インボイスは税理士へ相談した方が良いか?

税務

本記事では、インボイス制度の概要をはじめ、導入を検討している方にとってどのようなメリットがあり、税理士へ相談した方が良いかどうかも含めて解説をしていきます。

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インボイスは税理士へ相談した方が良いか?

  1. インボイス制度とは?
    1. なぜインボイスが必要なのか?
    2. 制度導入の背景
    3. インボイスの登録
    4. インボイスの記載項目
    5. 誰がインボイスを発行できるのか?
  2. インボイス制度の特例について
    1. 免税事業者との取引における経過措置
    2. 免税事業者が課税事業者になる際の “2割特例”
    3. 出張旅費・公共交通機関等の取扱い特例
  3. インボイス制度の違反した場合どうなるのか?
    1. インボイスを発行できないのに発行した(=偽インボイス)
    2. インボイスの記載要件を満たしていない
    3. インボイスを保存していない/帳簿不備
    4. 登録番号の不正利用・譲渡
    5. 登録内容の変更・取消を怠った
  4. インボイスを税理士へ相談するメリット・デメリット
    1. インボイスを税理士に相談するメリット
      1. 制度対応を正確・効率的に進められる
      2. 登録・申請・帳簿管理をサポートしてもらえる
      3. 将来の税負担や経営リスクを見据えた提案が受けられる
      4. 税務調査・税務署対応での安心感がある
    2. インボイスを税理士に相談するデメリット
      1. 費用がかかる
      2. 内容が複雑になりやすい
      3. 税理士との相性や対応力に差がある
  5. その他の相談窓口について
    1. 【国税庁】インボイス制度専用ダイヤル(軽減・インボイスコールセンター)
    2. 【税務署】最寄りの税務署窓口
    3. 【商工会・商工会議所】
    4. 【中小企業庁】よろず支援拠点
    5. 【青色申告会】(個人事業主向け)
    6. 【freee・マネーフォワードなどのクラウド会計サービス】のカスタマーサポート
  6. インボイスを税理士へ相談する際に必要な準備
    1. 自社の【事業概要】をまとめておく
    2. 消費税の状況を整理
    3. インボイスに関する現状・悩みの整理
    4. 過去の帳簿・請求書・会計ソフトの情報
    5. インボイス登録の有無と登録番号(あれば)
    6. 相談したい内容を箇条書きにしておく(例)
  7. インボイスに関してよくある質問とは?
  8. インボイスは税理士へ相談した方が良いか? まとめ

インボイス制度とは?

「インボイス」とは、消費税の計算と申告に必要な正式な請求書のことです。正式には「適格請求書(てきかくせいきゅうしょ)」と呼ばれ、税務署に登録された事業者だけが発行できます。

なぜインボイスが必要なのか?

日本では消費税が導入されて以来、事業者は以下のように消費税を計算します

売上にかかった消費税 - 仕入れや経費にかかった消費税 = 国に納める税金

これを「仕入税額控除」といいます。ただし、2023年10月以降は、適格請求書(インボイス)がなければ、原則この控除はできません。つまり、仕入や経費の消費税を差し引きたければ、インボイスが必要というルールになりました。

制度導入の背景

日本では消費税制度が導入されて以来、「帳簿と請求書等の保存」で仕入税額控除が認められていました。しかし、消費税率の複数化(8%と10%)により、正確な税額管理が求められるようになり、ヨーロッパなどで一般的な「インボイス制度」が導入されました。

インボイスの登録

インボイスを発行できるのは、「適格請求書発行事業者」として登録された課税事業者だけです。

  • 免税事業者(年間売上1,000万円以下)は登録しない限り、インボイスを発行できません。
  • 登録しないと、取引先が仕入税額控除できなくなり、取引に不利になる可能性があります。

インボイスの記載項目

インボイスには、以下の情報が正確に記載されていなければなりません:

項目内容例
① 発行事業者の氏名・登録番号株式会社〇〇、登録番号:T1234567890123
② 取引年月日2025年X月X日
③ 取引内容(品目や数量など)デザイン制作費 1件
④ 税率ごとに区分した税込価格110,000円(うち消費税10,000円)
⑤ 適用税率10% または 8%(軽減税率)
⑥ 税額(税率ごとに)10,000円など
⑦ 請求先の氏名(※原則)合同会社〇〇 様

誰がインボイスを発行できるのか?

インボイスを発行できるのは、
▶ 課税事業者で、かつ
▶ 税務署に「適格請求書発行事業者」の登録をしている人

です。免税事業者(年商1000万円以下など)は、登録しないと発行できません。

インボイス制度の特例について

インボイス制度には、特に小規模事業者や免税事業者に配慮した複数の「特例(経過措置)」があります。以下に整理して解説します。

免税事業者との取引における経過措置

2023年10月1日~2029年9月30日までの6年間, 免税事業者や未登録の課税事業者からの仕入について、インボイスがなくても仕入税額控除が一定割合で認められます:

  • 2023/10/1~2026/9/30:控除率 80%
  • 2026/10/1~2029/9/30:控除率 50%

例えば、100万円の仕入に消費税10万円を支払った場合、経過措置期間中はそれぞれ8万円または5万円を控除できます。ただし、帳簿に「80%控除対象」「免税事業者からの仕入」などと明示し、区分記載請求書を保存することが必要です。

免税事業者が課税事業者になる際の “2割特例”

免税事業者が取引継続などを理由に課税事業者としてインボイス登録をした場合、

  • 2023/10/1~2026/9/30 の期間に限り、納める消費税額を「売上にかかる消費税 – 売上消費税 × 80%」で計算可能

通常の控除の代わりにこの簡易計算ができ、「2割特例」 と呼ばれています。事前の届出不要で、申告書に選択を付記するだけでOKです。

出張旅費・公共交通機関等の取扱い特例

一般の従業員が支給された出張旅費や、3万円未満の公共交通機関利用などは、インボイスがなくても仕入税額控除が可能です:

  • 帳簿に「出張旅費」や「3万円未満の交通費」などと記載することでOK。
  • タクシー代などはインボイスが必要なので注意が必要です。

インボイス制度の違反した場合どうなるのか?

インボイス制度に違反した場合、直接的な「罰金刑」などは一般的ではありませんが、税務署による指摘・修正・追徴課税などの重大な不利益が発生します。以下に主なペナルティやリスクを整理してご説明します。

インボイスを発行できないのに発行した(=偽インボイス)

  • 違反内容
    • 適格請求書発行事業者として登録していないにもかかわらず、「登録番号」を偽ってインボイスを発行した。
  • ペナルティ
    • 不正行為とみなされ、重加算税(最大35%)+追徴課税+延滞税の対象になる。
    • 明らかな悪質行為と判断されれば、刑事罰(脱税)の可能性もあり。

インボイスの記載要件を満たしていない

  • 違反内容
    • 登録番号がない、消費税額の記載漏れ、軽減税率の区分が抜けているなど。
  • ペナルティ
    • インボイスとして無効扱い → 取引先が仕入税額控除を受けられない。
    • 結果的に信用を失い、取引停止や契約打ち切りにつながることも。

インボイスを保存していない/帳簿不備

  • 違反内容
    • 適格請求書を受け取っていても、保存していない/帳簿に正しく記載していない。
  • ペナルティ
    • 仕入税額控除が否認され、余計な消費税を納めることになる。
    • 過少申告加算税(10〜15%)や延滞税が課される可能性も。

登録番号の不正利用・譲渡

  • 違反内容
    • 他人の登録番号を勝手に使ったり、譲り渡したりする。
  • ペナルティ
    • 税法違反として、重加算税や刑事罰(詐欺罪・私文書偽造など)のリスクあり。

登録内容の変更・取消を怠った

  • 違反内容
    • 事業者情報が変わったのに、登録情報の変更届出をしないままインボイスを発行し続ける。
  • ペナルティ
    • 記載事項不備として、形式不備とみなされ、無効なインボイスとなる可能性あり。

インボイスを税理士へ相談するメリット・デメリット

税理士にインボイス制度について相談することは、多くの事業者にとって非常に有益ですが、一方でコストや手間の面でデメリットもあります。以下にメリットとデメリットを整理して解説します。

インボイスを税理士に相談するメリット

制度対応を正確・効率的に進められる

  • インボイス制度は細かい要件や記載ルールが多く、素人判断ではミスが起きがち。
  • 税理士は制度に精通しており、正確なアドバイスが受けられる。

登録・申請・帳簿管理をサポートしてもらえる

  • インボイスの登録申請や、会計ソフトの設定、帳簿の記載方法など、実務対応を手伝ってくれる。
  • 消費税の納税額シミュレーションもしてくれることが多い。

将来の税負担や経営リスクを見据えた提案が受けられる

  • 「免税事業者のままでいるべきか、課税事業者になるべきか」といった戦略的な判断をサポート。
  • 経過措置や特例の適用も、最適なタイミングで活用できるよう助言してくれる。

税務調査・税務署対応での安心感がある

  • 万が一の税務調査時にも、専門家として間に入って対応してもらえる。
  • 「記載不備」や「保存漏れ」でのペナルティリスクを最小限に抑えられる。

インボイスを税理士に相談するデメリット

費用がかかる

  • 顧問契約やスポット相談には料金がかかる(例:月額1~5万円、スポット1~3万円など)。
  • 単発で相談だけでも、有料のケースが多い。

内容が複雑になりやすい

  • 特に小規模・フリーランス事業者の場合、かえって「課税化による損得」や「制度対応の煩雑さ」に悩まされることも。
  • 税理士の専門用語や説明がわかりづらいと感じることもある。

税理士との相性や対応力に差がある

  • インボイス制度への理解が浅い税理士や、フリーランス・個人向けの配慮が足りない税理士も存在。
  • 一度契約すると変更しにくいので、選定が重要。

その他の相談窓口について

もちろんです。インボイス制度については、税理士以外にも相談できる公的な窓口や専門機関が複数あります。費用をかけずに相談できるケースも多いので、ぜひ活用を検討してみてください。

【国税庁】インボイス制度専用ダイヤル(軽減・インボイスコールセンター)

  • 内容:インボイス制度の概要、登録手続き、記載要件など、制度全般の質問に対応
  • 相談方法:電話
  • 料金:無料(通話料は自己負担)
  • 電話番号:📞 0120-205-553
  • 受付時間:平日9:00~17:00(土日祝除く)
  • 備考:専門のオペレーターが対応し、分かりやすく案内してくれる

【税務署】最寄りの税務署窓口

  • 内容:インボイス登録番号の取得、申請書の書き方、消費税の申告関連
  • 相談方法:来所 or 電話
  • 料金:無料
  • 備考
    • 担当官が個別の事情に応じて説明してくれる
    • 繁忙期(確定申告時期)は待ち時間が長い可能性あり
    • **事前予約制(相談窓口)**を設けている署もある

【商工会・商工会議所】

  • 内容:小規模事業者や個人事業主向けに、インボイス制度や消費税の説明会・個別相談を実施
  • 相談方法:来所、電話、セミナー参加など
  • 料金:無料 or 低価格(会員・非会員で異なる)
  • メリット
    • 地域密着で親身な対応が受けられる
    • 実務的な書類作成サポートや講習会がある

【中小企業庁】よろず支援拠点

  • 内容:中小企業やフリーランス向けに、経営・財務・税務全般の無料相談が可能
  • 相談方法:事前予約制(対面・電話・オンライン)
  • 料金:無料
  • 特徴
    • 税理士でなくても税務に詳しいアドバイザーが多数在籍
    • インボイス対応を含めた経営支援が得られる

【青色申告会】(個人事業主向け)

  • 内容:青色申告者を対象に、帳簿の付け方やインボイス登録の方法などを指導
  • 相談方法:会員制(非会員でも相談会あり)
  • 料金:年会費制(数千円~1万円程度)
  • メリット
    • 専門スタッフによる定期指導
    • 会計ソフトの使い方や申告書の書き方も教えてもらえる

【freee・マネーフォワードなどのクラウド会計サービス】のカスタマーサポート

  • 内容:インボイス対応の帳簿処理・請求書発行の方法など
  • 相談方法:チャット、メール、電話
  • 料金:有料プラン利用者は相談無料
  • 備考:あくまで「ツールの使い方」が中心で、税務判断は不可

インボイスを税理士へ相談する際に必要な準備

自社の【事業概要】をまとめておく

項目
事業形態個人事業主/法人(株式会社・合同会社など)
主な業種Web制作、飲食業、小売業、建設業 など
主な取引先法人/個人/公的機関 など
年間売上目安〇〇万円程度(免税対象か課税対象か判断するため)

消費税の状況を整理

  • 現在、免税事業者か課税事業者か
  • 過去2年間の売上と消費税納付額
  • 消費税の申告方式(簡易課税 or 本則課税)

インボイスに関する現状・悩みの整理

例えば:

  • 「取引先からインボイス登録を求められている」
  • 「登録したが、請求書の書き方が分からない」
  • 「登録すべきか迷っている(免税事業者)」
  • 「消費税納税がどれくらいになるか試算したい」
  • 「フリーランスとして2割特例を使えるか知りたい」

→ このような「何に困っているか」を明確にしておくと、税理士が的確に回答しやすくなります。


過去の帳簿・請求書・会計ソフトの情報

  • 売上や経費がわかる帳簿(Excelやクラウド会計でもOK)
  • 使用中の会計ソフトの種類(freee/弥生/マネーフォワード等)
  • 請求書のフォーマット(インボイス対応済か?)

インボイス登録の有無と登録番号(あれば)

  • すでに登録済みの場合:登録通知書や番号(T1234567…)を用意
  • 未登録の場合:登録を検討中か否か、登録予定時期など

相談したい内容を箇条書きにしておく(例)

  • 「免税事業者のままで大丈夫か?」
  • 「消費税の計算方法がわからない」
  • 「2割特例は使うべきか?」
  • 「仕入先や外注へのインボイス対応をどうするか?」
  • 「会計ソフトを使ったインボイス処理方法は?」

インボイスに関してよくある質問とは?

Q1:登録しないとどうなる?
→ 取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、取引を見直される可能性があります。

Q2:免税事業者でも登録できる?
→ 可能ですが、登録したら課税事業者になり、消費税を納める義務が生じます。

Q3:登録は取り消せる?
→ 取り消しは可能ですが、再登録には時間がかかり、手続きが必要です。

インボイスは税理士へ相談した方が良いか? まとめ

課税事業者(または課税予定)で、取引額が一定以上ある事業者は、税理士への相談を強く推奨。免税事業者でも、取引先からインボイス登録を求められている場合や、消費税の納税額に不安があるなら相談の価値あり。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。