歯科専門の税理士へ依頼するメリット

税務

歯科医師。それは人の口腔内の健康を守り生活の質を高めるという非常に尊い専門職です。多くの先生方が高い志と技術を持って日々の診療にあたられています。しかし自らクリニックを開業した瞬間から先生はもう一つの顔を持つことになります。それはクリニックという組織を率いる「経営者」としての顔です。

日々の診療に全力を注ぐ傍らスタッフの採用や労務管理患者さんを集めるためのマーケティングそして最も頭を悩ませるのが複雑な経理処理や税務申告資金繰りの管理です。特に歯科医院の経営は一般的な事業とは大きく異なる特殊性を数多く抱えています。

社会保険診療と自由診療という二つの異なる収入源の混在高額な医療機器への継続的な投資そして医療法や診療報酬改定といった国の制度による強い影響。これらの課題に臨床のプロフェッショナルである先生がたった一人で完璧に対応するのは至難の業と言えるでしょう。

「診療は順調なはずなのに思ったように利益が残らない」「最新のCTを導入したいが資金調達の方法がわからない」「医療法人化を勧められるがメリットがよく分からない」。こうした悩みを抱えながらも相談する相手がいない。それが多くの院長先生の現実かもしれません。

その孤独な戦いに終止符を打ち先生が安心して診療に集中し医院を理想の形へと成長させていくための最も強力なパートナーとなり得るのが「歯科専門の税理士」です。

しかし「税理士なら誰でも同じだろう」と近所の税理士に安易に依頼してしまうのは非常に危険な選択です。歯科経営の特殊性を理解していない税理士では本来得られるはずの節税メリットを逃すばかりか誤った経営判断に繋がりかねません。

この記事では歯科医院を経営する院長先生やこれから開業を目指す歯科医師の先生が自院の成長を真にサポートしてくれる最高の税理士パートナーを見つけ出しそのメリットを最大限に享受するための全てを網羅的かつ徹底的に解説していきます。

この記事を読み終える頃あなたは歯科経営における「専門税理士」の真の価値を理解し自院の未来を託すに足るパートナー選びを自信を持って進めることができるようになっているはずです。

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歯科専門の税理士へ依頼するメリット

  1. 歯科専門の税理士とは
    1. 税理士の基礎業務
    2. 「歯科専門」が付加する価値
  2. 歯科専門の税理士は何が提供できるか
    1. 基本的な税務・会計サービス
      1. 記帳代行と月次決算のサポート
      2. 決算申告業務
    2. 歯科医院に特化した専門サービス
      1. 社会保険診療報酬の特例(措置法26条)の適用判断
      2. 複雑な消費税申告の最適化
      3. 医療法人化のシミュレーションと実行支援
    3. 経営の成長を加速させる支援サービス
      1. 経営分析とベンチマーキング
      2. 資金調達支援と設備投資計画
      3. 事業承継・M&Aアドバイザリー
  3. 歯科専門の税理士に依頼するメリット
    1. 院長が本来の業務である診療に専念できる
    2. 税務メリットの最大化によるキャッシュフローの改善
    3. 客観的なデータに基づく的確な経営判断
    4. 資金調達力の向上と安定した医院経営
    5. 税務調査や行政指導(個別指導)に対する絶対的な安心感
    6. 医療法人化や事業承継といったライフイベントのスムーズな実行
  4. 歯科専門の税理士の探し方について
    1. インターネット検索(専門性の見極め)
    2. 同業の歯科医師(先輩・知人)からの紹介
    3. 歯科ディーラー・メーカーの営業担当者からの紹介
    4. 金融機関(銀行・信用金庫)からの紹介
  5. 歯科専門の税理士の費用相場
    1. 費用の基本的な構成
    2. 個人のクリニック(個人事業主)の場合
      1. 記帳代行なし(自計化)の場合
      2. 記帳代行ありの場合
    3. 医療法人の場合
    4. その他のスポット業務の費用相場
  6. 歯科専門の税理士へ依頼するタイミング
    1. 開業準備段階(最も重要)
    2. 経営が軌道に乗り始めた時(医療法人化検討時)
    3. 現在の税理士に専門性の不安を感じた時
    4. 事業承継を意識し始めた時
  7. 歯科専門の税理士を選ぶ際のポイント
    1. 歯科医院の顧問実績件数
    2. 医療法人の設立・運営実績
    3. 措置法26条・消費税への精通度
    4. 経営アドバイス(KPI管理)の具体性
    5. コミュニケーションの相性と人柄
    6. ITツール(クラウド会計・レセコン連携)への対応力
  8. 歯科専門の税理士に関するよくある質問の例と回答
    1. Q1. 社会保険診療報酬の特例(措置法26条)は必ず使った方が得なのですか?
    2. Q2. 自由診療の売上をごまかしてもバレませんか?
    3. Q3. 妻を理事や従業員にして給与を支払うことはできますか?
    4. Q4. 医療法人化の最適なタイミングはいつですか?
  9. まとめ

歯科専門の税理士とは

まず「歯科専門の税理士」とは一体どのような存在なのでしょうか。それは一般的な税理士と何が決定的に違うのでしょうか。

税理士の基礎業務

税理士は税理士法に定められた税務に関する専門家です。その基本的な役割は大きく分けて三つあります。一つ目は納税者の代理として税務申告を行う「税務代理」。二つ目は確定申告書や法人税申告書といった「税務書類の作成」。三つ目は税に関する相談に応じる「税務相談」です。これらは全ての税理士が提供する基盤となるサービスです。

「歯科専門」が付加する価値

一般的な税理士がこれらの業務を全業種に対して広く浅く提供するのに対し「歯科専門の税理士」は文字通り歯科医院という特定の業種に特化しその分野で圧倒的な専門知識と経験を蓄積しています。

彼らは単に税金の計算ができるだけではありません。歯科業界特有の会計ルール税務上の優遇措置経営指標を深く理解しています。例えば社会保険診療と自由診療が混在する会計処理の方法社会保険診療報酬にかかる所得計算の特例措置法26条の最適な活用法消費税の有利不利判定といった歯科医院ならではの極めて専門的な論点に精通しています。

さらに彼らの強みは税務会計に留まりません。数多くの歯科クリニックの経営を間近で見てきた経験からユニット1台あたりの生産性や自費率リコール率といった歯科医院特有の経営指標を分析しあなたのクリニックが業界の平均と比べてどのような立ち位置にあるのかを客観的に示してくれます。

つまり歯科専門の税理士とは税務会計のプロフェッショナルであると同時に歯科医院経営のコンサルタントでもあるのです。彼らは院長先生のビジョンに共感しその実現のために数字の面から伴走する最も身近な経営パートナーとなり得る存在です。

歯科専門の税理士は何が提供できるか

では歯科専門の税理士は具体的にどのようなサービスを提供してくれるのでしょうか。その業務は日々の経理作業のサポートから医院の将来を左右する経営戦略の立案まで非常に多岐にわたります。

基本的な税務・会計サービス

これは全ての税理士が提供する基礎的な業務ですが歯科専門の税理士はこれを歯科医院の特性に合わせて最適化してくれます。

記帳代行と月次決算のサポート

日々の窓口収入やレセプトデータ経費の領収書などを基に会計ソフトへの入力を代行(記帳代行)あるいは自院で行う経理処理(自計化)を指導・レビューします。特にクラウド会計ソフトの導入を支援しレセコン(レセプトコンピュータ)のデータと連携させることで経理業務の大幅な効率化を図ります。 そして毎月の業績を速やかに締め「月次試算表」として報告します。これにより院長は医院の経営状態をタイムリーに把握できます。

決算申告業務

年に一度の決算を締め個人のクリニックであれば所得税医療法人であれば法人税の確定申告書を作成し税務署へ提出します。もちろん消費税の申告も併せて行います。

歯科医院に特化した専門サービス

ここからが歯科専門の税理士の真骨頂です。業界特有の高度な専門知識が求められる領域です。

社会保険診療報酬の特例(措置法26条)の適用判断

歯科医院税務における最大の節税ポイントの一つが社会保険診療報酬に係る所得計算の特例措置法26条です。これは社会保険診療の収入が一定額以下の場合実際の経費ではなく国が定めた概算経費率(例えば収入2500万円以下の部分は72%)を使って所得を計算できるという制度です。 歯科専門の税理士は毎年この特例を使うべきかそれとも実際の経費で計算する「実額計算」の方が有利かを精密にシミュレーションし院長の税負担が最小になるよう最適な申告方法を選択します。

複雑な消費税申告の最適化

歯科医院の収入は保険診療(非課税売上)と自費診療(課税売上)が混在しているため消費税の計算が非常に複雑です。仕入れや経費にかかった消費税をどのように按分して控除するか(仕入税額控除)の計算が難解です。 また簡易課税制度を選択すべきか原則課税を選択すべきかによっても納税額が大きく変わります。歯科専門の税理士は医院の売上構成や設備投資計画を予測し最も有利な申告方法を戦略的に選択・提案します。

医療法人化のシミュレーションと実行支援

個人のクリニックの所得が一定水準を超えると医療法人を設立した方がトータルの税負担(所得税+法人税)が少なくなる可能性があります。 税理士は法人化した場合の役員報酬の設定や社会保険料の負担増なども含めた詳細なシミュレーションを行い院長にとって最適な「法人成り」のタイミングをアドバイスします。そして設立を決断した際には行政書士や司法書士と連携し煩雑な認可申請や登記の手続きをワンストップでサポートします。

経営の成長を加速させる支援サービス

歯科専門の税理士は過去の数字を処理するだけでなく未来の経営をデザインするパートナーでもあります。

経営分析とベンチマーキング

月次試算表の数字を基に「ユニット1台あたり売上高」「患者1人あたり単価(保険・自費別)」「自費率」「リコール率」といった歯科医院特有の経営指標(KPI)を分析します。 さらに税理士が持つ独自のデータベース(他の顧問先クリニックの平均値など)と比較(ベンチマーキング)することで自院の強みと弱点を客観的に「見える化」し具体的な改善策を院長と共に考えます。

資金調達支援と設備投資計画

CTやマイクロスコープCAD/CAMシステムなど歯科医院の競争力を高めるための高額な医療機器の導入は経営上非常に重要な意思決定です。 税理士は導入による投資対効果をシミュレーションするとともに金融機関(日本政策金融公庫や地域の銀行信金)から有利な条件で融資を引き出すための事業計画書の作成を強力にサポートします。

事業承継・M&Aアドバイザリー

院長が将来引退を迎える際の事業承継も大きなテーマです。税理士は医療法人の出資持分の評価や後継者(親族や勤務医)へのスムーズな引継ぎ相続税対策などを長期的な視点で計画・実行します。 また後継者がいない場合にはM&A(第三者への医院売却)という選択肢についても専門家としてアドバイスや仲介支援を行います。

歯科専門の税理士に依頼するメリット

専門知識が豊富で歯科業界に精通した税理士をパートナーに迎えることは院長先生にとって計り知れないメリットをもたらします。それは単に経理が楽になるというレベルの話ではなく医院経営の質そのものを向上させ院長の人生を豊かにする戦略的な一手です。

院長が本来の業務である診療に専念できる

院長先生の最も価値のある時間は患者さんと向き合い質の高い医療を提供することです。慣れない経理作業や複雑な税金の計算に貴重な時間を費やすのは医院全体にとって大きな損失です。 税理士に専門外の業務を任せることで院長はストレスなく診療という本来の業務に集中でき患者満足度の向上ひいては医院の評判アップに繋がります。この「時間」と「精神的な余裕」の創出こそが最大のメリットと言えるでしょう。

税務メリットの最大化によるキャッシュフローの改善

歯科医院に強い税理士は社会保険診療報酬の所得計算の特例(措置法26条)や消費税の有利不利判定医療機器に関する優遇税制(中小企業経営強化税制など)といった業界特有の節税ノウハウを熟知しています。 これらの専門知識を駆使することで合法的な範囲で納税額を最小限に抑え医院の手元に残るキャッシュを最大化します。この潤沢なキャッシュフローが最新の設備投資やスタッフの待遇改善を可能にし医院のさらなる成長の原動力となります。

客観的なデータに基づく的確な経営判断

「どんぶり勘定」は経営の最大の敵です。自分一人で経営しているとどうしても判断が主観的になりがちです。 歯科専門の税理士が提供する月次決算書や経営分析レポートは自院の経営状態を客観的に映し出す「鏡」の役割を果たします。ユニット1台あたりの生産性や自費率といった具体的な数字に基づいて「今何をすべきか」を冷静に判断できるようになります。感覚だけに頼らないデータドリブンな経営が厳しい競争環境を勝ち抜くための鍵となります。

資金調達力の向上と安定した医院経営

金融機関は融資審査の際に事業の将来性や返済能力を厳しく評価します。税理士が日常的に関与し作成した信頼性の高い決算書や緻密な事業計画書(特に高額な設備投資の際)は金融機関からの信用を格段に高めます。 必要な時に必要な資金をスムーズに調達できる体制は戦略的な設備投資を可能にし医院経営に安定と成長をもたらします。

税務調査や行政指導(個別指導)に対する絶対的な安心感

歯科医院は社会保険診療と自由診療が混在するため税務署から見ても実態が把握しにくく税務調査の対象になりやすい業種の一つです。また厚生局による「個別指導」は診療報酬の請求内容に関する行政指導であり経営者にとって大きなプレッシャーとなります。 顧問税理士がいれば税務調査には代理人として立ち会い専門的な知識で院長を守ってくれます。また日頃から適正な会計処理(保険と自費の明確な区分など)を行うことで個別指導の際にも会計面で指摘を受けるリスクを最小化できます。プロがバックについているという安心感は何物にも代えがたい価値があります。

医療法人化や事業承継といったライフイベントのスムーズな実行

医療法人化や事業承継は院長のキャリアにおける非常に大きな転換点です。これらの手続きは法務・税務・行政手続きが複雑に絡み合い専門家のサポートなしで進めることはほぼ不可能です。 歯科専門の税理士に相談すればあなたのライフプランに寄り添いこれらの重要なイベントを最適なタイミングとスキームでスムーズに実行してくれます。

歯科専門の税理士の探し方について

これほど多くのメリットをもたらしてくれる「歯科専門の税理士」ですがどのようにして見つけ出せば良いのでしょうか。一般的な税理士と異なりその数は限られているため探し方にもコツが必要です。

インターネット検索(専門性の見極め)

現在最も手軽で情報量も豊富な探し方がインターネット検索です。ただしその使い方には少し工夫が必要です。 「税理士」とだけ検索するのではなく「歯科 税理士」「クリニック 開業 融資」「医療法人 設立 税理士 〇〇(地域名)」といったように「歯科」に関連するキーワードや「開業」「医療法人」といった具体的な課題を掛け合わせて検索しましょう。 表示された税理士事務所のウェブサイトを訪問し「歯科医院の顧問実績〇〇件」「医療法人設立サポート」といった専門性を明確に打ち出しているか歯科医院経営に関する専門的なコラムやブログを掲載しているかなどをチェックします。「歯科も対応可能」というレベルではなく「歯科に特化」あるいは「歯科に強い」と明言している事務所が有力な候補となります。

同業の歯科医師(先輩・知人)からの紹介

これが最も信頼性が高く確実な方法の一つです。あなたの出身大学の先輩やスタディーグループの仲間地域の歯科医師会などで既に開業し経営がうまくいっているように見える院長先生に「どこの税理士事務所と契約していますか」とその評判を聞いてみましょう。 実際にサービスを利用している人からの「あの先生は措置法26条に詳しくて助かった」「資金調達で本当に力になってくれた」といったリアルな口コミは何よりも貴重な情報源です。

歯科ディーラー・メーカーの営業担当者からの紹介

日頃から付き合いのある歯科器材のディーラーや医療機器メーカーの営業担当者に相談するのも非常に有効な手段です。彼らは毎日多くの歯科医院に出入りしておりどのクリニックが繁盛しているかどの院長がどのような経営をしているかそしてそのクリニックをどの税理士がサポートしているかという業界の「生きた情報」を豊富に持っています。 経営に積極的な院長をサポートしている税理士を紹介してもらえる可能性が高いです。

金融機関(銀行・信用金庫)からの紹介

クリニックの開業や運営において金融機関との関係は不可欠です。特にあなたが融資を相談しようと考えている金融機関の担当者(日本政策金融公庫や地元の銀行・信用金庫)に「クリニック開業の実績が豊富な税理士を紹介してほしい」と依頼してみましょう。 金融機関は融資を成功させ確実に返済してくれる優良な顧客を増やしたいと考えています。そのため融資審査を通過できる質の高い事業計画書を作成できる優秀な税理士をリストアップしているものです。

歯科専門の税理士の費用相場

歯科医院の経営を任せる上で費用は重要な判断材料です。歯科医院の税務会計は一般的な事業よりも専門性が高く管理も煩雑になるため顧問料はやや高めに設定される傾向があります。

費用の基本的な構成

税理士の料金は主に「月額顧問料」と「決算申告料」で構成されています。

  • 月額顧問料: 毎月の会計データのレビューや経営相談税務相談といった継続的なサポートに対する費用です。
  • 記帳代行料: 領収書や請求書の整理会計ソフトへの入力を税理士に丸ごと任せる場合の費用です。自院で記帳(自計化)する場合は発生しません。
  • 決算申告料: 年に一度の決算業務と法人税や所得税消費税などの申告書作成に対する費用です。一般的に月額顧問料の4ヶ月分から6ヶ月分が相場です。
  • オプション料金: 年末調整や給与計算償却資産税申告税務調査立会い融資支援といった基本の顧問契約に含まれない業務を依頼した場合に別途発生します。

個人のクリニック(個人事業主)の場合

個人開業のクリニックが顧問契約を結ぶ場合の費用相場です。

記帳代行なし(自計化)の場合

日々の記帳は自院で行い税理士には帳簿のチェックと相談決算申告を依頼するケースです。

  • 月額顧問料: 3万円~6万円程度
  • 決算申告料: 15万円~30万円程度
  • 年間合計: 約50万円~100万円

記帳代行ありの場合

日々の記帳作業もまとめて税理士に依頼するケースです。

  • 月額顧問料(記帳代行料含む): 4万円~8万円程度
  • 決算申告料: 20万円~40万円程度
  • 年間合計: 約70万円~130万円

医療法人の場合

医療法人は個人に比べて会計処理が格段に複雑になり都道府県への事業報告書の提出など行政手続きも増えるため顧問料は高くなります。

  • 月額顧問料(記帳代行なし): 5万円~10万円程度
  • 月額顧問料(記帳代行あり): 6万円~15万円程度
  • 決算申告料: 30万円~60万円程度
  • 年間合計: 約90万円~250万円

その他のスポット業務の費用相場

  • 新規開業支援(融資・事業計画書作成): 30万円~80万円程度。または融資成功額の1%~3%の成功報酬。
  • 医療法人設立支援: 50万円~100万円程度(行政書士・司法書士報酬を含む場合が多い)。
  • 事業承継コンサルティング: 個別のプロジェクト見積もり(数十万円~数百万円)。

歯科専門の税理士へ依頼するタイミング

税理士のサポートは早ければ早いほどその効果を最大限に発揮します。問題が起きてから慌てて探すのではなく事業の重要な節目で先手を打って専門家と繋がっておくことが医院経営を成功に導く秘訣です。

開業準備段階(最も重要)

これが最も理想的かつ重要なタイミングです。物件を探し始める段階あるいは少なくとも内装工事の契約を結ぶ前には税理士探しを始めましょう。 なぜなら開業時の資金調達(融資)が成功するかどうかは税理士と二人三脚で作成する「事業計画書」の出来栄えにかかっているからです。開業支援実績が豊富な税理士は事業計画書の作成から金融機関の紹介面談対策までを強力にサポートし高額な開業資金の調達を成功に導きます。また開業時に必要な税務署への各種届出(青色申告承認申請書など)も漏れなく代行してくれます。

経営が軌道に乗り始めた時(医療法人化検討時)

個人事業として開業し順調に患者さんが増え所得(利益)が安定して1500万円を超えるようになってきたらそれは次のステップである「医療法人化」を検討するタイミングです。 このタイミングで医療法人設立の実績が豊富な税理士に相談し法人化のメリット・デメリットや最適なタイミングについて詳細なシミュレーションをしてもらうことが重要です。

現在の税理士に専門性の不安を感じた時

すでに顧問税理士はいるものの「措置法26条の話をしてくれない」「自費率やユニット生産性の話が通じない」「クラウド会計に対応してくれない」などその専門性や対応に不安を感じ始めた時も切り替えを検討する重要なタイミングです。歯科経営の特殊性を理解していない税理士と契約し続けることは医院にとって大きな機会損失となり得ます。

事業承継を意識し始めた時

院長が50代半ばにさしかかり自身の引退後の医院の将来について考え始めたら事業承継専門の税理士への相談を開始すべきです。事業承継対策には後継者の育成出資持分の評価と移転相続税対策など少なくとも5年から10年の時間が必要です。手遅れになる前に計画的に準備を始めることが不可欠です。

歯科専門の税理士を選ぶ際のポイント

数多くいる税理士の中から本当に歯科医院経営に精通し自院の成長に貢献してくれるパートナーを見つけ出すためにはいくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。以下のチェックリストを参考に候補となる税理士を吟味してください。

歯科医院の顧問実績件数

これが最も重要かつ分かりやすい指標です。税理士事務所のウェブサイトなどで歯科医院のクライアントが何件あるかを必ず確認しましょう。「医療業に強い」という曖昧な表現ではなく「歯科医院の顧問実績〇〇件」と明記されているかが重要です。実績件数が多ければ(できれば50件以上)それだけ多くの事例に対応してきた経験とノウハウが蓄積されている証拠です。

医療法人の設立・運営実績

将来的に医療法人化を視野に入れているのであればその設立や運営に関する実績は必須のチェック項目です。過去に何件の医療法人設立を手がけたか設立後の都道府県への事業報告書の作成といった運営サポートも行っているかを確認しましょう。

措置法26条・消費税への精通度

歯科医院税務の根幹とも言えるこれらの特例や複雑な計算について深い知識を持っているかを見極めます。面談の際にこれらの制度について質問を投げかけそのメリット・デメリットや適用判断のポイントを分かりやすく的確に説明できるかどうかでその税理士の専門性を測ることができます。

経営アドバイス(KPI管理)の具体性

税務申告だけでなく医院経営のパートナーとしての資質があるかを見極めます。「ユニット1台あたりの生産性」「自費率」「リコール率」といった歯科医院特有の経営指標(KPI)を理解しそれに基づいた経営分析や同業他院との比較(ベンチマーキング)アドバイスが可能かどうかは大きな違いです。

コミュニケーションの相性と人柄

税理士とは医院の最もデリケートな情報を共有し長期的に付き合っていくパートナーです。専門知識だけでなく人間的な相性も非常に重要です。

  • 説明の分かりやすさ: 難しい税務や会計の話を院長が理解できる平易な言葉で説明してくれるか。
  • 相談のしやすさ: どんな些細なことでも気軽に質問できる雰囲気か。高圧的でないか。
  • レスポンスの速さ: 質問や相談に対する返信が迅速か。

ITツール(クラウド会計・レセコン連携)への対応力

現代のクリニック経営においてITの活用は不可欠です。レセコンのデータと連携できるクラウド会計ソフトの導入に積極的かチャットツールなどでのスピーディーなやり取りが可能か。こうしたITへの対応力は業務の効率性と経営状況のリアルタイムな把握に直結します。

歯科専門の税理士に関するよくある質問の例と回答

ここでは歯科医院の院長先生から税理士によく寄せられる質問とその回答例を紹介します。

Q1. 社会保険診療報酬の特例(措置法26条)は必ず使った方が得なのですか?

A1. いいえ必ずしもそうとは限りません。この特例は実際の経費が概算経費の金額より少ない場合に有利になります。しかし高額な医療機器を導入して減価償却費が多額になる年や人件費や広告宣伝費に大きく投資した年は実際の経費で計算する「実額計算」の方が有利になることもあります。どちらが有利になるかは毎年必ずシミュレーションして判断すべきです。歯科専門の税理士であればこの有利選択の検討を必ず行います。

Q2. 自由診療の売上をごまかしてもバレませんか?

A2. はいほぼ間違いなく発覚します。税務署は歯科ディーラーや歯科技工所からの材料の仕入れ状況や同規模の医院の平均的な自費率などから売上を推計するノウハウを持っています。意図的な売上除外は最も重いペナルティである重加算税(税率35%または40%)の対象となるだけでなく脱税として刑事罰に問われる可能性もある極めてハイリスクな行為です。絶対にやめるべきです。適正な申告と節税で手元資金を増やすのが王道です。

Q3. 妻を理事や従業員にして給与を支払うことはできますか?

A3. はい可能です。ただしその業務実態に見合った適正な金額であることが大前提です。全く勤務実態がないのに給与を支払ったり業務内容に比べて不相当に高額な給与を支払ったりした場合は税務調査で否認されるリスクがあります。タイムカードや業務日報など勤務実態を客観的に証明できる資料を整備しておくことが重要です。

Q4. 医療法人化の最適なタイミングはいつですか?

A4. 一般的には個人の所得(利益)が安定して一定額を超えてくると所得税・住民税の負担が法人税の負担より重くなるため医療法人化を検討する目安と言われています。しかしそれだけでなく将来的に分院展開を考えているか事業承継をどうするか社会保険料の負担増は許容できるかといった様々な要因を総合的に勘案して判断すべきです。あなたのビジョンに合わせた詳細なシミュレーションが必要です。

まとめ

歯科医師である先生は優れた臨床家であると同時に一国一城の主である経営者です。その二つの顔を両立させ地域社会に貢献しながら医院を永続的に発展させていくためには信頼できる右腕の存在が不可欠です。

この記事ではその最高の右腕となり得る「歯科専門の税理士」を見つけ出すための方法を網羅的に解説してきました。

最適な税理士とは単に正確な申告書を作成するだけの専門家ではありません。歯科医院経営の特殊性を深く理解し社会保険診療報酬の特例や医療法人化といった専門知識を駆使してあなたの医院のキャッシュフローを最大化してくれる戦略家です。そしてユニット生産性や自費率といった数字の裏側にある経営課題を読み解き院長の孤独な戦いに寄り添い共に未来を描いてくれるパートナーです。

その最高のパートナーを見つけ出す鍵は「歯科医院の顧問実績」「医療法人設立の実績」「経営改善への提案力」そして何よりも「院長との人間的な相性」を総合的に見極めることにあります。同業の仲間や歯科ディーラーからの紹介といった業界ならではのチャネルを最大限に活用し直接対話する中で「この人になら医院の未来を託せる」と心から信頼できる相手を選び抜いてください。

税理士に支払う費用はコストではありません。あなたの貴重な時間を診療という本業に取り戻し医院を次の成長ステージへと導くための最も効果的な「投資」です。

この記事があなたの税理士探しという重要な航海の確かな羅針盤となりあなたのクリニックが輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば幸いです。まずは勇気を出して気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。

税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。