本記事では、歯科医院の設備機器について減価償却で経費計上するための概要について解説をしていきます。歯科医院においては毎年確定申告を行う必要があり、経費を集計する必要がありますが、設備機器についてはどのように経費計上すれば良いか、減価償却とは何か、について詳細を説明していきます。
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歯科医院における減価償却の活用
減価償却とは何か?
まず減価償却とはなんでしょうか?これは税法上に定められたルールで、固定資産に該当するものについては、法定で定められた年数や方法に従って、毎年取得した原価を経費計上するものになります。固定資産を取得した際に、その取得した支出はその年の経費に全額なるわけではなく、減価償却という計算方法を用いて税法上で定められた固定資産の耐用年数の期間に渡って計上されることになります。
固定資産の減価償却にあたっては、まず取得した資産が固定資産に該当するか否かを判断する必要があります。固定資産に該当しない場合には、該当する資産区分を見つけ、その税法に従って処理をすることになりますので、固定資産に該当しないからといって、支出年度に全額経費計上できるわけではないことに留意してください。
続いて、減価償却の対象となる固定資産の取得原価について計算する必要があります。固定資産を取得するために費やした費用のうち、一部は支出時の年度に経費計上することが可能です。利益が発生している年度は、なるべく経費計上できるものは経費として計上したほうが税額が小さくなります。この経費に計上できるものについてもルールが定められています。
次に固定資産の種類ごとの耐用年数です。こちらもルールで細かく定義されており、まず対象となる固定資産がどの分類に該当するのかを判断する必要があります。種類ごとに耐用年数の幅は広く、早いものだと2年、長いものだと数十年にもなるため、正しく種類を判別しないと正しい耐用年数よりも長い期間を耐用年数として設定してしまい、計上できる毎年の経費(減価償却費)が小さくなる可能性があります。
最後に償却方法の選択です。定額法と定率法という2つの方法があり、前者は耐用年数に渡って毎年均等に経費を計上する方法、後者は対象となる取得原価に毎年一定率を乗じて経費を計上する方法(この計算の場合、償却開始年度が最も経費計上金額が大きく、だんだん計上額が小さくなっていきます)となります。固定資産の種類ごとに法定の償却方法は決まっておりますが、税務署へ事前に届出することにより償却方法を変更することもできます。償却方法によって毎年の経費計上金額が変わってくるため、大変重要な論点になります。
歯科医院における減価償却の特徴
歯科医院においては、治療のための設備機器が多く存在するため、他の業種と比較すると減価償却の対象となる固定資産が多くなります。そのため、最初の段階で固定資産の登録を間違ってしまうと、以後誤った減価償却計算がずっと続くことになりますので、過小に計上すると税額上不利になりますし、多額に計上すると税務調査時の指摘によりペナルティを受けることになります。固定資産を減価償却するにあたっては一般的に固定資産台帳(一般的には会計ソフトを使用します)へ登録して管理することが多いです。
歯科医院の減価償却において気を付けるべきポイント
上記以外に歯科医院の減価償却において気を付けるべきポイントは何かあるでしょうか?減価償却計算そのものではありませんが、年1回1月末までに償却対象資産は事業所のある市区町村へ申告をする必要があります。土地や建物などの不動産については、市区町村より税額の通知があるので個別に申告する必要はありませんが、償却資産は事業主が自ら申告する必要があります。基本的に金額の多寡に関わらず申告対象となる償却資産は全て申告する必要があります。償却資産税には一定の免税点が設定されているので、償却資産の合計が僅少な場合には課税されないことになります。
歯科医院における減価償却の活用方法
歯科医院において通常の減価償却以外にも、税法で特別に定められている償却があり、通常の減価償却に加えて経費計上を行うことができます。その代表例が特別償却制度です。特別償却は通常の償却に加えて税法で定められた割合を追加で減価償却できる制度です。追加で減価償却した分、取得原価からは差し引かれるので将来の減価償却額が小さくなるのですが、その分早めに経費計上できるという点においてメリットがあります。
また特別償却以外にも一定の規模以下の事業については税額控除という制度との選択も可能です。こちらは通常の減価償却に加えて、税法で定められた率を取得原価に乗じた金額を税額から直接控除できるという制度になります。税額控除できる金額は一般的に特別償却よりも小さくなりますが、税額控除の場合は税額控除した金額は取得原価には反映されませんので、減価償却費は税額控除と別枠で全額計上することができ、中長期で考えると特別償却よりも節税効果を取ることができます。
歯科医院の減価償却における税理士の役割
歯科医院の減価償却において、税理士はどのような役割を果たすのでしょうか?上記解説してきた通り、固定資産の減価償却制度はかなり複雑です。固定資産をほとんど使わない業種であれば、減価償却計算はあまり問題になりませんが、歯科医院のように事業上固定資産を多数保有するような業種ですと、減価償却計算への対応はマストになってきます。固定資産台帳への登録から減価償却計算、償却資産税の申告や、特別償却・税額控除への対応など様々な処理を歯科医師一人で対応するのはあまり現実的ではありません。
そこで税理士の活用が視野に入ってきます。歯科医院においては減価償却計算だけでなく、年1回は少なくとも確定申告が必要になるため、税理士と顧問契約を締結することにより確定申告含めて丸ごと税理士へ依頼することが可能となるのです。当然償却資産税申告も税理士へ依頼することが可能ですし、税メリットのある特別償却や税額控除についても税理士へ相談することが可能です。
歯科医院が一般的に税理士を探す方法については、「歯科医院に強い税理士の選び方」の記事を参照ください。
歯科医院における減価償却のまとめ
以上のように歯科医院における減価償却費の解説を行ってまいりました。本記事をご参考になり、税理士の活用もぜひ検討してみてください。
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この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。