本記事では、歯科医師の方が税理士を探す際の、税理士と契約するメリットとは何か、税理士と契約した場合毎月どの程度の費用がかかるのか、税理士と契約する際に留意すべきポイントは何か、などについて解説をしております。本記事を歯科医師の方がご覧いただくことで、税理士と会話するのに必要な基礎知識を習得することができます。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
歯科医師における税務の特徴
歯科医師においては、そもそも勤務医なのか開業医なのかによって税務処理が大きく変わってきます。雇用形態の勤務医の場合は給与所得となるため、他に所得がないなど例外に該当しない場合には、確定申告は不要で雇用主側で年末調整をおこなってくれ、完結となります。税金は毎月給与支払い時に雇用主側で徴収する源泉徴収で支払うとになっております。同じ勤務医でも業務委託形式の場合は給与所得ではなく事業所得もしくは雑所得にあるため、こちらは確定申告書が必要になります。業務委託形式の場合は処理はそこまで複雑ではなく、契約先から入ってくる報酬を売上にして、そこにかかった経費を費用として計上することになります。
一方で勤務医ではなく開業医の場合は処理が複雑になります。まず開業医の場合は開業時に固定資産を購入する必要があります。具体的には歯科サービスを提供する上で必要になる機械類や備品などが該当します。これらは固定資産としての計上が必要になり、一括で費用処理することができません。固定資産台帳を作成し、購入ごとに台帳への記入と耐用年数に応じた減価償却費計算が必要となります。またこれらの資産は償却資産税の対象となりますので、年1回申告と税金の納付が必要になってきます(土地と建物を保有している場合は別途固定資産税がかかりますが、こちらは申告ではなく地方自治体から納付書が送られてきて、それに基づいて支払いを行うことになります)。
また、固定資産を購入する際には一部の自己資金と、多くは金融機関からの借入もしくはリースになることが多いと思います。借入の場合は、借入利息を費用として計上することが可能です。またリースについてはリース契約によるのですが、いわゆる賃貸借に近いオペレーティングリースの場合はリース料を経費として計上することが可能となります。また税務視点ではないですが、借入については返済が必要なので、キャッシュフローがショートしないようにしっかりと資金繰りを管理していく必要があります。
費用に関しては、人件費が大きな影響があるでしょう。歯科医師の場合、助手を採用したり、受付を採用したり、歯科衛生士を採用したりと人員を一定程度採用することが多いかと思います。従業員を採用した場合には、従業員に対する給与支払いが発生するため、給与計算業務が発生します。給与計算を行うにあたっては所得税で要請されている源泉徴収を行う必要があるため、給与計算と合わせて必要な源泉徴収金額を計算して、その金額を従業員から徴収・税務署へ納付する必要があります。加えて、社会保険についても必要な金額を計算し、従業員から徴収して納付する必要があります。さらに年末には年末調整という形で、源泉徴収金額の過不足を計算し、追加の徴収もしくは返金を行う必要があります。年末調整にあたっては、従業員の扶養の状況や保有している保険などを把握する必要がありますので、証憑のやり取りが従業員と間で発生することになります。
売上に関しては健康保険料で治療したものについては、一部を患者さんから収受し、残額については支払基金へ請求し、審査を得た上で入金を受けることになります。健康保険外の自由診療については患者さんから収受した金額がそのまま売上になります。その他歯ブラシなど小さいものの売上についても患者さんに販売した際に売上として計上することになります。
そのほか、ある程度歯科事業としての規模が大きくなってきた場合には、医療法人の設立も視野に入ってくると思います。医療法人については、法人のため個人事業主としても所得税申告ではなく、法人としての法人税申告が必要となります。また医療法人の場合、通常の株式会社と異なり持分という概念はなく医療法人が持っている資産については歯科医師の方の自由に処分はできなくなるため、医療法人設立にあたっては慎重な検討が必要になります(場合によっては株式会社の活用も含めた検討が必要になります)。
歯科医師のビジネスモデルの特徴
歯科医師のビジネスモデルの特徴は、開業医と同じようなものにはなりますが、競争環境でいくと歯科医師の方が競争が激しいと考えられます。これは開業件数が右肩上がりで上がってきた点と、需給バランスが医師と比較して供給の方が多くなってきているからです。そのため、歯科医師としても単に治療をするだけでなく、患者さんの集客から継続してもらうための仕掛け、保険治療以外のサービスラインナップの充実、分院による収益の拡大などさまざまな施策を打っていく必要があるのです。
患者さんの獲得面でいくと、適切なコストをかけてマーケティングをおこなっていくことになります。最近ではWEBでの集客も一般化してきていることから、ホームページをしっかりと作成すること、そこへの流入を作るために広告を打ったり、口コミ対策をしたりするなど、通常の企業と変わらないような施策が求められてきます。また、患者さんだけでなく歯科衛生士をはじめとした従業員の確保も難しい時代になってきておりますので、従業員の確保という視点でもホームページの充実は非常に重要です。
そのほかDXの推進も非常に重要です。患者さんの予約から治療までをスムーズに行うために予約管理システムを充実させたり、カルテを適切に管理するため電子カルテの仕組みを導入したり、保険請求をスムーズに行うため電子カルテから請求の仕組みまでを一定自動化したりなどです。これらを従業員の手作業で対応しようとするとコストが大きくかかりますし、従業員満足度が下がり離職率が高くなるので、採用教育コストが高くなる可能性があります。そのため、従業員のリテンション・顧客満足度の2つの視点からDXの導入は非常に重要なのです。
歯科医師が税理士へ依頼することによるメリット
歯科に強い税理士と契約することで得られるメリットは以下の通りです。
- 開業時や法人化の際に税金に関するアドバイスを受けることができる
- 資金調達やシステム導入、数字管理など経営に関するアドバイスを受けることができる
- 事業承継など、相続等に関するアドバイスを受けることができる
- 税理士によっては税務面だけではなく、人材採用や医療のオペレーション、マーケティング/宣伝広告など経営に踏み込んだアドバイスを受けることができる
- 事業計画の策定や補助金申請など事業に絡んだ資金ニーズに対応することができる
開業にあたっては立地や差別化戦略などが重要になってきますが、税金アドバイスと含めて開業時にアドバイスを受けることが考えれます。また法人化にあたってはさまざまな税務論点が発生しますので、税理士のアドバイスがかなり役に立つと言えます。加えて、人事労務制度なども他の医療業界を見ている税理士等であればその視点からも経営アドバイスができる可能性がありますので、税務だけでなく幅広い相談をできる可能性があります。
例えば税金でよくあるケースとしてまず考えられるのが、消費税の課税選択です。法人の場合、会社設立時に資本金額が一定を超えると課税事業者となりますが、免税事業者と比較して消費税を納めることになる(還付の場合を除く)ため、その分キャッシュアウトになります。また、消費税の計算方法として簡易課税を選択するか否かによって課税金額が変わってきますが、届出をする必要があると同時に届出期限も決まっているため、届出を失念すると不利な選択を強いられる可能性があります。
また消費税以外にも法人税の分野において、多いのが青色申告の承認申請書です。青色申告の場合、発生した赤字を繰り越すことができたり、過去に発生した赤字を繰戻することができたり、少額の減価償却資産を費用化して経費を早期に計上できたり、その他様々な特典を受けることができます。青色申告の承認申請書についても届出期限が決まっているので、こちらも提出し忘れるとその年度は恩恵を受けることができません。青色申告以外にも、役員報酬についても法人税法上、役員へ支払う報酬を自由にいつでも変更できないルールが設定されているため、変更期限を過ぎてしまうと変更ができない(変更はできるのですが、経費として一部認められなくなります)ことになり、大変不利です。
税金以外にも、ビジネスを長期的に安定的にするためにもしっかりと事業計画を作って、会社法などの法律に従い会社を経営し、かつ資金繰りにも困らない状況を目指すことが非常に重要になってきますが、これがご自身でしっかりとできる医師はなかなかいないのではないかと思います。補助金の活用についても同様です。
歯科医師が税理士と契約するベストなタイミングはいつか?
歯科医師が税理士と契約するベストなタイミングはいつになるのでしょうか?ぜひお勧めしたいのは開業時になります。これは、前述の通り、開業時には資金調達や税に関する各種届出など税理士のサポートが必要な場面が多々発生するからです。まず資金調達については開業時には過去の決算書がないため、事業計画を提出することになりますが、それ以降は実績の決算書を定期的に金融機関へ提出し内容についてのヒアリングを受けることになります。そのため、初期の段階から決算書の作成について税理士が関与しておいた方が金融機関とのコミュニケーションがスムーズになるため、メリットが大きいと言えます。
加えて、法人化の際にも税理士を付けることをお勧めします。まず法人の場合は確定申告書が所得税ではなく法人税となり、その内容が一気に難解になるため、税理士へ依頼しないと自己対応はかなり難しいものになります。また、法人設立に際しては、定款の決算期をいつにすればよいか、もしくは資本金をいくらにすればよいか、など税務に関連した論点が多々発生しますので、税理士からのアドバイスが非常に有用です。
歯科医師が税理士と契約する場合どれぐらいの料金がかかるのか?
歯科医師が税理士と契約する場合の料金について記載をしていきます。まず税理士の料金は大きく月額で発生する月額顧問料金と、年間1回確定申告の際に発生する決算料金の2つに大別されます。前者については、税務相談を行うための料金でして、歯科医師の場合は開業医の場合を想定しますが、月額3万円〜が一般的な相場かと思います。通常の業種よりも年商が大きくなりやすいのと、設備投資など論点も多いため、他の業種よりも顧問料は比較的高い傾向にあります。
決算料については、通常月額顧問料の4〜6ヶ月の料金となることが多く、確定申告時に一括で請求されることになります。通常どちらかのみの料金を支払うことはなく、月額顧問料金と決算料がセットとなっています。税理士によっては決算・申告のみの対応を行う場合もありますが、その場合は期中に税務相談ができず、また決算料も通常よりも割高になります。
記帳代行や年末調整などを税理士へ依頼する場合には上記の料金に加算されます。例えば記帳代行については、月額顧問料に上乗せされて請求されますし、年末調整については年末調整のサービスを提供する際に、決算料金等に上乗せされて請求されることが一般的です。
歯科医師に強い税理士の具体例
医師に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます。
まずは税理士法人キャスダック様です(https://www.dentax.jp/)。歯科医院専門の会計事務所様ということで、税務会計のみならず歯科医院の経営に必要なことを多角的に相談できる点が特徴です。単に税務相談だけでなくて、人権比率の適正水準や勤務医の給与水準、キャッシュに対する設備投資に対する考え方、採用など経営全般に強いのが特徴です。
また通常コンサルティング会社へ依頼すると非常に高額な報酬となることが多いですが、税理士法人キャスダック様の場合は月額顧問報酬が4.4万円からということで、リーズナブルな価格帯となっております。
続いて税理士法人藤井会計事務所様です(https://www.fujiikaikei.jp/dental.html)。通常の顧問業務に加えて、歯科経営コンサルティングや相続税・贈与税などの資産税に関するコンサルティングを提供されているようです。経営コンサルティングについては、キャッシュフロー計算書の作成や資金調達関連のご支援に加えて、人事労務周りのサポートなど幅広くサービスをご提供されているようです。東京都の千代田区を拠点とされておりますので、アクセスの面でも大変便利かと思います。
次に、ネクセンチュア林会計事務所様です(http://www.nexenture.jp/)。こちらも歯科医院に強い会計事務所様となります(大阪を拠点とされています)。歯科の経営のみならず開業にも強いようで、特に開業時に課題となってくる歯科医院の資金調達のみならず、出店戦略や広告戦略など財務や税務面以外の相談にも対応されているようです。また採用面のサポートも提供されています。開業後についても税務面のみならず数字面から見える経営改善や、人事コンサルティングなど財務や税務の留まらない幅広いコンサルティングをご展開されています。
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。特にデジタル経験も豊富ですので歯科医師である顧客のお悩みを深く理解し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
まとめ
以上のように歯科医師にとって税理士は必要かについて記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。