企業の成長戦略において、究極の目標の一つとして挙げられるのがIPO、すなわち新規株式公開です。IPOを達成することは、企業にとって単なる資金調達の手段に留まらず、社会的信用の獲得、優秀な人材の確保、そして創業オーナーや初期の投資家にとっての大きな成果を実現する、極めて重要なマイルストーンとなります。
しかし、IPO(株式上場)への道のりは、非常に長く、険しいものです。証券取引所が要求する厳格な審査基準をクリアするためには、社内の管理体制を上場企業としてふさわしいレベルにまで、根本から引き上げる必要があります。複雑な会計基準に準拠し、内部統制を整備・運用し、膨大な量の申請書類を作成しなければなりません。
このプロセスは、通常、最低でも3年以上の準備期間を要し、経営者や既存の従業員だけでは到底成し遂げられるものではありません。この長く困難なIPO準備プロジェクトを成功に導くために不可欠なのが、専門家のサポートです。
中でも、企業の財務諸表や内部統制の「監査」を行う監査法人とは別に、経営者の伴走者として、上場準備の実務を指導・支援する「IPOコンサルタント」の役割は、決定的に重要です。
そして、IPOコンサルティングの担い手として、最も信頼性が高い選択肢の一つが、会計と監査の最高専門家である「公認会計士」です。彼らは、監査法人の視点を熟知しているため、上場審査の核心を突いた的確なサポートが期待できます。
この記事では、IPOという大きな目標を掲げる経営者が、どのようにして自社にとって最適で、「IPOコンサルティングに強い公認会計士」を見つけ出し、その力を最大限に活用すべきか、その方法とポイントを徹底的に解説していきます。
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IPOとは何か?
まず、IPOという言葉の基本的な定義と、企業がそれに取り組む目的について、正確に理解することから始めましょう。
IPOの基本的な定義
IPOとは、「Initial Public Offering」の略であり、日本語では「新規株式公開」または「新規上場」と訳されます。これは、これまで創業者一族や、特定のベンチャーキャピタルなど、限られた株主(未上場)しか保有していなかった自社の株式を、証券取引所(市場)を通じて、広く一般の投資家が売買できるようにすること(公開)を意味します。
株式を上場することで、企業は市場から直接資金を調達できるようになり、社会的な公器としての側面を強めていくことになります。
IPOの目的
企業が、多くのコストと3年以上の長い時間をかけてまでIPOを目指す目的は、多岐にわたります。
資金調達力の強化
IPOの最大の目的は、大規模かつ継続的な資金調達の手段を得ることです。公募増資(新株発行)によって、市場から直接、大規模な成長資金を調達することが可能となり、事業拡大や研究開発、M&Aへの大型投資が行えるようになります。また、上場企業としての信用力を背景に、金融機関からの借入(デットファイナンス)も、より有利な条件で進めやすくなります。
社会的信用の獲得
証券取引所の厳しい上場審査をクリアし、上場企業となることは、その会社が法令を遵守し、透明性の高い経営を行っている、社会的に信頼できる企業であることの強力な証明となります。この信用力は、大手企業との取引開始、海外展開、金融機関との関係構築など、あらゆるビジネスシーンにおいて、計り知れないメリットをもたらします。
優秀な人材の確保
企業の成長は「人」にかかっています。上場企業であるというステータスは、新卒および中途採用市場において、優秀な人材を惹きつける強力な武器となります。また、従業員に対してストックオプション(株式を購入できる権利)を付与することで、業績向上へのインセンティブを高め、組織全体のモチベーション向上に繋げることができます。
創業者利益の実現と事業承継
IPOは、創業者や、リスクを取って初期から支援してきたベンチャーキャピタル(VC)などの投資家にとって、投資した資金を回収し、大きな利益(キャピタルゲイン)を実現する「出口戦略(イグジット)」の、最も代表的な手段です。 また、同族経営の中小企業にとっては、自社株の相続や贈与が大きな問題となりますが、IPOによって株式に市場価格がつくことで、資産評価が明確になり、事業承継や相続税対策を円滑に進めやすくなるという側面もあります。
内部管理体制の強化
IPO準備のプロセスそのものが、会社を強制的に成長させます。証券取引所の要求水準を満たすために、内部統制や、予算管理、コンプライアンス体制をゼロから構築する過程で、属人的な経営から脱却し、持続的な成長が可能な、成熟した組織へと変革を遂げることができます。
IPOまでの流れ
IPOの準備は、上場を申請する日(申請期)を「N期」とすると、その2年前(N-2期)あるいは3年前(N-3期)から開始される、非常に長期的なプロジェクトです。
準備の初期段階(N-3期~N-2期)
IPOを目指すと決断したら、まず専門家チームの選定から始まります。
プロジェクトチームの組成
上場準備を牽引する、社内の専門部署(上場準備室)を設置するとともに、外部の専門家チームを選定します。具体的には、プロジェクトの全体指揮を執る「主幹事証券会社」、財務諸表の監査を行う「監査法人」、そして上場準備の実務を支援する「IPOコンサルタント」(公認会計士など)の三者が、最も重要なパートナーとなります。
課題の把握と計画立案
まず、監査法人による「ショートレビュー(短期調査)」を受け、上場基準と現状とのギャップ(会計処理の誤り、内部管理体制の不備など)を網羅的に洗い出します。 IPOコンサルタントは、この結果に基づき、いつまでに何を整備すべきかという、詳細な「上場準備スケジュール」と「資本政策」の草案を作成します。
内部管理体制の構築開始
洗い出された課題に基づき、上場企業としてふさわしい社内体制の構築を開始します。取締役会の運営、社内規程の整備、会計制度の確立、関連当事者取引(社長個人との取引など)の解消などが、この時期の主なタスクです。
申請直前期(N-1期)
申請期の1期前は、構築した管理体制を、実際に「運用」し、その実績を作る、極めて重要な期間です。
内部管理体制の運用と監査
N-2期に構築した予算管理や月次決算のフロー、内部統制の仕組みを、実際に一年間、遅滞なく運用します。監査法人は、このN-1期の期首から、上場企業と同様の本格的な会計監査(金融商品取引法に準ずる監査)を開始します。IPOコンサルタントは、この監査に会社が耐えられるよう、実務を徹底的にサポートします。
上場申請書類の作成準備
IPOの際に提出する、膨大な申請書類(「Iの部」「IIの部」と呼ばれる有価証券届出書や上場申請レポート)の作成準備に着手します。自社の歴史、事業内容、リスク情報、財務情報など、あらゆる情報を文書化していく、地道な作業です。
申請期(N期)
いよいよ上場を申請し、審査を受ける年です。
上場申請と取引所審査
N-1期の決算が確定し、監査報告書が発行された後、主幹事証券会社の審査を経て、正式に証券取引所(例:東京証券取引所)に上場申請を行います。 申請後は、証券取引所の審査官による、数ヶ月間にわたる厳格な審査(ヒアリングや実地調査)が行われます。IPOコンサルタントや主幹事証券会社と共に、審査官からの膨大な質問に対して、的確かつ迅速に回答していく必要があります。
上場承認と公開(ファイナンス)
取引所の審査を無事に通過すると、「上場承認」が得られます。その後、主幹事証券会社が中心となり、機関投資家への説明会(ロードショー)を経て、公開価格(株価)を決定します。 そして、定められた上場日に、自社の株式が市場で売買開始となり、晴れて上場企業としての第一歩を踏み出します。
IPOに関与する専門家
IPOは、経営者と従業員だけで達成できるものではありません。各分野の専門家がチームを組み、それぞれの役割を果たすことで、初めて実現可能となります。
証券会社(主幹事)
証券会社、特に「主幹事証券会社」は、IPOプロジェクト全体の総監督であり、最も中心的な役割を担います。上場準備スケジュールの管理、取引所審査の窓口、公開価格の算定、そして株式の引受・販売まで、IPOプロセスの全てを主導します。
監査法人
監査法人は、上場申請会社の財務諸表(決算書)が、会計基準に準拠して適正に作成されているかどうかを、独立した第三者の立場から監査し、「監査報告書」を発行します。この監査報告書がなければ、上場申請は受理されません。彼らは「審査官(試験官)」の立場であり、会社の味方ではありません。
証券印刷会社
上場申請書類や、投資家に配布する目論見書の印刷を専門に扱う会社です。単なる印刷ではなく、法律や取引所の規則に準拠した、極めて専門性の高い文書作成と校正のノウハウを持っています。
株式事務代行機関(信託銀行)
上場後は、株主の数が飛躍的に増大します。株主名簿の管理や、株主総会の招集通知の発送、配当金の支払いといった、煩雑な株式事務を、会社に代わって行うのが信託銀行などの株式事務代行機関です。
IPOコンサルティング会社
そして、この記事の主題であるIPOコンサルタントです。彼らは、上記の専門家とは異なり、完全に「会社側(経営者側)」の立場に立ちます。主幹事証券会社や監査法人といった「審査する側」から要求される、高いハードルをクリアできるよう、会社内部の体制構築を、実務レベルで指導・支援する「家庭教師」であり「伴走者」です。
IPOコンサルティングの役割
IPOコンサルタントの役割は、一言で言えば、「上場企業にふさわしい会社を、経営者と一緒になって作り上げること」です。監査法人が「問題点を指摘する(試験官)」のに対し、IPOコンサルタントは「問題点を解決する(家庭教師)」実務部隊です。
経営者の「壁打ち相手」
IPO準備の過程で、経営者は無数の重大な意思決定を迫られます。「資本政策はどうあるべきか」「この関連当事者取引は、どう解消すべきか」「どのレベルまで内部統制を整備すれば、監査法人は納得するか」。 IPOコンサルタントは、豊富な経験に基づき、これらの難問に対して具体的な選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを示し、経営者が最善の判断を下すための「壁打ち相手」となります。
監査法人・証券会社との「橋渡し(翻訳者)」
監査法人や証券会社が使う言語(会計用語、監査用語、法律用語)は、非常に専門的で、経営者には難解なことが多いです。監査法人から「レベニュー・レコグニション(収益認識)の論点があります」と指摘されても、具体的に何をどうすれば良いか、すぐには分かりません。 IPOコンサルタントは、これらの「専門家の言葉」を、経営者が理解できる「日常の言葉」に翻訳し、逆に、経営者の「想い」や「事業の実態」を、専門家が納得する「会計・法務の論理」に変換する、重要な橋渡し役を担います。
上場準備の実務部隊
IPO準備では、膨大な実務作業が発生します。社内規程の作成、J-SOX(内部統制)の3点セット(フローチャート、業務記述書、リスクコントロールマトリクス)の整備、申請書類の作成サポートなど、社内のリソースだけでは到底追いつきません。 IPOコンサルタントは、時には社外CFOや上場準備室長のように振る舞い、これらの実務作業をリードし、時には手を動かして作成を支援する、即戦力の実務部隊となります。
IPOコンサルティングの具体的なサービス提供内容
IPOコンサルタントが提供するサービスは、上場準備の各フェーズに応じて、極めて具体的かつ多岐にわたります。
IPO準備の初期段階(N-3期~N-2期)
この時期は、IPOに向けた土台作りのフェーズです。
ショートレビュー(短期調査)
監査法人が行うショートレビューに同席、あるいはその結果を受けて、上場審査の観点から、現状の会計処理や管理体制の問題点を詳細に洗い出します。監査法人よりも、さらに踏み込んだ「解決策」の提示が求められます。
資本政策の立案
IPOコンサルティングにおいて、最も重要で価値のあるサービスの一つです。創業者利益、安定株主の確保、資金調達の必要額、ストックオプションの付与計画などを総合的に勘案し、将来の出口(IPO時)から逆算した、最適な株式(持分比率)の配分計画を作成します。この初期設計が、経営者の将来を決めると言っても過言ではありません。
内部管理体制の構築支援
上場企業に求められる、社内体制の土台をゼロから構築します。
- 社内規程の整備: 取締役会規程、組織規程、経理規程、購買規程、コンプライアンス規程など、数十種類にも及ぶ社内規程のサンプル提供と、実態に合わせたカスタマイズを行います。
- 組織・機関設計: 取締役会や監査役(または監査等委員会)といった、会社のガバナンスを担う機関の設計と、その適切な運営方法(議事録の作成指導など)を支援します。
- 関連当事者取引の解消: IPO審査で最も厳しく見られる、社長個人との不動産取引や、親族が経営する会社との不明瞭な取引などを、法務・税務上問題のない形で解消するためのスキームを立案します。
会計制度の整備
上場企業として認められる、透明性の高い会計制度を構築します。
- 会計基準の整備: 「収益認識に関する会計基準」や「ソフトウェアの資産計上」など、上場企業に求められる複雑な会計基準への対応方針を策定します。
- 管理会計の導入: 単なる税務申告のための会計ではなく、経営判断に役立つ「管理会計」の仕組み(例:部門別損益管理、プロジェクト別原価計算)を導入します。
申請直前期(N-1期)
この時期は、構築した体制を「運用」し、その証拠を残すフェーズです。
内部統制(J-SOX)の構築・運用支援
上場企業には、財務報告の信頼性を確保するための内部統制報告制度(J-SOX)への対応が求められます。IPOコンサルタントは、このJ-SOX対応の核心である「3点セット」(フローチャート、業務記述書、リスクコントロールマトリクス)の作成を支援し、実際にその統制が機能しているかをテスト・評価するプロセスの構築をリードします。
決算体制の整備と早期化支援
上場企業は、四半期ごとに決算を開示する義務があります。年に一度の決算しか行ってこなかった会社にとって、この「決算早期化」は非常に高いハードルです。IPOコンサルタントは、月次決算のプロセスを見直し、決算日後、速やかに(例:10営業日以内)数値を確定できる体制の構築を支援します。
上場申請書類(Ⅰの部、Ⅱの部)の作成支援
IPO申請で提出する、中核的な開示資料である「Ⅰの部(有価証券届出書)」や「Ⅱの部(上場申請レポート)」の作成を支援します。これらの書類は、数百ページにも及ぶ膨大なものであり、会社の事業内容、リスク、財務状況などを、投資家保護の観点から、詳細かつ正確に記述する必要があります。
申請期(N期)
いよいよ審査本番のフェーズです。
取引所審査への対応支援
証券取引所の上場審査官から矢のように飛んでくる、膨大な質問(数千問に及ぶこともあります)に対して、迅速かつ的確な回答書を作成する作業を支援します。ここで回答が遅れたり、不正確だったりすると、審査がストップする可能性もあります。
監査法人対応のサポート
取引所審査と並行して、監査法人によるN-1期および申請期の期末監査、四半期レビューも行われます。監査法人から提示される会計上の論点や、内部統制の不備指摘に対して、会社側の立場から対応方針を協議し、必要な改善策を実行します。
IPOコンサルティングを活用するメリット
IPOコンサルタントの活用は、単なる「作業の外注」ではありません。IPOの成功確率を飛躍的に高め、上場後の持続的成長の基盤を築くための、戦略的な「投資」です。
経営者が本業に集中できる
これが最大のメリットです。IPO準備は、通常業務と並行して行われる、極めて過酷なプロジェクトです。経営者が、申請書類の作成や、規程集の整備といった実務作業に忙殺されてしまうと、その間、会社の「本業」である事業成長が止まってしまいます。 IPOコンサルタントにこれらの専門的な実務を任せることで、経営者は、経営判断や、事業戦略の遂行、そして取引所審査の面談対応といった、「経営者にしかできない仕事」に集中することができます。
IPO準備のスピードと確実性の向上
IPO準備には、「いつまでに、何を、どのレベルまで」整備すべきかという、膨大なノウハウの蓄積が必要です。これらを全て自社でゼロから学びながら進めるのは、非効率であるだけでなく、致命的な見落としや手戻りを発生させる原因となります。 経験豊富なIPOコンサルタントは、上場審査の「ツボ」を熟知しています。彼らの知見を活用することで、無駄な作業を省き、最短ルートで、かつ確実に審査基準をクリアする体制を構築することができます。
監査法人や証券会社との円滑なコミュニケーション
監査法人や主幹事証券会社は、「審査する側」のプロフェッショナルです。彼らとの専門的な議論において、経営者が直接対峙するのは困難な場面も多いです。 IPOコンサルタントは、「会社側」のプロフェッショナルとして、監査法人や証券会社と対等に渡り合います。彼らの指摘の真意を汲み取り、会社の実態に即した現実的な解決策を提示することで、コミュニケーションを円滑にし、無用な対立を避けることができます。
審査通過のボトルネックを早期に解消
上場審査では、会計処理の妥当性や、関連当事者取引の解消、内部統制の不備など、特定の「ボトルネック」が審査の長期化や、最悪の場合、上場延期・中止の原因となります。 IPOコンサルタントは、その豊富な経験から、早い段階でこれらの潜在的なリスクを発見し、審査本番で問題となる前に、解決策を実行します。
上場後の持続的成長を見据えた体制構築
IPOはゴールではなく、スタートです。IPOコンサルタントは、単に審査を通過するためだけの、付け焼き刃の体制を作ることはしません。上場後も、四半期決算や適時開示、J-SOXの運用に耐えうる、持続可能でスケーラブルな管理体制の構築を目指します。この基盤があるからこそ、会社は上場後も、着実に成長を続けることができます。
IPOコンサルティング会社の特徴
IPOコンサルティングを提供するプレイヤーは、その成り立ちによって、いくつかのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解することが、自社に合ったパートナーを選ぶ上で役立ちます。
監査法人系コンサルティングファーム
大手監査法人(いわゆるBig4など)や、準大手の監査法人が、コンサルティング部門として提供するサービスです。
- 強み: 監査法人のブランド力と信頼性。最新の会計基準や監査実務に精通。大規模な組織力。
- 弱み: 料金が非常に高額になる傾向がある。監査部門との独立性の観点から、支援できる業務範囲に制約(例:監査対象の会社には、一部のコンサルティングが提供できない)がある場合がある。
証券会社系コンサルティング会社
主幹事証券会社(野村證券、大和証券、SMBC日興証券など)が、子会社として持つコンサルティング部門です。
- 強み: 証券会社の引受部門(審査部門)と密接に連携しており、取引所審査の最新の動向や、証券会社の視点を熟知している。
- 弱み: 主幹事証券会社が変更になった場合、関係性が難しくなる可能性がある。
独立系IPOコンサルティング会社
監査法人や証券会社に属さず、IPO支援を専門に行う、独立したコンサルティングファームです。
- 強み: 特定の監査法人や証券会社に縛られない、中立的な立場からアドバイスが可能。IPO実務に関するノウハウが豊富に蓄積されている。
- 弱み: 規模や専門性がファームによって玉石混交であり、見極めが難しい。
公認会計士・税理士事務所
公認会計士が代表を務める、個人事務所や中小の会計事務所が、IPOコンサルティングを提供しているケースです。
- 強み: 大手に比べて料金がリーズナブルである可能性が高い。公認会計士が直接、密に対応してくれるため、フットワークが軽く、柔軟な対応が期待できる。
- 弱み: 事務所の規模によっては、大規模なプロジェクトに対応できるリソースが限られている場合がある。個々の公認会計士の経験と実績に、品質が大きく依存する。
IPOコンサルティング会社を選ぶ際のポイント
IPOの成否を分ける、非常に重要なパートナー選びです。以下のポイントを、総合的に、かつ慎重に評価する必要があります。
豊富なIPO支援実績(特に同業種・同規模)
これが、最も重要な判断基準です。「IPOコンサルティングができる」と言うだけでは不十分です。 「これまでに何社のIPOを、どのステージから関与し、上場まで導いたか」という、具体的な実績(支援実績リストなど)を提示してもらいましょう。 特に、自社と同じ業種(例:IT-SaaS、バイオ、小売など)や、同じような事業規模の会社の支援実績が豊富であれば、業界特有の会計論点やビジネスモデルを深く理解している可能性が高く、理想的です。
担当コンサルタントの実務経験と専門性
契約するのは「会社」ですが、実際にあなたの会社を担当するのは「個人」です。事務所の実績だけでなく、実際にアサインされる担当コンサルタントが、どのような経歴を持っているかを、厳しくチェックする必要があります。 監査法人での上場監査の経験、事業会社での上場準備室の経験、主幹事証券会社での引受業務の経験など、IPO実務に関する直接的な経験が豊富かどうかを見極めましょう。
監査法人・証券会社とのネットワーク
IPOは、監査法人、主幹事証券会社、コンサルタントの三者が、緊密に連携するチームスポーツです。 候補となるコンサルタントが、自社が契約(または契約予定)の監査法人や、主幹事証券会社と、過去に仕事をした経験があるか、良好なネットワークを持っているかを確認しましょう。互いの仕事のスタイルや、要求水準を理解している関係であれば、コミュニケーションは格段にスムーズになります。
経営者との相性(コミュニケーション)
IPO準備は、3年以上にわたる長く過酷なプロセスです。経営者は、担当コンサルタントと、家族以上に濃密な時間を過ごすことになるかもしれません。 専門知識はもちろんのこと、「この人になら、会社の未来を託せる」「この人とは、厳しい局面でも本音で議論できる」と心から信頼できるかどうか、という人間的な相性は、プロジェクトの成否を左右する極めて重要な要素です。
料金体系の明確さと妥当性
IPOコンサルティングの費用は高額になります。提示された見積もりが、明確で、納得感のあるものかを確認しましょう。 「月額顧問料」「プロジェクトフィー」「成功報酬」など、どのような体系で、どの業務にいくらかかるのか。また、想定される「追加費用」にはどのようなものがあるのか。料金の絶対額だけでなく、提供されるサービスの価値と見合っているかという、費用対効果の視点で判断することが大切です。
IPOコンサルティング会社を選ぶ際の留意点
最適なパートナーを選ぶためには、契約前に確認しておくべき、いくつかの留意点があります。
「監査」と「コンサルティング」の役割の違い
前述の通り、監査法人は「審査官」であり、IPOコンサルタントは「家庭教師」です。監査法人は、独立性の観点から、会社の内部統制の構築や、会計処理の方法を「指導」することはできません。 この役割分担を理解せず、監査法人にコンサルティングを期待してしまうと、プロジェクトは頓挫します。監査法人の指摘を、会社がクリアできるよう、実務をサポートするのがコンサルタントの役割であると、明確に認識しておく必要があります。
実績の「質」を見極める
単に「IPO実績〇〇社」という数だけでなく、その「質」を見極めることが重要です。 例えば、支援した会社が、どのような市場(例:東証グロース、スタンダード)に上場したのか。あるいは、上場準備の最終局面(N期)だけ関与したのか、それとも、N-3期という初期段階から、資本政策も含めて深く関与したのか。後者のような、深く、長期的な支援実績が豊富であるほど、信頼性は高いと言えます。
担当者が途中で変わるリスク
特に大手コンサルティングファームに依頼した場合、契約時の面談は経験豊富なパートナーが行い、実際の現場担当は、経験の浅い若手スタッフになる、というケースも少なくありません。 契約前に、「実際に、どのレベルの、誰がメインで担当してくれるのか」「担当者が途中で変更になる可能性はないか」を、明確に確認しておくべきです。
「丸投げ」はできないという意識
IPOコンサルタントは、非常に強力なパートナーですが、彼らがIPOを達成させてくれるわけではありません。IPOを達成する主体は、あくまでも会社自身です。 経営者が、IPOへの強いコミットメントを持ち、コンサルタントのアドバイスを真摯に受け止め、社内のリソース(人員、時間)を適切に投入し、主体的に行動しなければ、プロジェクトは決して前に進みません。「コンサルに任せておけば大丈夫」という、「丸投げ」の姿勢では、IPOは実現不可能です。
IPOコンサルティング会社の費用相場
IPOコンサルティングの費用は、会社の規模や準備状況、依頼する業務範囲によって大きく変動するため、一概に「いくら」と言うのは困難です。ここでは、一般的な相場観と考え方を解説します。
費用の決定要因
コンサルティング費用は、主に以下の要因によって決まります。
- 企業の規模と準備状況: 会社の規模(売上、従業員数)が大きいほど、また、内部管理体制の整備が遅れている(ギャップが大きい)ほど、コンサルタントの工数は増大し、費用は高くなります。
- 支援の範囲と期間: J-SOX支援、申請書類作成、資本政策立案など、依頼する業務範囲が広く、支援期間が長期(例:N-3期から)にわたるほど、費用は高くなります。
- コンサルタントの経験値: 経験豊富なシニアコンサルタントやパートナーレベルが、どれだけ関与するかによって、時間単価が変わってきます。
契約形態別の費用相場
契約形態は、主に「顧問契約型」と「プロジェクト型」、そして「成功報酬型」があります。
顧問契約型
月額固定の顧問料を支払う形態が、最も一般的です。
- N-3期~N-2期(体制構築期): 月額30万円~70万円程度。週1回の訪問や、定例ミーティング、規程整備などが含まれます。
- N-1期~N期(運用・申請期): 月額50万円~150万円程度。J-SOX支援や、監査・審査対応など、業務が本格化するため、費用も上昇します。
プロジェクト型
「J-SOXの3点セット作成支援」「資本政策立案」といった、特定のプロジェクト単位で、見積もりが行われるケースもあります。プロジェクトの難易度に応じて、100万円~500万円以上と、幅があります。
成功報酬型
一部の独立系コンサルタントや、資金調達支援に特化した場合、「上場承認時」に、数百万~数千万円の成功報酬を設定するケースもあります。月額顧問料を抑える代わりに、成功報酬でレバレッジをかけるモデルです。
トータルで見ると、IPO準備の初期段階から上場承認まで、3年間のコンサルティング費用の総額は、数千万円規模になることが一般的です。これは、上場を達成するために必要な「投資」と考えるべきです。
IPOコンサルティングに公認会計士を活用するメリット
IPOコンサルタントには、様々なバックグラウンドを持つ人がいますが、その中で「公認会計士」の資格を持つ専門家(または公認会計士が運営する事務所)に依頼することには、特有の大きなメリットがあります。
監査法人の視点を熟知
公認会計士の多くは、キャリアの初期に監査法人で、上場企業の監査や、IPO準備会社の監査を経験しています。そのため、「審査する側」である監査法人が、どのような点に着目し、どのレベルの管理体制を要求するかを、肌感覚で熟知しています。 この「監査人の視点」を持っていることが、監査法人とのコミュニケーションや、指摘事項への対応において、極めて大きな強みとなります。
会計・内部統制の高度な専門性
IPO準備の中核は、上場基準を満たす「会計制度の構築」と、「内部統制(J-SOX)の整備」です。公認会計士は、会計と監査の国家資格を持つ、まさにこの分野のプロフェッショナルです。 複雑な収益認識基準の適用や、ソフトウェアの資産計上、J-SOXの3点セットの作成といった、高度な専門知識が要求される領域において、その知見を遺憾なく発揮します。
監査法人との円滑なコミュニケーション
IPO準備では、監査法人との間で、会計処理や内部統制の評価をめぐり、専門的な議論が頻繁に発生します。経営者が直接対応するのは困難な場面も多いです。 公認会計士は、監査法人と「同じ言語(会計・監査の専門用語)」で対等に議論し、会社の立場を論理的に説明することができます。これにより、無用な誤解や対立を防ぎ、円滑な監査対応を実現します。
財務DDやショートレビューへの迅速な対応
IPO準備の初期段階で行われるショートレビューや、M&Aが絡む場合の財務デューデリジェンス(DD)においても、公認会計士はその専門性を発揮します。監査法人から指摘された財務上の問題点に対して、その根本原因を迅速に特定し、具体的な改善策(会計処理の変更や、管理フローの構築)を提示することができます。
上場後も見据えた継続的なサポート
公認会計士は、税理士資格も併有していることが多く、税務の専門家でもあります。IPOを達成した後も、そのまま顧問税理士・会計士として、月次決算の早期化、適時開示体制の整備、税務戦略の立案など、上場企業として必要な管理体制を、継続的にサポートしてくれるパートナーとなり得ます。
まとめ
IPO(新規株式公開)。それは、多くの起業家が目指す、大きな夢の舞台です。しかし、その舞台に立つためには、3年以上にわたる、長く過酷な準備プロセスを、確実に乗り越えなければなりません。
この記事では、その険しい道のりを、経営者と共に歩み、専門知識と実務能力でプロジェクトを牽引する、「IPOコンサルタント」、特に「公認会計士」の活用法について、徹底的に解説してきました。
最適なIPOコンサルタントとは、単なる作業代行者ではありません。あなたの会社のビジョンに共感し、監査法人や証券会社といった「審査側」の視点を熟知した上で、上場企業にふさわしい内部管理体制をゼロから共に作り上げる、**経営者の「家庭教師」であり、「伴走者」**です。
その最高のパートナーを見つけ出す鍵は、「IPO支援の具体的な実績」、特に自社と似た業種や規模の会社を上場に導いた経験です。そして、監査法人や証券会社と対等に渡り合える「専門性」、何よりも、長い準備期間を共に戦い抜くことができる「人間的な相性」を、総合的に見極めることにあります。
IPOコンサルティングに支払う費用は、決して安くはありません。しかし、それは、IPOという目標を、より早く、より確実に達成し、上場後も持続的に成長できる強固な経営基盤を築くための、極めて価値の高い「戦略的投資」です。
この記事が、あなたのIPOという重要な挑戦の羅針盤となり、あなたの会社が輝かしい未来へと力強く羽ばたいていく一助となれば、幸いです。まずは、勇気を出して、気になる専門家の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。
IPOコンサルティングで公認会計士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください。料金表は税務顧問になっていますが、もちろん公認会計士なので、IPOコンサルティングも対応可能です(初回無料相談)。
この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
