本記事では、医師が税理士を活用するにあたって、どのようなポイントに留意すれば良いかについて記載をしております。医師が税理士を活用することによって得られるメリットや税理士にかかる料金、もしくは医師に強い税理士の例などを本記事では紹介していきます。
本記事を参考いただくことで、税理士をそもそもつけるかどうかを判断することができるようになること、税理士を活用するにあたっての留意点を理解することができるようになります。
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医師における税務の特徴
医師と一言で言っても、勤務医なのか、開業医なのかによって、その特徴が大きく異なります。まず勤務医ですが、ここでば病院に勤務している方、副業収入がある方、もしくは業務委託等で仕事を受注している方を前提としています。勤務医の方については、病院からの給与収入しかない場合、年収が2,000万円超えると確定申告をご自身で作成して提出する必要があります。また、副業収入がある方についても年収の多寡に関係なく、確定申告の義務が発生します。加えて業務委託報酬で仕事をしている方も同様です。勤務医の場合は報酬は病院等から入ってくる一方で、業務委託等の場合はご自身で使った経費などが発生することになります。なお、給与収入のみの場合、副業だったとしても給与収入に関する経費は給与所得控除に原則限られてしまうため、ご自身で使った経費等を別途経費として入れることができませんのでご留意ください。
次は開業医の場合です。開業医の場合、建物の内装からスタートし、医療に必要な機械などの導入や人材の採用など、事業をスタートするにあたって大きな投資が必要となってきます。加えてその投資は自己資本でやることは多くなく、一般的には金融機関からの借入やリースを使うことが多いでしょう。一方で収入は患者さんからの収入と保険料収入になるため、初期で投資したお金をその後数年以上にわたって徐々に回収していく形となります。
特に最初の段階で多額の資金が必要になるケースが多いことから、綿密な事業計画は必要になってくると思います。医療の場合供給よりも現状は需要が上回っているので、大きく赤字になるケースは想定しづらいですが、それでも開院する地域の顧客想定はしっかりとリサーチした上で、どの程度の資金が必要なのか(金利支払も含めて)、いつ損益分岐点を超えそうか、については最低限事前に固めておくべきでしょう。また看護師や医療事務などの従業員・パートを雇うことも多いため、給与計算や年末調整、源泉徴収、社会保険周りが複雑になりがちですが、センシティブな内容なのでミスは許されません。
医師業の処理で間違えやすい部分としては、初期投資にかかるもので償却資産に該当するものを一回で経費計上してしまったり、売上に関して実際の入金が入ってきたタイミングで売上計上するのではなく、正しくは請求権が発生した瞬間に売上計上になりますので、皆様が思っているよりも早いタイミングで売上計上されるというポイントで間違えていることが多いかと思います。
医師にとって税理士が必要なポイントとしては、まず年収が高く税金へ与える影響が大きいからです。年収が高ければその分だけ税率が上がるため、節税を行うことによる効果は大きくなります。一方で、節税を知識のない方がインターネットなどの情報のみで行うのは非常に危険です。法的な範囲内でおこなっているものであれば問題ありませんが、知識がない場合もはや節税ではなくなっている可能性もあります。その場合、ペナルティーを受ける可能性もあり節税したのに結果として追加の税額を支払うことになったという可能性も十分あります。そのため税理士を契約してしっかりと見てもらうことをお勧めします。また開業医の場合は上述の通り経理処理は非常に複雑なものであり、本業もある中で正直確定申告や経理業務をやっている余裕はないですし、そもそも年商が大きいため税金の支払額に与える影響も他業種と比較しても大きいです。そのため、万が一確定申告にミスがあったときの影響が大きいため、税理士を入れることで本業に集中し、正しい申告をされることをお勧めいたします。
医師が税理士へ依頼できること
医師が税理士へ依頼できるサービスとはどのようなものがあるのでしょうか?まずは年度の確定申告書です。これは個人事業主として医師をやっている方も、医療法人として医師をやっている方も、フリーランスとして業務委託で医師をやっている方も必ず行うものになります。特に開業医の場合は設備投資の減価償却費や従業員の年末調整など、他の業種と比較しても税務申告書の難易度は高くなります。そのため、本業に集中する目的で、税理士へ確定申告書を代行依頼した方が、効率的になることが多いです。
続いてこちらは医師向け特有のサービスになりますが、医療法人設立のサポートや分院等の支援になります。税理士によっては医療業界特化でやっている人もいるため、医療法人の立ち上げをトータルでサポートしたり、分院の際のサポートをしたりなど多角的にサービスを展開しているケースがあります。開業医の場合、1つ目の医院が軌道に乗り始めると、分院や医療法人化の検討も始められると思いますが、その際税務関連の知識がないと非常に難易度が高ため、この辺りをトータルでサポートできる税理士がアドバイザーにいると、大変心強いと言えます。
また上記と関連しますが、初めての開業についても開業時から税理士が支援するケースもあります。医院の開業にあたっては資金調達や事業計画書の作成など、財務関連の業務が様々なと発生しますし、購入もしくはリースした固定資産は固定資産台帳等で管理して必要に応じて減価償却を行なっていく必要があります。また一定の資産については償却資産税申告を行う必要もあります。この辺りの管理も慣れていないと非常に難易度が高いものとなりますので、税理士のサポートが非常に心強いでしょう。
その他のサービスとして節税を含んだ税務相談サービスになります。税理士の本業でもありますが、開業医の場合は特に資産・負債も大きくなりますし、年商規模も大きくなりやすいことから、税金の支払額も多額になりがちです。一方で税法についての知識がないと、せっかく使える税額控除の適用を失念したりすることで、とれた税メリットが取れないケースが発生します。その点、税金のプロフェッショナルである税理士をつけることで、この辺りを漏れなく適用することができるようになるのです。
医師にとって税理士が必要なタイミング
医師が税理士を活用するのに最適なタイミングはいつになるでしょうか?こちらも開業医と業務委託のフリーランス医師で異なるところです。まず開業医については、できるなら開業時に税理士をつけた方が良いと思います。前述の通り、開業医の場合設備投資や多額の借入など、資産負債が非常に膨らみやすい事業ですし、加えて年商も大きくなることが想定されます。また看護師など従業員も雇用することが想定されるため、年末調整なども必要となってきます。そのため、開業時及び開業初年度から多角的な税務論点に対応する必要に迫られるのです。
一方で、開業ということで新しく患者さんを集客したり、医療のオペレーションをしっかりと確立・改善していくなど税務以外の業務の方も全てが忙しく、正直本業でない税務に集中することは時間的にも精神的にも難しいと思われます。そのため、本業に集中してしっかりと医療行為を行う上でも、確定申告や決算書は税務の専門家である税理士へ依頼することをお勧めします。
続いて、開業医・フリーランス医師共通ですが、上記の開業タイミング以外で行くと、年商が1,000万円を超えるタイミングが一つのポイントになってくるかと思います。年商が1,000万円超えてくると消費税申告書の対象となってくるため、日々の記帳の方法や提出する確定申告書類が通常よりも多くなります。また消費税については簡易課税を選択するか否かによって消費税の支払う額が異なってきますし、一度選択してしまうと一定期間は原則課税に戻ることができないため、税理士のアドバイスをしっかりともらい、税務処理を判断することをお勧めします。
医師が税理士へ依頼することによるメリット
医療に強い税理士と契約することで得られるメリットは以下の通りです。
- 開業時や法人化の際に税金に関するアドバイスを受けることができる
- 資金調達やシステム導入、数字管理など経営に関するアドバイスを受けることができる
- 事業承継など、相続等に関するアドバイスを受けることができる
- 税理士によっては税務面だけではなく、人材採用や医療のオペレーション、マーケティング/宣伝広告など経営に踏み込んだアドバイスを受けることができる
- 事業計画の策定や補助金申請など事業に絡んだ資金ニーズに対応することができる
開業にあたっては立地や差別化戦略などが重要になってきますが、税金アドバイスと含めて開業時にアドバイスを受けることが考えれます。また法人化にあたってはさまざまな税務論点が発生しますので、税理士のアドバイスがかなり役に立つと言えます。加えて、人事労務制度なども他の医療業界を見ている税理士等であればその視点からも経営アドバイスができる可能性がありますので、税務だけでなく幅広い相談をできる可能性があります。
例えば税金でよくあるケースとしてまず考えられるのが、消費税の課税選択です。法人の場合、会社設立時に資本金額が一定を超えると課税事業者となりますが、免税事業者と比較して消費税を納めることになる(還付の場合を除く)ため、その分キャッシュアウトになります。また、消費税の計算方法として簡易課税を選択するか否かによって課税金額が変わってきますが、届出をする必要があると同時に届出期限も決まっているため、届出を失念すると不利な選択を強いられる可能性があります。
また消費税以外にも法人税の分野において、多いのが青色申告の承認申請書です。青色申告の場合、発生した赤字を繰り越すことができたり、過去に発生した赤字を繰戻することができたり、少額の減価償却資産を費用化して経費を早期に計上できたり、その他様々な特典を受けることができます。青色申告の承認申請書についても届出期限が決まっているので、こちらも提出し忘れるとその年度は恩恵を受けることができません。青色申告以外にも、役員報酬についても法人税法上、役員へ支払う報酬を自由にいつでも変更できないルールが設定されているため、変更期限を過ぎてしまうと変更ができない(変更はできるのですが、経費として一部認められなくなります)ことになり、大変不利です。
税金以外にも、ビジネスを長期的に安定的にするためにもしっかりと事業計画を作って、会社法などの法律に従い会社を経営し、かつ資金繰りにも困らない状況を目指すことが非常に重要になってきますが、これがご自身でしっかりとできる医師はなかなかいないのではないかと思います。補助金の活用についても同様です。
医師が税理士と契約する場合どれぐらいの料金がかかるのか?
医師が税理士と契約する場合の料金について記載をしていきます。まず税理士の料金は大きく月額で発生する月額顧問料金と、年間1回確定申告の際に発生する決算料金の2つに大別されます。前者については、税務相談を行うための料金でして、医師の場合は開業医の場合を想定しますが、月額3万円〜が一般的な相場かと思います。通常の業種よりも年商が大きくなりやすいのと、設備投資など論点も多いため、他の業種よりも顧問料は比較的高い傾向にあります。
決算料については、通常月額顧問料の4〜6ヶ月の料金となることが多く、確定申告時に一括で請求されることになります。通常どちらかのみの料金を支払うことはなく、月額顧問料金と決算料がセットとなっています。税理士によっては決算・申告のみの対応を行う場合もありますが、その場合は期中に税務相談ができず、また決算料も通常よりも割高になります。
記帳代行や年末調整などを税理士へ依頼する場合には上記の料金に加算されます。例えば記帳代行については、月額顧問料に上乗せされて請求されますし、年末調整については年末調整のサービスを提供する際に、決算料金等に上乗せされて請求されることが一般的です。
医師に強い税理士の具体例
医師に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます。
まずは、税理士法人テラス様です(https://trc-tax.com/)。開業前から医療法人の設立や相続・事業承継対策など、ライフステージに応じたサービスを幅広く展開されております。
続いて、税理士法人青木会計様です(https://aokikaikei.or.jp/)。税務のみならず、不動産オーナー向けの支援メニューなどを展開されています。また書籍についても多数発行されております。
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。特にデジタル経験も豊富ですので医師である顧客のお悩みを深く理解し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
まとめ
以上のように医師にとって税理士は必要か、税理士のメリットや料金例、医師に強い税理士の例について記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
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この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。