最適な税理士の選び方を徹底解説

税務

事業を経営する、あるいは個人として資産を形成していく上で、「税金」は避けて通れない重要なテーマです。会社員であれば年末調整で完結することがほとんどですが、独立開業した個人事業主や法人経営者、不動産収入がある方、あるいは相続に直面した方にとって、税務申告は複雑で、大きな負担となり得ます。

「確定申告のやり方がわからない」「これで計算が合っているか不安だ」「もっと効果的な節税方法はないのだろうか」「税務調査が来たらどうしよう」。このような悩みを抱えながらも、専門家である税理士に相談することなく、一人で問題を抱え込んでいる方も少なくありません。「税理士は費用が高そう」「どの税理士に頼めば良いかわからない」といったハードルが、その一歩をためらわせる原因かもしれません。

しかし、税理士は単に税金の計算や申告書作成を代行するだけの存在ではありません。あなたの事業や資産状況を深く理解し、未来を見据えた最適な戦略を共に考え、経営の安定と成長を力強くサポートしてくれる、かけがえのないパートナーとなり得るのです。

特に、年に一度の確定申告だけを依頼する「スポット契約」とは一線を画す、「顧問税理士」という存在は、経営者にとって「かかりつけ医」のような役割を果たします。日々の経営活動に寄り添い、継続的に関与するからこそ得られるメリットは計り知れません。

この記事では、顧問税理士との契約を一度でも考えたことのある全ての経営者や事業主の皆様が、そのメリットと契約のポイントを深く理解し、自信を持って最適なパートナーを見つけ出せるよう、網羅的かつ徹底的に解説していきます。税理士の探し方から、依頼できる業務内容、契約すべきケース、選び方のポイント、費用相場、そして契約に至るまでの具体的な流れまで、あなたのあらゆる疑問や不安にお答えします。

この記事を読み終える頃には、税理士との契約が、単なるコストではなく、あなたの未来を豊かにするための極めて価値の高い「投資」であることを、確信しているはずです。

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最適な税理士の選び方を徹底解説

  1. 税理士を探す方法
    1. インターネットでの検索
      1. 検索エンジンの戦略的活用
      2. 税理士事務所のウェブサイトの精査
    2. 知人・経営者仲間からの紹介
      1. 信頼性の高い情報源
      2. 紹介の注意点
    3. 税理士紹介サービス(プラットフォーム)の活用
      1. 効率的なマッチング
      2. メリットとデメリット
    4. 金融機関や商工会議所からの紹介
      1. 信用の裏付け
      2. 地域の情報網
  2. 税理士へ依頼できる業務
    1. 税務に関する独占業務
      1. 税務代理
      2. 税務書類の作成
      3. 税務相談
    2. 会計業務(記帳代行と自計化支援)
      1. 記帳代行
      2. 自計化支援
    3. 経営コンサルティング業務
      1. 月次決算と経営分析
      2. 資金繰り支援と融資対策
      3. 事業承継や相続
  3. 税理士をつけた方が良いケース
    1. 法人を設立した場合(あるいは設立する時)
    2. 売上が1000万円を超えた個人事業主
    3. 青色申告(65万円控除)を行いたい個人事業主
    4. 経理作業に追われ、本業に集中できていない人
    5. 税務調査が不安な人
  4. 税理士を選ぶ際のポイント
    1. 専門性と実績
      1. 自社の業種への専門性
      2. 課題解決の実績
    2. コミュニケーション能力と人間的な相性
      1. 説明の分かりやすさ
      2. レスポンスの速さと誠実さ
    3. 提案力と経営への関与度
    4. ITへの対応力(クラウド会計など)
    5. 料金体系の明確さと納得感
  5. 税理士の費用相場
    1. 費用の構成要素
    2. 個人事業主の費用相場
      1. スポット契約(確定申告のみ)
      2. 顧問契約
    3. 法人の費用相場
      1. 年商3,000万円未満
      2. 年商3,000万円~1億円
      3. 年商1億円以上
  6. 税理士のタイプ(付加価値型、専門特化型、低料金型)
    1. 付加価値型(コンサルティング型)
    2. 専門特化型
    3. 低料金型(事務作業型)
  7. 安易に税理士探しをしてはいけない理由
    1. 「安さ」だけで選ぶことの危険性
    2. 相性(コミュニケーション)のミスマッチが引き起こす問題
    3. 専門性のミスマッチが引き起こす損失
  8. 紹介だからといって必ずしも自分と相性が合わない場合もある
    1. 事業ステージの違い
    2. 業界・業種の違い
    3. 求めるサービスのレベルの違い
  9. 税理士を選ぶ際によくある質問の例と回答
    1. Q1. 事務所は近所であるべきですか?
    2. Q2. 税理士の年齢は重要ですか?
    3. Q3. 顧問契約の途中で変更できますか?
    4. Q4. 記帳代行は頼むべきですか?
  10. まとめ

税理士を探す方法

最適な税理士を見つけ出すための第一歩は、まずどのような探し方があるかを知ることです。やみくもに探しても、理想のパートナーに出会うことはできません。それぞれの方法のメリットとデメリットを理解し、組み合わせて活用することが成功の鍵となります。

インターネットでの検索

現代において最も一般的で、豊富な情報にアクセスできる方法がインターネット検索です。

検索エンジンの戦略的活用

GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、「税理士 〇〇(地域名)」と検索するだけでは、情報が膨大すぎます。「〇〇(業種名) 強い 税理士」や、「創業融資 税理士 〇〇(地域名)」、「相続 専門 税理士」といったように、自社の業種や、現在抱えている具体的な課題をキーワードに加えることで、候補を効果的に絞り込むことができます。

税理士事務所のウェブサイトの精査

検索結果から見つけた税理士事務所のウェブサイトは、単なる連絡先ではなく、その事務所の姿勢や専門性を判断するための重要な情報源です。代表税理士のプロフィールや経営理念、料金体系の明確さはもちろんのこと、特に注目すべきはブログやコラム、実績紹介のページです。自社の業界に関連する記事や、具体的な課題解決の事例が豊富に掲載されていれば、その分野に高い専門性を持っている可能性が高いと判断できます。

知人・経営者仲間からの紹介

既に税理士と契約している、信頼できる知人や、同業の経営者仲間から紹介してもらう方法です。

信頼性の高い情報源

この方法の最大のメリットは、実際にサービスを利用している人からの、リアルな評判を聞けることです。ウェブサイトだけでは決してわからない、税理士の人柄や、レスポンスの速さ、提案の質といった「生の情報」は、ミスマッチを防ぐ上で非常に価値があります。

紹介の注意点

ただし、後述するように、紹介だからといって手放しで信頼するのは危険です。その人にとっては最高の税理士でも、あなたの会社の事業ステージや業種、あなたが税理士に求める価値観と一致するとは限りません。紹介はあくまで有力な候補の一つとして捉え、必ず自分自身で面談し、判断することが重要です。

税理士紹介サービス(プラットフォーム)の活用

近年、事業者と税理士を無料でマッチングしてくれる、専門の紹介サービス(プラットフォーム)が増えています。

効率的なマッチング

これらのサービスは、多忙な経営者にとって非常に効率的です。専門のコーディネーターが、あなたの会社の状況や予算、税理士に求める条件などを詳細にヒアリングした上で、登録されている多くの税理士の中から、最適な候補者を複数選定してくれます。 面談の日程調整や、断りの連絡も代行してくれることが多いため、心理的な負担が少ないのも大きなメリットです。

メリットとデメリット

メリットは、無料で効率的に、自社のニーズに合った候補者と出会える点です。一方で、紹介される税理士は、そのサービスに登録している事務所に限られるというデメリットもあります。また、コーディネーターのスキルや経験によって、紹介の質が左右される可能性も考慮しておく必要があります。

金融機関や商工会議所からの紹介

自社が取引している金融機関や、所属している商工会議所、青色申告会といった公的・準公的な機関からの紹介も、信頼性の高い方法の一つです。

信用の裏付け

特に金融機関(銀行や信用金庫)は、融資先の経営が安定することを望んでいます。そのため、彼らが推薦する税理士は、金融機関との交渉に慣れており、資金調達に強い、信頼できる事務所である可能性が高いです。創業融資などを検討している場合には、特に有効な手段と言えるでしょう。

地域の情報網

商工会議所や青色申告会は、その地域の中小企業や個人事業主の事情に精通しています。地域の特性を理解し、親身になって相談に乗ってくれる、地元に根差した税理士を紹介してもらえることが期待できます。

税理士へ依頼できる業務

多くの経営者が、税理士の業務を「年に一度の確定申告」だけだと誤解していることがありますが、実際にはその業務範囲は非常に多岐にわたります。税理士に何を依頼できるのかを正しく理解することで、その価値を最大限に引き出すことができます。

税務に関する独占業務

まず、税理士法という法律によって、税理士だけに許可されている、中核となる三つの「独占業務」があります。

税務代理

税務代理とは、あなたの代理人として、税務署などに対する申告、申請、届出といった手続きを行うことです。これには、税務調査の際に、あなたに代わって、あるいはあなたと共に立ち会い、調査官に対して主張や説明を行う、極めて重要な役割も含まれます。税務調査の精神的なプレッシャーは計り知れませんが、専門家が「盾」となってくれることで、その負担は劇的に軽減されます。

税務書類の作成

税務書類の作成とは、確定申告書や法人税申告書、相続税申告書、消費税申告書、各種届出書など、税務署に提出する専門的な書類を、あなたに代わって作成することです。単に数字を埋めるだけでなく、最新の税法に基づき、あなたにとって最も有利な選択(例えば、特例の適用など)を判断しながら、正確な申告書を完成させます。

税務相談

税務相談とは、税金の計算方法や節税対策、取引の税務上の取り扱いなど、税に関するあらゆる具体的な相談に応じることです。「この支出は経費になりますか?」「新しく始めるこの事業で、税務上注意すべき点は?」「どうすれば合法的に税金を抑えられますか?」といった日々の疑問に、専門家として的確なアドバイスを提供します。

会計業務(記帳代行と自計化支援)

税務申告の基礎となるのが、日々の会計処理です。税理士は、この会計業務においても、あなたのニーズに合わせたサポートを提供します。

記帳代行

記帳代行とは、あなたが集めた領収書や請求書、通帳のコピーなどを基に、税理士が会計ソフトへの入力(記帳)を全て代行するサービスです。「経理作業に時間を取られたくない」「数字が苦手」という経営者にとっては、本業に集中できるという大きなメリットがあります。

自計化支援

自計化支援とは、あなた自身(あるいは自社の経理担当者)が、会計ソフト(特に、freeeやマネーフォワード クラウドといったクラウド会計ソフト)を使いこなして、日々の記帳を行えるように指導・サポートすることです。税理士は、あなたが入力したデータが正しいかを毎月チェックし、修正します。自社でリアルタイムに数字を把握できる体制を築きたいと考える、成長意欲の高い企業に適しています。

経営コンサルティング業務

優れた税理士は、過去の数字を処理するだけの「作業屋」ではありません。その数字を分析し、未来の経営に活かすための「コンサルタント」としての役割を果たします。

月次決算と経営分析

顧問契約の核心とも言えるサービスが、月次決算です。税理士は、毎月の業績を速やかに締め、試算表を作成します。そして、その数字を基に、「前年同月と比べて売上が伸びているが、利益率が下がっているのは、この経費が原因です」といった、具体的な経営分析レポートを提供します。

資金繰り支援と融資対策

「利益は出ているはずなのに、なぜかお金が足りない」というのは、中小企業によくある悩みです。税理士は、資金繰り表を作成し、将来のキャッシュの動きを予測することで、資金ショートのリスクを未然に防ぎます。また、金融機関からの融資が必要になった際には、信頼性の高い事業計画書の作成を支援し、融資の成功確率を高めます。

事業承継や相続

法人の経営者であれば、いつかは直面する事業承継の問題。個人の資産家であれば、相続税の問題。これらは、税務の中でも特に高度な専門知識を要する分野です。税理士は、自社株の評価や、相続税のシミュレーション、生前贈与の計画立案など、長期的な視点に立った資産承継のコンサルティングも行います。

税理士をつけた方が良いケース

税理士への依頼には費用がかかるため、全ての人が最初から税理士をつけるべきとは限りません。しかし、以下のようなケースに該当する場合、税理士に依頼することで、支払う費用を上回る大きなメリットを得られる可能性が非常に高いと言えます。

法人を設立した場合(あるいは設立する時)

これは、最も明確に税理士が必要となるケースです。法人の税務申告(法人税、法人住民税、法人事業税、消費税など)は、個人の確定申告とは比較にならないほど複雑であり、専門家でなければ、まず自力で正確な申告書を作成することは不可能です。 また、設立時に税理士に相談することで、資本金の設定や、決算月の決定、青色申告の承認申請といった、設立後の税務に大きな影響を与える重要な選択を、最初から最適化することができます。

売上が1000万円を超えた個人事業主

個人事業主であっても、基準期間(通常は2年前)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の「課税事業者」となり、消費税の申告・納税義務が発生します。 消費税の計算は、インボイス制度の導入も相まって、非常に複雑化しています。簡易課税制度と本則課税のどちらが有利か、インボイスへの対応はどうすべきかなど、専門的な判断が求められるため、この「1,000万円の壁」は、税理士への依頼を検討する大きな節目となります。

青色申告(65万円控除)を行いたい個人事業主

個人事業主が受けられる最大の節税メリットの一つが、「青色申告特別控除」です。このうち、最高額である65万円(または55万円)の控除を受けるためには、「複式簿記」による記帳が必須条件となります。 複式簿記は、簿記の知識がない方にとっては非常にハードルが高く、挫折する原因にもなります。税理士に依頼すれば、この要件を確実にクリアし、控除による節税メリット(所得税・住民税合わせて数十万円)を確実に享受できます。税理士費用を支払っても、お釣りが来るケースが多いです。

経理作業に追われ、本業に集中できていない人

「領収書の整理や会計ソフトへの入力に、毎月何時間も費やしている」。その時間は、本来、売上を上げるための営業活動や、商品・サービスの開発に使うべき、最も貴重な時間です。 あなたの時給がいくらであるかを考えた時、その時間で生み出せるはずの利益と、税理士に記帳代行を依頼する費用を比較してみてください。多くの場合、専門家に任せて、自らは本業に集中する方が、はるかに高い「機会費用」を生み出すことができます。

税務調査が不安な人

「申告内容が間違っていないか、いつも不安だ」「いつか税務調査が来たらどうしよう」という精神的なストレスは、経営パフォーマンスを低下させます。税理士に依頼し、日頃から適正な申告を行っているという事実は、この不安を解消する最大の処方箋です。万が一の際にも、専門家が代理人として対応してくれるという安心感は、何物にも代えがたい価値があります。

税理士を選ぶ際のポイント

最適な税理士を見つけることは、事業の成功を左右する重要な経営判断です。料金の安さだけで選ぶと、後で大きな後悔をすることになりかねません。ここでは、後悔しない税理士選びのために、必ずチェックすべきポイントを解説します。

専門性と実績

税理士を選ぶ上で、最も重要な基準は、あなたの会社の課題を解決できるだけの、専門性と実績を持っているかという点です。

自社の業種への専門性

あなたの会社が、建設業、飲食業、IT業、医療機関など、特殊な会計処理や税務論点を持つ業界であれば、その業界に関する顧問実績が豊富かどうかは、絶対に確認すべきです。面談の際には、「同業のクライアントはいますか」「私たちの業界で注意すべき税務ポイントは何ですか」といった具体的な質問を投げかけて、その専門性を確かめましょう。

課題解決の実績

あなたが、資金調達や、事業承継、相続といった特定の課題を抱えているのであれば、その分野に関する具体的な解決実績があるかを確認します。「過去にどのような資金調達を成功させましたか」「どのようなスキームで事業承継を支援しましたか」といった質問を通じて、その税理士の実践的な能力を評価します。

コミュニケーション能力と人間的な相性

税理士とは、会社の最もデリケートな情報を共有し、長期にわたって付き合っていくパートナーです。そのため、専門知識と同じくらい、コミュニケーションの取りやすさや、人間的な相性が重要になります。

説明の分かりやすさ

どんなに高度な知識を持っていても、それを経営者が理解できる言葉で伝えられなければ意味がありません。専門用語を並べるのではなく、あなたの目線に立って、平易な言葉で丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。あなたが納得するまで、根気強く対話に応じてくれる姿勢は、信頼できるパートナーの証です。

レスポンスの速さと誠実さ

質問や相談に対する返信の速さは、その税理士の仕事に対する姿勢を測る、重要な指標です。ビジネスのスピードが求められる場面で、迅速に対応してくれるかどうかは非常に重要です。また、面談の際には、あなたの話をどれだけ真剣に聞いてくれるかという「傾聴力」も観察しましょう。誠実な人柄は、長期的な信頼関係の土台となります。

提案力と経営への関与度

過去の数字を正確に処理するのは、税理士として当然の業務です。真に価値のある税理士は、そこから一歩踏み込み、その数字を基に、会社の未来をより良くするための、具体的な提案をしてくれます。

面談の際には、「私たちの決算書を見て、どのような経営課題があると感じますか」「今後、どのような手を打つべきだと思いますか」といった問いを投げかけ、その回答から、税理士の提案力や経営への関与意欲を探りましょう。節税対策はもちろん、資金繰り改善策や、新たな補助金の活用提案など、プロアクティブな姿勢が見られるかどうかが、重要な見極めポイントです。

ITへの対応力(クラウド会計など)

現代の経営において、ITの活用は不可欠です。「freee」や「マネーフォワード クラウド」といったクラウド会計ソフトに精通しているか、Zoomなどでのオンライン面談に柔軟に対応してくれるか、チャットツールでのスピーディーなやり取りが可能か。こうしたITへの対応力は、業務の効率性と経営状況のリアルタイムな把握に直結します。

料金体系の明確さと納得感

費用に関する透明性は、信頼関係の基本です。何にいくらかかるのかが不明瞭なまま契約するのは、絶対に避けましょう。見積書を依頼し、その内訳が具体的で分かりやすいかを確認します。月額顧問料に含まれるサービス範囲はどこまでで、どのような場合に別途料金が発生するのかを、契約前に明確にしておくことが、後のトラブルを防ぎます。料金の絶対額だけでなく、提供されるサービスの価値と見合っているかという、費用対効果の視点で判断することが大切です。

税理士の費用相場

税理士への依頼を検討する上で、最も気になるのが費用でしょう。税理士の報酬は、現在では自由化されており、事務所の方針や、提供するサービス内容、クライアントの事業規模によって様々です。ここでは、一般的な費用相場を、契約形態や事業者の種類別に紹介します。

費用の構成要素

まず、税理士に支払う費用は、主に以下の要素で構成されていることを理解しましょう。

  • 月額顧問料: 毎月の会計データのレビューや、経営相談、税務相談の対価として支払う固定費用です。
  • 記帳代行料: 領収書や請求書の整理、会計ソフトへの入力を税理士に丸ごと任せる場合の費用です。自社で記帳(自計化)する場合は、発生しません。
  • 決算申告料: 年に一度の決算書作成と、法人税や所得税、消費税などの申告書作成・提出に対する費用です。一般的に、月額顧問料の4ヶ月分から6ヶ月分が相場です。
  • オプション料金: 年末調整や給与計算、税務調査立会い、融資支援など、基本の顧問契約に含まれない業務を依頼した場合に、別途発生します。

個人事業主の費用相場

スポット契約(確定申告のみ)

一年間の記帳は自分で行い、年に一度の確定申告書の作成と提出だけを依頼する場合の相場です。

  • 白色申告: 5万円~10万円程度
  • 青色申告(10万円控除): 7万円~15万円程度
  • 青色申告(65万円控除): 10万円~20万円程度 記帳代行も併せて依頼する場合は、上記に5万円~15万円程度が加算されることが多いです(仕訳数によります)。

顧問契約

継続的にサポートを受ける場合の相場です。

  • 記帳を自分で行う場合: 月額顧問料は、2万円~5万円程度
  • 記帳代行も依頼する場合: 月額顧問料は、3万円~6万円程度。取引量によって大きく変動します。 上記に加えて、決算申告料として、月額顧問料の4~6ヶ月分程度が、年に一度、別途必要となるのが一般的です。

法人の費用相場

法人の場合は、売上規模によって料金が変動するのが一般的です。

年商3,000万円未満

  • 記帳代行なし: 月額顧問料 2万円~4万円 + 決算料 10万円~20万円
    • 年間合計:約35万円~70万円
  • 記帳代行あり: 月額顧問料 3万円~5万円 + 決算料 15万円~25万円
    • 年間合計:約50万円~85万円

年商3,000万円~1億円

  • 記帳代行なし: 月額顧問料 3万円~6万円 + 決算料 15万円~30万円
    • 年間合計:約50万円~100万円
  • 記帳代行あり: 月額顧問料 4万円~8万円 + 決算料 20万円~40万円
    • 年間合計:約70万円~130万円

年商1億円以上

年商が1億円を超えると、取引の複雑性や、求められるコンサルティングのレベルも高まるため、月額顧問料は5万円以上、決算料は25万円以上となるのが一般的で、個別見積もりのケースが多くなります。

税理士のタイプ(付加価値型、専門特化型、低料金型)

最適な税理士を選ぶためには、税理士事務所にも様々なタイプがあることを理解しておくのが有効です。自社がどのタイプのサポートを求めているのかを明確にすることで、ミスマッチを防ぐことができます。

付加価値型(コンサルティング型)

このタイプの税理士は、単なる税務申告に留まらず、経営者の良きパートナーとして、経営コンサルティングに重きを置いています。月次決算を基にした経営分析、資金繰り改善の提案、融資戦略の立案、事業計画の策定支援など、未来志向のアドバイスを積極的に行います。 事業を本気で成長させたい、経営の壁打ち相手が欲しいと考える、成長意欲の高い経営者に適しています。その分、費用は他のタイプに比べて高めになる傾向があります。

専門特化型

特定の業種(例:建設業、医療、IT、不動産など)や、特定の業務分野(例:相続・事業承継、国際税務、M&Aなど)に、極めて高い専門性を持つタイプです。 一般的な税理士では対応が難しい、複雑な課題を抱えている場合に、非常に頼りになります。その専門分野においては、他の追随を許さない深い知識と経験を持っていますが、専門外の一般的な相談には、逆に対応が手薄になる可能性もあります。

低料金型(事務作業型)

近年、クラウド会計の普及と共に増えてきたタイプで、記帳代行や申告書作成といった事務作業を、ITを活用して効率化し、業界最安値水準の低料金で提供することを強みとしています。 面談はオンラインのみ、相談はチャットのみといったように、コミュニケーションを合理化していることが多いです。「とにかくコストを最小限に抑えたい」「経営アドバイスは不要で、申告だけを正確に行ってくれれば良い」と考える、事業規模がまだ小さい事業者や、シンプルなビジネスモデルの会社に適しています。

安易に税理士探しをしてはいけない理由

税理士選びは、あなたの事業の未来を左右する、非常に重要な経営判断です。安易な理由で選んでしまうと、取り返しのつかない損失に繋がる可能性があります。

「安さ」だけで選ぶことの危険性

「顧問料は、安ければ安いほど良い」。そう考える経営者は多いですが、これは最も陥りやすい罠です。税理士の報酬は、提供されるサービスの質と、投入される専門家の時間に比例します。極端に料金が安い場合、以下のようなリスクが考えられます。

  • 担当者が経験の浅いスタッフで、質の高いアドバイスが期待できない。
  • 一人の担当者が、数百件ものクライアントを抱えており、あなたの会社に割ける時間がほとんどない。
  • 業務が申告書作成のみに限定され、節税提案や経営相談には一切応じてくれない。
  • レスポンスが非常に遅い。

結果として、活用できるはずの税制優遇を見逃し、顧問料の差額を遥かに上回る税金を支払うことになったり、経営課題の発見が遅れて手遅れになったりする可能性があります。

相性(コミュニケーション)のミスマッチが引き起こす問題

税理士は、あなたの会社の最もデリケートな情報(お金の流れ)を共有する相手です。その相手と、人間的な相性が合わなければ、どうなるでしょうか。 「こんな初歩的なことを聞いたら、馬鹿にされるかもしれない」「高圧的で話しにくい」。そう感じてしまうと、あなたは次第に税理士への相談をためらうようになります。 経営者が抱える小さな疑問や不安の中にこそ、重要な経営課題の種が隠れているものです。コミュニケーションが取りにくいというだけで、これらの種が見過ごされ、問題が大きくなってから発覚することになります。

専門性のミスマッチが引き起こす損失

あなたの会社が、特殊な会計処理が必要なIT企業であるにもかかわらず、地元の商店街の税務しか経験のない税理士に依頼してしまったら。あるいは、相続が間近に迫っているのに、法人税務専門の税理士に相談してしまったら。 その結果は悲惨です。IT企業であれば、研究開発税制といった巨額の節税チャンスを逃すかもしれません。相続であれば、不動産評価のミスや、特例の適用漏れによって、数千万円単位で納税額が変わることもあります。自社の業種や課題に合った専門性を持たない税理士を選ぶことは、最大の経営リスクの一つなのです。

紹介だからといって必ずしも自分と相性が合わない場合もある

「知人の経営者に紹介してもらったから、安心だ」。これは、税理士選びにおける、もう一つの大きな落とし穴です。紹介は、税理士探しの有力なきっかけの一つですが、それが「最適」であるとは限りません。

事業ステージの違い

あなたを紹介してくれた経営者の会社が、既に安定期に入っている成熟企業だとしたら、その税理士は、事業承継や資産管理には詳しいかもしれませんが、あなたの会社のような、創業期の資金調達や、急成長を目指すビジネスモデルには、全く興味がないかもしれません。 逆に、スタートアップ支援に特化した税理士は、あなたの友人の安定企業には、物足りないかもしれません。事業のステージが違えば、税理士に求める役割も全く異なるのです。

業界・業種の違い

あなたの友人が、飲食店を経営しているとします。その税理士は、飲食店の原価管理や、軽減税率の扱いには、非常に詳しいでしょう。しかし、あなたの会社が、海外と取引のあるソフトウェア開発会社だとしたら、その税理士は、ソフトウェアの資産計上や、国際税務といった、あなたが必要とする知識を、持ち合わせていない可能性が高いです。

求めるサービスのレベルの違い

あなたの友人は、「料金が安く、余計なことを言ってこない」ことを、その税理士の良い点だと評価しているかもしれません。しかし、あなたが税理士に求めているのは、積極的な経営改善の提案や、未来志向の議論だとしたら、その税理士は、あなたにとって最悪のパートナーになり得ます。 税理士に何を求めるかという価値観は、人それぞれです。紹介は、あくまで選択肢の一つとして捉え、必ず自分自身の目で、面談を通じて、自社との相性を判断することが不可欠です。

税理士を選ぶ際によくある質問の例と回答

ここでは、税理士との契約を検討する際に、多くの経営者や事業主が抱く、よくある質問とその回答をまとめました。

Q1. 事務所は近所であるべきですか?

A1. かつては、すぐに訪問してもらえ、地域の情報にも詳しい、近所の税理士が良いとされてきました。しかし、クラウド会計やZoomなどのITツールが普及した現代においては、物理的な距離の重要性は、格段に低下しています。 むしろ、近所であることよりも、あなたの業種や課題に、本当に精通している専門家を選ぶ方が、はるかに重要です。日本全国どこにいても、オンラインでトップレベルのアドバイスが受けられる時代です。 ただし、経営者が対面でのコミュニケーションを強く重視する場合や、金融機関との対面交渉に頻繁に同席してほしい、といったニーズがある場合は、近さも重要な要素の一つになります。

Q2. 税理士の年齢は重要ですか?

A2. 年齢そのものが、直接的に税理士の優劣を決めるわけではありませんが、傾向として考慮すべき点はあります。 ベテラン税理士は、豊富な実務経験と、税務調査や金融機関との交渉における、長年の勘所や人脈を持っていることが強みです。事業承継など、複雑な案件にも強い場合があります。 若手税理士は、ITリテラシーが高く、クラウド会計やチャットツールへの対応がスムーズなことが多いです。また、起業家と年齢が近い場合、同じ目線でビジネスの成長に情熱を持って取り組んでくれる傾向があります。 理想は、ベテランの経験と、若手のIT対応力を、バランス良く併せ持った事務所(あるいは、所長はベテランだが、若手スタッフがITに強いなど)と言えるかもしれません。

Q3. 顧問契約の途中で変更できますか?

A3. はい、いつでも可能です。税理士との契約は、法的には準委任契約であり、いつでも解約の申し入れが可能です。ただし、契約書に「解約の際は、○ヶ月前に通知すること」といった、解約予告期間が定められているのが一般的ですので、契約書を確認する必要があります。 円満な引き継ぎのためには、決算申告が終わった直後など、業務の区切りが良いタイミングで変更するのが理想的ですが、サービスへの不満が深刻な場合は、時期を待つ必要はありません。

Q4. 記帳代行は頼むべきですか?

A4. これは、あなたの会社の状況と、何を重視するかによります。 記帳代行を頼むメリットは、何よりも経営者が本業に集中できることです。経理作業から解放され、その時間を売上向上のために使うことができます。 記帳代行を頼まない(自計化する)メリットは、コストを抑えられることと、自社でリアルタイムに経営状況を把握できることです。クラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識が少なくても、自計化は十分に可能です。 最初は記帳代行を依頼し、事業が軌道に乗ってから自計化に移行する、あるいは、経理担当者を採用するまでの一時的な措置として活用する、といった柔軟な考え方がお勧めです。

まとめ

税理士を選ぶ。それは、単に事務作業を外注する相手を選ぶことではありません。あなたの事業の根幹である「お金」の流れを預け、経営の悩みを共有し、時には会社の未来を左右する重大な決断を共に考える、「パートナー」を選ぶ行為です。

この記事では、最適な税理士を見つけ出すために、税理士の役割から、探し方、選び方の具体的なポイント、そして費用相場まで、あらゆる角度から徹底的に解説してきました。

最適な税理士とは、あなたの会社の業種や成長ステージを深く理解し、あなたのビジョンに共感してくれる存在です。そして、過去の数字を正確に処理するだけでなく、その数字を基に、未来の成長戦略や、具体的な節税策、資金繰り改善策を、積極的に提案してくれる存在です。

その最高のパートナーを見つけ出す鍵は、料金の安さだけで判断するのではなく、自社の課題に直結する「専門性」、コミュニケーションの快適さをもたらす「相性」、そして未来志向の「提案力」を、総合的に見極めることにあります。

税理士に支払う顧問料は、コストではありません。あなたの貴重な時間を本業に取り戻し、会社の信用力を高め、事業の継続と発展を確実なものにするための、極めて価値の高い「投資」です。

この記事が、あなたの税理士選びという重要な航海の確かな羅針盤となり、あなたの会社が、輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば幸いです。まずは、勇気を出して、気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。