します。この場合、確定申告を行うことで、払いすぎていた税金が還付金として戻ってきます。つまり、漫画家にとって確定申告は、納税の義務を果たすだけでなく、自分の売上の一部を取り戻すための重要な手続きなのです。

副業で漫画を描いている場合

会社員として働きながら、同人誌即売会での頒布や、Webでの漫画連載、SNSでのPR漫画案件などで収入を得ている場合も注意が必要です。この場合、本業の給与以外の所得(漫画活動による所得)の合計が、一定の基準(一般的に20万円)を超えると確定申告が必要となります。 同人活動の場合、印刷費やイベント参加費、搬入搬出費などが経費となります。これらを売上から引いた利益が基準を超えるかどうかが判断の分かれ目です。

住民税の申告に関する注意点

「所得が基準以下だから確定申告はしなくていい」というのは、あくまで国税である「所得税」の話です。お住まいの地域に納める「住民税」には、そのような少額不申告の特例はありません。漫画活動による所得が少しでも発生していれば、別途、市区町村へ住民税の申告を行う必要があります。これを怠ると、所得証明書が発行できないなどの不利益を被る可能性があります。

開業届と確定申告の関係

開業届を提出していないと確定申告はできないのでしょうか?開業届とは個人事業主として事業を開始するタイミングで税務署へ提出する書類になります。結論から言うと、開業届を提出していなくても、確定申告は行う必要があります。所得が一定金額を超える場合は必ず確定申告を行う必要が出てきますので、この点留意しましょう。

開業届を提出していない場合の罰則

開業届を税務署へ提出していない場合、何か罰則はあるのでしょうか?開業届は、事業開始日から1ヶ月以内の提出が義務付けられています。仮に開業届を提出していない場合、もしくは1ヶ月を超えて提出した場合については罰則は特段存在しません。

青色申告は青色申告承認申請書の提出が必要

青色申告で確定申告を行いたい場合はどのようにすればよいでしょうか?青色申告で確定申告を行う場合には、事前に税務署へ青色申告承認申請書の提出が必要になります。これの提出がないと青色申告で確定申告を行うことができず、各種税メリットを享受することができません。

漫画家における記帳とは?

記帳とは?

記帳とは税務申告における基礎となる帳簿作成作業のことを指します。この記帳の結果がないと、そもそも確定申告を作成することができません。記帳と言っても単に数字を入力するだけでなく、税法に照らしてどのような処理をすべきかを判断していく必要があります。特に確定申告の直前まで帳簿を作成していない場合、確定申告の提出期限に間に合わない可能性があります。

確定申告のための帳簿作成に必要書類とは?

帳簿作成のためにどのような書類が必要になってくるのでしょうか?後述する確定申告に必要な書類とも一部被りますが、例えばまずは銀行口座明細になります。通帳もしくはインターネットバンキングの明細が該当します。続いて領収書などの証憑類です。これらの証憑類に基づき帳簿は作成されていきます。最後に出版社などから送られてくる原稿料を記した支払明細書です。これに基づいて個人事業主としての売上が計上されます。

漫画家の確定申告の流れについて

漫画家の確定申告の必要書類を集める

確定申告にはどのような必要書類があるのでしょうか?確定申告書を筆頭に、青色申告決算書(青色申告で確定申告を行う場合)、経費に計上するための証憑類(請求書や銀行口座明細など)、保険料控除の証憑や住宅ローン控除など各種控除書類が挙げられます。

漫画家の確定申告書類を作成

確定申告書において、第一表と第二表を使うことになります。第一表は、税金計算をするための表であり、最終的な所得税の支払い金額を計算します。第二表は税金計算をする上での各種所得や控除項目の明細を記入するものになります。

漫画家の方の確定申告の提出方法

漫画方の方が確定申告を提出する方法にはどのような方法があるのでしょうか?

税務署へ提出

書面で作成をした場合は、税務署へ提出することで確定申告を終わらせることができます。

郵送で提出

税務署へ提出する方法とほぼ同じですが、直接税務署へ持って行くのではなく、郵送で確定申告書を提出する方法です。

e-tax

各種初期設定は必要ですが、電子で確定申告を提出することが可能です。この場合は書面の作成が不要なので、全て電子上で完結することが可能です。

確定申告に基づき納税を行う

確定申告を提出して終了ではなく、仮に確定申告の結果納税を行うことになった場合には、確定申告期限までに納付すべき金額を納める必要がありますので留意しましょう。

漫画家の確定申告の提出期限について

提出期限の原則

漫画家の方が確定申告を行う場合の提出期限はいつになるのでしょうか?個人事業主か法人かによって異なってきます。個人事業主の場合は、毎年3月15日までに前年の1月から12月の所得を確定申告する必要があります。また法人の場合は法人で定めた決算期から2ヶ月以内に確定申告を行う必要があります。

漫画家が確定申告の提出期限に遅れた場合

漫画方の方が確定申告雨の提出期限に遅れた場合、どうなるのでしょうか?のちに税務調査で提出遅延や無申告が明らかになった場合には、加算税や延滞税などのペナルティを、通常支払う税金に加えて支払う必要が出てきます。こちらは回避することができないため、漫画家の方にとっては税負担が単純に重くなってしまいます。そのため、忘れずに期限までに確定申告を行うようにしましょう。

漫画家の経費として計上できるもの

漫画家の方が経費として計上できるものにはどのようなものがあるのでしょうか?まず基本的な考え方としては、漫画家の仕事として支出したものについてのみ経費として計上できるということです。つまり、プライベートで使った経費については経費計上できません。また、水道光熱費や通信費のようにプライベートと業務用を混合して利用しているケースもあると思います。この場合は合理的な基準を決めて、プライベート部分と業務部分に按分をして経費計上することになります。そのほか経費として計上可能なものの具体例としては、

・交通費
・交際費
・漫画家の仕事として使っている文房具などの購入費

などが考えられます。

漫画家が確定申告でできるポイント・税金対策とは?

税金の負担を適正化するためには、計上すべき経費を計上するところから始まります。

経費の網羅的な計上

先述した通り、漫画家には色々な経費が発生しますが、経費の部分だけ所得が減ることになりますので、結果として税金負担が小さくなるのです。もちろん事業に関係のない費用は経費化できませんが、領収書等を適切に管理していないケースだと、計上すべき経費の計上漏れが発生しているケースもありますので、まずは領収書などの証憑類をきちんと整理する、日々帳簿を作成するなど、基本的な対策からスタートしましょう。

青色申告による青色申告特別控除の活用

青色申告で確定申告を行う場合、事業所得から最大で65万円の所得控除を行うことができます。これは青色申告のみに認められており、白色申告の場合は適用することができません。ただし青色申告の場合は帳簿類の作成・保存など白色申告よりも要件が厳しくなっております。

平均課税の活用

所得税の場合、累進課税となっており所得の金額が大きいほど、かける税率も高くなってしまいます。漫画家のように年収にブレがある場合、ある特定の年は税金負担が重たくなるなどの弊害も発生します。そこで所得のブレが多い場合は平均課税制度を活用することで、所得を平準化し税負担を抑えることができます。

確定申告不要のケースでも還付のケースあり

所得の金額がなく確定申告が不要となる場合でも、例えばサラリーマンと兼業していて、確定申告をした方が税金の還付もあるケースもあるため、確定申告が不要だからといって、全く確定申告を気にしない、というのは勿体無いです。

証憑の保管をしっかりと行う

前述しましたが、基本的な考え方としては経費として計上すべきものを網羅的に計上することです。証憑をしっかりと管理していない場合、経費計上が漏れがちになります。必ず事業を行うために支出した費用に関する証憑は保管するようにしましょう。

漫画家は確定申告を自分で対応可能か?

漫画家の方は確定申告を自分で対応可能なものでしょうか?答えは、年商や漫画家以外の収入がどの程度あるかによって異なってきます。漫画家としての収入が小さく、その他の収入もほぼないような状況であれば確定申告も非常にシンプルなので、ご自身でも十分に対応可能でしょう。一方で、それなりの規模があり、取引が複雑になってきているようであれば、ご自身で対応するのはだんだん難しくなってくるかもしれません。

漫画家が確定申告を税理士へ依頼した方が良いケース

漫画家の方がご自身で確定申告を対応せず税理士へ依頼した方が良いケースとは、どのようなケースになるのでしょうか?

正しい確定申告ができる

ミスなく確定申告をしたいケースです。ご自身でやるとどうしてもミスが発生しやすいため、プロに任せて正しい確定申告をするという場合は税理士へ依頼をした方が良いでしょう。

面倒からの解放

本業に集中したいケースです。確定申告の時期に非常に時間を取られてしまい本業に集中が難しくなってしまうため、確定申告作成業務から解放されたいという場合は税理士へ依頼した方が良いでしょう。

節税の最大化

経費の網羅的な計上に加えて活用できる税額控除などを漏れずに活用してくれるため、税メリットを最大化することが可能です。

不安からの解放

ミスが嫌な性格の方などですと、確定申告を提出した後も実際に税務調査などで指摘があるまではミスがあったのかどうかもわかりません。そのような不安から解放されます。

副業の漫画家のケース

サラリーマンなどで副業として漫画家の収入があるケースもあるかと思います。この場合は専業で個人事業主として漫画家をやられている方と比較して留意が必要です。サラリーマンが本業の場合は給与所得になるため、その勤めている会社が年末調整を行い、サラリーマン個人としては確定申告不要になります。一方で副業収入がある場合は、原則確定申告が必要になります。副業で収入がある場合確定申告が漏れるケースが多いため、留意が必要です。

漫画家の確定申告はどうすれば良いか? まとめ

以上のように漫画家の方が確定申告をする際にはどうすれば良いのか、について解説を行ってきました。本記事をご参考にされて、ぜひ確定申告の対応をされてください。

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この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。