決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用とポイント徹底解説

税務

この記事では、決算申告のみを税理士に依頼する場合のメリットやデメリット、そして依頼する際のポイントについて解説を行います。税理士へ依頼せずご自身で決算申告を行う方法についても解説していきますので、税理士へ依頼するポイントやご自身で行う際の手間等についても理解が深まります。

この記事を最後までご覧いただくと、決算申告とは何か、税理士を活用するポイントの理解、ご自身で決算申告を行うことの手間、について十分理解することができます。

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決算申告とは何か?確定申告との関係性について

決算申告という言葉は所謂業界用語で、法人の確定申告とそれに必要な決算書を作成することを、一般的には意味しております(個人事業主の方については、主に確定申告という用語が使われているように思います)。

法人が確定申告を作成提出するまでの大まかな流れとしては、①一般的には1年間(それよりも短い期間もある)を通して日々の取引について記帳(つまり領収書などの証票に基づいて帳簿を作成すること)をまずは行います。この記帳がのちの決算や確定申告を作成するための基礎となります。記帳はご自身で行うケースもあれば、記帳代行会社もしくは税理士へ依頼するケースもあります。

②決算書の作成で、こちらは記帳した数字に基づいて貸借対照表及び損益計算書を作成します。月次決算という言葉がありますが、確定申告に必要なのは決算期末(通常は年1回)に作成する対象となる決算期間1年分の貸借対照表と損益計算書になりますので、月次決算のみでは確定申告を作成することはできません。

③最後に確定申告書の作成と提出です。確定申告書は②で作成した決算書に基づいて税金上必要な調整を行うことによって確定申告書類を作成し、税務署へ提出します。

決算申告のみ税理士へ依頼する際の費用

決算申告を税理士へ依頼する際に、2つの方法があります。1つ目は、税務顧問として税理士と契約して1年を通して税務アドバイスをもらいながら、決算期末には決算書の作成と確定申告書の作成・提出を依頼する方法です(ケースによっては記帳代行も税理士へ依頼します)。2つ目は、決算申告のみを決算期末に税理士へ依頼する方法です。この場合、決算期末前の期中については税務アドバイスを税理士からもらうことはできず、決算申告のタイミングで併せて税理士と相談しながら確定申告を進めていくことになります。

決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用として、概ね20万円〜となるケースが多いように思います(年商や業種などによって最低料金は当然異なってきます)。もちろん、取引数や取引の複雑性によっても報酬金額は変わってくるため、必ず全ての方が20万円〜ということはないことにご留意ください。

仮に顧問契約で年間の契約を結んでいたとしても、一般的な税理士との契約では月額の顧問料報酬と、決算申告は別途料金が課されることが多いです(顧問料報酬の数ヶ月分ということが多いかと思います)。この場合、決算申告のみを依頼するよりも顧問契約している決算申告の方が安いことが多いです。月額顧問報酬についても、業種や年商、取引数などによって大きく異なりますが、概ね2〜3万円以上で決算申告料金が15万円〜という場合が多いように思われます。

決算申告のみを税理士へ依頼するメリット

決算申告のみを税理士へ依頼するメリットは以下の通りです

顧問契約よりも税理士報酬を低く抑えることができる

2. ですでに記載しましたが、顧問契約を税理士と締結する場合でも決算申告は顧問報酬と別途ということが通常ですので、決算申告のみを税理士へ依頼する場合の方が費用を安く抑えられることが多いです(もちろん決算申告の料金だけを比較した場合は、顧問契約がある方が割安になります)。

税理士と定期的にやり取りする必要がなくなる

決算申告のみを税理士へ依頼する場合、期末決算直後の確定申告作成期間をメインに税理士とやり取りすることはありますが、それ以外の期中については税理士との契約がないため、コミュニケーションに係る時間は不要となります。顧問契約がある場合、税務に関する適宜のアドバイスに加えて、ご自身で記帳されている場合は記帳の結果に関するアドバイス、記帳も税理士へ依頼している場合はそれに関するやり取りや報告などが発生するため、毎月一定時間は税理士とコミュニケーションする時間が発生します。

税理士の関与により正しい決算申告を行うことが可能

税理士は税金の専門家であるため、経営者の方の税務申告を正しく迅速に対応してもらうことが可能です。ご自身で行う場合、どうしても一から勉強する必要があるのに加えて毎年税法も改正が入るため、そのアップデートが必要になります。また電子申告の場合システムの使い方を学習するなど、一定学習が必要です。そのため、処理が複雑になると当然確定申告書の内容を誤ってしまう可能性もあります。

また税理士が確定申告書の作成・提出に関与する場合、税理士の署名を行うことになりますので、提出先である税務署からのその確定申告に対する信頼性も高まることになります。この場合、税理士の署名があるからといって税務調査が免除されるわけではないので、留意するようにしましょう。

このように税理士が決算申告に関与することによって経営者は、複雑な記帳や決算業務、毎年改正が行われる税務・税務申告業務から解放されて本業に集中することができるため、メリットは大きいと思われます。

決算申告のみを税理士へ依頼するデメリット

決算申告のみを税理士へ依頼するデメリットは以下の通りです

節税など税アドバイスを税理士から十分に受けられない可能性

決算申告のみを税理士へ依頼する場合、1〜2ヶ月という短い時間で税理士へ取引の内容や税務処理の相談をしなければならなくなり、税理士側も十分な時間を確保できず、顧客である法人の取引を把握することができない結果として、節税などの税アドバイスを十分に受けることができない可能性があります。例えば経営者は経費だと思っていたものが実は経費ではなかったり、経営者が税理士へ伝えていなかった取引が実は法人の売上に計上しなくてはならないものだったりです。

また、取引を実行してしまった後では節税ができないケースもあり取引前に税理士へ相談したくても決算申告のみだと相談ができないため、この点でもデメリットとなります。

税務調査の立会に対応できないケース

決算申告のみを税理士へ依頼する場合、税理士のサービスとして税務調査の立会は顧問契約を締結している顧客のみ、としているケースも0ではないかと思います。通常、顧問契約を締結していても税務調査への立会は別料金となるケースが多いように思われます。

この背景として、税務調査に対応するためには、調査官の質問に正確かつ十分に回答できるように、顧客である法人の取引等について深く理解をしておく必要がありますが、決算申告のみの場合税理士も深い理解が短い時間ではできないため、税務調査へ十分に対応が難しいという観点からサービス外となるようです。

税理士から経営アドバイスを受けることができない

税理士によっては、税務アドバイスのみでなく資金面やシステム面から経営アドバイス等をおこなってくれる場合もありますが、決算申告のみの場合はそのサービスの範囲が決算書作成と確定申告書の作成・提出になってしまうため、経営アドバイスを定期的に受けることができなくなってしまいます。税理士は税金の専門家であると同時に財務についても詳しいため、経営者としては資金調達や資金効率化などのアドバイスは、せっかく決算を作成してくれている税理士から求めたいところかと思いますので、この点はデメリットとなってしまいます。

決算申告のみを税理士へ依頼するポイント

決算申告のみを税理士へ依頼するか、それとも顧問契約含めて税理士へ依頼するかについては、以下がポイントになってくるかと思います。

1つ目は個人事業主か法人かという点です。個人事業主で年商がかなり少額(例えば副業などで申告も青色申告ではなく白色申告など)であれば決算申告のみ、もしくはご自身で対応してしまうことも考えられます。一方で法人については大小関係なく、決算書の作り方及び確定申告書の作り方が個人と違って一気に複雑になりますし、難易度も上がります。法人の決算申告をご自身で対応されるのは難しいので、少なくとも税理士は活用を検討された方が良いのと、日々の記帳や税務処理についても法人の場合悩むことが多いと思いますので、決算申告のみでなく顧問契約も含めて税理士へご依頼をされた方が、経営者として本業に集中できるのでメリットがあるかと思います。

2つ目は年商規模です。上記で触れた個人事業主の方についても、青色申告で今後事業を伸ばしていく、もしくは消費税申告の義務対象者(原則、年商1,000万円以上、もしくはインボイス登録者)については、しっかりとした帳簿作りや複雑な消費税計算も所得税の確定申告と併せて行う必要があるため、ご自身で全て対応されるのは現実的ではないと思われます。また今後事業を伸ばしていきたい(法人化も検討している)、しっかりと相談して安心して本業に集中したいと思われている方、についても適宜税理士からアドバイスをもらった方がメリットが大きいと思われますので、顧問契約することをお勧め致します。

決算申告に対応できる税理士を選ぶポイント

決算申告に対応できる税理士を選ぶポイントは以下の通りです。なお、そもそも決算申告のみではサービス提供をおこなっていない税理士もいますので(顧問契約のみの税理士)、ご留意ください。

1つ目ですが、税理士の報酬を確認しましょう。税理士の報酬体系も複雑ですので、決算申告の場合、所得税/法人税の申告のみなのか、消費税やその他の税務申告も料金に含まれているのか、など細かく確認されることをお勧め致します。特に漏れやすいのが消費税の申告が含まれているかどうかの確認です。消費税の申告は所得税や法人税の申告とは異なりますので、通常税理士の報酬体系でも別料金になることが多いと思われます。必ず面談や見積もり時に税理士へ決算申告に含まれるサービス内容を確認された方が良いでしょう。

2つ目ですが、顧問契約含めた相性や料金も含めて併せて検討しましょう。決算申告のみ、と思ってたとしても、例えば今後事業を拡大していく中で色々とアドバイスもらえそうだな、ということや、アドバイスも含めると顧問料金も経費の許容範囲だ、となれば顧問契約に切り替えて契約することもあると思いますので、決算申告のみで考えずに幅広く検討するようにした方が良いかと思います。その際には税理士との相性もあると思いますので、中長期でお互いお付き合いできそうかも含めて判断されるようにした方がよろしいかと思います。

3つ目ですが、税理士が対応している会計ソフトについて確認しましょう。ご自身で特段会計ソフトを使っていない、もしくは特にこだわりがなければ、このポイントは特に考える必要はありません。一方ですでに特定の会計ソフトでご自身で記帳を行われているケースや、クレジットカードや銀行口座と連携したいのでこのソフトを使いたい、というニーズがあるのであれば、それに対応した税理士と契約する必要があります。税理士は全ての会計ソフトを使えるわけではないので、その点留意しながら確認するようにしましょう。

4つ目は、決算申告以外にも対応できるサービスは何かということです。これは2つ目の顧問契約とも関連してきますが、税理士は税金の専門家のみならず財務にも強みを持っております。例えば資金調達の際に必要な事業計画の策定支援や補助金などのサポート、経理システムの導入サポートなど幅広く経営課題に対応しております、せっかく決算申告を依頼するのであれば、将来的により多くの業務を依頼する可能性を見越して、ご自身が将来的にニーズがありそうなサービスに対応している税理士を選ばれる方が良いかと思います。

決算申告に対応できる税理士の探し方

決算申告に対応できる税理士の探し方は大きく下記の方法があるかと思います。

1つ目は知り合いから紹介してもらうことです。信頼している方からの紹介であれば、安心感があるかと思います。一方で、相性が合わない場合などは紹介をしてもらった手前、なかなか断りづらいという点があると思います。

2つ目はインターネットで検索するです。ご自身が住んでいる地域で検索すると税理士のホームページがインターネット上に出てくるはずです。最近の税理士のホームページは料金体系や強み、サービスの範囲など記載内容が充実しておりますので、その中でご自身のニーズに合った税理士と面談して決められるという方法はあるかと思います。

3つ目は税理士紹介サイトです。こちらもインターネット経由ですが、直接税理士へ問い合わせるのではなく紹介サイトのコーディネーターにご自身のニーズを伝えて、複数名の税理士を紹介してもらう流れになります。一般的に依頼者側は費用がかかりませんので、安心して利用することが可能です。税理士紹介サイト以外にも会計ソフト会社で税理士を紹介しているケースもあります。

ご自身で決算申告を行われるケース

上記は税理士へ依頼して決算申告を行うことを中心に記載してまいりましたが、結果としてご自身で決算申告を行う場合もあるかと思います。その場合の留意点等について記載させていただきます。

まずご自身で決算申告を行う場合のデメリットですが、①本業以外に多大な時間を取られる、②結果としてコストが高くつく、の2点に留意してください。①については前述しておりますが、特に法人税の申告は非常に複雑で専門知識を持たない方がご自身で申告書を作成するのは極めて難易度が高いです。申告書作成の勉強をされるのも良いと思いますが、その時間に本業の事業を拡大された方が結果として利益が増えると思いますので、この点はご自身でデメリットとしてご認識いただければと思います。また、②については①とも関係しますが、ご自身で行う場合はそれなりに申告書対応に時間を取られるため、その間に本来事業を拡大していたら得られたであろう利益を失うことになります。この失った利益が税理士へ支払う報酬よりも高いのであれば、明らかに税理士へ報酬を支払った方がメリットがあると思います。

次に対象となる税金の種類ですが、個人の方は所得税・法人の方は法人税、共通として住民税・事業税となります。これに加えて、法定調書や償却資産税(固定資産税)、消費税、事業所税など全員ではありませんが対応が必要なケースがあります。また、申告書のみでなくその基礎となる仕訳帳や総勘定元帳、補助簿などの帳簿書類も作成・保存が必要となってきます。

このように帳簿の作成から各種申告書の作成・提出等、決算申告とは一言で言ってもかなりやることが多いため、ご自身で決算申告を行う場合にはこういったデメリットをしっかりと理解した上で臨まれると良いでしょう。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。