本記事では、海外が絡む税務問題について国際税務に強い税理士を探している方を対象にしています。具体的に、国際税務の対象になる方はどのような方か、国際税務とはどのような内容か、税理士を探すにあたってどのようなサービスだとどのぐらいの費用が適正なのかについて記載します。本記事を参考にいただくことで、基礎知識を持った状態で国際税務に強い税理士を探すことが可能となります。
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国際税務に強い税理士を活用するメリットについて徹底解説
国際税務とは何か?
国際税務とはまず何かから説明いたします。国際税務という税科目があるわけではなく、所得税や法人税などの税科目のうち海外が絡む税務のことを指します。大きく国際税務は移転価格という領域と、そうでない領域の2つに分けることができ、本記事では多くの方が対象となる後者の方について解説を行っていきます。国際税務で何が問題になるかというと、国際税務の場合日本の税制と海外の税制が両方絡んでくるたえ、2重課税という問題が発生してきます。より具体的には、同じ取引でも日本の税制と海外の税制で税制度が異なる場合、結果として両方の国から課税を受けることになり、日本のみで取引を行うよりも重たい税金を課されることがあります。これを2重課税の問題と読んでおります。
国際税務においては、このような問題が頻発するため国同士が租税条約という形で条約を締結し、2重課税の問題がなるべく発生しないような仕組みにしています(完全に2重課税を排除できるわけではありません)。一方で我が国においても全ての海外の国と租税条約を締結できているわけではないため、租税条約を締結できていない国については、2重課税の問題は残念ながら排除することができません。
国際税務においては、日本の税理士と海外の税理士が関与するケースが多いです。海外の場合は税理士制度がないケースが多いので、多くの場合は会計士が税務も担当しているケースが多いです。パターンとして、海外に拠点(事務所でも支店でも子会社でもOK)があって、日本でも事業を展開しているケースです。この場合、日本での税制は日本の税理士が対応し、海外での税制は海外の税理士が対応することになります。特に国際税務が論点になってくるのは日本と海外が絡む取引(例えば日本法人が海外法人に貸付をしているケースや、日本の社員が海外の社員も兼務しているなど)となってきます。
国際税務の対象になる人
国際税務と聞くと、非常に大きい会社が対象になるイメージがありますが、海外との絡みがある方であれば例え個人事業主でも国際税務の対象となってきます。例えば、個人事業主の方で海外の企業と取引があり、1年の半分ぐらいは海外にいらっしゃるなどのケースです。前提として海外に法人は持っていないという前提に立ちます。ここでまず論点になるのは、日本と海外どちらの居住者になるかによって、確定申告する所得の範囲が異なってきます。また仮に日本の居住者だと判断されて、日本で確定申告書を作成・提出する場合でも、海外で発生した所得については海外の税法に基づいて課税されるため、海外での源泉所得税もしくは所得税が発生する可能性があります。海外で発生した税金については、日本の課税上は海外で発生した所得を全て日本の所得と合算した上で日本の税率をかけて税金を支払うことになるので、ここで2重課税の問題が出てきます。基本的には日本の税率を算出した上で海外で支払った税金については外国税額控除という形で控除が可能となりますので、ある程度2重課税の問題は解決することが可能です(ある程度と言っているのは、全ての海外支払い税額を控除できるわけではないので、完全に2重課税の問題を排除できるわけではありません)。
また2重課税の話ではありませんが、海外に駐在になった方で日本に保有している不動産を賃貸に供した場合、不動産所得の所得税申告を行う必要があります。この場合、居住している海外ではその国の税制に従って確定申告を行い税金を納付する一方で、日本で発生した所得については引き続き日本で確定申告を行い税金を納付する義務を負うことになります。このようにサラリーマンであったとしても国際税務の問題は発生してくるのです(海外居住者が日本の税務申告を行う場合には、税理士を納税管理人として指名し税務申告をやってもらうことになります)。
国際税務において税理士を活用するメリット
上記のように大きい事業を行っている法人以外でも(例え個人事業主であったとしても)、国際税務に関係する可能性があることはご理解いただけたと思います。また今後ビジネスがますますグローバル化して行く中においては、さらに国際税務に関係する経営者の方が増えることが想定されます。では経営者の方が国際税務において税理士を活用するメリットはなんでしょうか?
日本と海外で発生する2重課税の防止
1つは国際税務の場合、そもそも税法の規定が非常に複雑なのと、2重課税による税負担が重たいため、税理士に任せた方が税メリットが大きいからです。国際税務を経営者の方が一から勉強して自分で対応するのは非現実的ですし、そもそも情報も税理士などプロ向けに書かれた書籍等しかないため、税金のプロではない経営者が一から勉強するのは不可能に近い状況です。
ミスのない確定申告
2つ目は、先ほど触れた海外駐在の方も含めてですが、海外が絡む税務申告は通常の税務申告よりも難易度が高いため、税理士へ依頼した方がミスがなくなるという点です。特に外国税額控除は計算が複雑ですし、正直税金のプロが以外が解説書を読んでもよくわからないと思います。そのため税理士に任せた方がミスなく確実に税控除を実現することが可能です。
国際税務・海外に関する税務事情の説明
3つ目は、海外でのビジネスにおいて定期的に税理士からアドバイスをもらうことが可能です。例えば現地に法人を設立した方が良いか、など海外でビジネスを展開していると国内でビジネスをやっている以上にさまざまな疑問が発生すると思います。税理士と契約していることで税に関する相談は適宜できるため、海外展開を効率的に行って行く上では非常に重要な要素となってくるでしょう。
国際税務にかかる節税対策
最後に国際税務に関する節税対策です。2重課税をはじめ、2国間取引になる場合には日本国内だけよりも様々な論点が発生しますので、税コストが過大な負担とならないように、しっかりとタックスプランニングを行う必要があります。この節税の観点から、税理士を活用するメリットは大きいと言えます。
国際税務に強い税理士の選び方とは
では国際税務に強い税理士を選ぶ際のポイントとはどのようなものでしょうか?
国際税務に関する知見や経験があること
国際税務に対する知見をどの程度持っているかということです。これは経営者の展開しているビジネスがどの程度の難易度の国際税務を必要とするかになりますが、一定規模以上の企業案件でない限り、最高難易度の国際税務が求められることはほとんどありません。そのため、大手の会計事務所に依頼しなくても、個人事務所で国際税務に対応できる税理士でも対応することが可能です(最高難易度になってくると、そもそも海外の税知見が必要になるケースもあり、その場合は海外ファームとの提携が前提になってくるため、個人の税理士だと対応が難しいケースが多いです)。
サービス内容が自分に合致しているか?
税理士法人もしくは税理士事務所が提供しているサービス内容が自分の受けたいサービス内容と合致しているか、はポイントになります。同じ国際税務でも大手会計事務所が提供するサービスは、大手企業向けの非常に複雑な税務論点のサービスを提供しておりますが、中小企業や個人からするとそこまでのサービスは不要で料金も割高になってしまうため、ご自身がどのようなサービスが必要なのかをしっかりと整理して税理士と会話をするようにするのが良いでしょう。
海外対応、英語対応
英語対応可能かどうかもポイントとなってきます。海外でビジネス展開をしていると資料が英語になったりメールのやり取りが英語になったりすることが多いかと思いますので、税理士にも一定以上の英語力が必要となってきます。やはり英語が使えた方が経営者とのコミュニケーションがスムーズになりますので、英語力は税理士を選ぶ際の必要なポイントになってくるでしょう。
顧客のビジネスモデルの理解
これは国際税務だけでなくその他の税務でも同じですが、顧客のビジネスモデルを理解してくれる税理士の方がコミュニケーションがスムーズになります。税務はその検討の前提として取引が存在するため、ビジネスモデルが的確に理解できていないと税務論点を正しく整理することができません。そのためビジネスモデルの理解が早い税理士を選ぶとコミュニケーションのスムーズさの観点から良いでしょう。
スムーズなコミュニケーション・相性
最後に相性です。そもそも国際税務に強いという時点で税理士の選択肢は絞られてくるのですが、その中でもやはり経営者と継続的にコミュニケーションをとることになるというのが税理士の特徴になりますので、相談しやすいか、レスポンスは早いか、などの相性は非常に重要になるでしょう。
国際税務における税理士の具体的なサービス内容
国際税務において税理士の具体的なサービス内容はどのようなものがあるのでしょうか?まずは個人向けか法人向けかによって適用される法律が異なってくるため、サービス内容が変わってきます。また個人の場合は所得に関する税である所得税なのか、資産に対して課される相続税なのかによっても異なってきます。また他に区分として、日本人向けか、外国人向けかという区分けもあります。外国人向けは日本に駐在している外国人や、日本に進出している外資系企業が該当します。日本人は海外に駐在しており、日本での所得がある方や、海外に進出している日本企業が該当します。以下、サービス内等について解説をしていきます。
国際税務における税理士のサービス:国際税務顧問
国際税務顧問
国際税務における税理士のサービスとして、国際税務に関する税務顧問サービスがあります。これは、前述している外国税額控除や居住者・非居住者判定など、2国間の税課題に対応するための様々な検討が含まれます。また租税条約を締結している国同士であれば、租税条約の検討も入ります。
税務調査対応
国際税務に関する税務調査対応についても国際税務に強い税理士の対応範囲になります。国際税務については前述の通り国内税務よりもさらに複雑な処理が絡んできますので、税務調査においても高度な対応力を求められることになります。一般的に国際税務関連の税務調査については、国際税務の顧問税理士へ税務調査を対応することが多いです。
国際税務における税理士のサービス:移転価格
移転価格のローカルファイルの作成
海外に進出している企業もしくは外資系で日本に進出している企業のうち、一定規模以上の企業については確定申告書の提出までに作成・保存している義務がある書類を言います。これを「同時文書化義務」と言います。こちらの作成サポートを税理士は提供しています。
移転価格ポリシーの作成
海外に進出している日本企業向けにどのような方針で海外子会社等との取引価格を設定するのか、についてまとめたものが移転価格ポリシーになります。移転価格ポリシーについても知見のない企業にとっては自力で作成することが難しいため、税理士へ依頼することが一般的となっております。
国別報告書・マスターファイル作成支援
BEPS行動計画13の公表と、平成28年度税制改正により平成28年4月1日開始事業年度から、直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円を超える多国籍企業グループは、国別報告書・マスターファイルの作成が必要となります。これらについても知見のない企業は税理士のサポートがマストとなるでしょう。
APA・相互協議に関するサポート
APA(Advance Pricing Agreement)とは、日本語で事前協議と呼ばれており、次の3種類があります。
・相互協議が必要な二国間APA
・多国間APA
・単一国APA(相互協議が不要)
この制度は、納税者が税務当局へ提出した移転価格算定方法などについて、税務当局が検証・確認して、納税者の予見可能性を確保するための制度です。
相互協議とは、既に移転価格における2重課税が発生している状況で、課税をおこなった税務当局と相手型の税務当局に対して租税条約に基づいて協議することを申請する手続きとなります。
国際税務における税理士のサービス:国際資産税、相続税
海外にある資産にかかる確定申告
日本の居住者である場合、たとえ海外に資産があってそこから発生する所得でも、日本の所得税が課税されることになります。そのため、海外で発生した所得を日本の所得税法に照らし合わせて、税務処理を行い確定申告を行う必要があります。
海外にある資産の相続税・贈与税
海外にある資産についても日本の居住者である場合、相続した資産もしくは贈与を受けた資産については日本の相続税や贈与税が適用されることになります。特に相続税や贈与税は多額になることが多いことから、事前にタックスプランニングが必要であり、税理士のサポートが不可欠となります。
海外資産の相続や継承に関するアドバイス
前述とも絡んできますが、相続税や贈与税は日本国内だけでなく海外にも及ぶため、特に海外は日本の税法上への当てはめ等を踏まえてより複雑になるため、税理士のアドバイスは必要になってきます。
海外の相続税や贈与税に絡む税務調査対応
税務調査については、所得税・法人税だけでなく、相続税や贈与税も対象になってきます。この場合、国際税務が絡む相続税や贈与税になると、国内だけの相続税や贈与税よりも複雑化するため、税務調査対応も高度化します。そのため、税理士の関与が必要になってくると言えます。
国際税務における税理士のサービス:アウトソーシング(BPO)
記帳代行
アウトソーシングにおいては、主に外資系企業が国際税務においては中心になってくるかと思います。記帳代行については国内顧客向けと同じく、日々の帳簿作成を行うことになります。
給与計算代行
こちらも記帳代行と同じく給与計算についてもアウトソーシングサービスを提供しております。給与計算については、駐在員なども含めると計算が複雑になるため、自社で対応するよりもアウトソーシングした方が割安になる可能性があります。
税務申告対応
法人税として、企業が提出する必要のある税務申告対応です。法人税以外にも、事業税や法人住民税及び消費税が申告の対象となってきます。
年末調整関連対応
給与計算に関連して、従業員向けの年末調整対応も税理士のサービスの1つとなってきます。特に社内に税務知見がない場合には、年末調整はミスが起こりやすい分野の1つでもありますので、税理士のサポートをもらうことで正確にかつ円滑に業務を進めることができるでしょう。
財務会計・管理会計の報告
税務申告と併せて、親会社等へ向けた会計関連の報告も必要になってくるでしょう。また社内向けだけでなく、会社法で定められた計算書類の作成も必要となってきます。
国際税務に強い税理士を探すタイミング
国際税務に強い税理士を探すベストなタイミングはいつになるのでしょうか?まずは、海外との取引を開始する前になります。前述の通り、現地に法人を設立するかどうかに関わらず海外との取引が発生する際に国際税務の問題は必ず発生するため、海外取引を開始する前に税理士のアドバイスを受けると安心と言えるでしょう。
続いて海外現地法人を設立する、もしくは現地法人は設立しないが現地で長期滞在もしくは従業員を海外に住まわせる場合です。このフェーズになるとPE課税などより難易度の高い税務問題が発生しうるのと、現地税制の問題が必ず発生するため、進出国先に税務プロフェッショナルファームを起用するかどうかの検討も必要となってきます。
最後にインバウンドを検討されている外資系の企業が本格的に日本国内でビジネスを行う場合です。日本国内におけるPE課税や源泉徴収、もしくは租税条約の活用などの検討が発生するため、日本の税理士へ将来的な確定申告も含めて依頼をしておいた方が、ビジネスがスムーズに進むと言えるでしょう。
国際税務に強い税理士と契約する際の料金
国際税務については、通常の所得税や法人税と比較して難易度が高いため、料金も高めに設定されることが多いです。これは、難易度もそうですが対応できる税理士の数も少なくなってしまうため、希少性の観点から値段が高くなっております。具体的には、一般的な税務顧問の相場が少なくとも月額2〜3万円となっていますが、国際税務の場合はここに月1〜2万円が加算されるイメージです。そのため決算・申告手数料についても4〜6ヶ月分の月次顧問料になりますが、月次顧問料金が加算されているため、結果として決算・申告料金も通常の税務申告料と比較すると高くなる傾向にあります。
上記に英語対応(例えば入手する資料の大半が英語で書かれている、もしくは一定海外の取引先と税理士のコミュニケーションがメール等で英語で必要な場合など)が必要な場合は、その工数に応じて特別な料金が加算されることが多いです(それだけ英語対応まで可能な税理士というのは希少性が高いのです)。
国際税務に強い税理士の具体例について解説
国際税務に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます(大手は除外し、個人事務所を中心に記載いたします)。
木田国際税務会計事務所様
まずは、木田国際税務会計事務所様(https://www.wbj-tax.com/)です。相続×国際税務という専門性で非常に特徴のある事務所様になります。海外居住中の方への日本の確定申告サービスの提供や海外移住コンサルティングなど深い専門性でサービスを提供されています。
中央国際会計事務所様
続いて、中央国際会計事務所様(https://www.chuointernational.jp/)です。通常の国際税務に加えて、移転価格についてもサービスを提供されている税理士事務所様になります。移転価格含めて国際税務について非常に深い知見をお持ちの事務所様になります。
信成国際税理士法人様
次に信成国際税理士法人様(https://shin-sei.jp/)です。こちらの税理士法人様は、移転価格から国際税務顧問、また国際税務についても国際資産税やその税務対応など幅広い国際税務に対応しております。
Colorz国際税理士法人様
次にColorz国際税理士法人様(https://www.colorz-grp.com/)です。こちらの税理士法人様は、国際税務に加えて、財務戦略を中心としたコンサルティングサービスを主の事業として展開されているのが特徴となります。
宮嶋公認会計士・税理士事務所
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。国際税務ももちろん対応可能で提携している会計事務所と連携してあらゆる顧客の国際税務問題に対応できます。
まとめ
以上、国際税務に強い税理士について記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
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この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。