歯科医院の税務調査を解説 − 流れやポイントなど

税務

本記事では、歯科医院を開業・運営されている方、もしくはこれから歯科医院を開業されることを検討されている方に対して、税務署からの税務調査が入った場合の流れやポイントについて解説を行っていきます。実際に税務調査においてどのようなポイントがチェックされるのかなどを本記事を参考にいただくことで理解を深めることができます。

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歯科医院の税務調査を解説 − 流れやポイントなど

歯科医院における税務調査の流れ

税務署による税務調査ですが、歯科医院をはじめとした医療機関は黒字の率が高いため、税務調査は他の業種(特に赤字が多い業種)と比較すると比較的対象になりやすいと考えられます。税務調査が多いタイミングとしては、毎年8月〜12月と4月〜6月になります。これは税務署の年度が7月〜6月で7月に人事異動があり、また1月〜3月は個人事業主の確定申告のピークとなります関係で、税務調査が行われる傾向にはありません。

対象となる法人もしくは個人事業主の規模によりますが、一般的には1〜2名の税務調査官が1〜2日程度訪問して税務調査を行うことになります。顧問税理士がいる場合には、顧問税理士へ税務調査の立会を依頼して、税務署との対応窓口を税理士へ依頼するのも一つの手です(こちらの方がスムーズに税務署とコミュニケーションが取れます)。

歯科医院における税務調査時の税理士役割

歯科医院において税務調査が行われる際に、税理士はどのような役割を担うのでしょうか?これは税理士の独占業務として税務調査の立会を行うことができます。立会とは税理士の顧客に代わって税務調査における資料依頼や質問に対して税理士が対応・回答を行うことです。通常、経営者は経理のプロでもなければ税務のプロでもないので、税務調査官が圧倒的に有利な状況で税務調査がスタートします。この場合、本来は正しい処理だったとしても質問に対する回答を誤り調査官が勘違いをした状態で修正申告に応じてしまうなどのケースも想定されます。そのため、本来支払わなくても良い税金を支払う可能性も0ではありません。

このようなケースに対応するため税理士の立会が活用されるのです。税務調査の立会をしてもらう税理士は必ずしも顧問税理士でなくても良いのですが、顧問税理士でないと日々の取引の内容や申告の内容を深く理解できないまま税務調査に突入してしまうため、税務調査官に対して正しい対応を取れないケースが想定されます。そのため、なるべく税務調査の立会いには顧問税理士へお願いをするのが良いでしょう。顧問税理士によっては税務調査の立会費用がもともと顧問報酬に入っている場合もあれば、別途料金を請求される場合もあります。この場合目安の相場ですが、立会1日あたり5万円〜で別途交通費や諸経費を請求されることが一般的です。

歯科医院が一般的に税理士を探す方法については、「歯科医院に強い税理士の選び方」の記事を参照ください。

歯科医院の税務調査においてはどのような資料を確認されるか?

歯科医院の税務調査においては例えば以下のような資料を確認されます。

・会計帳簿書類(総勘定元帳や現金出納帳など)
・患者さんの予約管理台帳(予約管理台帳上は患者さんの予約が入っているのに、売上と一致しないなどの確認)
・固定資産台帳(実際に使用されている現物との照合、事業利用以外のものが含まれていないかどうかの確認)
・銀行口座(他の帳簿書類との不整合な点がないかどうかの確認)
・家事按分に関する説明資料(どこまで資料として作成するかは個別検討ですが、少なくともなぜその家事按分なのかを合理的に説明できる必要があります)
・専従者控除に関する証憑(青色専従者については、特に勤務実態を確認されます。具体的に給与に見合うだけの労働を行っていたか、それを具体的にどのように証明できるかについて確認されます)

歯科医院の税務調査で指摘されやすい項目は?

歯科医院の税務調査で指摘されやすい項目について解説をしていきます

自由診療における売上計上漏れ

医療保険が適用できるレセプト制度については、請求から入金までの仕組みが整っているため、売上計上漏れになる可能性は比較的低いと思われます。一方で自由資料についてはレセプトのように外部への請求行為がなく直接患者さんへ100%の請求を行うことになるため、正しく売上管理ができていないと帳簿への売上計上漏れにつながる可能性があります。カード払いを許容している場合はカード会社の立替データ、もしくは現金の場合でも現金出納帳・預金口座の動きを見れば売上漏れを識別することは可能です。

家事按分

個人事業主全体ですが、指摘されやすい項目として挙げられるのが家事按分です。これは事業用とプライベート用に使っている経費のうち、事業用部分を経費算入できるものです。この割合を高めることで経費に落とせる金額は大きくなるのですが、当然家事按分の割合は実際に事業用に使った比率でないといけません。ただし詳細なレベルで正確に按分計算を行うのは不可能なので、合理的な範囲内で計算ロジックを作成し、適宜見直しをすることを前提に、その計算ロジックに当てはめて家事按分を行うことが一般的です。例えばこのような計算ロジックがなく、感覚で家事按分をしている場合などは、事業用経費として計算した金額が否認される可能性があります。

専従者控除

先述しましたが、特に青色専従者控除は指摘の対象となりやすい領域です。青色専従者の場合、その従事した時間に対して経費計上を行うことができるため、比較的恣意性が入りやすい領域になる関係から指摘を受けやすくなっています。いくらでも経費計上できるのではなく専従者が規定した条件を前提に、どの程度実際に労働したかを証憑を踏まえて説明できることが重要です(例えば勤務簿やタイムカードなど)。特に勤務実態がないのに経費計上している場合などは要注意が必要です。

減価償却計算の誤り

歯科医院の場合、設備が比較的多く貸借対照表に計上されます。そのため、減価償却計算が他のサービス業と比較しても複雑になりがちです。設備については、その種類に応じて法定の耐用年数が決まっておりますし、中古購入の場合は耐用年数を決めるための計算式が決まっております。また、減価償却対象となる取得原価の範囲についてもミスが発生しがちです(本来取得原価に含めるべきものが経費計上されているようなケース)。

その他プライベート経費

家事按分とも関係しますが、プライベートで使用した経費については所得税計算上の経費にはなりません。そのため、所得税の計算上はあくまで事業用に使用した経費のみを計上することが可能です。特に事業用かプライベートか曖昧なものについては税務調査時にしっかりと説明できるように記録をしておくことが良いでしょう。

歯科医院の税務調査を解説のまとめ

以上のように歯科医院における税務調査について、流れやポイントを解説してまいりました。新しく開業される方、税理士変更を検討されている方、本記事を参考になってぜひご自身に合った税理士をお探しください。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。