ダブルワークの人は確定申告必要か?確定申告のポイントなど徹底解説

税務

現代社会における働き方は、かつてないほどの多様化と流動化を見せています。物価の上昇による生活防衛、将来への不安に対する資産形成、あるいは自己実現やスキルアップのためのキャリア形成など、様々な動機から、一つの会社からの給与だけに依存せず、二つ以上の仕事を掛け持ちする「ダブルワーク(副業・兼業)」という働き方が、もはや特別なことではなく当たり前の選択肢となりつつあります。 平日は正社員として会社に勤務し、週末は趣味を活かしたアルバイトをする方、二つのパートタイムを掛け持ちして生計を立てている方、あるいは本業の就業後にウーバーイーツなどのギグワークに従事する方、さらにはクラウドソーシングでスキルを販売する方など、その形態は十人十色です。

収入の柱を複数持つことは、生活の安定や精神的な余裕につながる素晴らしい戦略ですが、それと同時に発生するのが、複雑怪奇な「税金」と「確定申告」の問題です。 日本の税制、特に給与所得に関するシステムは、基本的に「一人の労働者は一箇所の会社に属している」という終身雇用時代のモデルをベースに設計されています。そのため、会社員やパートタイマーの税金は、勤務先が「年末調整」という手続きを通じて計算・精算してくれるのが原則であり、個人の納税者が確定申告を意識することは稀でした。 しかし、ダブルワークを行う場合、この「会社任せ」のシステムから外れる部分が必ず生じます。日本の税法上、年末調整を行えるのは「主たる給与の支払者(メインの勤務先)」一社のみと定められているからです。その結果、二社目以降の給与や、給与以外の副業収入については、税金の計算が完結していない「未決済」の状態となります。

「少額だからバレないだろう」「手続きが面倒だから放置しよう」という安易な判断は、後に無申告加算税や延滞税といったペナルティを科されるだけでなく、住民税の手続き上の齟齬によってメインの勤務先に副業の事実が発覚し、就業規則違反などのトラブルに発展するリスクを孕んでいます。 一方で、ダブルワークの人は、税制の仕組み上、二社目以降の給与から本来よりも高い税率で税金が天引きされている(乙欄課税)ケースが非常に多く、確定申告を正しく行うことで「払いすぎた税金が戻ってくる(還付される)」可能性が極めて高いという側面も持っています。 つまり、ダブルワークの人にとって確定申告は、単なる義務である以上に、自分の資産を守り、働き方を守るための必須のディフェンススキルなのです。

この記事では、ダブルワークの人が直面する確定申告の義務について、その法的な背景から実務的な手続き、会社にバレないための住民税対策、そして税理士活用のメリットまで、具体的な金額の変動に左右されない本質的な考え方を軸に、教科書レベルの深度で徹底的に解説していきます。

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ダブルワークの人は確定申告必要か?確定申告のポイントなど徹底解説

  1. ダブルワークの人は確定申告が必要か?
    1. 2か所以上から給与をもらっている場合(給与所得+給与所得)
    2. 給与所得+事業所得・雑所得の場合(給与所得+業務委託報酬など)
    3. 住民税の申告に関する重大な注意点(落とし穴)
  2. 確定申告の提出期限
    1. 原則的な申告期間(所得税)
    2. 還付申告の期間(5年間の猶予)
    3. 納税の期限
  3. ダブルワークの人が確定申告を行わない場合のペナルティ
    1. 無申告加算税と厳格化
    2. 延滞税
    3. 本業の会社への発覚リスク(社会的制裁)
  4. ダブルワークの人は自分で確定申告を行うことが可能か?
    1. 「給与+給与」の場合(難易度:低)
    2. 「給与+事業・雑所得」の場合(難易度:中)
  5. ダブルワークの人が自分で確定申告を行うことメリット
    1. コストがかからない(経済的メリット)
    2. 税金と社会保険の仕組みを理解できる(金融リテラシー向上)
  6. ダブルワークの人が自分で確定申告を行うことデメリット
    1. 手間と時間がかかる(時間的コスト)
    2. 税務上の判断ミス
  7. ダブルワークの人が自分で確定申告をするための流れ
    1. ステップ1:必要書類の収集(1月〜2月上旬)
    2. ステップ2:経費と控除の整理
    3. ステップ3:申告書の作成(2月中旬〜)
    4. ステップ4:提出と還付・納税(〜3月15日)
  8. ダブルワークの人が自分で確定申告をするために必要な資料等
    1. 収入を証明する書類
    2. 経費の領収書・レシート(給与所得以外の副業がある場合)
    3. 控除証明書・その他
  9. ダブルワークの人が税理士を活用するメリット
    1. 住民税対策(会社バレ防止)の徹底と安心感
    2. 手間の削減と本業への集中
    3. 最適な節税と還付金の最大化
  10. ダブルワークの人が税理士を活用するデメリット
    1. コストが見合わない場合がある
  11. ダブルワークの人が税理士へ依頼する場合の費用相場
    1. 給与+給与(源泉徴収票のみ)の場合
    2. 給与+副業(事業・雑所得)の場合
  12. ダブルワークの人が税理士を探す方法
    1. 税理士紹介サイトの利用
    2. Web検索
  13. ダブルワークの人が税理士を選ぶ際のポイント
    1. 個人の確定申告に積極的か
    2. 「会社にバレたくない」事情への理解
    3. 電子申告(e-Tax)対応
  14. まとめ

ダブルワークの人は確定申告が必要か?

ダブルワークの人にとって、確定申告が必要かどうかという問いに対する答えは、単純な「イエス」か「ノー」ではありません。「どのような契約形態で収入を得ているか(所得の種類)」と「それぞれの場所でいくら稼ぎ、いくら経費がかかったか(所得の金額)」という二つの要素によって、複雑に分岐します。 大きく分けて「2か所以上から『給与』をもらっているパターン」と、「給与以外に『事業所得』や『雑所得』があるパターン」の二つが存在します。どちらの場合も、確定申告の判定基準となるのは、銀行口座に振り込まれた手取り額ではなく、額面の「収入金額」またはそこから経費を引いた「所得金額」です。

2か所以上から給与をもらっている場合(給与所得+給与所得)

パートやアルバイトを掛け持ちしている場合や、正社員として働きながら別の会社でもアルバイト契約を結んで働いている場合がこれに該当します。このケースでは、すべての収入が「給与所得」として分類されます。

日本の税制では、「年末調整」を受けられるのは、原則として1人につき1社のみと厳格に定められています。これを「主たる給与」と呼びます。この主たる給与の支払者には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類を提出します。これにより、毎月の給与からは「甲欄(こうらん)」という標準的な税率表に基づいて所得税が源泉徴収(天引き)され、年末に過不足が精算されます。

しかし、2社目以降の勤務先(従たる給与)には、この扶養控除等申告書を提出することができません。そのため、2社目の給与については年末調整が行われず、毎月の給与からは「乙欄(おつらん)」という、甲欄よりも高い税率で所得税が源泉徴収されます。これは、基礎控除や配偶者控除などの所得控除がすべて1社目で適用されていることを前提とし、取りっぱぐれがないように高めに設定された税率です。

この場合、以下の条件に当てはまると確定申告の義務が発生します。 「従たる給与(2社目以降の給与)の収入金額と、それ以外の所得金額の合計額が、国が定める一定の基準額(いわゆる副業の申告不要ライン)を超える場合」

つまり、サブのアルバイト先での年収が一定額を超えている場合、法律上、確定申告を行う義務があります。 しかし、ここで非常に重要な視点があります。前述の通り、サブの勤務先から支払われる給与は、「乙欄」という高い税率で天引きされています。そのため、たとえサブの給与が少額で、法律上の「申告義務」がない場合であっても、確定申告を行ってメインの給与と合算し、正しい税率で再計算することで、払いすぎていた税金が還付される(戻ってくる)可能性が極めて高いのです。 多くのダブルワークの人が「義務がないから申告しない」という選択をしますが、これは「戻ってくるはずのお金を国に寄付している」のと同じ状態です。したがって、給与を2か所以上から貰っている場合は、義務の有無にかかわらず、確定申告を「するべき」であると強く推奨されます。

給与所得+事業所得・雑所得の場合(給与所得+業務委託報酬など)

会社員やパートとして給与をもらいながら、雇用契約を結ばずにウーバーイーツなどの配達員、クラウドソーシングでのライティング、ハンドメイド作品の販売、アフィリエイト、個人レッスンの講師などで報酬を得ている場合がこれに該当します。 この副業収入は、雇用契約に基づく「給与所得」ではなく、自営業としての「事業所得」または「雑所得」に分類されます。

この場合、以下の条件で確定申告が必要になります。 「本業の給与所得以外の所得(副業の総収入金額 - 必要経費)の合計額が、国が定める一定の基準額を超える場合」

ここで最も注意すべき点は、「収入(売上)」ではなく「所得(利益)」で判断するというルールです。 例えば、副業の売上が大きくても、その売上を得るためにPCを購入したり、材料を仕入れたり、交通費を使ったりして多くの経費がかかっていれば、売上から経費を差し引いた「所得」は小さくなります。この「所得」が基準額以下であれば、税務署への確定申告は不要となります。 逆に、売上はそこまで大きくなくても、経費がほとんどかからない仕事(原価のかからないコンサルティングやアフィリエイトなど)であれば、所得が基準額を超えやすく、申告義務が発生する可能性が高まります。

住民税の申告に関する重大な注意点(落とし穴)

多くのダブルワークの人が陥る最大の誤解がここにあります。「所得税の確定申告が不要(所得が基準額以下)なら、役所への手続きは一切不要で、誰にもバレない」と考えてしまうことです。 しかし、これはあくまで国税である「所得税」に限ったルールです。 皆様がお住まいの地域に納める「住民税(地方税)」には、所得税のような「少額不申告の特例」や「申告不要制度」は存在しません。ダブルワークによる所得が1円でも発生していれば、別途、お住まいの市区町村の役所へ「住民税の申告」を行う義務があります。

もし、所得税の確定申告をせず、住民税の申告もしなかった場合どうなるでしょうか。 役所はあなたの副業収入を把握できないため、所得証明書(課税証明書)には本業の収入しか記載されません。これだけなら問題ないように思えますが、もし後日、税務署の調査や支払調書の照合などで副業収入が明るみに出た場合、過去に遡って住民税が課税されます。その際、修正された住民税の通知が本業の会社に送られることで、副業の事実が発覚するリスクがあります。 「所得税は申告不要でも、住民税は申告必須」。この原則を忘れないようにしてください。

確定申告の提出期限

確定申告には、法律で定められた厳格な期限が存在します。これを過ぎると様々なデメリットが発生するため、スケジュール管理は非常に重要です。

原則的な申告期間(所得税)

所得税の確定申告期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までと定められています。対象となるのは、前年の1月1日から12月31日までの1年間に発生したすべての所得です。 例えば、1月1日から12月31日までに稼いだダブルワークの給与や報酬について、翌年の2月中旬から3月中旬の間に申告を行います。提出期限日が土曜日、日曜日、または祝日に重なる場合は、その翌平日(月曜日など)が期限となります。 この期間中、税務署の窓口は非常に混雑します。平日の日中に仕事があるダブルワークの人にとっては、税務署に行く時間を作ること自体が困難でしょう。そのため、近年では自宅のパソコンやスマートフォンから24時間いつでも申告ができるe-Tax(電子申告)の利用が強く推奨されています。

還付申告の期間(5年間の猶予)

前述したように、ダブルワークの人は「税金を払いすぎている」ケースが多く、確定申告によって税金が戻ってくる「還付申告」になることがよくあります。 この還付申告については、通常の申告期間(2月16日〜)を待つ必要はありません。対象となる年の翌年1月1日から、すぐに申告を行うことが可能です。 さらに、還付申告には「5年間」という長い猶予期間が設けられています。つまり、過去にダブルワークをしていて申告を忘れていたとしても、5年以内であれば遡って申告を行い、払いすぎた税金を取り戻すことができるのです。「数年前のアルバイトの源泉徴収票が出てきた」という場合は、諦めずに申告を検討すべきです。

納税の期限

申告によって税金を納めることになった場合(副業の利益が大きく、本業の給与から天引きされた税金だけでは足りない場合など)、申告書の提出期限と同じ日までに納税を完了させる必要があります。 つまり、3月15日が申告期限であれば、その日までに金融機関や税務署で現金を納めるか、あるいはキャッシュレス納付などを行う必要があります。納付が1日でも遅れると、延滞税の対象となります。 ただし、申告時に「振替納税(口座振替)」の手続きを行っておけば、実際の引き落とし日は4月中旬頃になります。これにより、資金繰りに約1ヶ月の猶予が生まれるため、納税が必要な場合は振替納税の利用をお勧めします。

ダブルワークの人が確定申告を行わない場合のペナルティ

「アルバイトだからバレないだろう」「現金手渡しだから記録に残らないだろう」と考えるのは極めて危険です。日本の税務行政は、マイナンバー制度の導入やデジタル化により、個人の所得捕捉能力を年々高めています。 給与を支払う企業は、必ず役所に「給与支払報告書」を提出しており、行政は誰がどこでいくら稼いでいるかを正確に把握しています。また、業務委託の場合も、一定額を超えれば「支払調書」が税務署に提出されます。 無申告が発覚した場合、以下のような厳しいペナルティが科されます。

無申告加算税と厳格化

法律で定められた期限内に確定申告をしなかった場合、本来納めるべき税額に上乗せして「無申告加算税」という罰金的な税金が課されます。 このペナルティの税率は一律ではなく、納付すべき税額の多寡によって段階的に設定されています。原則として、納付税額の一定割合が加算されますが、近年の税制改正により、高額な無申告に対するペナルティがさらに強化されました。 税務署から指摘を受ける前に、自ら過ちに気づいて自主的に期限後申告をした場合は、ペナルティの税率は軽減されます。しかし、税務調査の事前通知を受けた後や、調査によって指摘された後では、より重い税率が適用されます。

延滞税

納付期限の翌日から実際に税金を納付するまでの日数に応じて、利息に相当する「延滞税」が発生します。延滞税の割合は年によって変動しますが、納付が遅れれば遅れるほど利率が跳ね上がる仕組みになっています。長期間放置すると、本税の金額に迫るほどの延滞税がかかるケースもあり、経済的なダメージは計り知れません。

本業の会社への発覚リスク(社会的制裁)

ダブルワークの人にとって、税務署からのペナルティ以上に恐ろしいのが、「本業の会社に副業がバレる」ことではないでしょうか。 確定申告(または住民税の申告)を適切に行わないと、役所は「すべての所得を合算して住民税を計算」し、その決定通知書を「主たる給与の支払者(本業の会社)」に送付します(特別徴収の仕組み)。 会社の経理担当者は、給与の額に対して住民税額が不自然に高いことに気づきます。「この社員は、うちの給与だけでは計算が合わない。他にも収入があるはずだ」と推測され、副業が発覚するのです。 就業規則で副業が禁止されている会社であれば、懲戒処分や解雇の対象となる可能性もあります。また、副業が解禁されている会社であっても、無用な詮索を受けたり、本業をおろそかにしていると疑われたりするリスクがあります。これらの社会的・職業的なリスクを回避するためにも、適切な申告手続きが不可欠なのです。

ダブルワークの人は自分で確定申告を行うことが可能か?

「確定申告は難しそう」「専門家じゃないとできない」というイメージを持つ方も多いですが、結論から申し上げますと、ダブルワークの人の確定申告は、多くのケースでご自身で行うことが十分に可能です。特に、事業規模がそこまで大きくない場合や、給与のみの掛け持ちであれば、専門的な簿記の知識はほとんど必要ありません。

「給与+給与」の場合(難易度:低)

2か所以上から給与をもらっているケースは、最も簡単です。必要な作業は、両方の会社から交付された「源泉徴収票」を手元に用意し、その中に記載されている「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」などの数字を、申告書の所定の欄に転記するだけです。 国税庁が提供しているウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に従って源泉徴収票の数字を入力するだけで、自動的に税額が計算され、申告書が完成します。電卓を叩く必要すらありません。

「給与+事業・雑所得」の場合(難易度:中)

副業で給与以外の収入(事業所得や雑所得)がある場合は、少し手間がかかります。なぜなら、副業にかかった「経費」を自分で集計し、所得を計算しなければならないからです。 領収書を整理し、費目ごとに集計して、「売上-経費=所得」を算出します。しかし、これも取引数が少なければ、お小遣い帳レベルの管理でも対応できる場合が多く、市販のクラウド会計ソフトなどを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込んで帳簿を作成できるため、専門知識がなくても完了させることができます。

ダブルワークの人が自分で確定申告を行うことメリット

コストがかからない(経済的メリット)

最大のメリットは、やはり費用です。税理士に確定申告を依頼すると、最低でも数万円、内容によっては十数万円の費用がかかります。副業の収入がそこまで大きくない場合、税理士報酬を払うと手残りの利益がほとんどなくなってしまう、あるいは赤字になってしまう可能性があります。自分で行えば、費用は無料、もしくは会計ソフト代などの数千円〜1万円程度で済みます。コストパフォーマンスを考えれば、自分で行うメリットは非常に大きいです。

税金と社会保険の仕組みを理解できる(金融リテラシー向上)

自分で申告書を作成することで、「いくら稼ぐといくら税金が引かれるのか」「年末調整では何が控除されているのか」「医療費控除やふるさと納税がどれくらいお得なのか」といった、日本の税金の仕組みを肌感覚で理解できるようになります。 この知識は、単に申告を済ませるだけでなく、将来のキャリアプランやライフプラン、資産形成を考える上で非常に役立つ「一生モノの知識」となります。自分が払っている税金の中身を知ることは、お金に対する意識を変える第一歩です。

ダブルワークの人が自分で確定申告を行うことデメリット

手間と時間がかかる(時間的コスト)

慣れていないと、書類の準備や入力方法の確認、e-Taxのセットアップなどに多くの時間がかかります。特に平日は本業、休日は副業と忙しく働いているダブルワークの人にとって、確定申告のための時間を捻出するのは大きな負担です。貴重な休日を申告作業で潰してしまうことになります。

税務上の判断ミス

経費の計上範囲(どこまでが経費になるか)や、所得区分の判断(雑所得か事業所得か)など、税務上の判断を誤ると、後で税務署から否認されたり、修正申告を求められたりするリスクがあります。

ダブルワークの人が自分で確定申告をするための流れ

自分で確定申告を行う際の具体的なステップを解説します。流れを把握していれば、恐れることはありません。

ステップ1:必要書類の収集(1月〜2月上旬)

まず、申告に必要な書類をすべて集めます。

  • 源泉徴収票: 1月から12月までの間に収入があった「すべての勤務先」から取り寄せます。年の途中で退職した会社がある場合も、その会社の源泉徴収票が必要です。
  • 支払調書: 業務委託の場合、クライアントから送られてくることがあります(必須書類ではありませんが、計算の根拠になります)。
  • 売上の記録: 支払調書がない場合は、通帳の入金記録や、ウーバーイーツ、クラウドソーシングなどの管理画面から売上レポートをダウンロードします。

ステップ2:経費と控除の整理

副業(事業・雑所得)がある場合は、経費の領収書やレシートを整理し、費目(交通費、消耗品費など)ごとに集計します。 また、所得から差し引ける「控除」の書類も用意します。本業の年末調整で提出し忘れた「生命保険料控除証明書」や、医療費控除を受けるための「医療費の領収書」、ふるさと納税の「寄附金受領証明書」などが該当します。 ※ふるさと納税で「ワンストップ特例」を申請していた場合でも、確定申告を行うとワンストップ特例はすべて無効になります。そのため、確定申告の際には、ワンストップ申請分も含めた「すべての寄附金」について改めて申告する必要があります。これを忘れると控除が受けられなくなるので要注意です。

ステップ3:申告書の作成(2月中旬〜)

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や、市販の会計ソフトを使って申告書を作成します。

  • 給与所得の入力: メインとサブ、すべての源泉徴収票の内容(支払金額、源泉徴収税額など)を正確に入力します。
  • 副業所得の入力: 事業所得や雑所得の画面で、集計した売上と経費を入力します。
  • 所得控除の入力: 医療費控除や寄附金控除などを入力します。
  • 住民税の選択: ここが最重要ポイントです。 申告書の作成画面で「住民税の徴収方法の選択」という項目が出てきたら、必ず**「自分で納付」(普通徴収)**にチェックを入れます。これにより、副業分の住民税は自宅に納付書が届くようになり、会社の給与からは引かれなくなります。

ステップ4:提出と還付・納税(〜3月15日)

作成したデータをe-Taxで送信するか、印刷して税務署に郵送・持参します。還付金がある場合は、申告書に記載した指定口座に、約1ヶ月〜1ヶ月半後に振り込まれます。納税が必要な場合は、期限内に納付手続きを行います。

ダブルワークの人が自分で確定申告をするために必要な資料等

申告作業を始める前に、手元に以下の資料を揃えておくとスムーズです。

収入を証明する書類

  • 源泉徴収票(原本またはデータ): ダブルワークをしている全ての勤務先分。手元にない場合は、早急に勤務先の経理担当者に再発行を依頼してください。
  • 支払調書: 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など。
  • 売上の記録: 請求書の控え、通帳の記帳、売上管理表など。

経費の領収書・レシート(給与所得以外の副業がある場合)

  • 交通費: 電車、バス、タクシー代など。Suicaなどの履歴も可。
  • 通信費: スマホ代、インターネット代(家事按分が必要)。
  • 消耗品費: PC、インク、用紙、作業に必要な道具など。
  • 図書研修費: 業務に関連する書籍、セミナー参加費など。
  • 地代家賃: 自宅を仕事場にしている場合の家賃(家事按分が必要)。

控除証明書・その他

  • 医療費の領収書: 医療費控除明細書を作成するために必要。
  • 寄附金受領証明書: ふるさと納税等の証明書。
  • マイナンバーカード: e-Taxでの送信や本人確認に必要。
  • 銀行口座の情報: 還付金の受取用、または振替納税用。

ダブルワークの人が税理士を活用するメリット

自分で行うことが可能な確定申告ですが、状況によっては税理士の活用が視野に入ります。

住民税対策(会社バレ防止)の徹底と安心感

税理士は「副業を会社に知られたくない」というクライアントの切実なニーズを熟知しています。 申告書の「自分で納付」へのチェックはもちろんのこと、自治体によっては「給与所得以外の住民税を普通徴収(自分で納付)にできるか」の事前確認や、申告後に役所へ電話を入れて「間違いなく普通徴収になっているか」を確認する念押しの連絡など、会社バレを防ぐための実務的なノウハウと手間を惜しみません。自分一人で行う場合の不安を解消し、鉄壁の守りを固めることができます。

手間の削減と本業への集中

忙しいダブルワーク生活の中で、領収書の整理や申告書の作成を丸投げできるのは大きなメリットです。 休日は体を休めたり、家族と過ごしたり、あるいはさらに副業で稼いだりするための時間です。慣れない申告作業に貴重な時間を奪われることなく、自分のライフスタイルを守ることができます。

最適な節税と還付金の最大化

税理士は税金のプロフェッショナルです。「家事按分(家賃や光熱費の一部を経費にすること)」の適切な割合の算出や、見落としがちな控除の指摘、あるいは青色申告の活用提案などを受けることで、税金を適正に抑え、還付金を最大化できる可能性があります。結果として、税理士報酬を支払っても、節税効果でお釣りが来るケースもあります。

ダブルワークの人が税理士を活用するデメリット

コストが見合わない場合がある

やはり費用がネックになります。副業の収入が月数万円程度、年間数十万円程度の場合、税理士報酬を払うと手残りがほとんどなくなってしまう可能性があります。 自分の時給単価と税理士報酬を天秤にかけ、コストパフォーマンスを慎重に検討する必要があります。

ダブルワークの人が税理士へ依頼する場合の費用相場

ダブルワークの人の確定申告依頼は、事業規模や依頼内容によって相場が異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

給与+給与(源泉徴収票のみ)の場合

計算が単純であり、記帳作業も発生しないため、比較的安価です。

  • 2万円 〜 5万円程度 この金額で、面倒な手続きと「会社バレ対策」の安心を買えると考えれば、決して高くはない投資と言えるでしょう。

給与+副業(事業・雑所得)の場合

領収書の集計(記帳代行)が必要かどうか、売上規模がどれくらいかで変わります。

  • 申告書作成のみ(集計は自分で済ませている場合): 5万円〜10万円程度
  • 丸投げ(領収書を渡して記帳から依頼する場合): 10万円〜15万円程度 売上規模が大きくなったり、消費税の申告が必要になったりすると、費用も上がる傾向にあります。

ダブルワークの人が税理士を探す方法

自分に合った税理士を見つけるためのルートを紹介します。

税理士紹介サイトの利用

「税理士ドットコム」や「ミツモア」などのマッチングサービスを利用します。「副業の確定申告」「個人の確定申告」などの条件で検索し、見積もりを取ることができます。多くの税理士の中から、個人の少額案件でも歓迎してくれる事務所を効率的に探せます。

Web検索

Googleなどで「地域名 + 副業確定申告 + 税理士」といったキーワードで検索します。ホームページで「副業バレ対策」や「会社員の確定申告歓迎」を謳っている事務所は、ダブルワークの人の事情に詳しく、ノウハウが豊富である可能性が高いです。

ダブルワークの人が税理士を選ぶ際のポイント

個人の確定申告に積極的か

税理士の中には「法人の顧問契約」をメインとしており、個人のスポット(単発)申告を受けていない、あるいは積極的ではない事務所もあります。個人の副業案件を歓迎しているか、ホームページや問い合わせ時の対応で確認しましょう。

「会社にバレたくない」事情への理解

面談や問い合わせの際に、必ず「会社に副業を知られたくないので、住民税の普通徴収を徹底したい」と伝え、その反応を見ましょう。 「その点は注意して手続きします」「役所への確認も行います」といった、リスクを理解し、親身になって具体的な対策を提示してくれる税理士が信頼できます。逆に「それは役所の処理次第なので保証できません」と突き放すような対応であれば、依頼を見送った方が無難です。

電子申告(e-Tax)対応

還付金を早く受け取るため、また源泉徴収票などの原本添付を省略するために、e-Taxでの申告に対応している事務所を選びましょう。現在はほとんどの事務所が対応していますが、念のため確認しておくと安心です。

まとめ

ダブルワークの人にとって、確定申告は一見すると「面倒な義務」や「リスクの種」に見えるかもしれません。しかし、正しく理解すれば、それは「払いすぎた税金を取り戻すチャンス」であり、「自分の働き方を守るための盾」でもあります。

サブの勤務先で引かれている「乙欄」の源泉徴収税額は、多くの場合、本来払うべき額よりも高めに設定されています。申告をすることで、数万円、時には十数万円単位のお金が戻ってくることも珍しくありません。これは、あなたが汗水流して稼いだ大切なお金です。国に預けたままにするのはもったいないことです。

まずは、自分の働き方と年収を確認し、申告が必要かどうか、還付の可能性があるかどうかをチェックしましょう。 少額であれば、クラウド会計ソフトなどを使って自分で申告するのがコスト面で有利です。その際は、くれぐれも「住民税の自分で納付」のチェックを忘れないように、慎重に手続きを進めてください。 もし、副業の規模が大きかったり、会社バレを極端に恐れていたり、時間が全く取れない場合は、税理士というプロの力を借りることも賢い選択肢です。

正しい知識を持って確定申告を行い、ダブルワークという挑戦的な働き方の努力が正当に報われるよう、しっかりととお金の管理を行いましょう。あなたの豊かな生活とキャリアを守るために、確定申告を味方につけてください。

税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。