本記事では、建設業経営者の方が、税理士を探す際に考えるべきポイントや留意すべき点、等について解説し、正しく税理士探しができるようにサポートいたします。本記事をご覧いただくことで、適切な税理士と契約できる可能性が高まります。
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本記事での建設業の定義
本記事では、建設業を「建物等を建設する業種で、実際に工事を行いその元請から下請けもしくは一人親方で活動している個人もしくは法人」という定義を置いております。建築士などの建築業については別記事にて記載をしておりますので、こちらでは建設業にフォーカスを当てて記載させていただきます。規模についても制約はなく、多くの従業員を抱えている個人事業主もしくは法人から1名しかいない個人の場合も本記事の対象としております。
建設業における税務の特徴
建設業の場合、元請なのか下請けなのか、複数名従事者がいるか、一人親方なのかについて、税務における論点が大きく異なってきます。まず元請からですが、建設に関する仕事を顧客や行政から請負、建設を行なって建設物を顧客へ引き渡すところまでが仕事です。元請会社自らの従業員等で建設する場合もあると思いますが、多くの場合は提携している下請け会社と連携しながら建設にあたることが多いでしょう。また、下請け会社以外にも自社でアルバイトや期間労働者を雇ったり、もしくは建築士や不動産関連企業など建設に関連する業種との連携も必要になってきます。
元請の場合は、規模によっては税務上の長期大規模工事に該当して、工事完成時に売上を計上するのではなく、工事進行基準として工事が進んだ都度売上を計上する必要があります。これが他の業種と売上処理において異なるところです。また原則は工事が完成して引き渡しをした段階で売上を計上する工事完成基準が適用されます。工事完成基準の場合、売上に対応する費用(例えば、資材などの材料費、作業にかかる従業員や外部協力者の労務費、もしくは工具などの経費)については売上を計上するまで費用に計上することはできず、資産として計上することで繰延べ、実際に売上を計上する際にようやく売上原価として計上することが可能です。工事完成基準についても他の業種と比較して特徴のある税務処理になります。このように売上とそれに対応される売上原価、経費が遅いタイミングで計上されるのが建設業の特徴となります。
また、建設に必要な機械装置等を自社で購入する場合には、多額の資金が抱えるケースがあることから、減価償却費計算やそれに関する各種税額控除、もしくは特別償却など多くの税務論点が発生します。償却資産税の申告も併せて必要になってきます。借入を行う場合には支払利息の費用計上も必要になってきます。税務論点ではないですが、多額の資金が必要となる場合、綿密な事業計画は必要になってくると思います。どの程度の資金が必要なのか(金利支払も含めて)、いつ損益分岐点を超えそうか、については最低限事前に固めておくべきでしょう。
さらに業種の特徴として、従業員・パートを雇うことが多いと思いますが、給与計算や年末調整、源泉徴収、社会保険周りが複雑になりがちですが、センシティブな内容なのでミスは許されません。建設業の特徴として完成工事基準で期末に完成品を引き渡していない場合は、そこまでかかった材料費や労務費、減価償却費等を含む経費は資産計上をする必要があるため、もれなく費用ではなく資産計上されているかどうかを期末に確認する必要があります。
下請けの場合も売上や費用の構造が元請と同じであれば元請と同じような処理の仕方になりますが、一人親方のように業務委託として元請から依頼を受けた場合には、売上は作業をした分に対して支払われ、使用した工具等の経費が費用になる構造となります。
建設業の資金繰り
前述の通り、元請での建設業は費用が先行しやすく、一方で収入については工事が完成してから入ってくるため、収支のタイミングがずれやすい業種だと言えます。よって資金繰りは建設業にとって非常に重要な事項の1つでしょう。資金調達で一般的なのは日本政策金融公庫による融資と信用保証付の銀行融資の2つになります。この2つは創業時から比較的融資がおりやすく検討すべき融資ですので、まずはご検討ください。
資金調達にあたっては、過去の実績がある個人事業主や法人であれば、過去の財務諸表の提出が求められ、併せて事業計画書の提出も求められることになります。後述しますが、経験のない経営者の方が、自力で財務諸表(貸借対照表や損益計算書)や事業計画書を作成するのは非常に難易度が高いです。そこで税理士へ作成のサポートしてもらうことで、正しい財務諸表と事業計画書が作成できるだけでなく、金融機関に対しても一定の信頼を得た書類を提出することができ、コミュニケーションがスムーズになります。
建設業に税理士が必要なタイミング
建設業の経営者にとって、いつ税理士と契約するのが良いのでしょうか?まず考えられるのは消費税の課税事業者になるタイミングです。免税事業者であっても、年商1000万円を超える段階で課税事業者となるため、消費税申告が必要になってきます。この消費税申告ですが、所得税や法人税と異なり帳簿の付け方がやや複雑なものになっておりますし、消費税申告も原則課税と簡易課税で計算方法も計算結果も変わってくるため、採用した方法によって税額のメリット・デメリットが発生します。このように消費税が入ると考えるべき事項が増えるため、税理士のアドバイスを受けるのがおすすめです。
他に考えられるのが、開業時です。前述した通り、業種として建設業は資金繰りがタイトになりやすい業種ですので、しっかりと決算書・税務申告書を税理士に作成してもらい、事業計画書についても必要に応じて税理士のサポートをもらう方が、いざという時金融機関から資金調達をスムーズにするためには良いと考えております。
建設業が税理士へ依頼できる内容・税理士を活用するメリット
建設業経営者が税理士へ依頼できる内容及びそのメリットとはどのようなものでしょうか?まずは前述しておりますが、資金繰り関連で過去の決算書やそれに関する税務申告書を税理士に作成してもらうことで信頼性の高い書類を金融機関へ提出することが可能となります。加えて、事業計画書作成のサポートも税理士からもらうことができます(サポートの範囲については税理士によって異なってきます)。
また、上記と関連しますが、帳簿作成から決算書、税務申告書の作成・提出までを税理士へ丸投げすることで、本業に集中できるようになるという点です。特に建設業は経理処理が複雑なることと、取引数も多いため、経営者ご自身で勉強されて帳簿作成から税務申告書作成までを対応されるのは非現実的です。特に法人税になると所得税よりも難易度が上がります。そのため、税務のプロである税理士へ依頼することで、効率的に経営を行うことが可能となってくるのです。
建設業が税理士と契約する際の料金
税理士の料金は主に、月額顧問報酬と決算申告時の報酬から構成されています。前者については、毎月税理士と税務相談に関してコミュニケーションをとるのに必要な金額になってきます。記帳代行を依頼する場合にはオプション料金として、毎月の月額顧問報酬に加算して金額を支払うことになります。月額顧問報酬は概ね2〜3万円以上となることが一般的かと思います(特に建設業の場合は論点も多いため、他の業種と比較すると値段は高くなる傾向にあると言えます)。
後者の決算申告は、確定申告に際に税理士が作成する決算書及び確定申告書の作成料金として請求されるものになります。概ね月額顧問報酬の4〜6ヶ月分を請求されることが多いかと思います。また基本的には最低限のサービスしか入っていないことが多いので、例えば従業員がいて年末調整をお願いしたり、消費税の課税事業者のため消費税申告書が必要な場合は、別途プラスで料金がかかってきます。
建設業に強い税理士の選び方
建設業に強い税理士の選び方として、最も重視されるポイントは、税務に対する知見はもちろんのことですが、相性が一番大きいと言えます。他の士業と比較しても定期的にコミュニケーションをとる士業になりますので、相性が悪いと、正しくコミュニケーションが取れず相談内容が漏れてしまったりするため、せっかく顧問契約をしていても勿体無い結果となります。必ず複数名の税理士と面談して金額だけではなく、相性を見ながら税理士と契約することをおすすめいたします。
また税理士側に、建設業の経験があるかどうかがポイントになってきます。税務は業界関係なく共通の要素が多いですが、例えば建設業のビジネスの流れの理解、専門用語の理解、どのような証憑類がるのかの理解、などは経営者とコミュニケーションをスムーズに行うことについて非常に重要な要素です。また、資金繰りなどのサポートを行う際にもビジネス理解が大前提になってくるため、建設業における経験は税理士を選ぶ要素の一つとなってくるでしょう。
建設業が税理士を探す方法
税理士の探し方としては、まず知り合いの経営者から紹介してもらうことが挙げられます。特に建設業の経営者仲間からの紹介であれば、建設業に強い税理士である可能性が高いため、一定の信頼性を持って税理士と契約を行うことができます。2つ目は、ホームページから探すです。これは検索サイトに、「建設業 税理士」などのキーワードを入れて、かつ自身の拠点としている地域の名前を選ぶことで検索する方法です。地域まで絞るとある程度の数の税理士のホームページになりますので、気になった事務所に対して個別に連絡をし、面談しながら相性を確認していきます。3つ目については税理士紹介サイトを使うことです。税理士紹介サイトは顧客側のニーズをエージェントが確認し、それを踏まえた上で税理士数名を紹介してくれるサービスです。紹介サイトは税理士からお金をとるビジネスモデルが一般的ですので、経営者側は一般的に無料で使えるのがメリットと言えます。
建設業に強い税理士の具体例
建設業に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます。
まずは、匠税理士事務所様(https://www.takumi-tax.jp/2016/01/post-449.html)です。東京都自由が丘に拠点を構えられている税理士事務所様で、建設業・建築業に深い知見とご経験をお持ちです。個人事業主のお客様から法人のお客様まで幅広く対応されている事務所様で確定申告以外にも会社設立や融資支援など、幅広いサービスを提供されています。
次に、ビジョン税理士法人様です(https://suzuki-tax.net/shacho-kyokasho/construction-industry-tax-accountant)。神奈川県の横浜を拠点にされている税理士事務所様で、所得税・法人税・消費税の確定申告や税務相談はもとより、相続税などの資産税や会社設立支援まで幅広く対応されています。
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。特にコンサルティング経験も豊富ですので建設業様のお悩みを深く理解し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
まとめ
以上のように建設業にとって税理士は必要かについて記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
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この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。