起業という、人生における大きな決断。自らのアイデアと情熱を形にし、世の中に新しい価値を提供したいという想いを胸に、多くの人がその一歩を踏み出します。その最初の、そして最も重要なハードルの一つが「会社設立」です。個人事業主としてスタートする道もありますが、社会的信用や資金調達、税制面でのメリットを考え、法人格を取得することを選ぶ起業家は少なくありません。
しかし、いざ会社を設立しようとすると、その手続きの複雑さに圧倒されることになります。株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか、資本金はいくらに設定するのか、定款の作成や認証、法務局への登記申請、そして税務署への数多くの届出。これらのプロセスは、法律や税務の専門知識を要求され、一つひとつの選択が、その後の経営に大きな影響を与えます。
日々の事業準備に追われる中で、これらの煩雑な手続きをミスなく、かつ自社にとって最も有利な形で進めることは、至難の業と言えるでしょう。
そんな時、あなたの航海の羅針盤となり、スムーズな船出を力強くサポートしてくれるのが、「会社設立に強い税理士」というパートナーの存在です。彼らは、単に書類作成を代行するだけの専門家ではありません。あなたの事業ビジョンに寄り添い、最適な法人形態の選択から、創業融資の成功、そして設立後の経営が軌道に乗るまでを、一貫して支援してくれる最初の経営参謀なのです。
この記事では、これから会社設立という大きな挑戦に臨む全ての起業家が、自社の未来を安心して託すことのできる、最高の税理士パートナーを見つけ出すための全てを、網羅的かつ詳細に解説していきます。会社の種類や設立の流れといった基本知識から始まり、税理士が提供する専門サービス、具体的な探し方や選び方のポイント、費用相場に至るまで、あなたのあらゆる疑問と不安を解消します。
この記事を読み終える頃、あなたは会社設立における税理士の真の価値を理解し、自社の成功の礎を共に築いてくれるパートナーを見つけ出すための、確かな知識と自信を手にしているはずです。
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会社設立に強い税理士を探す方法
会社の種類
会社設立を決意した起業家が、最初に直面する大きな選択が、「どの種類の会社を設立するか」という問題です。日本の会社法では、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類が定められていますが、現代において新規に設立される会社のほとんどは、「株式会社」または「合同会社」のいずれかです。この二つの形態の違いを正しく理解し、自らの事業計画や将来のビジョンに合った方を選択することが、成功への第一歩となります。
社会的信用と資金調達の「株式会社」
「会社」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのが株式会社でしょう。その最大の特徴は、株式を発行することによって資金を調達し、株主から委任を受けた経営者(取締役)が事業運営を行う「所有と経営の分離」を原則としている点です。
株式会社のメリット
株式会社の最大のメリットは、その社会的信用の高さです。長年にわたる歴史と、厳格な法規制に裏打ちされた組織形態は、取引先や金融機関、そして顧客に対して、高い信頼性と安心感を与えます。特に、大手企業との取引や、金融機関からの大規模な融資を考えている場合、株式会社であることは有利に働くことが多いです。 また、株式を発行して、広く一般から資金を調達できるため、資金調達の選択肢が豊富であることも大きな強みです。将来的に事業を大きく成長させ、株式上場(IPO)を目指すのであれば、株式会社を選択することが必須となります。
株式会社のデメリット
一方で、デメリットも存在します。まず、設立費用が合同会社に比べて高いことが挙げられます。定款の認証に要する公証人手数料や、登録免許税の最低額が合同会社よりも高く設定されています。 また、運営面でも、法律で定められた手続きを厳格に守る必要があります。例えば、役員には任期があり、定期的に役員変更の登記が必要となります。また、毎年の決算公告も義務付けられています。これらの手続きには、手間とコストがかかります。
自由度とコストの「合同会社」
合同会社(LLC)は、2006年の会社法施行によって導入された、比較的新しい会社形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとしており、その特徴は設立・運営コストの低さと、経営の自由度の高さにあります。
合同会社のメリット
合同会社の最大のメリットは、設立コストの安さです。株式会社とは異なり、定款の認証が不要であるため、公証人手数料がかかりません。また、登録免許税も最低6万円からと、株式会社の最低15万円に比べて大幅に低く抑えられています。 運営面では、経営の自由度が非常に高いのが特徴です。株式会社のように、役員の任期や決算公告の義務がありません。また、利益の配分も、出資額の割合によらず、定款で自由に定めることができます。例えば、出資額は少なくても、事業への貢献度が高い社員に、多くの利益を配分するといった柔軟な設計が可能です。
合同会社のデメリット
合同会社のデメリットは、株式会社に比べて社会的信用度や知名度がまだ低いという点です。特に、歴史の長い業界や、保守的な企業との取引においては、合同会社であることが不利に働く可能性もゼロではありません。 また、資金調達の方法が、金融機関からの借入や、社員からの追加出資などに限定され、株式会社のように広く一般から出資を募ることはできません。そのため、将来的に大規模な資金調達や、株式上場を目指す事業には不向きと言えます。
どちらを選ぶべきか?
最終的にどちらを選ぶべきかは、あなたがこれから始めようとする事業の性質と、将来の展望によって決まります。
将来的に株式上場(IPO)を目指す、ベンチャーキャピタルなど外部の投資家からの大規模な出資を受けたい、あるいは、BtoBビジネスで、取引先の信用を特に重視する、といった場合には、株式会社が適しています。 一方、個人事業主の延長線上として、まずはコストを抑えて法人格を取得したい、家族や少数の仲間内で、自由度の高い経営を行いたい、外部からの資金調達を当面考えていない、といったスモールビジネスには、合同会社が非常にマッチしています。
この最初の重要な選択を、専門家である税理士に相談することで、税務的な観点も踏まえ、より最適な判断を下すことができます。
会社設立の流れ(合同会社)
設立コストを抑えられ、手続きも比較的シンプルな合同会社は、スモールビジネスのスタートアップに人気の形態です。ここでは、合同会社を設立するための具体的な流れを、ステップごとに解説していきます。
ステップ1:会社の基本事項を決定する
まず、設立する会社の骨格となる、基本的な事項を決定します。これらは、後に作成する「定款」に記載される、非常に重要な内容です。
- 商号(会社名): 会社の顔となる名前です。同一本店所在地に、同一の商号は登記できないため、法務局のオンラインシステムなどで、事前に商号調査を行う必要があります。
- 事業目的: その会社がどのような事業を行うのかを具体的に記載します。将来的に行う可能性のある事業も、漏れなく記載しておくことが重要です。
- 本店所在地: 会社の住所です。自宅や、レンタルオフィス、バーチャルオフィスでも登記は可能です。
- 資本金の額: 会社法施行により、1円からでも設立可能ですが、事業の元手となる資金であり、会社の信用の証でもあるため、当面の運転資金などを考慮して、適切な額を設定する必要があります。
- 社員構成: 合同会社では、出資者のことを「社員」と呼びます。誰が、いくら出資するのかを決定します。社員の中から、会社を代表する「代表社員」も定めます。
- 事業年度: 会社の会計期間です。決算月をいつにするかによって、消費税の免税期間などに影響が出る場合があるため、慎重に決定する必要があります。
ステップ2:会社の印鑑を作成する
会社を設立すると、法務局に会社の印鑑(代表者印)を登録する必要があります。一般的には、代表者印(実印)、銀行印、角印(認印)の3本セットを作成することが多いです。
ステップ3:定款を作成する
定款とは、会社の組織や運営に関する基本的なルールを定めた、会社の「憲法」とも言える重要な書類です。ステップ1で決めた基本事項を基に作成します。合同会社の定款は、株式会社とは異なり、公証人による認証は不要です。ただし、後に登記申請で必要となるため、製本し、収入印紙4万円を貼付するか、電子定款として作成します。
ステップ4:資本金を払い込む
定款作成後、各社員が定めた出資額を、代表社員の個人の銀行口座に払い込みます。この時点では、まだ会社の法人口座は開設できないため、発起人個人の口座を使用します。払込みが完了したら、その通帳のコピー(表紙、1ページ目、払込履歴が記載されたページ)が、払込みを証明する書類となります。
ステップ5:登記申請書類を作成する
法務局に提出するための、登記申請書類一式を準備します。主な必要書類は以下の通りです。
- 設立登記申請書
- 定款
- 代表社員の就任承諾書
- 社員全員の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑届書
ステップ6:法務局へ登記申請を行う
全ての書類が揃ったら、本店所在地を管轄する法務局へ、設立登記の申請を行います。申請方法は、窓口持参、郵送、オンライン申請があります。この登記申請日が、会社の設立日となります。申請後、1週間から10日程度で登記が完了し、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や、印鑑証明書が取得できるようになります。
会社設立の流れ(株式会社)
社会的信用度が高く、将来の成長を目指す多くの起業家が選択する株式会社。合同会社に比べて、手続きはやや複雑になります。ここでは、株式会社を設立するための具体的な流れを、ステップごとに解説します。
ステップ1:会社の基本事項を決定する
合同会社と同様に、まずは会社の骨格となる基本事項を決定します。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 発起人(出資者)の構成
- 事業年度
上記に加えて、株式会社特有の事項も決定します。
- 発行可能株式総数: 会社が将来発行できる株式の上限数です。
- 株式の譲渡制限: 株式を譲渡する際に、会社の承認が必要かどうかを定めます。中小企業の多くは、経営権の安定のために「譲渡制限あり」とします。
- 役員の構成と任期: 取締役や、必要に応じて監査役などの役員を誰にするか、また、その任期(最長10年)を何年にするかを決定します。
ステップ2:会社の印鑑を作成する
合同会社と同様に、代表者印(実印)、銀行印、角印の3本セットを作成するのが一般的です。
ステップ3:定款を作成し、公証役場で認証を受ける
定款の作成後、株式会社の場合は、本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場で、作成した定款の認証を受ける必要があります。これは、定款の内容が法的に有効であることを、公証人が証明する手続きです。
ステップ4:資本金を払い込む
定款認証後、各発起人が引き受ける株式の対価として、定めた出資額を、発起人代表の個人の銀行口座に払い込みます。払込みの証明方法は、合同会社と同様です。
ステップ5:登記申請書類を作成する
法務局に提出するための、登記申請書類一式を準備します。合同会社よりも必要書類は多くなります。主なものは以下の通りです。
- 設立登記申請書
- 認証済みの定款
- 発起人の決定書
- 取締役全員の就任承諾書
- 代表取締役を選定したことを証する書面
- 取締役全員の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑届書
ステップ6:法務局へ登記申請を行う
全ての書類が揃ったら、本店所在地を管轄する法務局へ、設立登記の申請を行います。この登記申請日が、会社の設立日となります。登記完了までの期間は、合同会社と同様、1週間から10日程度です。登記が完了すれば、晴れて株式会社として、事業活動を開始することができます。
会社設立において税理士が提供するサービス
会社設立の手続きは、自分自身で行うことも不可能ではありません。しかし、そのプロセスには、多くの専門的な判断と、煩雑な事務作業が伴います。会社設立に強い税理士は、単に手続きを代行するだけでなく、あなたの事業の成功確率を高めるための、付加価値の高いサービスを提供してくれます。
最適な法人形態の選択と機関設計のアドバイス
起業家が最初に直面する「株式会社か、合同会社か」という選択。税理士は、あなたの事業計画や将来のビジョン、資金調達の計画などを詳細にヒアリングした上で、それぞれのメリット・デメリットを、税務・財務の観点から具体的にシミュレーションします。 例えば、「将来的に外部からの出資を考えているなら、株式会社が必須です」「当面はコストを抑え、利益配分の自由度を重視するなら、合同会社が有利です」といった、専門家ならではの客観的なアドバイスを提供します。また、株式会社の場合、役員の構成や任期といった「機関設計」についても、経営の安定性や将来の拡張性を見据えた最適な形を共に考えてくれます。
創業融資を成功に導く事業計画書の作成支援
多くの起業家にとって、自己資金だけで事業を始めるのは困難であり、日本政策金融公庫などからの「創業融資」が、成功の鍵を握ります。融資審査で最も重要視されるのが、「事業計画書」です。 会社設立に強い税理士は、数多くの創業融資を成功させてきた経験から、金融機関の担当者がどのような点を評価し、どのような数字の裏付けを求めるかを熟知しています。あなたの事業の強みや市場の可能性を、客観的なデータと、実現可能性の高い収支計画で示す、説得力のある事業計画書の作成を、二人三脚でサポートしてくれます。
税務メリットを最大化する各種設定のアドバイス
会社設立時の設定は、その後の税負担に大きな影響を与えます。
- 資本金の額: 資本金が1,000万円未満であれば、原則として設立から2事業年度、消費税が免除されます。このような税制上のメリットを考慮し、適切な資本金の額をアドバイスします。
- 事業年度(決算月): 会社の繁忙期を避け、かつ、消費税の免税期間を最大限に活用できるような、最適な決算月を提案します。
- 役員報酬: 設立後の役員報酬は、会社の利益を圧縮する重要な節税策ですが、一度決めると期中は変更できません。会社の利益計画を基に、税負担と社会保険料負担を総合的に勘案した、最適な役員報酬額をシミュレーションします。
手続きのワンストップ代行とコスト削減
会社設立には、定款作成、登記申請、税務署への届出、社会保険の手続きなど、様々な専門家が関わるプロセスが含まれます。会社設立に強い税理士は、司法書士や社会保険労務士と強固なネットワークを築いており、これらの手続きをワンストップで代行してくれます。あなたが個別に専門家を探し、依頼する手間を省くことができます。 また、税理士は「電子定款」の作成に対応しているため、通常、紙の定款で必要となる収入印紙代4万円が不要になります。この時点で、税理士に支払う手数料の一部を相殺できるケースも少なくありません。
設立後の各種税務届出の確実な実行
会社設立登記が完了したら、2ヶ月以内に「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」など、数多くの書類を税務署や都道府県、市町村へ提出する必要があります。特に「青色申告の承認申請書」は、提出が遅れると、欠損金の繰越控除といった、重要な税務メリットが受けられなくなってしまいます。税理士に依頼すれば、これらの重要な届出を、期限内に、漏れなく、確実に実行してくれます。
会社設立時において税理士を活用するメリット
会社設立という、一度きりの重要なイベントにおいて、税理士という専門家をパートナーに迎えることは、単に手続きが楽になるという以上の、計り知れないメリットをもたらします。それは、事業のスタートダッシュを成功させ、その後の成長軌道を確かなものにするための、最も賢明な投資と言えるでしょう。
本業の準備に100%集中できる
起業家にとって、設立前後の時期は、事業の根幹となる商品やサービスの開発、顧客の開拓、マーケティング戦略の策定など、本来やるべきコア業務が山積しています。この最も創造的で、重要な時期に、慣れない定款作成や、登記書類の準備に、貴重な時間とエネルギーを費やすのは、大きな機会損失です。
専門的で煩雑な設立手続きを、すべて税理士に任せることで、あなたは安心して、事業の成功に直結する本業の準備に100%集中することができます。この時間的、そして精神的な余裕が、スムーズな事業の立ち上がりを実現します。
創業融資の成功確率が飛躍的に向上する
多くの起業家が、創業融資の審査で苦戦します。その最大の理由は、情熱やアイデアはあっても、それを金融機関が納得する「事業計画」という形に落とし込めていないからです。
会社設立に強く、創業融資の実績が豊富な税理士は、いわば「融資審査の攻略法」を知り尽くした専門家です。市場分析、競合との差別化、そして何よりも、売上予測や収支計画といった数字の裏付けを、客観的かつ論理的に示すことで、金融機関からの信頼を勝ち取ります。専門家が作成に関与した事業計画書は、それだけで信頼性が格段に高まり、融資の成功確率を飛躍的に向上させます。
設立当初からの最適な節税スキームを構築できる
税金対策は、会社が利益を出し始めてから考えるものではありません。設立時の設計段階から始まっています。
- 消費税の免税: 資本金を1,000万円未満に設定することで、原則2年間の消費税免税という、大きなメリットを享受できます。
- 青色申告の承認: 設立から3ヶ月以内に申請が必要な青色申告の承認を受けることで、赤字を将来の黒字と相殺できる「欠損金の繰越控除」など、数多くの税務メリットが受けられます。
- 役員報酬の設定: 設立後の利益計画に基づき、最適な役員報酬額を設定することで、法人税と、経営者個人の所得税・住民税をトータルで最適化できます。
これらの重要な選択を、設立時に専門家のアドバイスのもとで正しく行うことで、スタート時点から、最も有利な税務ポジションを確保することができます。
手続きのミスによる時間と信用の損失を防げる
会社設立の手続きは複雑で、一つでも書類に不備があれば、法務局で何度も修正を求められ、設立日がどんどん遅れてしまう可能性があります。設立日が遅れると、オフィス賃料の発生や、取引先との契約など、ビジネスのスケジュール全体に支障をきたし、信用問題にも発展しかねません。
税理士と提携する司法書士に依頼すれば、これらの手続きをミスなく、スピーディーに完了させることができます。確実なスタートを切るための、安心と時間を買うことができるのです。
会社設立後において税理士を活用するメリット
会社設立の手続きが無事に完了しても、それはゴールではなく、長い経営という航海の始まりに過ぎません。設立時にサポートしてくれた税理士と、そのまま「顧問契約」を結び、継続的なパートナーシップを築くことで、設立後の事業運営を、より安定させ、成長を加速させることができます。
スムーズな経理・会計体制の早期構築
設立当初は、経営者自身が経理を担当することも多いですが、日々の取引をどのように記録し、管理すれば良いのか、戸惑うことも少なくありません。最初から自己流で始めてしまうと、後から修正するのが非常に大変です。
顧問税理士がいれば、設立当初から、クラウド会計ソフトの導入支援や、領収書の整理方法、帳簿の付け方など、効率的で、かつ税務調査にも耐えうる、正しい経理の仕組みを構築することができます。この最初の基盤作りが、その後の経営の透明性と効率性を大きく左右します。
経営状況のリアルタイムな把握と的確な経営判断
事業が走り出すと、日々の忙しさに追われ、自社の経営状況を客観的に見つめる余裕がなくなりがちです。「売上は上がっているはずなのに、なぜか手元にお金がない」といった事態に陥ることもあります。
顧問税理士は、毎月、試算表を作成し、あなたの会社の経営成績や財務状況を「見える化」してくれます。そして、「この経費が増えすぎています」「売掛金の回収が遅れ気味です」といった、経営上の問題点を早期に指摘し、改善策を共に考えてくれます。この定期的な健康診断が、経営者が感覚だけに頼らない、的確な意思決定を下すための羅針盤となります。
継続的な節税対策と資金繰り管理
節税対策は、決算直前に慌てて行うものではなく、一年を通じて計画的に行うことで、その効果を最大化できます。顧問税理士は、あなたの会社の状況に合わせて、役員報酬の変更や、各種共済制度への加入、設備投資のタイミングなど、年間を通じた節税プランを提案してくれます。
また、資金繰り表の作成を通じて、将来のキャッシュフローを予測し、資金が不足しそうなタイミングを事前に警告してくれます。これにより、黒字倒産という最悪の事態を回避し、計画的に金融機関との交渉を進めることができます。
税務調査に対する万全の備え
設立当初から、顧問税理士の指導のもとで、適正な会計処理と申告を継続していれば、税務調査を過度に恐れる必要はありません。税理士は、日頃から税務調査で指摘されやすいポイントを熟知しており、それに対応できるような帳簿や証拠書類の整備をアドバイスしてくれます。
そして、万が一、税務調査の連絡があった場合でも、顧問税理士があなたの代理人として、事前準備から調査当日の立会い、調査後の交渉まで、一貫して対応してくれます。専門家が盾となってくれる安心感は、何物にも代えがたいものです。
会社設立において税理士へ依頼する費用相場
会社設立を専門家に依頼する際、どれくらいの費用がかかるのかは、起業家にとって最も気になる点の一つでしょう。費用は、依頼する専門家や、サービス内容によって異なりますが、ここでは一般的な相場観を解説します。
税理士(または提携司法書士)への依頼費用
会社設立の手続きを税理士に依頼する場合、その多くは、登記申請の専門家である司法書士と連携して行われます。料金体系は、大きく分けて二つのパターンがあります。
設立手続きのみを依頼する「スポット契約」
顧問契約は結ばず、会社設立の手続きだけを単発で依頼する場合の費用です。
- 株式会社の設立: 専門家への手数料として、5万円~15万円程度が相場です。これに、上記の実費(約20万円~24万円)が加わります。
- 合同会社の設立: 専門家への手数料として、5万円~10万円程度が相場です。これに、上記の実費(約6万円~10万円)が加わります。
多くの事務所が電子定款に対応しているため、印紙代4万円が節約できることを考えると、実質的な手数料負担は、数万円程度に収まることもあります。
設立後の「顧問契約」とセットになったプラン
多くの会社設立に強い税理士事務所が、設立後の顧問契約を条件に、設立手数料を無料または大幅に割引するプランを提供しています。これは、税理士側にとっても、設立当初から関与することで、その後の顧問業務がスムーズに進むというメリットがあるためです。
例えば、「顧問契約を1年間継続することを条件に、設立手数料0円」といったキャンペーンです。この場合、設立時にかかる費用は、登録免許税などの実費のみとなります。 その代わり、設立後から、月額の顧問料が発生します。新設法人の場合の月額顧問料の相場は、2万円~5万円程度が一般的です。
起業家にとっては、初期費用を大幅に抑えられるという大きなメリットがあります。どうせ設立後には税理士のサポートが必要になると考えるのであれば、このセットプランは非常に合理的な選択肢と言えるでしょう。ただし、契約期間に縛りがある場合が多いため、その税理士と長期的に付き合っていけるかを、慎重に見極める必要があります。
会社設立において税理士を選ぶポイント
数多くの税理士の中から、あなたの事業のスタートを任せるに足る、本当に「会社設立に強い」パートナーを見極めるためには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。単に手続きを代行してくれるだけでなく、あなたの事業の成功を共に目指してくれる相手かどうかを、以下の視点から慎重に判断しましょう。
会社設立の支援実績は豊富か
これが、最も基本的で重要なポイントです。会社設立の手続きは、経験がものを言います。税理士事務所のウェブサイトなどで、これまでに何社の設立を支援してきたか、具体的な実績数を確認しましょう。設立支援の実績が豊富であればあるほど、様々な業種やケースに対応してきたノウハウが蓄積されており、スムーズでミスのない手続きが期待できます。面談の際には、「どのような業種の設立支援が多いですか」「最近、どのような特徴のある会社を設立しましたか」と、具体的な質問を投げかけてみるのも良いでしょう。
創業融資のサポート実績は豊富か
会社設立と創業融資は、切っても切れない関係にあります。単に設立手続きに詳しいだけでなく、日本政策金融公庫などからの創業融資を、どれだけ成功させてきたかという実績は、極めて重要な判断基準です。 「これまで、どのような事業計画書で、いくらくらいの融資を成功させてきましたか」「融資審査で、特に注意すべき点は何ですか」といった質問を通じて、その税理士の融資支援に対する知見の深さを探りましょう。金融機関との良好なネットワークを持っているかどうかも、確認したいポイントです。
あなたの事業への理解と情熱
優れた税理士は、あなたの事業内容や、ビジネスモデル、そして何よりも、あなたがその事業にかける情熱に、深い興味と関心を示してくれるはずです。面談の際に、あなたの事業の話を、どれだけ真剣に、そして楽しそうに聞いてくれるかを観察しましょう。専門家としての上から目線ではなく、一人のビジネスパートナーとして、あなたのビジョンに共感し、その成功を心から応援したいという姿勢が感じられるかどうかが、長期的な信頼関係を築く上での鍵となります。
コミュニケーションの相性と分かりやすさ
どんなに優秀な税理士でも、コミュニケーションが円滑でなければ、その能力を十分に活かすことはできません。
- 説明の分かりやすさ: 専門用語を並べるのではなく、あなたのレベルに合わせて、平易な言葉で丁寧に説明してくれるか。
- 相談のしやすさ: あなたが、どんな初歩的な質問でも、気兼ねなくできるような、オープンで話しやすい雰囲気を持っているか。
- レスポンスの速さ: 問い合わせに対する返信が迅速で、ビジネスのスピード感についてきてくれるか。 これらのコミュニケーションの快適さが、ストレスのないパートナーシップの土台となります。
設立後のサポート体制は万全か
会社設立は、ゴールではなくスタートです。設立後の経営を、どのようにサポートしてくれるのかという視点も、非常に重要です。月次決算の報告体制はどうか、経営相談にはどの程度乗ってくれるのか、クラウド会計の導入支援は行っているかなど、設立後の顧問契約を見据えたサポート体制について、具体的に確認しましょう。あなたの会社の成長ステージに合わせて、長期的に伴走してくれるパートナーとしてふさわしいかどうかを見極めることが重要です。
会社設立に強い税理士を探す方法
自社にとって最適なパートナーとなる税理士を見つけ出すためには、いくつかの方法を組み合わせ、多角的に候補者を探すことが有効です。ここでは、会社設立という目的に特化した、効果的な探し方を紹介します。
インターネット検索
最も手軽で、豊富な情報が得られる方法です。検索の際には、キーワードを工夫することが重要です。「会社設立 税理士 〇〇(地域名)」「創業融資 強い 税理士」「スタートアップ 専門 税理士」といったように、あなたの目的を明確にしたキーワードで検索しましょう。 候補となる税理士事務所のウェブサイトでは、「会社設立支援」や「創業支援」に関する専門ページがあるか、具体的な支援実績や、顧客の声が掲載されているかを、重点的にチェックします。「設立手数料0円」といったキャンペーンを打ち出している事務所は、会社設立に力を入れている可能性が高いと言えます。
税理士紹介サービスの活用
「自分で探す時間がない」「客観的な視点で選びたい」という起業家には、税理士紹介サービスが有効です。専門のコーディネーターに、「これから会社を設立し、創業融資を受けたい。その両方に強い税理士を探している」と、具体的な要望を伝えることが成功の秘訣です。 コーディネーターは、あなたの要望を基に、登録されている多くの税理士の中から、会社設立や創業融資の実績が豊富な事務所を的確にピックアップして、複数紹介してくれます。
地域の公的機関やインキュベーション施設
地域の商工会議所や、自治体が運営する創業支援施設(インキュベーション施設)では、定期的に創業セミナーや、専門家による相談会が開催されています。こうした場に積極的に参加し、講師を務める税理士と直接話したり、施設の担当者に信頼できる専門家を紹介してもらったりするのも、良い出会いに繋がる可能性があります。
先輩起業家からの紹介
最も信頼性が高い方法の一つが、少し先に起業した、信頼できる先輩経営者からの紹介です。実際に会社設立を経験し、税理士のサポートを受けた人からのリアルな体験談や、評判は何よりも貴重な情報です。「あの税理士のおかげで、スムーズに融資が受けられた」「設立後も、親身に相談に乗ってくれる」といった生の声は、ウェブサイトだけではわからない、税理士の実力を知る上で非常に参考になります。
まとめ
会社設立。それは、あなたの夢と情熱を、社会的な実体へと変える、記念すべき第一歩です。しかし、そのプロセスは、数多くの専門的な手続きと、その後の経営を左右する重要な意思決定の連続であり、決して平坦な道のりではありません。
この記事では、会社設立という重要な航海の始まりにおいて、あなたの船を安全かつ最適な航路へと導いてくれる「会社設立に強い税理士」という、かけがえのないパートナーを見つけ出すための方法を、網羅的に解説してきました。
最適な税理士とは、単に書類を作成し、手続きを代行するだけの存在ではありません。あなたの事業の可能性を信じ、そのビジョンに共感し、創業融資という最初の大きな壁を共に乗り越え、そして、設立後の長い経営の道のりを、共に歩んでくれる経営参謀です。
その最高のパートナーを見つけ出す鍵は、料金の安さや、事務所の規模だけで判断するのではなく、あなたの事業に対する「専門性」と「情熱」、創業融資などの「実績」、そして何よりも、「人間的な相性」を、総合的に見極めることにあります。インターネットや紹介といった多様なチャネルを駆使して候補者を探し出し、面談での直接の対話を通じて、「この人になら、自分の夢を託せる」と心から信頼できる相手を、選び抜いてください。
税理士に支払う費用は、コストではありません。あなたの貴重な時間を、最も価値のある本業に集中させ、事業の成功確率を高め、未来のリスクからあなたを守るための、極めて効果の高い「投資」です。
この記事が、あなたの会社設立という、一生に一度の挑戦を成功に導くための確かな羅針盤となり、あなたの事業が、輝かしい未来へと力強く船出していく一助となれば、幸いです。まずは、勇気を出して、気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、あなたの夢を実現する、壮大な物語の始まりとなるはずです。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
