歯科医師という職業は、人の健康を守るという崇高な使命を担う医療の専門家です。しかし、自らクリニックを開業した瞬間から、先生はもう一人の自分と向き合うことになります。それは、クリニックという組織を率いる「経営者」としての自分です。
日々の診療に全力を注ぐ傍ら、スタッフのマネジメント、集患活動、そして最も頭を悩ませるのが、複雑な経理処理や税務申告、資金繰りの管理です。特に、歯科医院の経営は、一般的な事業とは大きく異なる特殊性を数多く抱えています。
社会保険診療と自由診療の混在、高額な医療機器への継続的な投資、医療法人化の問題など、一般的な税理士では対応が難しい課題が山積みです。「今の顧問料は果たして適正なのだろうか」「診療は順調なのに、なぜか利益が残らない」「安い税理士と高い税理士は、一体何が違うのか」。顧問料に関する悩みは、多くの院長先生が抱える共通の課題です。
税理士の顧問料は、単なるコストではありません。それは、医院の未来を守り、成長を加速させるための重要な「投資」です。その投資価値を正しく見極めることが、経営者としての重要な判断となります。
この記事では、歯科医院の経営に真剣に取り組む院長先生のために、税理士の顧問料相場がどのように決まるのか、そしてその金額に見合った価値あるパートナーをいかに見つけ出すかについて、徹底的に解説していきます。
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歯科医院の税理士顧問料相場はいくらが適切か?
歯科医院における顧問税理士とは?
まず、「顧問税理士」とはどのような存在なのか、その役割と重要性を正しく理解することから始めましょう。
顧問税理士の基本的な役割
顧問税理士とは、年に一度の確定申告だけを単発で依頼する「スポット契約」とは異なり、「顧問契約」という継続的な契約を締結し、月々または定期的に関与することで、医院の経営状況を継続的に把握し、サポートする税理士のことを指します。
彼らの基本的な業務は、税理士法に定められた独占業務である「税務代理」(申告や調査立会い)、「税務書類の作成」(申告書作成)、「税務相談」です。しかし、顧問税理士の真価は、これらの業務を継続的に行うことで、医院の「かかりつけ医」のような存在になる点にあります。
なぜ「歯科専門」である必要があるのか
重要なのは、単なる税理士ではなく、「歯科専門」あるいは「歯科医院に強い」税理士であることです。なぜなら、歯科医院の経営は、他の業種にはない極めて特殊な税務・会計上の論点を多数抱えているからです。
歯科医院特有の税務・会計
例えば、歯科医院の収入は、社会保険診療(非課税売上)と自由診療(課税売上)が混在しているため、消費税の計算が非常に複雑になります。また、社会保険診療報酬が一定額以下の個人クリニックには、「措置法26条」という概算経費を認める特別な節税措置があり、これを知っているか知らないかで、納税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
さらに、歯科ユニットやCTスキャナといった高額な医療機器の減価償却の管理や、医療法人化のタイミングと手続き、事業承継の問題など、歯科業界ならではの課題が山積しています。
税務顧問を超えた経営パートナー
歯科専門の税理士は、これらの特殊な税務会計ルールに精通しているだけでなく、数多くの歯科クリニックの経営データに触れています。そのため、あなたのクリニックの経営状態を客観的に分析し、「ユニット1台あたりの生産性は業界平均と比べてどうか」「自費率は高いのか低いのか」といったベンチマーク(比較分析)を提供することができます。
彼らは、単なる税務アドバイザーではなく、院長先生のビジョンに共感し、その実現のために数字の面から伴走する、最も身近な「経営パートナー」となり得る存在なのです。
歯科医院における税理士の顧問料の相場は?
歯科医院の顧問税理士の重要性は理解できても、やはり気になるのは「いくらかかるのか」という費用相場でしょう。税理士の報酬は2002年に自由化されており、事務所によって料金体系は様々です。しかし、歯科医院という専門分野においては、一定の相場感が存在します。
結論としての相場観
歯科医院の顧問料相場は、医院の形態(個人か医療法人か)や、依頼する業務範囲(特に記帳代行の有無)によって、大きく変動します。
個人のクリニック(個人事業主)の費用相場
個人開業のクリニックの場合の、一般的な相場です。
記帳代行なし(自計化)の場合
日々の記帳はクリニック側(院長やスタッフ)で行い、税理士は帳簿のチェックと経営相談、決算申告を行うケースです。
- 月額顧問料: 3万円 ~ 6万円程度
- 決算申告料: 月額顧問料の4ヶ月~6ヶ月分程度(年額15万円~30万円程度)
- 年間の総額目安: 約50万円 ~ 100万円
記帳代行あり(丸投げ)の場合
領収書の整理や会計ソフトへの入力まで、全て税理士に任せるケースです。
- 月額顧問料: 4万円 ~ 8万円程度(記帳代行料を含む)
- 決算申告料: 月額顧問料の4ヶ月~6ヶ月分程度(年額20万円~40万円程度)
- 年間の総額目安: 約70万円 ~ 130万円
医療法人のクリニックの費用相場
医療法人は、個人事業主と比べて会計処理が格段に複雑になり、都道府県への事業報告書の提出など行政手続きも増えるため、顧問料は高くなります。
記帳代行なし(自計化)の場合
- 月額顧問料: 5万円 ~ 10万円程度
- 決算申告料: 月額顧問料の4ヶ月~6ヶ月分程度(年額25万円~60万円程度)
- 年間の総額目安: 約85万円 ~ 180万円
記帳代行あり(丸投げ)の場合
- 月額顧問料: 6万円 ~ 15万円程度(記帳代行料を含む)
- 決算申告料: 月額顧問料の4ヶ月~6ヶ月分程度(年額30万円~70万円程度)
- 年間の総額目安: 約100万円 ~ 250万円
相場に含まれないオプション業務
上記の顧問料には、通常、以下の業務は含まれず、別途オプション料金が発生することが一般的です。
- 年末調整・法定調書の作成(スタッフの人数に応じて変動)
- 償却資産税申告
- 給与計算(スタッフの人数に応じて変動)
- 税務調査の立会い(日当5万円~15万円程度)
- 融資支援(事業計画書作成支援など)
- 医療法人設立支援
- 事業承継・相続コンサルティング
歯科医院における税理士の顧問料の決まり方
顧問料の相場に幅があるのは、なぜでしょうか。それは、各クリニックの状況や、税理士に求めるサービスレベルによって、提供する業務量と専門性が異なるためです。顧問料を決定する主な要因を理解することで、見積もりの妥当性を判断する物差しを持つことができます。
事業規模(医業収入)
最も大きな変動要因は、事業規模、すなわち医業収入(売上高)です。売上が大きいほど、取引量が(保険診療・自費診療ともに)多くなり、会計処理の手間や税務上のリスクが増大するため、顧問料も高くなります。多くの税理士事務所が、医業収入〇〇円未満、〇〇円~〇〇円といった区分で、料金テーブルを設定しています。
法人形態(個人 vs 医療法人)
前述の通り、個人事業主と医療法人とでは、税務申告の複雑さや、行政手続きの量が全く異なります。医療法人の場合は、社会保険の問題や役員報酬の設定、出資持分の評価など、個人にはない論点が多く発生するため、顧問料は個人よりも高く設定されます。
記帳代行の有無(自計化 vs 丸投げ)
日々の記帳業務を税理士に「丸投げ」するのか、それともクリニック側がクラウド会計ソフトなどを利用して行う「自計化」を推進するのかによって、税理士の作業量は大きく変わります。記帳代行を依頼すれば、当然、その分の料金(月額1万円~3万円程度が目安)が上乗せされます。
訪問頻度と面談の形態
税理士が毎月クリニックを訪問して、対面で経営状況を報告・相談するのか、それとも訪問は四半期に一度や決算時のみとし、日常のやり取りは電話やオンライン(Zoomなど)で行うのか。訪問頻度が高ければ、それだけ税理士の拘束時間が長くなるため、顧問料も高くなる傾向があります。
依頼するサービスの範囲
顧問契約に、どこまでの業務を含めるかによっても料金は変動します。例えば、スタッフの給与計算や年末調整、社会保険の手続きまで一括して依頼するのか、それとも税務・会計のみに限定するのか。融資支援や経営コンサルティングといった、付加価値の高いサービスを求めるほど、料金は高くなります。
医院の特殊性
例えば、分院(複数のクリニック)を展開している場合は、管理すべき会計単位が増えるため、顧問料は高くなります。また、院長の資産状況が複雑で、事業承継や相続対策まで含めた包括的なコンサルティングを求める場合も、通常の顧問料とは別枠で、高度な専門サービスに対する報酬が必要となります。
歯科医院において税理士の変更は可能か?
現在、顧問税理士と契約しているものの、そのサービスに不満を感じている院長先生もいらっしゃるかもしれません。「顧問料が高い割に何もしてくれない」「歯科の特殊性を理解していないようだ」「相談してもレスポンスが遅い」。そんな時、税理士を変更することは可能なのでしょうか。
結論:変更はいつでも可能
答えは明確に、「はい、可能」です。税理士とクリニックとの契約は、法的には業務委託契約(準委任契約)です。これは、双方の合意に基づいた契約であり、どちらか一方の意思表示によって(契約書に定められた予告期間を守れば)、解約することが認められています。
「長年の付き合いだから」「紹介してもらった手前、断りにくい」といった義理人情で不満な関係を続けることは、医院の経営にとってマイナスでしかありません。税理士の変更は、事業をより良い方向に導くための経営者としての正当な権利であり、前向きな経営判断です。
変更(切替)を検討すべきサイン
以下のような状況が続いている場合、税理士の変更を真剣に検討すべきサインかもしれません。
- 措置法26条の有利不利判定について、説明を受けたことがない。
- 消費税の計算(簡易課税と原則課税の選択など)について、明確なアドバイスがない。
- 月次試算表の報告が遅い(翌々月になるなど)、あるいは報告だけで経営分析やアドバイスが全くない。
- 医療法人化や事業承継の相談をしても、具体的な話が進まない、または専門外だと言われる。
- レスポンスが遅い、または担当者がコロコロ変わり、話が通じない。
スムーズな変更(切替)のプロセス
税理士を変更する際は、トラブルを避けるために正しい手順を踏むことが重要です。 まず、現在の税理士に解約を申し出る前に、必ず次の依頼先となる新しい税理士を見つけ、内定させておくことが鉄則です。税理士がいない空白期間が生まれるのを防ぎます。 新しい税理士が決まったら、現在の税理士に、契約書に定められた予告期間(通常1~3ヶ月前)を守って、解約の意向を伝えます。その際、過去数年分の決算書や申告書控え、総勘定元帳といった会計データを返却してもらい、新しい税理士への引き継ぎを依頼します。通常は、税理士間で直接データのやり取りをしてもらうのが最もスムーズです。
歯科医院に強い税理士の探し方について
これほど多くのメリットをもたらしてくれる「歯科専門の税理士」ですが、どのようにして見つけ出せば良いのでしょうか。一般的な税理士と異なり、その数は限られているため、探し方にもコツが必要です。
同業の歯科医師(先輩・知人)からの紹介
これが、最も信頼性が高く、確実な方法の一つです。あなたの出身大学の先輩や、スタディーグループの仲間、地域の歯科医師会などで、既に開業し、経営がうまくいっているように見える院長先生に、「どこの税理士事務所と契約していますか」とその評判を聞いてみましょう。 実際にサービスを利用している人からの、「あの先生は措置法26条に詳しくて助かった」「資金調達で本当に力になってくれた」といったリアルな口コミは、何よりも貴重な情報源です。
歯科ディーラー・メーカーの営業担当者からの紹介
日頃から付き合いのある、歯科器材のディーラーや医療機器メーカーの営業担当者に相談するのも、非常に有効な手段です。彼らは毎日、多くの歯科医院に出入りしており、どのクリニックが繁盛しているか、どの院長がどのような経営をしているか、そしてそのクリニックをどの税理士がサポートしているかという、業界の「生きた情報」を豊富に持っています。 経営に積極的な院長をサポートしている税理士を、紹介してもらえる可能性が高いです。
金融機関(銀行・信用金庫)からの紹介
クリニックの開業や運営において、金融機関との関係は不可欠です。特に、あなたが融資を相談しようと考えている金融機関の担当者(日本政策金融公庫や、地元の銀行・信用金庫)に、「クリニック開業の実績が豊富な税理士を紹介してほしい」と依頼してみましょう。 金融機関は、融資を成功させ、確実に返済してくれる優良な顧客を増やしたいと考えています。そのため、融資審査を通過できる質の高い事業計画書を作成できる、優秀な税理士をリストアップしているものです。
インターネット検索(専門性の見極め)
現在、最も手軽で情報量も豊富な探し方が、インターネット検索です。ただし、その使い方には少し工夫が必要です。 「税理士」とだけ検索するのではなく、「歯科 税理士」「クリニック 開業 融資」「医療法人 設立 税理士 〇〇(地域名)」といったように、「歯科」に関連するキーワードや、「開業」「医療法人」といった具体的な課題を掛け合わせて検索しましょう。 表示された税理士事務所のウェブサイトを訪問し、「歯科医院の顧問実績〇〇件」「医療法人設立サポート」といった専門性を明確に打ち出しているか、歯科医院経営に関する専門的なコラムやブログを掲載しているかなどを、チェックします。
歯科医院に強い税理士を選ぶ際のポイント
数多くいる税理士の中から、本当に歯科医院経営に精通し、自院の成長に貢献してくれるパートナーを見つけ出すためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。以下のチェックリストを参考に、候補となる税理士を吟味してください。
歯科医院の顧問実績件数
これが、最も重要かつ分かりやすい指標です。税理士事務所のウェブサイトなどで、歯科医院のクライアントが何件あるかを必ず確認しましょう。「医療業に強い」という曖昧な表現ではなく、「歯科医院の顧問実績〇〇件」と明記されているかが重要です。実績件数が多ければ(できれば50件以上)、それだけ多くの事例に対応してきた経験とノウハウが蓄積されている証拠です。
医療法人に関する知識と実績
将来的に医療法人化を視野に入れているのであれば、その設立や運営に関する実績は必須のチェック項目です。過去に何件の医療法人設立を手がけたか、設立後の都道府県への事業報告書の作成といった運営サポートも行っているかを確認しましょう。
歯科特有の税務(措置法26条・消費税)への精通度
歯科医院税務の根幹とも言えるこれらの特例や、複雑な計算について、深い知識を持っているかを見極めます。面談の際にこれらの制度について質問を投げかけ、そのメリット・デメリットや適用判断のポイントを、分かりやすく的確に説明できるかどうかで、その税理士の専門性を測ることができます。
経営アドバイス(KPI管理)の具体性
税務申告だけでなく、医院経営のパートナーとしての資質があるかを見極めます。「ユニット1台あたりの生産性」「自費率」「リコール率」といった歯科医院特有の経営指標(KPI)を理解し、それに基づいた経営分析や同業他院との比較(ベンチマーキング)アドバイスが可能かどうかは、大きな違いです。
コミュニケーションの相性と人柄
税理士とは、医院の最もデリケートな情報を共有し、長期的に付き合っていくパートナーです。専門知識だけでなく、人間的な相性も非常に重要です。
- 説明の分かりやすさ: 難しい税務や会計の話を、院長が理解できる平易な言葉で説明してくれるか。
- 相談のしやすさ: どんな些細なことでも気軽に質問できる雰囲気か。高圧的でないか。
- レスポンスの速さ: 質問や相談に対する返信が迅速か。
ITツール(クラウド会計・レセコン連携)への対応力
現代のクリニック経営において、ITの活用は不可欠です。レセコンのデータと連携できるクラウド会計ソフトの導入に積極的か、チャットツールなどでのスピーディーなやり取りが可能か。こうしたITへの対応力は、業務の効率性と経営状況のリアルタイムな把握に直結します。
歯科医院における税理士との契約までのプロセス
理想の税理士候補を見つけてから、実際に契約を結ぶまでには、いくつかのステップを踏むのが定石です。焦らず、慎重に進めることで、後悔のない選択ができます。
ステップ1:候補者のリストアップと比較
まずは、これまで紹介した探し方を参考に、2~3の税理士事務所を候補としてリストアップします。それぞれのウェブサイトを熟読し、歯科医院への専門分野や実績、料金体系などを比較検討します。
ステップ2:初回無料相談の申し込み
候補が絞れたら、電話や問い合わせフォームで連絡を取り、初回無料相談の予約を入れます。その際に、自らの状況(個人開業医であること、医療法人であること、医業収入の規模など)を簡潔に伝えておくと、スムーズです。
ステップ3:面談でのヒアリングと見極め
面談は、あなたが税理士を見極めるための最も重要な機会です。直近の決算書や確定申告書があれば持参し、医院の現状の課題や将来のビジョン(医療法人化や事業承継など)を具体的に話しましょう。 そして、「選ぶポイント」で挙げた項目を中心に積極的に質問し、相手の専門性や人柄、相性を確かめます。「この人になら、医院の未来を任せられる」と心から思えるかどうかが、決め手です。
ステップ4:見積書の取得とサービス内容の確認
面談後、正式な見積書を提出してもらいます。料金だけでなく、その内訳として月額顧問料にどの業務(記帳代行、年末調整、給与計算など)が含まれているのかを詳細に確認します。オプション業務の料金も明確にしておきましょう。
ステップ5:契約の締結
契約する税理士が決まったら、業務委託契約書を取り交わします。業務範囲、報酬、契約期間、解約条件、守秘義務といった重要事項を最終確認し、納得した上で署名・捺印します。これで、あなたの医院経営を支えるパートナーシップが、正式にスタートします。
歯科医院の税理士顧問料相場によくある質問の例と回答
ここでは、歯科医院の院長先生から、顧問料に関してよく寄せられる質問とその回答例を紹介します。
Q1. 顧問料にはどこまでのサービスが含まれますか?
A1. これは、事務所によって全く異なります。契約前に必ず確認すべき最重要ポイントです。一般的に「月額顧問料」に含まれるのは、会計データのチェック(または記帳代行)と、月次試算表の作成・報告、税務相談です。「決算申告料」は別途かかります。 年末調整や給与計算、償却資産税申告、税務調査立会いなどは、顧問料とは別料金(オプション)となっていることがほとんどです。トータルで年間いくらかかるのかを、必ず見積書で確認しましょう。
Q2. 記帳代行は依頼した方が良いですか?
A2. これは、院長先生の方針によります。 記帳代行を依頼するメリットは、院長やスタッフが煩雑な経理作業から完全に解放され、本業である診療や患者さん対応に集中できることです。 依頼しない(自計化)メリットは、顧問料を安く抑えられることと、クラウド会計ソフトなどを利用すれば、リアルタイムで医院の経営状況を把握できることです。 開業当初でスタッフも少なく本業に集中したい時期は記帳代行を依頼し、経営が軌道に乗ってから自計化に移行するというのも、賢明な選択です。
Q3. 顧問料の値引き交渉は可能ですか?
A3. 交渉自体は可能ですが、安易な値引き要求はお勧めしません。税理士の顧問料は、その専門的な知識と経験、時間に対する対価です。無理な値引きを要求することは、提供されるサービスの質(例えば、経営アドバイスの時間が減るなど)の低下に繋がりかねません。 もし費用を抑えたいのであれば、値引きを求めるのではなく、「記帳は自院で行う」「訪問頻度を毎月から四半期に一度に減らす」といったように、業務範囲を見直すことで料金を調整できないか、相談する方が建設的です。
まとめ
歯科医院の経営。それは、高度な医療技術と、卓越した経営手腕が求められる、専門領域です。その両輪を、院長先生一人が完璧に回し続けることは容易ではありません。
この記事では、その経営の車輪をスムーズに回し、事業を加速させるための重要なパートナーである「歯科専門の税理士」について、その顧問料相場と、適正な価値の見極め方を、徹底的に解説してきました。
歯科医院の税理士顧問料は、単なる申告書作成の「費用」ではありません。それは、措置法26条の活用や消費税の最適化といった専門知識によって将来の税負担を軽減し、経営分析や資金調達支援によって医院の成長を後押しし、そして税務調査や事業承継といった経営リスクからあなたを守るための、極めて価値の高い「投資」です。
相場を理解することは重要ですが、最終的に判断すべきは、料金の絶対額ではなく、「その投資(顧問料)が、医院にもたらすリターン(節税効果・経営改善・安心感)に見合っているか」という、費用対効果です。
最高のパートナーを見つけ出す鍵は、「歯科医院への実績」です。同業の医師や歯科ディーラーからの紹介といった信頼できるチャネルを活用し、複数の専門家と直接対話し、「この人になら、医院の未来を託せる」と心から信頼できる相手を、選び抜いてください。
この記事が、あなたの税理士選びという重要な航海の確かな羅針盤となり、あなたのクリニックが地域社会に貢献し、輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば幸いです。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
