本記事では、歯科医院の確定申告について、そもそもどのような歯科医院が確定申告が必要なのか、確定申告にはどのような作業が必要なのか、また確定申告に基づいて支払う税金にはどのような種類があるのか、などの基本的な事項について解説をしていきます。歯科医院に強い税理士をお探しの方は、歯科医院に強い税理士の選び方、の記事も併せてご覧ください。
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歯科医院の確定申告を現役税理士が徹底解説
- 確定申告の対象となる歯科医院とは?
- 確定申告における青色申告とは?
- 青色申告者における帳簿の作成・保存
- 歯科医院の確定申告における収入について
- 歯科医院の確定申告における収入計上時期について
- 歯科医院の確定申告におけるその他の収入
- 歯科医院の収入に該当しないもの
- 歯科医院の確定申告における経費について
- 歯科医院の確定申告における経費における留意点
- 歯科医院の開業費について
- 歯科医院の確定申告における経費の例外:概算経費率
- 歯科医院の経費に該当しないものの例
- 歯科医院における源泉徴収処理について
- 歯科医院における医療機器の特別償却・税額控除
- 小規模企業共済の加入による節税
- 経営セーフティ共済の加入による節税
- 歯科医院における消費税の確定申告
- 歯科医院の確定申告に基づいて納付する税金の種類
- 歯科医院の納税スケジュールは?
- 歯科医院が確定申告をしないとどうなるのか?
- 歯科医院の確定申告において税務調査はくるのか?
- 税理士へ依頼するメリット
- 歯科医院が税理士と契約する際の料金
- 歯科医院の確定申告のまとめ
確定申告の対象となる歯科医院とは?
確定申告の対象となる歯科医院とはどのようなものでしょうか?基本的に所得のある歯科医院については全て対象となりますし、医療法人については所得発生の有無に関わらず毎年確定申告が必要となります。個人事業主として歯科医院を経営されている方については事業所得という形で確定申告を行う必要があります。
確定申告における青色申告とは?
よく聞く青色申告とはなんでしょうか?特に何も申請しないと白色申告というステータスになります。青色申告は別途承認の申請書を税務署へ提出する必要があります。青色申告者になると帳簿や決算書などを白色申告よりも細かく作成し保管する義務を負う一方で、さまざまな税制上の特典を得ることができます。まず一つ目が、事業所得より最大で65万円の所得控除を行うことができる点です。また30万円未満の償却資産(備品等)について一括で経費計上が可能です(原則は10万円以上の償却資産については耐用年数に応じた償却計算が必要になります)。
青色申告者における帳簿の作成・保存
青色申告者の場合、どのような帳簿を作成・保存する必要があるのでしょうか?国税庁のホームページが参考になりますが、帳簿については仕訳帳と総勘定元帳を基本とし、必要に応じて各種補助簿(売上帳や仕入帳など)の作成が必要となります。また帳簿以外にも決算書や証憑類などの保管も必要となってきます。帳簿については、保存期間が7年となっております。
歯科医院の確定申告における収入について
歯科医院における確定申告の収入にはどのようなものがあるでしょうか?まずは保険治療か自費治療かで大きく分かれます。保険治療については患者さんから患者さん負担分を収受した金額、そしてレセプトにて請求した金額の合計が売上となります。また、自費治療の場合には患者さんが100%負担となりますので、患者さんから治療費を受領した時点で売上計上となります。
歯科医院の確定申告における収入計上時期について
歯科医院の確定申告の収入計上時期について1点留意点です。一般的には現金が入ってきた時に売上計上するイメージがありますが、税務の世界では異なります。発生主義を採用しており、具合的には請求権が確定した段階で売上を計上します。患者さん負担分は請求した瞬間に支払いが行われるのであまり問題になりませんが、レセプト分については請求から現金が入ってくるまでのタイミングがずれるため、要注意となります。
歯科医院の確定申告におけるその他の収入
歯科医院が経営者としてではなく、担当の歯科医院として仕事をしている場合は個人事業主のケースと異なってきます。まず雇用形態が重要ですが、雇用関係がある場合は給与所得に該当し、この場合は所属する歯科医院が源泉徴収を行うため、確定申告は不要となります。一方で業務委託契約になっている場合は個人事業主の扱いなので、確定申告が必要となります。
歯科医院の収入に該当しないもの
歯科医院の所得は歯科医院の事業から入ってくる収入になってくるため、それ以外のものについては歯科医院の収入ではなく個人等の収入となります。例えば、不動産を賃貸することによって得られる収入や、不動産を売却することによる収入などが挙げられます。前者を不動産の賃貸料収入として不動産所得として計上、後者は譲渡所得として計上することになります。
歯科医院の確定申告における経費について
歯科医院の確定申告における経費について、具体的に考えられるが、まず従業員の給料です。歯科衛生士や歯科助手を雇用している場合はその給料が経費として計上可能です。次に医療にかかる設備機器です。青色申告でも述べましたが、原則医療機器は減価償却資産として耐用年数に応じて償却費を計上していくことになります。そのほか医院を賃貸している場合はその賃料が経費として計上されますし、それにかかる水道光熱費ももちろん経費となります。
歯科医院の確定申告における経費における留意点
歯科医院の確定申告における経費における留意点として、プライベートなものは経費として計上できない点です。あくまでも事業収入を得るために費やした費用が経費として認められますので、プライベートなものは一切経費として認められません。
歯科医院の開業費について
歯科医院の開業までにかかった費用についてはどのように処理するのでしょうか?開業費については、税務上の繰延資産以外のものについては任意償却として、いくらでも償却することが可能となっています。極端な話、全額をすぐに償却することも可能です。
歯科医院の確定申告における経費の例外:概算経費率
医療関係については特殊な経費の処理が認められています。これを概算経費率と呼びます。具体的には、下記に該当する歯科医院については収入の一定額を概算経費として経費計上が認められています。
・その年の社会保険診療報酬の金額が5,000万円以下の人
・その年の医療機関から生じる事業所得に係る総収入金額の合計額が7,000万円以下の人
歯科医院の経費に該当しないものの例
歯科医院の経費に該当するものはあくまでも歯科医院の収入を得るために費やしたものになるため、それ以外のものについてはそのほかの所得に対する経費か、そもそも経費にならないものとなります。そもそも経費にならないものの例としては、プライベートで利用した費用などが該当します。
歯科医院における源泉徴収処理について
先ほど従業員を雇用している場合、その支払い給与を経費計上できるという話をしましたが、従業員を雇用している場合は歯科医院側で所得税の源泉徴収が原則毎月必要となります。給与計算の際に源泉分を控除し、従業員へ支払う必要があります。また年末には年末調整という形で源泉徴収の取りすぎや不足分を調整する必要があります。
その他、従業員以外にも司法書士などの士業に支払う報酬も源泉徴収の対象となります。徴収した金額は歯科医院が税務署へ納付する義務を負っています。
歯科医院における医療機器の特別償却・税額控除
「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」や、「中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除」については、機械装置が対象となるため、備品であるCTスキャナ装置などは対象外となります。一方で備品等の場合は、「医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度」の活用を検討することができます。
小規模企業共済の加入による節税
小規模企業共済とは、国の機関である中小機構が運営する制度で、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度となっています。掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があると同時に、将来の資産積立効果があります。
経営セーフティ共済の加入による節税
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先が倒産した時に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度であり、具体的には無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入ができます。また掛金は必要経費に算入できます。
歯科医院における消費税の確定申告
年商1000万円を基準に消費税の確定申告が必要となります。まず歯科治療のうち保険適用部分については消費税が非課税となります。一方で自由診療についてはこのような非課税制度が存在しないため、通常通り消費税が課されることになります。
歯科医院の確定申告に基づいて納付する税金の種類
個人事業主の場合、確定申告に基づいて納付する税金は、所得税・住民税・事業税、そして年商1000万円を超える場合は消費税が対象となります。法人の場合は、法人税・法人住民税・法人事業税、そして個人事業主と同じく年商1000万円を超える場合は消費税が対象となります。
歯科医院の納税スケジュールは?
確定申告に基づいて納付する金額が決まったのち、実際に税金を納付するスケジュールはどのようになっているのでしょうか?所得税については確定申告時に納付があるのと、一定の所得以上については予定納税ということで7月と11月に支払うことになります。個人事業税は8月と11月、個人住民税は6月、8月、10月、1月となります。
歯科医院が確定申告をしないとどうなるのか?
歯科医院が確定申告をしないとどうなるのでしょうか?確定申告を行わない状態を無申告と言い、事後的に税務調査が入った場合、無申告加算税というペナルティを受けることになります。これは本来払うべき税金の額に上乗せして支払いを命じられるもので、資金負担が重たくなってしまいます。
歯科医院の確定申告において税務調査はくるのか?
歯科医院の確定申告において税務調査はくるのでしょうか?税務調査は業務関係なく行われるので、税務調査が行われる可能性はあります。税理士がいない場合には、税務調査対応は経営者たる歯科医院の長が行う必要があるため、しっかりと説明できるように準備が大切となります。
税理士へ依頼するメリット
歯科医院にとって会社運営は、ビジネスだけでなく法律や税金、資金調達など様々な専門知識を問われますが、これまでこのような分野にいなかった経営者にとっては大変難しいものです。一方で、届出を一つ忘れるだけで税金の金額が異なったり、有利な選択を見逃すことで支払わなくてよかった税金を支払うことになったり、と判断を誤ることで存することが発生します。
税金でよくあるケースとしてまず考えられるのが、消費税の課税選択です。法人の場合、会社設立時に資本金額が一定を超えると課税事業者となりますが、免税事業者と比較して消費税を納めることになる(還付の場合を除く)ため、その分キャッシュアウトになります。また、消費税の計算方法として簡易課税を選択するか否かによって課税金額が変わってきますが、届出をする必要があると同時に届出期限も決まっているため、届出を失念すると不利な選択を強いられる可能性があります。
また消費税以外にも法人税の分野において、多いのが青色申告の承認申請書です。青色申告の場合、発生した赤字を繰り越すことができたり、過去に発生した赤字を繰戻することができたり、少額の減価償却資産を費用化して経費を早期に計上できたり、その他様々な特典を受けることができます。青色申告の承認申請書についても届出期限が決まっているので、こちらも提出し忘れるとその年度は恩恵を受けることができません。青色申告以外にも、役員報酬についても法人税法上、役員へ支払う報酬を自由にいつでも変更できないルールが設定されているため、変更期限を過ぎてしまうと変更ができない(変更はできるのですが、経費として一部認められなくなります)ことになり、大変不利です。
税金以外にも、ビジネスを長期的に安定的にするためにもしっかりと事業計画を作って、会社法などの法律に従い会社を経営し、かつ資金繰りにも困らない状況を目指すことが非常に重要になってきますが、これがご自身でしっかりとできる経営者はなかなかいないのではないかと思います。補助金の活用についても同様です。
この辺り、税理士が経営者の非常に強力なサポーターになってくれます。以下では税理士と契約するメリットについて記載をしていきます。
確定申告・記帳の業務から解放される
税制は複雑であることから、確定申告や記帳代行の難易度は他の業界と比較しても高いと思います。これをご自身でやられる場合、全てご自身で勉強したり調べたりする必要がありますが、当然間違ってしまうリスクもあります。この点、税理士費用は発生するものの、確定申告や記帳業務から解放されるため、本業に集中できかつ売上をアップさせることが可能になること、さらには間違えのない確定申告書を作成・提出することが可能となるため、安心感につながることはメリットと言えます。
また、通常であれば経理経験のある人を雇って帳簿作成や決算作成、税務申告書の作成・提出を行うことになりますが、従業員を1名雇うと、かなり費用が高額になるため、記帳部分も含めて税理士へ依頼することによって高い品質でコストを抑えたサービスを受けることが可能となります。
上記に加えて、フリーランスエンジニアにとって税務回りで多くの届出書を作成・提出する必要が出てきます。例えば、すでに述べた青色申告承認申請書や、簡易課税を選択する場合はそれに関連した届出書などです。税理士へ依頼する場合はこの届出書についても作成・提出してくれるので、漏れなく安心できることでしょう。
安心感を持って税務調査対応が可能になる
全く税務経験のない経営者からすると、税務調査と聞くだけで安心ができないことでしょう。さらに税務調査本番では何を回答していいのかわからないなど不慣れでかつ不安も多いことでしょう。また相手は専門家であるため説明不足や誤った説明などにより、追徴となる可能性も0ではありません。税理士であれば税務調査も適切なコミュニケーションで調査官と対応してもらえるので安心です。また申告書についても過去の経験から税務調査の目線でしっかりとアドバイスをしてもらえることも期待できます。
税金以外のサポート
税金以外にも資金調達や補助金などのサポートを得ることができます。前述の通り、税理士によっては税金だけでなく、資金調達や補助金のサポートをサービスとして展開している場合があります。資金調達や補助金申請にあたっては財務諸表の提出や事業計画の提出を求められる場合があり、そもそも作成経験がなけければスタートラインに立つことすらできません。また財務諸表や事業計画は経験ない経営者が書籍やインターネットで手軽に作れるものでもないため(金融機関のようなプロが見たら間違っている財務諸表はすぐにわかってしまうので)、今後事業を拡大するために資金調達や補助金の活用を検討されている場合には、税理士のサポートが必要になってくるでしょう。
経営相談が可能
資金調達や補助金以外にもビジネスに強い税理士であれば集客方法や人材採用のアドバイス、オペレーションの効率化支援など、幅広く経営コンサルティングを提供することが可能です。またコンサルティングまでいかなくても定期的に経営者の悩み相談を税理士とディスカッションするなどの経営相談も可能となります。
節税の相談が可能
合理的な範囲内で、税理士へ節税の相談が可能となります。当然、経済的合理性があり説明できる内容でなければならないので、勝手に経営者側で判断するのではなく税理士へまずは確認しましょう。税務署が認めれくれる程度の合理的な節税に関するアドバイスを期待できるでしょう。インターネットに記載されている真偽不明は情報に基づいて節税を行う方がいらっしゃいますが、過度な節税により税務署から指摘を受けた場合はペナルティである重加算税を受けて、節税をしたはずが結果余計な税金を追加で支払うケースもありますので、中途半端な知識で節税せずに税理士へ確認するようにしたほうが良いです。
歯科医院が税理士と契約する際の料金
税理士の値段:一般的な相場感
経営者が税理士へ依頼する際に、2つの方法があります。1つ目は、税務顧問として税理士と契約して1年を通して税務アドバイスをもらいながら、決算期末には決算書の作成と確定申告書の作成・提出を依頼する方法です(ケースによっては記帳代行も税理士へ依頼します)。2つ目は、決算申告のみを決算期末に税理士へ依頼する方法です。この場合、決算期末前の期中については税務アドバイスを税理士からもらうことはできず、決算申告のタイミングで併せて税理士と相談しながら確定申告を進めていくことになります。
決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用として、概ね20万円〜となるケースが多いように思います(年商や業種などによって最低料金は当然異なってきます)。もちろん、取引数や取引の複雑性によっても報酬金額は変わってくるため、必ず全ての方が20万円〜ということはないことにご留意ください。
仮に顧問契約で年間の契約を結んでいたとしても、一般的な税理士との契約では月額の顧問料報酬と、決算申告は別途料金が課されることが多いです(顧問料報酬の数ヶ月分ということが多いかと思います)。この場合、決算申告のみを依頼するよりも顧問契約している決算申告の方が安いことが多いです。月額顧問報酬についても、業種や年商、取引数などによって大きく異なりますが、概ね2〜3万円以上で決算申告料金が15万円〜という場合が多いように思われます。
業界が複雑な場合は取引やオペレーションが他の業種等と比較して複雑になる傾向になることから、上記の水準よりももう少し高くなることが予想されます。おすすめとしては、やはり顧問税理士契約を締結することにより定期的に税制面でのアドバイスを受けられるようにしておくことです。
上記に加えて相続税の相場についても解説します。概ね相続対象となる遺産総額の0.5~1%が税理士へ支払う値段だと考えると良いでしょう。ただし税理士の値段設定としては遺産総額の規模別に固定金額の料金を基本料金として設定しているところが多いようで、この基本料金も相続人の数や相続財産の複雑性などの難易度によって変わってきます。
税理士の値段の例
下記では仮に当事務所が受注する場合の値段を使って税理士の値段の例を記載していきます。
当事務所の場合は、月額顧問報酬と決算申告報酬を基本料金としており、決算申告報酬は年1回支払うものとなっております。値段の決め方ですが、年商によりまずは値段の最低料金を算出しており、そこから業種や顧客の特殊事情により個別に見積もりを行わせていただいております。例えば、年商が1500万円の法人であれば(当事務所は法人も個人事業主も同じ値段となっております)月額報酬3万円の決算申告報酬が15万円になるため、年間の支払総額は基本料金で51万円となります。
上記に加えてオプションを使われる顧客にはオプション料金を加算しております。具体例として記帳代行については、月額2万円より(年商、業種、取引量に応じて個別見積もりとさせていただいております)承っており、例えば上記の事例ですと、2万円の12ヶ月分になりますので24万円が加算され、年額が75万円となります。年末調整や固定資産税の申告をご依頼されたい方は、別途オプション利用となります。(税理士の相談料については「税理士の相談料はいくらが適正か?」の記事もご参照ください)
歯科医院の確定申告のまとめ
以上、歯科医院の確定申告について解説をしてきました。これから初めての確定申告をされる方、本記事をご確認いただき是非参考にしてみてください。
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この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。