個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するメリット

税務

個人事業主として独立し、自身のスキルやアイデアを武器に日々ビジネスの最前線で戦っている皆様にとって、一年の終わりとともに足音を立ててやってくる「確定申告」は、避けては通れない大きな壁であり、時には重い足枷のように感じられるものではないでしょうか。本業が多忙を極め、売上を伸ばすための施策や顧客対応に追われている中で、慣れない複式簿記のルールに従って帳簿をつけたり、複雑怪奇な税務書類を作成したりすることに貴重な時間を割くことは、精神的にも肉体的にも、そして経営資源の配分という観点からも非常に大きな負担となります。

「自分は数字が苦手だ」「毎年この時期になると憂鬱になる」「もっと本業に集中したい」といった悩みを抱え、税務のプロフェッショナルである税理士への依頼を真剣に検討される方も年々増加しています。しかし、いざ依頼しようと思っても、「費用対効果はどうなのか」「どの程度の売上規模から頼むべきなのか」「自分に合った税理士はどうやって探せばいいのか」といった疑問や不安が尽きず、結局自己流で乗り切ってしまっているケースも少なくありません。

本記事では、個人事業主が確定申告を税理士へ依頼することによって得られる本質的なメリットを深掘りしつつ、税理士が提供する具体的なサービス内容の全貌、費用の相場感、依頼するまでの具体的なプロセス、そして失敗しない税理士選びの極意までを、実務的な視点を交えて網羅的かつ徹底的に解説します。単なる事務代行としてではなく、事業を成長させるための強力なパートナーとして税理士を活用するための指針として、ぜひお役立てください。

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個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するメリット

  1. 税理士が個人事業主向けに提供するサービス
    1. 記帳代行および会計ソフトへの入力支援
    2. 決算書の作成と確定申告の代理
    3. 税務相談と節税対策の提案
    4. 税務調査への立ち会いと対応
    5. 資金調達や経営コンサルティング
  2. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するメリット
    1. 本業に集中できる時間の創出と精神的負担の軽減
    2. 正確な申告による追徴課税リスクの回避
    3. 専門知識に基づいた最大限の節税
    4. 社会的信用の向上と融資の受けやすさ
  3. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するデメリット
    1. 税理士報酬というコストの発生
    2. 税理士との相性問題
    3. 経理業務のブラックボックス化と数字感覚の欠如
  4. 個人事業主が税理士を探す方法
    1. 知人や同業他社からの紹介
    2. 税理士紹介サービスの利用
    3. インターネット検索とホームページの確認
    4. 税理士会や商工会議所の相談会
  5. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際のポイント
    1. 自社の業種や規模への理解があるか
    2. コミュニケーション能力とITリテラシー
    3. 料金体系の明瞭さ
    4. 節税や経営支援へのスタンス
  6. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するまでの流れ
    1. お問い合わせと面談予約
    2. 面談とヒアリング
    3. 見積もりの提示と契約
    4. 資料の引き渡しと業務開始
  7. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際の契約形態
    1. 顧問契約(毎月または定期的なサポート)
    2. スポット契約(年一回の確定申告のみ)
  8. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する場合の費用相場
    1. 顧問契約の相場
    2. スポット契約(確定申告のみ)の相場
    3. その他の費用
  9. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際のスケジュール
    1. 顧問契約の場合
    2. スポット契約(確定申告のみ)の場合
  10. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼した場合税理士報酬は経費計上できるか?
    1. 勘定科目は「支払手数料」や「顧問料」
    2. 消費税の取り扱い
    3. 源泉徴収の必要性
  11. 個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際によくある質問の例と回答
    1. Q. 売上がいくらくらいになったら税理士に頼むべきですか?
    2. Q. 領収書がぐちゃぐちゃなのですが、そのまま渡しても良いですか?
    3. Q. 遠方の税理士に依頼しても大丈夫ですか?
    4. Q. 税理士を変更(顧問変更)しても良いのでしょうか?
  12. まとめ

税理士が個人事業主向けに提供するサービス

「税理士=確定申告書を作ってくれる人」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実際に税理士が提供するサービスはそれだけにとどまりません。個人事業主の経営を足元から支え、リスクを排除し、未来への成長を後押しするための多角的なサービスを展開しています。ここではその詳細を見ていきましょう。

記帳代行および会計ソフトへの入力支援

日々の売上や経費のレシート、請求書、領収書、通帳の記帳などを整理し、会計ソフトへ入力して「総勘定元帳」や「仕訳帳」といった帳簿を作成する作業は、多くの事業主にとって最も時間と労力を要する業務です。税理士は、この記帳業務を丸ごと代行するサービス(記帳代行)を提供しています。事業主は領収書や通帳のコピーを封筒に入れて渡すだけで、複式簿記の原則に基づいた正確な会計帳簿を作成してもらうことが可能です。

一方で、近年急速に普及している「freee」や「マネーフォワード」といったクラウド会計ソフトを導入し、事業主自身がある程度の入力を行う「自計化(じけいか)」を支援するケースも増えています。この場合、税理士は入力代行をするのではなく、事業主が入力したデータの監査(チェック)を行います。勘定科目の誤りを修正したり、消費税の区分が正しいかを確認したり、あるいは銀行口座連携機能などを使ってより効率的に入力する方法を指導したりします。自計化が進めば、事業主は税理士からの月次報告を待たずに、リアルタイムで自社の経営数値(売上や利益)を把握できるようになるため、迅速な経営判断が可能になります。

決算書の作成と確定申告の代理

一年の取引をすべて集計し、「貸借対照表(財産の状態を表す表)」や「損益計算書(経営成績を表す表)」といった決算書を作成することは、事業の一年間の通信簿を作ることと同義です。ここには減価償却費の計算や棚卸資産の評価など、専門的な知識が必要な処理が含まれます。税理士は作成された帳簿に基づき、会計基準に則った正確無比な決算書を作成します。

そして、その決算書をもとに所得税額を計算し、確定申告書を作成して税務署への提出を代理します。これは「税務代理」と呼ばれる税理士の独占業務であり、専門知識を持たない者が報酬を得て行うことは法律で固く禁止されています。プロフェッショナルによる申告は、計算ミスや記載漏れを防ぐだけでなく、税務署からの信頼性を高め、適正な納税を実現するための最も確実な手段です。また、消費税の申告が必要な事業者に対しては、複雑な消費税申告書の作成も行います。

税務相談と節税対策の提案

事業を行っていく上で、税金に関する疑問は尽きません。「この出費は経費として認められるのか」「自宅兼事務所の家賃や光熱費はどれくらいの割合まで経費にできるのか」「家族に給与を支払って節税したいが要件は何か」「どのような設備投資を行えば税制優遇が受けられるのか」といった個別の具体的な事例に基づいた税務相談に応じることができるのは、税理士だけです。

また、青色申告特別控除(最大65万円)の確実な適用や、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)への加入による所得控除の活用、少額減価償却資産の特例を使った即時償却など、法律で認められた範囲内での最大限の節税対策を提案します。重要なのはタイミングです。決算直前になって慌てて対策しようとしても手遅れなことが多いため、期中の段階から利益予測を行い、事前に対策を講じることができるのは、顧問契約を結んだ税理士ならではの価値あるサービスと言えるでしょう。

税務調査への立ち会いと対応

事業を行っている以上、税務署による税務調査が入る可能性はゼロではありません。ある日突然税務署から電話がかかってきて、「税務調査を行いたい」と告げられた時の経営者の不安は計り知れません。そのような緊急事態において、税理士がいれば調査に立ち会ってもらうことができます。

税理士は「税務代理人」として、調査の現場に同席し、事業主に代わって調査官の質問に答えたり、指摘事項に対して税法の根拠を持って反論したりします。調査官は税務のプロですが、税理士もまたプロです。専門知識を持つ税理士が間に入ることで、調査官との対等な交渉が可能となり、事実誤認による不当な課税や過度な修正要求を防ぐことができます。何より、「味方が横にいてくれる」という精神的な安心感は、経営者にとって何物にも代えがたい救いとなります。

資金調達や経営コンサルティング

事業を拡大するため、あるいは運転資金を確保するために銀行や日本政策金融公庫から融資を受けたい場合、信頼性の高い試算表や事業計画書が必要となります。税理士は、金融機関が審査において重視するポイント(返済能力の証明や資金使途の明確化など)を熟知しているため、融資審査に通りやすい資料作成のサポートを行います。

また、税金計算のためだけでなく、経営改善のためのアドバイスを行う税理士も増えています。毎月の数字を見ながら「売上が伸び悩んでいる原因は何か」「原価率が高騰していないか」「固定費のどこを削減すべきか」「資金繰りは安全か」といった経営分析を行い、客観的な視点からアドバイスを提供します。税務の枠を超えて、経営者の良き相談相手、パートナーとしての役割を担う税理士も少なくありません。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するメリット

税理士へ依頼することは、単なる「面倒な事務作業のアウトソーシング」ではありません。それは事業のリスクを管理し、成長を加速させるための投資でもあります。ここでは具体的なメリットをさらに深掘りします。

本業に集中できる時間の創出と精神的負担の軽減

個人事業主にとって最も貴重かつ有限な資源は「時間」です。慣れない経理作業や税法の勉強に年間何十時間、あるいは百時間以上も費やすのであれば、その時間を営業活動や新商品の開発、既存顧客へのフォロー、スキルアップといった「将来の売上を生み出す活動」に充てるべきです。税理士に依頼することで、領収書の山と格闘する時間や、会計ソフトのエラーに悩まされる時間から解放され、本業に全力を注ぐ環境を整えることができます。

また、「自分の計算が間違っていないか」「申告漏れがないか」「税務署から指摘を受けないか」といった不安を抱えながら作業することは、目に見えない大きな精神的ストレスとなります。このストレスは、知らず知らずのうちに本業のパフォーマンスを低下させます。税務のプロに任せることで得られる絶対的な安心感は、メンタルヘルスを保ち、クリエイティブな仕事をする上でも非常に大きなメリットと言えます。

正確な申告による追徴課税リスクの回避

日本の税制は世界的に見ても非常に複雑であり、さらに毎年のように税制改正が行われます。近年ではインボイス制度の導入や電子帳簿保存法の改正など、実務に直結する大きな変更が相次いでいます。専門知識のないまま自己流で申告を行うと、知らず知らずのうちに誤った処理をしてしまったり、必要な届出を忘れてしまったりするリスクがあります。

もし税務調査で申告漏れや誤りを指摘されれば、本来納めるべき税金(本税)に加えて、過少申告加算税や延滞税、最悪の場合は重加算税といったペナルティを支払わなければなりません。さらに、「税務処理がずさんな事業者」というレッテルを貼られれば、その後の税務署からの目も厳しくなります。税理士に依頼することで、最新の税法に基づいた正確かつ適正な申告が行われ、こうしたリスクを未然に防ぎ、コンプライアンス(法令遵守)を維持することができます。

専門知識に基づいた最大限の節税

「税金を払いたくない」と考えるあまり、事業に関係のない個人的な支出まで経費に計上して脱税行為に手を染めるのは論外ですが、法律で認められた正当な権利としての「節税」は積極的に行うべきです。しかし、どのような制度が使えるのか、その適用要件は何なのか、メリットとデメリットはどうなっているのかをすべて把握するのは、専門家でない限り困難です。

税理士は、依頼者の事業状況や利益水準に合わせて最適な節税策を提案してくれます。例えば、自宅兼事務所の家事按分比率を実態に合わせて適正に見直したり、将来の退職金代わりになる共済への加入を勧めたり、あるいは法人化(法人成り)のタイミングをシミュレーションして税負担を比較したりすることで、手元に残るキャッシュを最大化することができます。税理士報酬を支払ったとしても、それ以上の節税効果が得られるケースも珍しくありません。

社会的信用の向上と融資の受けやすさ

銀行や信用金庫などの金融機関は、融資の審査において決算書(確定申告書)の信頼性を非常に重視します。事業主が自分で作成した申告書(特に手書きや簡易的なもの)よりも、税理士の署名捺印がある申告書の方が、第三者の専門家によるチェックが入っているため、客観的な信頼性が高いと判断されます。これは、税理士が粉飾決算や不適切な処理を未然に防ぐ防波堤の役割を果たしているとみなされるためです。

また、税理士法第33条の2に基づく「書面添付制度」を利用すれば、申告書の品質がさらに保証され、金融機関からの評価が高まるだけでなく、税務調査のリスクも低減する効果が期待できます。将来的に事業拡大のための設備投資や運転資金の借入を視野に入れている場合、早期から税理士と関わり、適正な会計処理を行っているという実績(トラックレコード)を作っておくことは、審査において非常に有利に働きます。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するデメリット

メリットが非常に多い一方で、当然ながらデメリットや注意点も存在します。これらを正しく理解し、天秤にかけた上で依頼を検討することが重要です。

税理士報酬というコストの発生

最も直接的かつ大きなデメリットは、税理士報酬という金銭的なコストが発生することです。売上がまだ少ない開業当初の事業主や、利益率の低い事業を行っている方にとっては、年間数十万円の出費は決して小さくありません。「自分でやればタダなのに」と感じることもあるでしょう。

しかし、前述した通り、これを単なる「消費(費用)」と捉えるか、「安心と時間を買う投資」と捉えるかで価値観は変わります。自分の時給単価を計算し、確定申告にかかる時間と税理士報酬を比較してみるのも一つの方法です。ご自身の事業規模と予算を照らし合わせ、費用対効果を冷静に判断する必要があります。

税理士との相性問題

税理士も人間ですので、依頼者との相性(マッチング)があります。「説明が専門用語ばかりで難解」「質問に対するレスポンスが遅くてイライラする」「上から目線で高圧的な態度をとる」「こちらの業界に対する理解が浅く話が通じない」といった税理士にあたってしまうと、相談すること自体がストレスになりかねません。

また、節税に対するスタンスも税理士によって千差万別です。「リスクを取ってでもギリギリまで攻めた節税をしたい」事業主と、「税務署に指摘されないよう保守的に安全策をとりたい」税理士では、方針が合わずに不満が募ることもあります。契約前に必ず面談を行い、人柄や考え方、コミュニケーションの取りやすさをしっかりと確認することが不可欠です。

経理業務のブラックボックス化と数字感覚の欠如

記帳から申告まですべてを税理士に丸投げしてしまうと、自分の会社の数字がどうなっているのか、今いくら儲かっているのか、何にどれくらいお金を使っているのかが把握できなくなる恐れがあります。「税理士に任せているから大丈夫だろう」と安心しきってしまい、数字への関心が薄れることは経営者として非常に危険です。

資金繰りが悪化しているのに気づかず、手遅れになって倒産してしまうこともあり得ます。記帳代行を依頼する場合でも、毎月の試算表には必ず目を通し、不明点は質問するなどして、自社の経営状況を常に把握しておく姿勢が必要です。税理士はあくまでサポート役であり、経営の責任は事業主自身にあることを忘れてはいけません。

個人事業主が税理士を探す方法

自分に合った税理士を見つけるためには、いくつかのルートがあります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、最適な方法で探しましょう。

知人や同業他社からの紹介

最も信頼性が高く、失敗が少ないのは、実際に税理士を利用している知人や同業者の紹介です。その税理士の人柄や仕事ぶり、レスポンスの早さ、実際の料金体系、得意な業界などのリアルな評判(口コミ)を聞くことができるため、ミスマッチが起こりにくい方法です。特に同業者からの紹介であれば、その業界特有の事情に精通している可能性が高く、話が早いというメリットもあります。

ただし、紹介者の手前、万が一相性が合わなかった場合に断りづらい、あるいは契約後に解約しづらいという側面もあるため注意が必要です。あくまで候補の一人として、まずは面談を行うスタンスが良いでしょう。

税理士紹介サービスの利用

近年急速に普及しているのが、希望条件を伝えると条件に合った税理士を無料で紹介してくれるマッチングサービスです。地域や業種、予算、依頼したい内容(顧問契約か確定申告のみか)、重視するポイント(若手が良い、女性が良いなど)を入力するだけで、複数の候補を提示してもらえます。

自分で一軒ずつ電話して探す手間が省け、複数の税理士を比較検討しやすいのが最大のメリットです。また、多くの紹介サービスでは、面談後の断りの連絡を代行してくれるため、気兼ねなく選ぶことができます。ただし、紹介サービスに登録している税理士は紹介会社に手数料を支払う仕組みになっていることが多いため、その分が顧問料に反映されていないか、あるいは紹介手数料を支払えるだけの資金力がある事務所に限られる点などは理解しておく必要があります。

インターネット検索とホームページの確認

「地域名+税理士」「業種+税理士」「確定申告+税理士」などのキーワードで検索し、自力で探す方法です。各税理士事務所のホームページを見ることで、その事務所の強みや雰囲気、代表者のプロフィールや理念、料金表などを直接確認できます。

「ITに強い」「美容室専門」「YouTuber・インフルエンサー対応」「創業支援に特化」など、自分のニーズに合ったキーワードで絞り込むことができます。また、ブログやSNS(Twitter、YouTubeなど)で積極的に情報発信している税理士であれば、事前に人柄や考え方、知識の深さを知ることも可能です。自分と価値観の合いそうな税理士をじっくり探したい場合におすすめです。

税理士会や商工会議所の相談会

各地の税理士会や商工会議所では、定期的に(特に確定申告時期に)無料の税務相談会を開催しています。そこで対応してくれた税理士が話しやすく、頼りになりそうであれば、そのまま個別に依頼することも可能です。実際に会って話してみることができるため、第一印象や相性を確認するには良い機会となります。ただし、相談会の担当者は当番制であることが多く、必ずしも自分の業種に詳しい税理士に当たるとは限らない点は留意しておきましょう。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際のポイント

数多くの税理士の中から、自社にとって最適なパートナーを選ぶためにチェックすべき具体的なポイントを解説します。

自社の業種や規模への理解があるか

税理士にも得意分野と不得意分野があります。医療業界に特化している事務所、飲食店の顧問先が多い事務所、建設業に強い事務所、IT関係やクリエイターに強い事務所など様々です。自社の業種に詳しい税理士であれば、業界特有の商慣習や専門用語、特有の経費の考え方を理解しており、話がスムーズに進みます。また、同業他社の事例と比較した経営アドバイスも期待できます。

また、個人事業主の対応に慣れているかどうかも重要です。大企業の顧問ばかりしている税理士の場合、小規模事業者の悩みに対して親身になってもらえない可能性や、オーバースペックな提案をされる可能性もあります。

コミュニケーション能力とITリテラシー

税理士とは、お金や将来のビジョン、時には家族のことなど、プライベートに関わる深い話をするため、話しやすさは非常に重要です。こちらの質問に対して専門用語を使わずに分かりやすく説明してくれるか、こちらの話を遮らずに聞いてくれるか、偉そうな態度ではないかを確認しましょう。

また、連絡手段としてLINEやチャットツール(SlackやChatwork)、Zoomなどのオンライン会議システムが使えるかどうかも、業務効率に大きく関わります。ITリテラシーが高く、クラウド会計ソフトやデータ共有ツールに対応している税理士であれば、資料の郵送の手間が省け、データのやり取りもスムーズで、リアルタイムな経営判断が可能になります。逆に、いまだにFAXや電話連絡が中心で、紙の資料しか受け付けない事務所だと、ストレスを感じるかもしれません。

料金体系の明瞭さ

後々のトラブルを防ぐために、料金体系が明確であることは必須です。ホームページに料金表が掲載されているか、見積書の内訳が詳細かを確認しましょう。「顧問料は安いが決算料が高い」「記帳代行は別料金」「訪問のたびに日当がかかる」「年末調整や税務調査対応はオプション」「相談料は別途請求」など、事務所によって料金設定は異なります。契約前に、トータルで年間いくらかかるのか、追加料金が発生する条件は何かをしっかりと確認し、納得した上で契約することが大切です。

節税や経営支援へのスタンス

単に事務処理を代行するだけでなく、積極的に提案をしてくれる税理士かどうかもポイントです。「言われたことだけやる」「聞かれたことだけに答える」受け身の税理士では、プラスアルファの価値は得られません。

面談時に「こういった節税は可能ですか?」「来期の利益はこのくらいになりそうですが対策はありますか?」と質問してみて、具体的な提案やアドバイスが返ってくるか、あるいは「それはリスクがあるのでやめた方がいい」と理由を添えて止めてくれるかを確認すると良いでしょう。経営者の立場に立って、一緒に事業を良くしていこうという姿勢があるかどうかが重要です。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼するまでの流れ

実際に依頼することを決めてから、業務が開始されるまでの一般的なプロセスを紹介します。

お問い合わせと面談予約

まずは電話やメール、ホームページの問い合わせフォームから連絡を取り、面談の予約を入れます。この際、現在の事業状況(業種、売上規模、従業員数など)や依頼したい内容(確定申告のみか、顧問契約か、記帳代行は必要かなど)を簡単に伝えておくと、面談がスムーズに進みます。

面談とヒアリング

税理士と直接(またはZoom等でオンラインで)面談を行います。事業の内容、売上規模、現在の経理状況(会計ソフトを使っているか、領収書は整理されているか)、抱えている悩みなどを詳しく話します。同時に、税理士の人柄や相性をチェックします。必要であれば、直近の確定申告書や総勘定元帳を持参すると、より具体的な話ができます。

見積もりの提示と契約

ヒアリング内容に基づき、税理士からサービス内容の提案と見積もりが提示されます。内容に不明点があれば遠慮なく質問し、納得いくまで確認します。即決する必要はありませんので、複数の税理士と比較検討しても構いません。条件に合意できれば、顧問契約書や業務委任契約書を取り交わします。

資料の引き渡しと業務開始

契約締結後、業務に必要な資料(領収書、請求書、通帳のコピー、過去の確定申告書、マイナンバーカードの写しなど)を税理士に渡します。クラウド会計ソフトを利用する場合は、アカウントの招待や権限付与を行います。会計ソフトの導入や初期設定が必要な場合は、そのサポートも受けます。ここから正式に税理士によるサポートがスタートします。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際の契約形態

税理士との契約には、大きく分けて「顧問契約」と「スポット契約」の二種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分の事業規模やニーズに合った形態を選びましょう。

顧問契約(毎月または定期的なサポート)

毎月定額の顧問料を支払い、年間を通じて継続的にサポートを受ける形態です。 特徴: 毎月(または数ヶ月に一度)の巡回監査や記帳チェック、随時の電話・メール相談、月次試算表の作成・報告などが含まれます。決算時には別途決算料を支払うのが一般的です。 向いている人: ・売上が安定しており、毎月の数字を把握して経営に活かしたい人 ・従業員を雇っており、給与計算や年末調整の相談もしたい人 ・節税対策や経営相談を随時行いたい人 ・法人化(法人成り)を検討している人 ・インボイス制度など複雑な税制に対応したい人 ・税務調査のリスクに備えたい人

スポット契約(年一回の確定申告のみ)

普段のやり取りはなく、確定申告の時期だけ単発で依頼する形態です。「年一(ねんいち)契約」とも呼ばれます。 特徴: 一年分の領収書や帳簿データをまとめて渡し、決算書の作成と確定申告書の作成・提出代行のみを依頼します。費用は一回払いで完結します。 向いている人: ・売上規模がまだ小さく、毎月の顧問料を払う余裕がない人 ・普段の記帳はある程度自分でできており、最後のチェックと申告だけプロに任せたい人 ・取引数が少なく、毎月の相談事項が特にない人 ・とにかく確定申告の期限に間に合わせたい人 ・節税対策よりも、申告義務を果たすことを優先したい人

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する場合の費用相場

費用は依頼内容や売上規模、記帳代行の有無によって変動しますが、一般的な相場の目安を知っておくことは重要です。

顧問契約の相場

月額顧問料: 1万円~3万円程度 決算申告料: 月額顧問料の4ヶ月~6ヶ月分(5万円~15万円程度) 年間トータル: 20万円~50万円程度 ※売上高が1,000万円未満の場合は安く、売上が上がるにつれて高くなる傾向があります。 ※記帳代行(領収書からの入力)を依頼する場合は、月額顧問料にプラスして5,000円~1万円程度が加算されます。

スポット契約(確定申告のみ)の相場

白色申告: 5万円~10万円程度 青色申告: 10万円~15万円程度 ※記帳代行(領収書の丸投げ)を含む場合は、プラス5万円~10万円程度かかることがあります。 ※消費税の申告が必要な場合は、別途3万円~5万円程度が加算されます。 ※不動産所得や譲渡所得(土地や建物の売却)がある場合は、別途見積もりとなることが多いです。

その他の費用

年末調整: 基本料1万円~2万円+従業員一人あたり数千円 税務調査立会い: 1日あたり3万円~5万円 償却資産税申告: 1か所あたり1万円~2万円 法定調書合計表作成: 1万円~2万円

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際のスケジュール

税理士への依頼はタイミングが重要です。特に確定申告の時期は税理士にとって一年で最も忙しい繁忙期であるため、早めの行動が求められます。

顧問契約の場合

基本的にはいつでも契約可能ですが、事業年度の始まり(1月)や、法人成りのタイミングで契約するのがキリが良くおすすめです。また、開業届を出す段階から相談しておけば、青色申告承認申請書の提出漏れや届出の不備などを防げます。

スポット契約(確定申告のみ)の場合

11月~12月頃(推奨): この時期から税理士を探し始めるのがベストです。年内に依頼先を決めておけば、年明け早々に資料を渡して余裕を持って申告準備ができます。また、年内であれば「駆け込み節税」として、備品の購入や倒産防止共済への加入などの対策を行うラストチャンスがあります。

1月~2月上旬: この時期になると税理士事務所は徐々に忙しくなり始めます。依頼を受けてもらえたとしても、資料の提出期限が厳しく設定されたり、特急料金がかかったりする可能性があります。

2月中旬以降(危険): 確定申告の受付(原則2月16日〜3月15日)が始まると、多くの税理士事務所は新規のスポット依頼を断ることがあります。既存の顧問先の対応で手一杯だからです。また、受け付けてもらえても、申告期限に間に合わない「期限後申告」となるリスクが高まります。ギリギリの依頼は避け、できるだけ早く動くことが大切です。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼した場合税理士報酬は経費計上できるか?

結論から申し上げますと、税理士報酬は全額、事業の必要経費として計上できます

勘定科目は「支払手数料」や「顧問料」

仕訳をする際の勘定科目は、一般的に「支払手数料」や「業務委託費」、あるいは独立した「税理士報酬(顧問料)」という科目を使用します。どの科目を使っても税務上問題ありませんが、一度決めたら継続して同じ科目を使うことが重要です。

消費税の取り扱い

税理士報酬には消費税がかかります。事業主が消費税の課税事業者であれば、支払った報酬に含まれる消費税分は「仕入税額控除」の対象となり、納める消費税から差し引くことができます。免税事業者の場合は、税込金額を経費として計上します。

源泉徴収の必要性

個人事業主が税理士(個人)に報酬を支払う場合、支払う側で所得税を源泉徴収する義務があります。請求書に記載された源泉徴収額を差し引いた金額を税理士に支払い、差し引いた税金は事業主が預かって後日税務署に納付します(給与の支払人員が常時9人以下の場合は、「納期の特例」の承認を受けていれば年2回にまとめて納付できます)。ただし、契約相手が「税理士法人」の場合は源泉徴収の必要はありません。

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼する際によくある質問の例と回答

Q. 売上がいくらくらいになったら税理士に頼むべきですか?

A. 明確な基準はありませんが、一つの目安として「売上1,000万円」があります。これは消費税の課税事業者となるラインであり、税務処理が一気に複雑になるためです。また、所得が増えて税金の負担感が重くなり始めた時(所得300〜400万円程度)や、法人化を検討し始めた時も良いタイミングです。もちろん、売上が少なくても「経理が苦手でストレス」「本業が忙しすぎて手が回らない」という場合は、早期に依頼する価値が十分にあります。

Q. 領収書がぐちゃぐちゃなのですが、そのまま渡しても良いですか?

A. 「丸投げOK」としている税理士事務所であれば問題ありません。ただし、整理されていない資料の処理には時間がかかるため、追加料金が発生したり、顧問料が高めに設定されたりすることがあります。少しでも費用を抑えたい場合は、月別や日付順に分ける、費目ごとに封筒に入れる、A4用紙に貼るなど、ある程度の整理をしてから渡すことをお勧めします。

Q. 遠方の税理士に依頼しても大丈夫ですか?

A. 近年はZoomなどのオンラインツールやクラウド会計ソフトの発達により、全国どこの税理士に依頼しても支障がないケースが増えています。特にITに強い業種や、IT対応が得意な税理士であれば、物理的な距離は問題になりません。ただし、定期的に対面で会って相談したい場合や、税務調査が入った際にすぐに駆けつけてほしい場合は、近隣の税理士の方が安心感があります。

Q. 税理士を変更(顧問変更)しても良いのでしょうか?

A. 何の問題もありません。「相性が合わない」「料金に見合ったサービスを受けていない」「業界知識が乏しい」「先代からの付き合いだが話が合わない」といった理由で税理士を変更することはよくあることです。変更する際は、新しい税理士を見つけてから、現在の税理士に解約を申し入れるのがスムーズです。決算が終わったタイミングなどがデータの引き継ぎも含めて切り替えに適しています。

まとめ

個人事業主が確定申告を税理士へ依頼することは、単に「面倒な作業を肩代わりしてもらう」だけではありません。「正確な申告によるリスク回避」「専門知識を活用した節税」「経営状況の可視化による意思決定のスピードアップ」、そして何より「本業へ集中できる時間の確保」といった、事業を継続・成長させるために不可欠なメリットをもたらします。

確かに費用はかかりますが、それは事業を守り、育てるための「将来への投資」とも言えます。税務の不安から解放され、よりクリエイティブで生産的な活動に時間を使うことができれば、そのコストは十分に回収できるはずです。ご自身の事業フェーズや得意不得意を冷静に見極め、自分一人で抱え込むことのリスクとコストを天秤にかけてみてください。

もし「経理の不安をなくして、もっと事業を伸ばしたい」「次のステージに進みたい」と考えるのであれば、信頼できる税理士というパートナーを見つけることが、その第一歩となるでしょう。まずは無料相談などを活用し、自分に合った税理士を探してみることから始めてみてはいかがでしょうか。最適なパートナーとの出会いが、あなたのビジネスをより強く、より豊かなものにしてくれるはずです。

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この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。