医師としての長年の夢である「自らのクリニックを開業する」こと。それは、地域医療に貢献するという崇高な使命を果たすと同時に、一人の医師から「経営者」へと転身する、大きな決断の瞬間でもあります。その夢を実現するための最大のハードルであり、また成功の鍵を握るのが「資金調達」です。
クリニック開業には、高額な医療機器や物件の内装費、そして開業当初の運転資金など、一般的な事業とは比較にならないほどの初期投資が必要となります。この資金調達を、いかにスムーズに、かつ有利な条件で実現できるかが、その後の医院経営を大きく左右すると言っても過言ではありません。
しかし、多くのドクターは臨床のプロフェッショナルであっても、財務や金融の専門家ではありません。「どれくらいの資金が必要なのか」「どこから借りれば良いのか」「銀行を納得させられる事業計画書とはどういうものか」。こうした不安や疑問を抱えながら、手探りで準備を進めている方も少なくないでしょう。
この記事では、これからクリニック開業という大きな挑戦に臨む全てのドクターが、資金調達という重要なプロセスを成功に導くための全てを、網羅的に解説していきます。資金調達の基本的な知識から、金融機関が何を見ているのかという審査のポイント、そしてその成功確率を飛躍的に高める「コンサルタント」というパートナーの活用法まで、詳しく掘り下げていきます。
この記事を読み終える頃、あなたは資金調達に対する漠然とした不安から解放され、自らのビジョンを実現するための確かな道筋を手にしているはずです。
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歯科医院が開業時にコンサルタントを活用するメリット
歯科医院の開業における悩み
クリニック、特に歯科医院の開業は、他の業種と比べても特有の難しさがあります。臨床の現場で技術を磨いてきたドクターが、経営者として直面する悩みは深刻です。
莫大な初期投資と資金調達の不安
歯科医院の開業には、非常に高額な初期投資が求められます。歯科用ユニット(診療台)、レントゲン、特に近年需要の高いCTやマイクロスコープ、滅菌機器など、専門的な医療機器は一つひとつが数百万円単位です。
さらに、物件の取得費用や、X線室の防護工事などを含む特殊な内装工事費、そして開業当初の運転資金(スタッフ人件費、材料費)を考えると、数千万円から、場合によっては1億円を超える資金が必要となります。 これほどの巨額な資金をどうやって調達すればよいのか、借金を背負うことへの恐怖、金融機関の審査に通るのかという不安が、開業を目指すドクターの最初の大きな壁となります。
事業計画書の策定という未知の領域
資金調達に不可欠なのが「事業計画書」です。しかし、多くのドクターにとって、これは最も馴染みのない作業の一つです。 「診療圏調査とはどうやるのか」「1日の患者数をどう予測すればよいのか」「保険診療と自費診療の売上比率はどう設定すべきか」「人件費や材料費の適正な水準は」。 情熱や医療理念はあっても、それを金融機関が納得するような、客観的で論理的な「数字」と「言葉」に落とし込む作業は、極めて困難です。この計画書の出来栄えが、融資の成否を分けることを知りながらも、どこから手をつければ良いか分からない、というのが多くのドクターの本音でしょう。
経営者としての経験不足
勤務医時代は、医療行為に集中していれば良かったかもしれません。しかし、開業医は、スタッフを雇用し、マネジメントし、集患(マーケティング)を行い、資金繰りを管理する「経営者」です。 臨床スキルと経営スキルは全く別物です。スタッフの採用や教育、労務管理、そして集患戦略の立案など、経営者として判断すべきことは山積みです。これらの「経営」に関する知識や経験がないことへの不安も、大きな悩みとなります。
煩雑な行政手続きとスケジューリング
クリニックの開業には、保健所(診療所開設許可)、厚生局(保険医療機関指定)など、多くの行政機関への複雑な申請手続きが伴います。 これらの手続きは、提出期限が厳格に定められており、一つでも漏れがあれば、開業そのものが遅れてしまいます。内装工事のスケジュール、医療機器の搬入、スタッフの採用、行政手続き。これら全てのスケジュールを、ミスなく管理・調整していく作業は、想像を絶するストレスとなります。
歯科医院の開業に強いコンサルタントが提供するサービスとは
こうしたドクターの深刻な悩みを解決し、開業という複雑なプロジェクトを成功に導くのが、歯科医院の開業支援を専門とするコンサルタントです。彼らは、単なる相談相手ではなく、実務を動かすプロジェクトマネージャーとして機能します。
開業コンセプトの策定と診療圏調査
まず、ドクターの「想い」を形にすることから始めます。どのような医療理念を持ち、どのような患者層に、どのような医療(一般歯科か、矯正やインプラントなどの専門特化か)を提供したいのか。そのビジョンを明確にするための「開業コンセプト」を、共に策定します。 そして、そのコンセプトが実現可能な場所を探すため、専門的な「診療圏調査」を行います。開業候補地の人口動態、昼間・夜間人口、競合医院の状況などを、専用のデータベースや現地調査で徹底的に分析し、事業の成功確率が最も高い「開業地」を選定します。
事業計画書の策定支援
資金調達の鍵となる、事業計画書の作成を、ゼロから支援します。これは、コンサルタントの価値が最も発揮されるサービスの一つです。
投資計画の策定
診療圏調査の結果と、ドクターの診療方針に基づき、必要なユニット台数や医療機器(新品か中古か、リースか購入か)を検討し、内装工事費や運転資金を含めた、精緻な「総事業費」を算出します。無駄な投資を省き、適正な投資規模をアドバイスします。
収支計画と資金繰り計画の作成
診療圏のデータに基づき、「1日の想定患者数」「保険診療単価」「自費率」などを、現実的な数値で設定し、開業後3年~5年間の月次・年次の「収支計画」を作成します。 同時に、保険診療報酬の入金ラグ(2~3ヶ月遅れ)を考慮した、詳細な「資金繰り計画」も作成します。これにより、開業後の「黒字倒産」のリスクを防ぎます。
資金調達(融資)の実行支援
作成した事業計画書を基に、実際の資金調達をサポートします。
金融機関の選定と紹介
ドクターの状況(自己資金の額、開業地の特性など)に合わせて、最も有利な条件を引き出せる金融機関を選定します。日本政策金融公庫、福祉医療機構(WAM)、あるいはコンサルタントが強固な関係を持つ民間の銀行や信用金庫など、最適な窓口を紹介します。
融資面談のシミュレーションと同行
金融機関との融資面談は、ドクターにとって最大の関門です。コンサルタントは、面談で想定される質問をリストアップし、自信を持って答えられるように、何度も模擬面談(リハーサル)を行います。 そして、面談当日には「同行」し、ドクターが情熱や医療理念を語る横で、コンサルタントが事業計画の数字的な裏付けや返済計画の妥当性を、専門家として冷静に補足説明します。この二人三脚の体制が、金融機関に与える安心感を最大化します。
開業実務のトータルサポート
資金調達だけでなく、開業に必要なあらゆる実務をサポートします。
- 物件の選定と契約支援: 診療圏調査に基づき、具体的な物件を探索し、賃貸借契約の内容が不利でないかをチェックします。
- 設計・施工業者の選定: 歯科医院の設計・施工経験が豊富な、信頼できる業者を紹介し、見積もり内容を精査します。
- 医療機器・材料の選定: 複数のディーラーから相見積もりを取り、コストと性能のバランスが取れた機器選定をアドバイスします。
- 行政手続きの管理: 保健所や厚生局への各種申請手続きのスケジュールを管理し、行政書士などと連携して、期限内に不備なく完了させます。
- 集患(マーケティング)支援: クリニックのロゴやホームページの制作、Web広告、内覧会の企画・実施など、開業当初の集患戦略を立案・実行します。
- スタッフ採用・教育支援: 募集要項の作成から、面接のサポート、接遇マナーやレセプト業務といった開業前のスタッフ研修までをサポートします。
歯科医院が開業支援をコンサルタントへ依頼するメリット
多忙な勤務医生活を送りながら、これら全ての複雑なプロセスを、ドクターが一人で完璧にこなすことは、現実的に不可能に近いでしょう。開業支援コンサルタントを活用することは、多くの決定的なメリットをもたらします。
院長が「本来の業務」に集中できる
これが、最大のメリットです。開業準備期間中、ドクターが本当に集中すべきなのは、融資の書類作成や行政手続きではありません。それは、「最高の医療を提供する」ための準備です。 すなわち、最新の臨床技術の研鑽、導入する医療機器の性能の徹底的な比較検討、そして、自らの理念に共感してくれるスタッフの採用と教育。これら「院長にしかできない仕事」に全力を注ぐため、煩雑で専門的な業務をコンサルタントに任せることは、極めて合理的な経営判断です。
資金調達(融資)の成功確率が飛躍的に向上する
多くのドクターが開業に失敗する最大の要因は、資金調達の失敗です。自己流で作成した希望的観測だらけの事業計画書では、金融機関は納得しません。 開業支援コンサルタント(特に、税理士や公認会計士が母体)は、「銀行が何を求めているか」を熟知しています。彼らが作成に関与した、客観的データと緻密なシミュレーションに裏打ちされた事業計画書は、金融機関からの「信頼性」が全く異なります。 また、面談への同席による安心感と説得力の向上も、審査通過率を飛躍的に高める要因となります。
開業プロセスにおける「時間」の大幅な短縮
開業準備は、無数のタスクが複雑に絡み合うプロジェクトです。「どの順番で」「何を」進めるべきか、その最適解を素人が見つけるのは困難です。 コンサルタントは、開業までの「クリティカル・パス(最短経路)」を知っています。例えば、「融資の内定が出る前に、高額な内装契約を結んでしまう」といった、致命的な手戻りやスケジュールの遅延を防ぎます。専門家がプロジェクトマネージャーとして機能することで、準備期間は大幅に短縮され、計画通りのスムーズな開業が可能になります。
専門家ネットワークの活用(ワンストップサービス)
開業には、税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士、内装業者、医療機器ディーラー、Web制作者など、多くの専門家や業者の協力が必要です。 優れた開業コンサルタントは、これらの各分野で、歯科医院の実績が豊富な、信頼できる専門家・業者と、強固なネットワークを築いています。ドクターは、自ら玉石混交の業者を一つひとつ探す手間から解放され、質の高い専門家チームを、ワンストップで紹介してもらうことができます。
開業後の「失敗リスク」の低減
開業はゴールではなく、スタートです。開業後に経営が軌道に乗らず、苦しむケースも少なくありません。 コンサルタントと作成した事業計画書は、単なる融資資料ではなく、開業後の「経営の羅針盤(予算)」となります。診療圏調査に基づいた現実的な売上計画と、緻密な経費計画があるため、開業後に「なぜ計画と違うのか」をすぐに分析し、対策を打つことができます。 コンサルタントのサポートは、「なんとなく開業」してしまうリスクを根本から排除し、持続可能な経営の土台を築きます。
歯科医院が開業支援をコンサルタントへ依頼した方が良いケース
コンサルタントへの依頼には費用がかかりますが、以下のようなケースに該当するドクターは、その費用を支払ってでも、専門家のサポートを受けるメリットが非常に大きいと言えます。
経営に関する知識や経験が全くない医師
これが、最も典型的なケースです。「臨床一筋でやってきたため、経営や財務、マーケティングのことは全く分からない」。そうした自覚があるドクターは、無理をせず、最初から専門家の力を借りるべきです。 clinical skillとmanagement skillは、全く別の専門技術です。
高額な資金調達(数千万円以上)が必要な場合
歯科開業は、高額な設備投資を伴うため、必要な融資額も数千万円から1億円を超えることが珍しくありません。借入額が大きくなればなるほど、金融機関の審査は厳格になります。 自己流の事業計画書では、審査の土俵にすら上がれない可能性があります。高額な融資を確実に成功させるためには、金融機関の信頼を得られる、プロフェッショナルが作成した事業計画書が不可欠です。
自己資金比率が低い場合
開業資金の多くを融資に頼らざるを得ず、自己資金の比率が低い(例えば、総事業費の1割未満など)場合、金融機関は「リスクが高い」と判断します。 この不利な状況を覆すには、それを補って余りあるほどの、完璧な事業計画と、情熱的なプレゼンテーションが必要です。コンサルタントの支援は、この弱点をカバーする強力な武器となります。
開業準備と並行して勤務医を続けなければならない場合
開業準備には、数百時間単位の膨大な時間が必要です。もし、生活のために開業直前まで勤務医を続けなければならない場合、ドクター自身が準備に割ける時間は、物理的に限られます。 このような、時間が絶対的に不足しているドクターこそ、自らの「分身」として実務を代行してくれるコンサルタントの活用が必須です。
競争の激しいエリア(激戦区)で開業する場合
開業したい場所が、すでに多くの歯科医院がひしめく「激戦区」である場合、平凡な事業計画では勝ち目はありません。 「なぜ、この場所で、あえて今、開業するのか」「既存の医院と、どう差別化し、患者をどう獲得するのか」。その戦略を、客観的なデータとロジックで、徹底的に磨き上げる必要があります。
歯科医院の開業支援をコンサルタントへ依頼した際の費用相場
開業支援コンサルティングの費用は、サービス提供者や、支援内容の範囲によって、大きく異なります。
費用の決定要因
コンサルティング費用は、主に以下の要因によって決まります。
- サービス範囲: 事業計画書の作成と融資支援のみか、物件選定、スタッフ採用、内覧会企画までを含む、フルパッケージか。
- コンサルタントの実績: 支援実績が豊富で、著名なコンサルタントほど、費用は高くなる傾向があります。
- プロジェクトの難易度: 必要な融資額の大きさや、開業地の競争環境などによっても変動します。
プロジェクト型(固定報酬)
開業準備の開始から、開業までの一連のプロセスを、プロジェクトとして一括で支援する形態です。
- 相場: 80万円 ~ 200万円程度
- この中には、事業計画書作成、融資支援、各種業者選定サポートなどが含まれることが一般的です。どこまでの業務が含まれるのか、契約前に詳細を確認する必要があります。
成功報酬型
資金調達の成功に連動して、報酬が発生する形態です。
- 相場: 調達額の 1% ~ 5% 程度
- 例えば、8,000万円の融資に成功した場合、80万円~400万円が報酬となります。着手金が安く、成功した場合のみ報酬が発生するため、ドクターにとってはリスクが低いですが、融資額が大きくなると、固定報酬よりも高額になる可能性があります。
顧問契約セットプラン(税理士系コンサル)
最も多くのドクターが選択する、現実的なプランです。開業支援を、税理士(あるいは税理士法人が母体のコンサル会社)に依頼する場合に適用されます。
- 内容: 開業後の「税務顧問契約」を、一定期間(例:2~3年)継続することを条件に、開業時のコンサルティング料(事業計画書作成や融資支援)を、無料または、10万円~30万円程度の格安な料金で提供するプランです。
- メリット: ドクターにとっては、開業時の初期費用を、劇的に抑えることができます。
- 税理士側のメリット: 開業という、医院経営の最も重要なスタート地点から関与することで、その後の会計・税務顧問業務をスムーズに開始できるため、長期的なクライアントとして関係を築けるメリットがあります。
歯科医院の開業支援に強いコンサルタントを探す方法
自院の成功を左右するパートナー探しです。信頼できるコンサルタントを見つけるためには、いくつかのルートを組み合わせて、多角的に候補者を探すことが有効です。
歯科ディーラー・医療機器メーカーからの紹介
これが、歯科業界において最も信頼性が高く、確実な方法の一つです。 日頃から付き合いのある、歯科器材のディーラー(株式会社モリタ、株式会社ヨシダ、ジーシーなど)や、医療機器メーカーの営業担当者に、「開業を考えているので、信頼できるコンサルタントや税理士を紹介してほしい」と相談してみましょう。 彼らは、毎日、多くの歯科医院に出入りしており、どのクリニックが開業に成功し、繁盛しているか、そしてその裏でどの専門家がサポートしていたかという、業界の「生きた情報」を豊富に持っています。
先輩開業医(大学・医局など)からの紹介
あなたの出身大学の先輩や、勤務先の医局の先輩、スタディーグループの仲間などで、先に開業し、成功しているドクターがいれば、その方から紹介してもらうのも非常に良い方法です。 「あのコンサルタントは、融資面談のサポートが手厚かった」「開業後のフォローもしっかりしている」といった、リアルな体験談は、何よりも貴重な情報源です。
金融機関(銀行・信用金庫)からの紹介
開業資金の融資を相談しようと考えている、金融機関の担当者(特に、日本政策金融公庫や、地元の銀行・信用金庫)に、紹介を依頼するのも有効です。 金融機関は、融資を成功させ、確実に返済してくれる優良な顧客を増やしたいと考えています。そのため、融資審査を通過できる質の高い事業計画書を作成できる、優秀なコンサルタントや税理士を、リストアップしているものです。
インターネット検索(専門特化での絞り込み)
「歯科 開業 支援 コンサルタント」「クリニック 開業 税理士」「歯科 資金調達」といったように、「歯科」「開業」に関連するキーワードで検索します。 表示されたコンサルティング会社や税理士事務所のウェブサイトを訪問し、「歯科医院の開業支援実績〇〇件」「融資サポート〇億円達成」といった、具体的な実績が数字で示されているか、「歯科開業専門ページ」があるかなどを、重点的にチェックします。
歯科医院の開業支援に強いコンサルタントを選ぶポイント
いくつかの候補者と面談のアポイントが取れたら、次は、その中から自院にとって最高のパートナーを見極める重要なステップに入ります。
歯科医院の「開業支援実績」の豊富さ
これが、最も重要かつ絶対的な判断基準です。「経営コンサルタントです」というだけでは不十分です。「歯科医院の開業」という、極めて特殊なプロジェクトを、これまでに何件、成功に導いてきたか。 面談では、「直近1年間で、何件の歯科開業をサポートしましたか?」「平均的な融資額はいくらですか?」と、具体的な数字と実績を、必ず質問しましょう。
資金調達(融資)の実績
開業支援の実績の中でも、特に「資金調達(融資)」の実績を、具体的に確認します。「どの金融機関(公庫、WAM、銀行)との交渉に強いですか?」「自己資金が少ないケースでも、成功させた事例はありますか?」。融資は、コンサルタントの腕が最も試される部分です。
診療圏調査の質と具体性
事業計画の根幹となる、診療圏調査を、どのレベルで行ってくれるのかを確認します。 単に「このエリアは人口が多いです」といった、無料の統計データを提示するだけでは不十分です。競合医院の診療内容や、院長の経歴まで踏み込んで分析し、「だから、先生の専門である〇〇(例:小児歯科)は、このエリアで勝算があります」といった、具体的な差別化戦略まで落とし込んで提案してくれるかを見極めましょう。
担当者との相性(コミュニケーション)
開業準備は、数ヶ月から1年以上にわたる、長く過酷なプロセスです。その間、密に連絡を取り合い、二人三脚で進むパートナーが、担当コンサルタントです。
- 説明の分かりやすさ: 難しい金融用語や経営用語を、ドクターが理解できる平易な言葉で説明してくれるか。
- 傾聴力: ドクターの「想い」や「不安」を、まずは真摯に受け止め、共感してくれるか。
- 人柄: 高圧的でなく、何でも気軽に相談できる、信頼できる人柄か。
料金体系の明確さと妥当性
見積書の内容が、明確で、納得感があるか。 「開業支援一式 〇〇円」といった曖昧なものではなく、「どのサービス(例:事業計画書作成、融資面談同行)に、いくらかかるのか」が、具体的に記載されているか。追加費用が発生する可能性はないか。 特に、「顧問契約セットプラン」の場合は、開業後の顧問料が、相場とかけ離れて高額に設定されていないか、契約期間の縛りが厳しすぎないかも、冷静に判断する必要があります。
歯科医院の開業支援は税理士がおすすめ
開業支援コンサルタントには、様々な業態がありますが、その中でも、なぜ「税理士」(または、税理士法人が母体のコンサルティング会社)が、特にお勧めなのでしょうか。
資金調達と会計のプロフェッショナル
開業コンサルティングの最大の目的は、資金調達の成功です。そして、資金調達の鍵を握るのは、「事業計画書」という「数字」の説得力です。 税理士・公認会計士は、言うまでもなく、会計と財務の最高専門家です。彼らが作成に関与した収支計画や資金繰り計画は、金融機関にとって、最も信頼性の高い資料となります。
開業準備から開業後の経営までワンストップ
これが、税理士に依頼する最大のメリットです。 一般的な開業コンサルタントの仕事は、「開業日」がゴールです。しかし、税理士の仕事は、「開業日」がスタートです。 開業支援を税理士に依頼するということは、開業前から、開業後の経営までを、一人のパートナーが「ワンストップ」でサポートしてくれることを意味します。 開業時に、融資のために作成した「事業計画(予算)」と、開業後に、顧問税理士として作成する「月次決算(実績)」を、同じ専門家が比較・分析(予実管理)してくれるため、経営のPDCAが、極めてスムーズに回ります。
医療法人化や事業承継まで見据えた長期的な視点
税理士は、長期的な視点で医院経営を見据えています。開業から数年後、利益が安定してきた際の「医療法人化(法人成り)」の最適なタイミングも、シミュレーションに基づき提案してくれます。 さらに、院長が将来引退を迎える際の「事業承継」や「相続」の問題まで、一人のパートナーが、生涯にわたってサポートし続けてくれるという安心感があります。
歯科特有の税務(措置法26条など)への精通
歯科医院に強い税理士であれば、開業後の税務申告において、社会保険診療報酬の特例である「措置法26条」の適用など、歯科業界特有の節税ノウハウを熟知しています。 開業時から、これらの税務メリットを最大化できるような計画を、織り込むことができます。
歯科医院の開業支援をコンサルタントへ依頼する際によくある質問の例と回答
ここでは、クリニック開業を目指すドクターから、コンサルタント(特に税理士)によく寄せられる質問と、その回答をまとめました。
Q1. 自己資金はいくら必要ですか?
A1. 一概には言えませんが、金融機関の審査を有利に進めるためには、総事業費の1割、できれば2割~3割は、自己資金として提示できるのが理想です。例えば、総額8,000万円の開業計画であれば、800万円から1,600万円程度の自己資金があると、金融機関は「本気度が高い」と評価します。 重要なのは、そのお金を「どうやって貯めてきたか」のプロセス(通帳の履歴など)です。開業直前に親族から一時的に借りたお金は「見せ金」と判断され、評価が下がることがあります。
Q2. コンサルタントに頼めば、必ず融資は通りますか?
A2. いいえ、100%の成功を保証することはできません。最終的な判断を下すのは金融機関であり、融資の可否は、ドクターご自身の臨床経験や、自己資金の額、個人の信用情報(過去のローン延滞など)にも左右されるからです。 しかし、経験豊富なコンサルタントが作成した精緻な事業計画書と、面談サポートによって、ドクターが一人で申請するのに比べて、審査通過の「確率を高める」ことができるのは、間違いありません。
まとめ
クリニックの開業。それは、ドクター自身の夢の実現であると同時に、地域医療への大きな貢献の始まりです。しかし、その船出には、「資金調達」という、極めて大きな波を乗り越えなければなりません。
この記事では、その波を乗り越え、開業を成功に導くための最強のパートナーとして、「開業支援コンサルタント」、特に「歯科専門の税理士」を活用するメリットと、その選び方について、徹底的に解説してきました。
事業計画書は、単なる融資のための書類ではなく、あなたのクリニックの理念と未来を映し出す「設計図」であり、開業後の経営を支える「羅針盤」です。その設計図の精度と説得力は、開業資金の調達成功率に直結します。
そして、その精度を最大化し、あなたのビジョンを金融機関が納得する「数字」と「論理」に翻訳してくれるのが、歯科開業に強い税理士です。
税理士に開業支援を依頼するメリットは計り知れません。融資成功率の向上、煩雑な手続きからの解放による本業への集中、そして何よりも、開業後の経営までをワンストップでサポートしてくれるという、長期的な安心感です。
その費用は、決して安いものではありませんが、それはコストではなく、あなたの夢を実現するための、最も確実で効果的な「投資」です。
最適な税理士(コンサルタント)を選ぶ鍵は、「歯科開業の実績」です。金融機関や歯科ディーラーからの紹介といった、信頼できるチャネルを最大限に活用し、複数の専門家と直接対話し、「この人になら、自院の未来を託せる」と心から信頼できるパートナーを、選び抜いてください。
この記事が、あなたの税理士・コンサルタント探しという重要な航海の確かな羅針盤となり、あなたのクリニックが輝かしい未来へと力強く船出していく一助となれば、幸いです。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
