税理士へ決算を丸投げする方法

税務

この記事では、決算申告のみを税理士に依頼もしくは丸投げする場合のメリットやデメリット、そして依頼する際のポイントについて解説を行います。税理士へ依頼せずご自身で決算申告を行う方法についても解説していきますので、税理士へ依頼するポイントやご自身で行う際の手間等についても理解が深まります。

この記事を最後までご覧いただくと、決算申告とは何か、税理士を活用するポイントの理解、ご自身で決算申告を行うことの手間、について十分理解することができます。

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  1. 決算申告とは何か?確定申告との関係性について
  2. 決算申告のみ税理士へ依頼する際の費用
  3. 決算申告のみを税理士へ依頼するメリット
    1. 顧問契約よりも税理士報酬を低く抑えることができる
    2. 税理士と定期的にやり取りする必要がなくなる
    3. 税理士の関与により正しい決算申告を行うことが可能
  4. 決算申告のみを税理士へ依頼するデメリット
    1. 節税など税アドバイスを税理士から十分に受けられない可能性
    2. 税務調査の立会に対応できないケース
    3. 税理士から経営アドバイスを受けることができない
  5. 決算申告のみを税理士へ依頼するポイント
  6. 決算申告に対応できる税理士を選ぶポイント
  7. 決算申告に対応できる税理士の探し方
  8. ご自身で決算申告を行われるケース
  9. 決算は税理士へ丸投げ可能か?
  10. その他税理士へ丸投げできること
    1. 確定申告・税務顧問・記帳サービス
    2. 会社設立・起業支援
    3. 月次決算
    4. 経理アウトソーシング
    5. クラウド会計導入支援
    6. 管理会計の導入
    7. 相続申告や事業承継の検討
    8. その他:税務調査対応・セミナー・事業計画作成支援など
  11. 会計士と税理士の違いについて
  12. 税理士が必要なタイミング
    1. 法人設立のタイミング
    2. 消費税の課税事業者になるタイミング
    3. その他
  13. 税理士が不要な人
  14. 丸投げではなく税理士へのスポット相談は活用可能か?
  15. 税理士へ依頼する・丸投げするメリット
    1. 確定申告・記帳の業務から解放される
    2. 安心感を持って税務調査対応が可能になる
    3. 税金以外のサポート
    4. 経営相談が可能
    5. 節税の相談が可能
  16. 税理士へ依頼する・丸投げするデメリット

決算申告とは何か?確定申告との関係性について

決算申告という言葉は所謂業界用語で、法人の確定申告とそれに必要な決算書を作成することを、一般的には意味しております(個人事業主の方については、主に確定申告という用語が使われているように思います)。

法人が確定申告を作成提出するまでの大まかな流れとしては、①一般的には1年間(それよりも短い期間もある)を通して日々の取引について記帳(つまり領収書などの証票に基づいて帳簿を作成すること)をまずは行います。この記帳がのちの決算や確定申告を作成するための基礎となります。記帳はご自身で行うケースもあれば、記帳代行会社もしくは税理士へ依頼するケースもあります。

②決算書の作成で、こちらは記帳した数字に基づいて貸借対照表及び損益計算書を作成します。月次決算という言葉がありますが、確定申告に必要なのは決算期末(通常は年1回)に作成する対象となる決算期間1年分の貸借対照表と損益計算書になりますので、月次決算のみでは確定申告を作成することはできません。

③最後に確定申告書の作成と提出です。確定申告書は②で作成した決算書に基づいて税金上必要な調整を行うことによって確定申告書類を作成し、税務署へ提出します。

決算申告のみ税理士へ依頼する際の費用

決算申告を税理士へ依頼する際に、2つの方法があります。1つ目は、税務顧問として税理士と契約して1年を通して税務アドバイスをもらいながら、決算期末には決算書の作成と確定申告書の作成・提出を依頼する方法です(ケースによっては記帳代行も税理士へ依頼します)。2つ目は、決算申告のみを決算期末に税理士へ依頼する方法です。この場合、決算期末前の期中については税務アドバイスを税理士からもらうことはできず、決算申告のタイミングで併せて税理士と相談しながら確定申告を進めていくことになります。

決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用として、概ね20万円〜となるケースが多いように思います(年商や業種などによって最低料金は当然異なってきます)。もちろん、取引数や取引の複雑性によっても報酬金額は変わってくるため、必ず全ての方が20万円〜ということはないことにご留意ください。

仮に顧問契約で年間の契約を結んでいたとしても、一般的な税理士との契約では月額の顧問料報酬と、決算申告は別途料金が課されることが多いです(顧問料報酬の数ヶ月分ということが多いかと思います)。この場合、決算申告のみを依頼するよりも顧問契約している決算申告の方が安いことが多いです。月額顧問報酬についても、業種や年商、取引数などによって大きく異なりますが、概ね2〜3万円以上で決算申告料金が15万円〜という場合が多いように思われます。

決算申告のみを税理士へ依頼するメリット

決算申告のみを税理士へ依頼するメリットは以下の通りです

顧問契約よりも税理士報酬を低く抑えることができる

2. ですでに記載しましたが、顧問契約を税理士と締結する場合でも決算申告は顧問報酬と別途ということが通常ですので、決算申告のみを税理士へ依頼する場合の方が費用を安く抑えられることが多いです(もちろん決算申告の料金だけを比較した場合は、顧問契約がある方が割安になります)。

税理士と定期的にやり取りする必要がなくなる

決算申告のみを税理士へ依頼する場合、期末決算直後の確定申告作成期間をメインに税理士とやり取りすることはありますが、それ以外の期中については税理士との契約がないため、コミュニケーションに係る時間は不要となります。顧問契約がある場合、税務に関する適宜のアドバイスに加えて、ご自身で記帳されている場合は記帳の結果に関するアドバイス、記帳も税理士へ依頼している場合はそれに関するやり取りや報告などが発生するため、毎月一定時間は税理士とコミュニケーションする時間が発生します。

税理士の関与により正しい決算申告を行うことが可能

税理士は税金の専門家であるため、経営者の方の税務申告を正しく迅速に対応してもらうことが可能です。ご自身で行う場合、どうしても一から勉強する必要があるのに加えて毎年税法も改正が入るため、そのアップデートが必要になります。また電子申告の場合システムの使い方を学習するなど、一定学習が必要です。そのため、処理が複雑になると当然確定申告書の内容を誤ってしまう可能性もあります。

また税理士が確定申告書の作成・提出に関与する場合、税理士の署名を行うことになりますので、提出先である税務署からのその確定申告に対する信頼性も高まることになります。この場合、税理士の署名があるからといって税務調査が免除されるわけではないので、留意するようにしましょう。

このように税理士が決算申告に関与することによって経営者は、複雑な記帳や決算業務、毎年改正が行われる税務・税務申告業務から解放されて本業に集中することができるため、メリットは大きいと思われます。

決算申告のみを税理士へ依頼するデメリット

決算申告のみを税理士へ依頼するデメリットは以下の通りです

節税など税アドバイスを税理士から十分に受けられない可能性

決算申告のみを税理士へ依頼する場合、1〜2ヶ月という短い時間で税理士へ取引の内容や税務処理の相談をしなければならなくなり、税理士側も十分な時間を確保できず、顧客である法人の取引を把握することができない結果として、節税などの税アドバイスを十分に受けることができない可能性があります。例えば経営者は経費だと思っていたものが実は経費ではなかったり、経営者が税理士へ伝えていなかった取引が実は法人の売上に計上しなくてはならないものだったりです。

また、取引を実行してしまった後では節税ができないケースもあり取引前に税理士へ相談したくても決算申告のみだと相談ができないため、この点でもデメリットとなります。

税務調査の立会に対応できないケース

決算申告のみを税理士へ依頼する場合、税理士のサービスとして税務調査の立会は顧問契約を締結している顧客のみ、としているケースも0ではないかと思います。通常、顧問契約を締結していても税務調査への立会は別料金となるケースが多いように思われます。

この背景として、税務調査に対応するためには、調査官の質問に正確かつ十分に回答できるように、顧客である法人の取引等について深く理解をしておく必要がありますが、決算申告のみの場合税理士も深い理解が短い時間ではできないため、税務調査へ十分に対応が難しいという観点からサービス外となるようです。

税理士から経営アドバイスを受けることができない

税理士によっては、税務アドバイスのみでなく資金面やシステム面から経営アドバイス等をおこなってくれる場合もありますが、決算申告のみの場合はそのサービスの範囲が決算書作成と確定申告書の作成・提出になってしまうため、経営アドバイスを定期的に受けることができなくなってしまいます。税理士は税金の専門家であると同時に財務についても詳しいため、経営者としては資金調達や資金効率化などのアドバイスは、せっかく決算を作成してくれている税理士から求めたいところかと思いますので、この点はデメリットとなってしまいます。

決算申告のみを税理士へ依頼するポイント

決算申告のみを税理士へ依頼するか、それとも顧問契約含めて税理士へ依頼するかについては、以下がポイントになってくるかと思います。

1つ目は個人事業主か法人かという点です。個人事業主で年商がかなり少額(例えば副業などで申告も青色申告ではなく白色申告など)であれば決算申告のみ、もしくはご自身で対応してしまうことも考えられます。一方で法人については大小関係なく、決算書の作り方及び確定申告書の作り方が個人と違って一気に複雑になりますし、難易度も上がります。法人の決算申告をご自身で対応されるのは難しいので、少なくとも税理士は活用を検討された方が良いのと、日々の記帳や税務処理についても法人の場合悩むことが多いと思いますので、決算申告のみでなく顧問契約も含めて税理士へご依頼をされた方が、経営者として本業に集中できるのでメリットがあるかと思います。

2つ目は年商規模です。上記で触れた個人事業主の方についても、青色申告で今後事業を伸ばしていく、もしくは消費税申告の義務対象者(原則、年商1,000万円以上、もしくはインボイス登録者)については、しっかりとした帳簿作りや複雑な消費税計算も所得税の確定申告と併せて行う必要があるため、ご自身で全て対応されるのは現実的ではないと思われます。また今後事業を伸ばしていきたい(法人化も検討している)、しっかりと相談して安心して本業に集中したいと思われている方、についても適宜税理士からアドバイスをもらった方がメリットが大きいと思われますので、顧問契約することをお勧め致します。

決算申告に対応できる税理士を選ぶポイント

決算申告に対応できる税理士を選ぶポイントは以下の通りです。なお、そもそも決算申告のみではサービス提供をおこなっていない税理士もいますので(顧問契約のみの税理士)、ご留意ください。

1つ目ですが、税理士の報酬を確認しましょう。税理士の報酬体系も複雑ですので、決算申告の場合、所得税/法人税の申告のみなのか、消費税やその他の税務申告も料金に含まれているのか、など細かく確認されることをお勧め致します。特に漏れやすいのが消費税の申告が含まれているかどうかの確認です。消費税の申告は所得税や法人税の申告とは異なりますので、通常税理士の報酬体系でも別料金になることが多いと思われます。必ず面談や見積もり時に税理士へ決算申告に含まれるサービス内容を確認された方が良いでしょう。

2つ目ですが、顧問契約含めた相性や料金も含めて併せて検討しましょう。決算申告のみ、と思ってたとしても、例えば今後事業を拡大していく中で色々とアドバイスもらえそうだな、ということや、アドバイスも含めると顧問料金も経費の許容範囲だ、となれば顧問契約に切り替えて契約することもあると思いますので、決算申告のみで考えずに幅広く検討するようにした方が良いかと思います。その際には税理士との相性もあると思いますので、中長期でお互いお付き合いできそうかも含めて判断されるようにした方がよろしいかと思います。

3つ目ですが、税理士が対応している会計ソフトについて確認しましょう。ご自身で特段会計ソフトを使っていない、もしくは特にこだわりがなければ、このポイントは特に考える必要はありません。一方ですでに特定の会計ソフトでご自身で記帳を行われているケースや、クレジットカードや銀行口座と連携したいのでこのソフトを使いたい、というニーズがあるのであれば、それに対応した税理士と契約する必要があります。税理士は全ての会計ソフトを使えるわけではないので、その点留意しながら確認するようにしましょう。

4つ目は、決算申告以外にも対応できるサービスは何かということです。これは2つ目の顧問契約とも関連してきますが、税理士は税金の専門家のみならず財務にも強みを持っております。例えば資金調達の際に必要な事業計画の策定支援や補助金などのサポート、経理システムの導入サポートなど幅広く経営課題に対応しております、せっかく決算申告を依頼するのであれば、将来的により多くの業務を依頼する可能性を見越して、ご自身が将来的にニーズがありそうなサービスに対応している税理士を選ばれる方が良いかと思います。

決算申告に対応できる税理士の探し方

決算申告に対応できる税理士の探し方は大きく下記の方法があるかと思います。

1つ目は知り合いから紹介してもらうことです。信頼している方からの紹介であれば、安心感があるかと思います。一方で、相性が合わない場合などは紹介をしてもらった手前、なかなか断りづらいという点があると思います。

2つ目はインターネットで検索するです。ご自身が住んでいる地域で検索すると税理士のホームページがインターネット上に出てくるはずです。最近の税理士のホームページは料金体系や強み、サービスの範囲など記載内容が充実しておりますので、その中でご自身のニーズに合った税理士と面談して決められるという方法はあるかと思います。

3つ目は税理士紹介サイトです。こちらもインターネット経由ですが、直接税理士へ問い合わせるのではなく紹介サイトのコーディネーターにご自身のニーズを伝えて、複数名の税理士を紹介してもらう流れになります。一般的に依頼者側は費用がかかりませんので、安心して利用することが可能です。税理士紹介サイト以外にも会計ソフト会社で税理士を紹介しているケースもあります。

ご自身で決算申告を行われるケース

上記は税理士へ依頼して決算申告を行うことを中心に記載してまいりましたが、結果としてご自身で決算申告を行う場合もあるかと思います。その場合の留意点等について記載させていただきます。

まずご自身で決算申告を行う場合のデメリットですが、①本業以外に多大な時間を取られる、②結果としてコストが高くつく、の2点に留意してください。①については前述しておりますが、特に法人税の申告は非常に複雑で専門知識を持たない方がご自身で申告書を作成するのは極めて難易度が高いです。申告書作成の勉強をされるのも良いと思いますが、その時間に本業の事業を拡大された方が結果として利益が増えると思いますので、この点はご自身でデメリットとしてご認識いただければと思います。また、②については①とも関係しますが、ご自身で行う場合はそれなりに申告書対応に時間を取られるため、その間に本来事業を拡大していたら得られたであろう利益を失うことになります。この失った利益が税理士へ支払う報酬よりも高いのであれば、明らかに税理士へ報酬を支払った方がメリットがあると思います。

次に対象となる税金の種類ですが、個人の方は所得税・法人の方は法人税、共通として住民税・事業税となります。これに加えて、法定調書や償却資産税(固定資産税)、消費税、事業所税など全員ではありませんが対応が必要なケースがあります。また、申告書のみでなくその基礎となる仕訳帳や総勘定元帳、補助簿などの帳簿書類も作成・保存が必要となってきます。

このように帳簿の作成から各種申告書の作成・提出等、決算申告とは一言で言ってもかなりやることが多いため、ご自身で決算申告を行う場合にはこういったデメリットをしっかりと理解した上で臨まれると良いでしょう。

決算は税理士へ丸投げ可能か?

まず結論から行くと、丸投げ可能です。ただし前提があり、税理士が記帳や確定申告書を作成するにあたり、経営者へ様々な質問や資料・請求書などの証憑の提示を求めますが、それに誠実に対応されることです。まずこの対応が正しく行われない限り、正しい確定申告書が作成できませんので、せっかく税理士と契約したとしてもあまり意味がなくなってしまいます。特に無申告の場合、数年前の取引を思い出したり、書類を探さなけれなならないため、通常の税理士とのやり取りよりハードルが上がります。ですが、せっかくお金を払って依頼するのですから、しっかりと対応するようにしましょう。

また仮に税務調査が入る場合にも、税理士との密な連携は大変重要になってきます。税理士に任せているから全く何もしないし税理士ともコミュニケーションは取らないという状況ですと、税理士側も税務調査官に対して的確に回答が難しくなるケースもあるため、税務調査が行われ、かつ税理士が立会を行う場合には、事前にお互いしっかりとコミュニケーションをとり準備するようにしましょう。

その他税理士へ丸投げできること

そもそも税理士と契約することによって、税理士を探されている方々は、どのようなサービスを受けることができるのでしょうか?

確定申告・税務顧問・記帳サービス

まずは確定申告です。これは、原則年1回、税務署へ提出する税額を計算した書類になります。個人で開業されている方含めて提出が必要になります。税理士と聞くとまずはこの確定申告の代行を想像される方が多いのではないかと思います。確定申告は確定申告書類を作成するのみならず、その土台となる帳簿の作成や年間の数字結果を示した貸借対照表や損益計算書(併せて決算書)を作成する必要がありまして、全て確定申告書作成に必要な基礎的な書類となります。帳簿や決算書についても税理士へ依頼することが可能です。納税に関する予測データを依頼することもあります。

また、確定申告と併せて月次の税務顧問や記帳サービス(実際に税理士側で記帳する場合と、顧客側で記帳したものを税理士側でレビューする記帳支援の2つがある)があります。税務顧問は確定申告に向けて、毎月顧客から税務に関連する相談を税理士にできるサービスになります。確定申告のみの依頼の場合は、決算以外のタイミングで発生した税務に関連する相談を税理士に適宜できなかったりとさまざまな制約が発生することが多いので、税務顧問とセットで確定申告を税理士に依頼するパターンもあります。

また記帳代行に関しては、日々の帳簿作成を行うもので、経営者がご自身で対応されるパターンと、税理士側が記帳代行という形で対応するパターンに分かれます。当然記帳代行に関する料金が発生するため、料金と労力の見合いで税理士へ記帳代行を依頼するかどうかを判断することになりますが、最近はクラウド会計も普及してきており、ITが得意な経営者はクレジットカードや銀行口座を連携して記帳はご自身で対応し、記帳支援という形で税理士にチェックをしてもらうパターンも増えてきているように思います。

会社設立・起業支援

会社設立や開業前から実際の会社設立・開業を税理士が支援するパターンもあります。会社設立・開業においては、資金調達のニーズや会社設立手続きそのもののニーズ、各種税務に関する届出のサポートなど、サポート範囲が多岐に及びます。税理士だけでは対応できない部分もあるため、司法書士や行政書士、社会保険労務士などさまざまな士業と連携しながらサービスを提供しています。

月次決算

毎月の損益の状況を把握し、経営として問題ないかどうかを確認するために、月次決算書というものを使うことがあります。確定申告書と異なり必ず作成しなくてはならないものではありませんが、経営の状況をリアルタイムで把握するためには必要なものになります。この月次決算についても税理士に依頼することが可能です。月次試算表という言葉で呼んだりすることもあります。

経理アウトソーシング

帳簿作成や月次決算も経理業務ではありますが、経理全体の中の一部の業務になります。経理業務はそのほかに、請求している金額の入金処理や支払処理、その他給与計算など、お金に関するあらゆる業務があります。経営していると、この辺りの重要だけど本業ではない業務に時間を取られることが多いかと思いますが、このような業務を税理士へ委託することができます。

クラウド会計導入支援

税理士はクラウドソフトを使って顧客へサービスを提供することが多いため、顧客自身が自らクラウドソフトを入れたいというニーズにも応えることが可能です。特に経営者ご自身で数字はしっかり管理したいからクラウド会計ソフトを導入したいという場合、システム会社だと会計や税金の細かいルール設定まで対応できないケースがあるため、税理士にサポートを依頼するケースもあります。

管理会計の導入

月次決算とも関係してきますが、財務データを分析して経営に役立てたいなどのニーズがあるかと思います。このように経営の分析に役立つ数字を作成して管理することを管理会計と呼んだりしますが、この導入支援を税理士へ依頼するケースもあります。

相続申告や事業承継の検討

経営が安定してきて将来はご子息に相続というケースで、事業承継を考えることになるかと思います。相続や贈与・事業承継については税金の問題が大きく影響を与えるため、税理士の関与はかなり重要だと言えます。また事業承継の一つのやり方としてM&Aで他の経営者への売却等も可能性としてはあるかと思いますので、この辺りも税理士のサポート領域となります。

また事業承継までなかったとしても相続税というものは発生しますので、相続対策が重要になります。相続・贈与の仕方によって税金の発生金額が異なってくるのと、税制は非常に複雑なので、税理士を活用して節税を実現する経営者も増えてきているように思います。

その他:税務調査対応・セミナー・事業計画作成支援など

上記以外の業務として、税務調査の対応(税務調査の立ち合い)から、税金に関するセミナーの提供、補助金などで必要になってくる事業計画の作成支援など、さまざまなサービスを税理士は展開しております。制度対応として、認定支援機関となっている税理士もあります。

その他社会保険労務士や行政書士、司法書士などの資格を持っている税理士であれば、給与計算や労務に関する各種届出のサポート、もしくは許認可申請・登記申請サポートなど、税務にとどまらず、幅広いサービスを展開しております。経営に強い税理士であれば税務のみならず数字面を切り口にした経営コンサルティングを提供している場合もあるでしょう。

会計士と税理士の違いについて

税理士に似た士業で公認会計士というものがあります。公認会計士と税理士は一般的に混同されがちですが、何が違うのでしょうか?まず、公認会計士は登録することで税理士になることが可能です(税理士のみの資格では公認会計士になることはできません)。公認会計士は会社が作成する財務諸表の監査を行うことが本業であり、公認会計士のみの登録の方については、税務申告の作成代行や税務相談、税務申告を行う税務代理を取り扱っていません。一方で公認会計士と税理士の両方を登録されている方については、税務申告の作成代行や税務相談、税務申告を行う税務代理を取り扱っています。法人で将来的に監査を受ける可能性があり、公認会計士と税理士のサービスを同時に受けたい方については、探す際に公認会計士と税理士の両方を登録している方を探すのが良いでしょう。

個人の方については、そもそも個人で監査を受ける場面というのがないかと思いますので、公認会計士のライセンスを持っているかどうかについてはそこまで気にする必要はないかと思います。ですので個人の方については税理士のライセンスを持っているかの視点で探されるので良いでしょう。

税理士が必要なタイミング

ベンチャーにとって税理士へ依頼するベストなタイミングはいつになるのでしょうか?以下パターンをわけをして記載していきます。

法人設立のタイミング

まずは法人設立のタイミングです。法人税の申告書は個人の所得税の申告と異なり、作成の仕方がかなり複雑です。経営者ご自身でやるには難易度が高いため、税理士へ依頼することを前提に考えた方が良いです。そのため、会社摂理を検討する際が、税理士へ確定申告を依頼する良いタイミングと言えるでしょう。また以下の視点でも依頼をされたほうが良いと考えます。

まず一つ目が決算期の設定や各種定款の記載事項・資本金の設定の相談です。特に決算期は税務申告のタイミングに重要な影響を及ぼすため、慎重な検討が必要です。また資本金についても税金に大きな影響を与えるためいくらに設定すべきかは税理士と相談した方が良いかと思います。

また開業に生じた費用は税務上、創立費や開業費となり経費化することが可能です。どこまでの範囲が経費化できて、どのタイミングで経費にするのが良いのかは、経営者自信で考えるのは悩みどころだと思います。これを税理士に相談すればベストなタイミング含めてアドバイスもらえることでしょう。

ご自身で帳簿をつけられる場合には税理士から帳簿に関する指導を受けることができますし、領収書や請求書などの証憑類は保管が必要になってきますので、記録の仕方や保存の仕方含めて税理士からアドバイスを受けることができます。

さらに、シミュレーションを使ってそもそも会社設立をすべきなのか、個人事業主として続けるのが良いのかのアドバイスも税金の観点から受けることが可能なので、そもそも会社設立しても税制上はほとんどメリットがないケースというのもあるでしょう。

マイクロ法人の設立を検討されている方については、こちらの「マイクロ法人に強い税理士を検討するポイント」を参照ください。

消費税の課税事業者になるタイミング

他には、年商が1000万円もしくはインボイス事業者になると消費税申告が必要になってきますが、この消費税申告は経理経験のない方にはかなりとっつきにくい内容になっているため、税理士でないとミスが発生する可能性があります。そのため、消費税申告を行うか否かは税理士へ依頼するタイミングの1つとなります。

その他

上記以外には、年商がある程度大きくなってきて、処理が複雑になってきた、もしくは節税も併せて検討したいなどのタイミングになるかと思います。年商が大きくなれば取引も大きいため、その分経理処理も複雑になってきます。ご自身で確定申告を対応されている場合はミスが増える可能性もあります。加えて節税も検討されることになると、税理士へ相談をした方が最適な処理を確認することができるでしょう。

税理士が不要な人

個人事業主の方でも税理士が不要なケースはあると思いますが、不要なケースについて整理をしていきます。まず年商が低い方で例えば今後増加する見込みもなく税理士費用を払ってしまうとコスト負担が重たいケースです。この場合は、サービスは限定されてしまいますが値段を抑えられる税理士を起用することでコスト負担を軽減するか、ご自身でしっかりと確定申告を学習されて確定申告書を作成・提出されるかです。また、副業で年商が小さい方も同じようなことが言えると思います。最近の会計ソフトはクラウド会計なのでインターネットから手軽に利用することができますし、費用もかなり安く抑えられており、かつ専門的な知識がなくてもある程度は帳簿作成を行うことが可能となっております。そのため、値段を抑えたクラウド会計ソフトを活用することも1つの案と言えます。

一方で次の方についてはむしろ税理士が本当に不要かは考えられた方が良いと思います。まずは年商は一定まで高くなっているがインターネットの情報とクラウド会計ソフトを駆使すればご自身で全て対応可能である、と思われている方です。正直、税法は皆様が思っているよりも奥が深いです。そのため、ご自身に知識が相当あると思われている方でも、確定申告書に誤りがあったり、本来であれば使えたであろう税額控除を使ってなかったりと損をしているケースもあります。ある程度の年商がある場合その分税金に与える影響も大きく、結果的に税理士にコストを支払った業が得をするケースもあるため、まだ税理士をつけられてない方についてはぜひ一度検討することをおすすめいたします。

丸投げではなく税理士へのスポット相談は活用可能か?

税理士費用をなるべく払いたくない、ある程度は自分で調べることができるので、わからない部分のみ教えてほしいという方もいらっしゃると思います。そのため一定の金額を払って税理士へスポット相談のみ依頼をしたいというニーズもあるかと思います。

ただしスポット相談のみは個人的にはあまりおすすめ致しません。その理由として、まず1つ目は税理士としては中長期のお付き合いの中で顧客の事業への深い理解や顧客のニーズを把握していくことになりますが、スポット相談ではこれを行うことができません。またスポット相談の場合時間や情報が限られてしまうため、どうしてもその範囲内の回答しかできません。加えて、顧客が相談の情報を準備することになりますが、当然顧客は税金の専門家ではないため、相談にあたって重要な前提情報や資料が漏れる可能性があります。顧問契約をしていれば税理士が日々顧客の動きを見ているためこのようなことは起こりませんが、スポット相談では顧客から提示された情報のみで判断せざる追えなくなります。

そのため、税理士としてスポット相談はそもそも引き受けていない(制限された情報や時間の中では専門家としての力を十分に発揮することができないため)、もしくは深いアドバイスはできないことを事前に顧客へ伝えるケースは多いかと思います。結局顧客として深いアドバイスを求めているのであれば、スポット相談ではなく顧問契約にしてしっかりと税理士に診てもらうのがベストだと考えます。

税理士へ依頼する・丸投げするメリット

個人事業主にとって事業運営は、ビジネスだけでなく法律や税金、資金調達など様々な専門知識を問われますが、これまでこのような分野にいなかった経営者にとっては大変難しいものです。一方で、届出を一つ忘れるだけで税金の金額が異なったり、有利な選択を見逃すことで支払わなくてよかった税金を支払うことになったり、と判断を誤ることで存することはベンチャー経営において発生します。

税金でよくあるケースとしてまず考えられるのが、消費税の課税選択です。法人の場合、会社設立時に資本金額が一定を超えると課税事業者となりますが、免税事業者と比較して消費税を納めることになる(還付の場合を除く)ため、その分キャッシュアウトになります。また、消費税の計算方法として簡易課税を選択するか否かによって課税金額が変わってきますが、届出をする必要があると同時に届出期限も決まっているため、届出を失念すると不利な選択を強いられる可能性があります。

また消費税以外にも法人税の分野において、多いのが青色申告の承認申請書です。青色申告の場合、発生した赤字を繰り越すことができたり、過去に発生した赤字を繰戻することができたり、少額の減価償却資産を費用化して経費を早期に計上できたり、その他様々な特典を受けることができます。青色申告の承認申請書についても届出期限が決まっているので、こちらも提出し忘れるとその年度は恩恵を受けることができません。青色申告以外にも、役員報酬についても法人税法上、役員へ支払う報酬を自由にいつでも変更できないルールが設定されているため、変更期限を過ぎてしまうと変更ができない(変更はできるのですが、経費として一部認められなくなります)ことになり、大変不利です。

税金以外にも、ビジネスを長期的に安定的にするためにもしっかりと事業計画を作って、会社法などの法律に従い会社を経営し、かつ資金繰りにも困らない状況を目指すことが非常に重要になってきますが、これがご自身でしっかりとできる経営者はなかなかいないのではないかと思います。補助金の活用についても同様です。

この辺り、税理士が経営者の非常に強力なサポーターになってくれます。以下では税理士と契約するメリットについて記載をしていきます。

確定申告・記帳の業務から解放される

税制は複雑であることから、確定申告や記帳代行の難易度は他の業界と比較しても高いと思います。これをご自身でやられる場合、全てご自身で勉強したり調べたりする必要がありますが、当然間違ってしまうリスクもあります。この点、税理士費用は発生するものの、確定申告や記帳業務から解放されるため、本業に集中できかつ売上をアップさせることが可能になること、さらには間違えのない確定申告書を作成・提出することが可能となるため、安心感につながることはメリットと言えます。

また、通常であれば経理経験のある人を雇って帳簿作成や決算作成、税務申告書の作成・提出を行うことになりますが、従業員を1名雇うと、かなり費用が高額になるため、記帳部分も含めて税理士へ依頼することによって高い品質でコストを抑えたサービスを受けることが可能となります。

上記に加えて、ベンチャーにとって税務回りで多くの届出書を作成・提出する必要が出てきます。例えば、すでに述べた青色申告承認申請書や、簡易課税を選択する場合はそれに関連した届出書などです。税理士へ依頼する場合はこの届出書についても作成・提出してくれるので、漏れなく安心できることでしょう。

安心感を持って税務調査対応が可能になる

全く税務経験のない経営者からすると、税務調査と聞くだけで安心ができないことでしょう。さらに税務調査本番では何を回答していいのかわからないなど不慣れでかつ不安も多いことでしょう。また相手は専門家であるため説明不足や誤った説明などにより、追徴となる可能性も0ではありません。税理士であれば税務調査も適切なコミュニケーションで調査官と対応してもらえるので安心です。また申告書についても過去の経験から税務調査の目線でしっかりとアドバイスをしてもらえることも期待できます。

税金以外のサポート

税金以外にも資金調達や補助金などのサポートを得ることができます。前述の通り、税理士によっては税金だけでなく、資金調達や補助金のサポートをサービスとして展開している場合があります。資金調達や補助金申請にあたっては財務諸表の提出や事業計画の提出を求められる場合があり、そもそも作成経験がなけければスタートラインに立つことすらできません。また財務諸表や事業計画は経験ない経営者が書籍やインターネットで手軽に作れるものでもないため(金融機関のようなプロが見たら間違っている財務諸表はすぐにわかってしまうので)、今後事業を拡大するために資金調達や補助金の活用を検討されている場合には、税理士のサポートが必要になってくるでしょう。

経営相談が可能

資金調達や補助金以外にもビジネスに強い税理士であれば集客方法や人材採用のアドバイス、オペレーションの効率化支援など、幅広く経営コンサルティングを提供することが可能です。またコンサルティングまでいかなくても定期的に経営者の悩み相談を税理士とディスカッションするなどの経営相談も可能となります。

節税の相談が可能

合理的な範囲内で、税理士へ節税の相談が可能となります。当然、経済的合理性があり説明できる内容でなければならないので、勝手に経営者側で判断するのではなく税理士へまずは確認しましょう。税務署が認めれくれる程度の合理的な節税に関するアドバイスを期待できるでしょう。インターネットに記載されている真偽不明は情報に基づいて節税を行う方がいらっしゃいますが、過度な節税により税務署から指摘を受けた場合はペナルティである重加算税を受けて、節税をしたはずが結果余計な税金を追加で支払うケースもありますので、中途半端な知識で節税せずに税理士へ確認するようにしたほうが良いです。

税理士へ依頼する・丸投げするデメリット

税理士と相談するデメリットとしては、やはり費用面でしょう。後ほど費用相場について説明いたしますが、料金としては決して安くはないので、年商が低いうちはコスト負担が大きいかと思います。一方で、メリットでも記載しましたが、デメリットよりもメリットも方が大きいため、基本的な考え方は税理士に支払う費用よりも、空いた時間で売り上げを増やしていくことに集中することです。

またデメリットとしてご自身で記帳や申告作業を行わないため、ナレッジや経験値が貯まらないということもあります。小規模な事業でなるべくコストを抑えたい方についてはこれでも良いかもしれませんが、ある程度の規模のビジネスもしくは将来的にビジネスを拡大する意向である方については、記帳や確定申告のナレッジや経験を積むよりも、本業を伸ばすことが重要かと思いますので、その視点で税理士へ依頼するかどうかを判断された方が良いかと思います。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。