土地や建物といった不動産を売却するという経験は、人生においてそう何度も訪れるものではありません。相続した実家の土地を処分する場合や、住み替えのために長年住んだ土地を手放す場合など、その背景は様々ですが、共通しているのは「非常に大きなお金が動く」ということです。そして、大きなお金が動くところには、必ずと言っていいほど複雑な「税金」の問題が付随します。
不動産の売却が無事に完了し、売買代金が手元に入ると一安心してしまうのが人情ですが、翌年には税務署への「確定申告」という大きな手続きが待ち受けています。会社員の方など、普段は年末調整だけで納税が完結している方にとって、確定申告は未知の領域であり、高いハードルを感じる作業でしょう。特に土地の売却に伴う税務は、専門的な知識がないまま進めると、本来払わなくて済む税金を払ってしまったり、逆に申告漏れによって思わぬペナルティを課されたりするリスクがあります。
そこで検討したいのが「税理士への依頼」です。しかし、専門家に頼むとなると、「費用はどれくらいかかるのか」「本当に依頼するメリットはあるのか」「自分でやるのと何が違うのか」といった疑問が尽きないはずです。
本記事では、土地売却に伴う確定申告の基礎知識から、申告が必要なケース、行わない場合のリスク、そして税理士に依頼する際の費用感や選び方に至るまでを網羅的に解説します。
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土地売却の確定申告を税理士へ依頼する場合の費用は?税理士活用メリット含め徹底解説
土地売却時に確定申告は必要か?
土地を売却したからといって、全てのケースで必ずしも確定申告が必要になるわけではありません。義務が発生する場合と、義務はないものの申告したほうが有利になる場合、そして申告が不要な場合に分かれます。まずはご自身の取引がどのパターンに当てはまるのかを正しく理解することから始めましょう。
利益(譲渡所得)が発生した場合
土地売却において確定申告が必要となる最も代表的なケースは、売却によって「利益」が出た場合です。この利益のことを税務用語で「譲渡所得」と呼びます。ここで注意しなければならないのは、売却した金額そのものが利益になるわけではないという点です。
譲渡所得は、土地を売った金額から、その土地を手に入れた時の購入代金や購入にかかった費用(取得費)、そして今回の売却にかかった仲介手数料や測量費などの費用(譲渡費用)を差し引いて計算します。この計算の結果、プラスになれば利益が出たことになり、その利益に対して所得税や住民税が課税されます。
給与所得などの他の所得とは分けて計算する「申告分離課税」という方式が採用されているため、会社員であっても、この譲渡所得については別途ご自身で確定申告を行い、税額を確定させて納税する義務があります。この手続きを怠ると、脱税とみなされる恐れがあるため注意が必要です。
損失が発生した場合
計算の結果、売却金額よりも購入費用や諸経費の方が高くつき、マイナス(損失)になってしまった場合はどうでしょうか。この場合、利益が出ていないため、原則として税金は発生しません。したがって、税務署に対して確定申告を行う法的な義務はありません。
しかし、義務がないからといって申告をしないのは、賢明な判断ではない場合があります。なぜなら、一定の要件を満たす居住用財産(マイホーム)の敷地などを売却して損失が出た場合、その損失を他の所得、例えば給与所得や事業所得から差し引くことができる特例制度があるからです。これを「損益通算」と呼びます。
損益通算を行うことで、全体の所得を圧縮し、すでに源泉徴収されていた所得税が還付されたり、翌年の住民税が安くなったりする可能性があります。さらに、その年だけで損失を引ききれない場合は、翌年以降数年間にわたって損失を繰り越し、将来の税金を減らすことができる制度もあります。つまり、損失が出た場合は「義務はないが、申告することで税金が戻ってくる可能性がある」ため、積極的に確定申告を検討すべきケースと言えます。
特例控除を利用する場合
土地売却においては、税金の負担を軽くするための様々な「特例措置」が用意されています。例えば、マイホームが建っていた土地を売却した際に利用できる特別控除や、相続した空き家を取り壊して更地にして売却した場合の特別控除などです。これらの特例を適用すると、譲渡所得から一定額を差し引くことができ、結果として税金がゼロになることも珍しくありません。
ここで非常に重要な落とし穴があります。それは、「特例を使って計算上の税金がゼロになる場合でも、確定申告は必須である」という点です。特例というものは、自動的に適用されるものではなく、確定申告書を提出し、税務署長に対して「私はこの特例を使います」と申告することではじめて適用される制度だからです。
「特例を使えば税金は出ないから、申告もしなくていいだろう」と自己判断し、申告を行わないままでいると、特例の適用要件を満たしていないとみなされます。その結果、後日税務署から指摘を受け、特例なしの本来の税額に加え、無申告のペナルティまで請求されることになりかねません。特例を利用する際は、必ず確定申告が必要であることを肝に銘じておきましょう。
確定申告の提出期限
確定申告には法律で定められた厳格な期限があります。この期限を守ることは納税者の基本的な義務であり、無用なトラブルを避けるための第一歩です。
原則的な申告期間
土地を売却した翌年の決められた期間内に、現在の住所地を管轄する税務署へ申告書を提出する必要があります。通常、この期間は毎年2月16日から3月15日までの1ヶ月間と定められています。ただし、日付が土曜日や日曜日に重なる場合は、翌月曜日が期限となるなどの調整が入ることもあります。
例えば、ある年の夏に土地を売却して利益が出たとします。その場合、申告を行うのは売却した年の翌年の2月から3月です。売却手続きが終わってから申告まで半年以上の期間が空くことも多く、その間に必要書類を紛失してしまったり、申告義務そのものを忘れてしまったりするリスクがあります。カレンダーや手帳に予定を書き込み、早めに準備を開始することが大切です。
納税のタイミング
申告書の提出だけでなく、計算された税金を納める「納税」にも期限があります。原則として、所得税の納付期限は確定申告書の提出期限と同じ日です。つまり、3月15日が申告期限であれば、その日までに金融機関や税務署の窓口、あるいはコンビニエンスストアなどで税金を納めなければなりません。
銀行口座からの振替納税の手続きをしている場合は、通常4月の中旬頃に指定口座から引き落とされます。振替納税は納付の手間が省けるだけでなく、実質的な納付期限が1ヶ月ほど後ろ倒しになるため、資金繰りの面でもメリットがあります。ただし、残高不足で引き落としができないと延滞扱いになってしまうため、事前の残高確認は必須です。
期限を過ぎてしまった場合
万が一、3月15日の期限を過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか。これを「期限後申告」と呼びます。期限を過ぎてしまっても、申告自体は可能ですし、一日でも早く申告と納税を行うべきです。
期限後申告となった場合、本来納めるべき税金に加え、後述するペナルティとしての税金が加算される可能性があります。また、青色申告を行っている個人事業主などの場合は、特別控除の減額などのデメリットも生じます。何より、税務署からの信用を失うことになりかねません。
やむを得ない事情、例えば災害に遭った場合などは期限の延長が認められることもありますが、単なる「忘れていた」「忙しかった」という理由は通用しません。期限内に申告を済ませることは、自分自身を守るためにも極めて重要です。
土地売却時の確定申告を行わない場合のペナルティ
「バレなければ大丈夫だろう」あるいは「知らなかった」では済まされないのが税金の世界です。不動産の売買情報は法務局の登記情報などを通じて税務署も把握しているため、無申告は高い確率で発覚します。確定申告が必要であるにもかかわらずそれを行わなかった場合、あるいは申告期限に遅れた場合には、本来の税額に上乗せする形で行政上の制裁、いわゆるペナルティが課されます。
無申告加算税
正当な理由なく申告期限までに申告をしなかった場合に課されるのが「無申告加算税」です。これは、本来納めるべき税額に対して、一定の割合でペナルティが加算されるものです。
このペナルティの割合は、自主的に期限後申告をした場合と、税務署からの指摘や調査を受けてから申告した場合とで大きく異なります。税務署から指摘を受ける前に、自ら進んで「申告を忘れていました」と申し出れば、ペナルティは比較的軽く済みます。しかし、税務署の調査が入ってからでは、より重い負担を強いられることになります。申告漏れに気づいたら、調査の連絡が来る前に直ちに行動することが重要です。
延滞税
延滞税は、税金の納付が法定の期限より遅れた場合に課される、いわば「利息」のような性格を持つ税金です。納付期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて、日割り計算で課されます。
延滞税の割合は、納付期限から一定期間を経過すると高くなる仕組みになっています。つまり、納付が遅れれば遅れるほど、雪だるま式に金額が膨らんでいきます。たとえ申告書の提出が遅れていなかったとしても、納税資金が足りずに納付が遅れた場合にはこの延滞税が発生します。土地売却に伴う税金は高額になることが多いため、売却代金を他の用途に使い込んでしまわず、納税資金を確実に確保しておくことが不可欠です。
重加算税
数あるペナルティの中で最も重いのが「重加算税」です。これは、単なるうっかりミスや申告忘れではなく、意図的に売却の事実を隠したり、書類を改ざんして税金をごまかそうとしたりした(仮装・隠蔽)と判断された場合に課されます。
例えば、二重契約書を作成して売却価格を低く見せかけたり、架空の経費を計上して利益を圧縮しようとしたりする行為がこれに該当します。重加算税が適用されると、本来の税額に対して非常に高い割合の税金が上乗せされます。さらに、一度このような悪質な行為があると認定されると、将来にわたって税務署からのマークが厳しくなるという社会的信用の失墜にもつながります。
土地売却に関する確定申告を税理士へ依頼するメリット
土地売却の確定申告は、国税庁のウェブサイトなどを参考にして自分で行うことも可能です。しかし、多くの人が費用をかけてでも税理士に依頼するのには明確な理由があります。それは、単に「面倒な作業を代行してもらう」以上の、リスク回避や節税効果といった実質的なメリットがあるからです。
正確な税額計算と過払い・過少申告の防止
土地の譲渡所得税の計算は、一見単純な引き算に見えますが、実際には多くの専門的な判断を要します。特に難しいのが、売却にかかった経費(譲渡費用)や、取得にかかった費用(取得費)の範囲の判定です。
例えば、土地を売るために古家を解体した場合、その解体費用は経費になるのか。測量費や印紙代はどうか。あるいは、過去に支払った相続登記の費用は取得費に含まれるのか。こうした判断を一つ間違えるだけで、税額が大きく変わってしまいます。
税理士に依頼すれば、税法の規定に基づき、経費として認められるものを漏れなく計上してくれます。これにより、税金を払いすぎる「過払い」を防ぐことができます。同時に、認められない経費を誤って計上してしまうことによる「過少申告」のリスクも回避できます。正確な申告は、将来の税務調査リスクを減らすための最大の防御策です。
取得費が不明な場合の対応
先祖代々受け継がれてきた土地や、何十年も前に購入した土地の場合、購入時の契約書が見つからず、いくらで買ったのか(取得費)が分からないというケースが多々あります。取得費が分からない場合、一般的には売却金額の一定割合(概算取得費)を使って計算しますが、これでは実際の購入額よりも低く見積もられ、結果として税金が高額になってしまうことがあります。
このような場合、税理士の専門知識が大きな力を発揮します。税理士は、当時の市況データや、近隣の類似物件の取引事例、あるいは過去の抵当権設定額など、様々な間接的な資料を収集・分析し、合理的な取得費を推計することがあります。税務署に対して説得力のある根拠を示し、概算取得費よりも有利な計算方法を採用できる可能性を探ってくれるのです。これは、一般の方が自分で行うのは極めて困難な作業です。
特例適用の可否判定とアドバイス
土地売却には多くの特例がありますが、その適用要件は非常に複雑で細かく規定されています。
例えば、マイホームを売却した時の特別控除を受けるには、住まなくなってから一定期間内に売却する必要があります。また、親子間や夫婦間での売買には適用されません。さらに、買い換え特例を使う場合は、売却する土地と新しく買う土地の両方に要件があり、どちらの特例を使ったほうがトータルで有利になるかのシミュレーションも必要です。
税理士は、依頼者の状況を詳しくヒアリングし、どの特例が適用できるか、またどの特例を選択するのが最も経済的合理性が高いかを総合的に判断してくれます。複雑な要件をクリアしているかどうかの判定をプロに任せることで、安心して節税の恩恵を受けることができます。
手間と時間の削減
確定申告を行うには、法務局で登記簿謄本を取得し、契約書や領収書を探し出し、慣れない申告書作成システムに入力し、税務署へ提出するという一連の作業が必要です。普段、税務に触れていない方にとって、これらの作業には膨大な時間と精神的なエネルギーを要します。また、平日の日中に役所へ行く時間が取れない方も多いでしょう。
税理士に依頼すれば、必要書類のリストアップから始まり、書類の作成、提出までを一貫して代行してもらえます。依頼者は、手元にある資料を税理士に渡し、いくつかの質問に答えるだけで済みます。面倒な手続きから解放され、貴重な時間を自分の仕事や生活のために使えるというのは、大きなメリットと言えるでしょう。
税務調査への対応
申告書を提出した後、忘れた頃に税務署から問い合わせや税務調査が入ることがあります。「計算の根拠を示してほしい」「特例の要件を満たしている証明を出してほしい」といった専門的な指摘に対し、一般の方が適切に対応するのは困難です。
税理士に依頼していれば、申告書作成の代理人として、税務調査の際の窓口になってもらえます。税理士は申告内容の正当性を税務署に対して論理的に説明し、依頼者を守る役割を果たします。万が一の時にも頼れる専門家がいるという安心感は、何物にも代えがたいものです。
土地売却に関する確定申告を税理士へ依頼する場合の費用相場
税理士に依頼するメリットは理解できても、やはり気になるのは費用のことでしょう。税理士の報酬は現在自由化されており、事務所によって料金体系は異なりますが、一般的な相場の仕組みや変動要因について解説します。
報酬体系の仕組み
土地売却の確定申告に関する税理士報酬は、一般的に「基本料金」と「加算料金」の組み合わせで構成されていることが多いです。
まず「基本料金」は、確定申告書を作成するためのベースとなる手数料です。これに加えて、売却した土地の価格や、売却によって得られた利益(譲渡所得)の額に応じた「従量制の報酬」が加算されるケースが一般的です。つまり、売却額が大きく、計算が複雑になるほど、あるいは責任が重くなるほど、報酬も高くなる傾向があります。
また、特別な節税特例(特別控除や買い換え特例など)を利用する場合には、その適用判定や添付書類作成の手間が増えるため、「特例適用料」として別途費用が加算されることがあります。
一般的な費用の目安
あくまで目安ですが、土地売却の確定申告報酬は、十数万円程度からスタートし、売却規模や難易度に応じて数十万円、場合によってはそれ以上となるイメージです。
例えば、資料が完全に揃っていて計算がシンプルなケースであれば、比較的安価に収まることもあります。一方で、数億円規模の土地取引であったり、複数の土地をまとめて売却したりした場合などは、報酬もそれに応じた金額になります。
「相談料」については、初回相談を無料としている事務所も多いですが、具体的な税額シミュレーションや複雑な特例適用の可否判断のみをスポットで依頼する場合は、時間制(タイムチャージ)での相談料が発生することもあります。
費用が高くなるケース
以下のようなケースでは、標準的な報酬よりも高くなる可能性があります。
- 取得費が不明で調査が必要な場合:購入時の資料がなく、合理的な取得費を算定するために過去の資料を調査したり、推計計算を行ったりする手間が発生する場合。
- 共有名義の場合:夫婦や兄弟などで共有していた土地を売却し、複数人分の申告書を作成する必要がある場合。人数分の作成料がかかるか、あるいは割引が適用されるかは事務所によります。
- 期限間近の依頼:申告期限(3月15日)の直前に駆け込みで依頼する場合、特急料金が発生することがあります。
- 権利関係が複雑な場合:借地権や底地権が絡む売却や、相続手続きとセットで行う必要がある場合など。
費用については「安ければ良い」というものではありません。あまりに安価な報酬を提示する事務所は、サービスの範囲が限定的であったり、資産税(不動産税務)の経験が浅かったりする可能性もあります。提示された金額にどのようなサービスが含まれているのか、特例の検討などはしっかり行ってもらえるのかを確認し、費用とサービス内容のバランスを見極めることが重要です。
土地売却に関する確定申告を税理士へ依頼する際に必要な書類とは
税理士に依頼する場合でも、すべての作業を丸投げできるわけではありません。申告の根拠となる重要書類は、依頼者自身が集めて税理士に渡す必要があります。スムーズに手続きを進めるために、どのような書類が必要になるのかを把握しておきましょう。
売却時の書類
まず不可欠なのが、今回土地を売却した際のお金の動きを証明する書類です。
- 売買契約書(売却時):いくらで売れたか、契約日や引渡し日はいつかを確認するための最も重要な書類です。
- 譲渡費用の領収書:仲介手数料、契約書に貼った印紙代、測量費、建物の解体費など、売却にかかった経費の領収書です。これらを経費として計上することで税金を安くできます。
- 固定資産税の精算書:売却時に買主と精算した固定資産税や都市計画税の明細書です。これも譲渡対価や経費の一部として計算に含まれます。
取得時の書類
税金を計算する上で、最も重要かつ紛失しやすいのが「その土地を購入した時の資料」です。
- 売買契約書(購入時):その土地をいくらで買ったかが分かる契約書です。先代からの相続などで古い場合も、実家の金庫やタンスなどを探してみましょう。
- 取得費用の領収書:購入時の仲介手数料や登記費用の領収書です。
- 相続税の申告書(相続時の場合):相続によって取得した土地の場合、相続税の一部を取得費に加算できる特例が使える可能性があるため、当時の申告書が必要になることがあります。
これらの書類がないと、実際の購入額を使えず、概算の取得費(売却額の一定割合)を使わざるをえなくなり、結果として税金が高くなってしまうことがあります。
公的な証明書
売却した土地の内容や所有権の移転を公的に証明する書類です。
- 登記事項証明書(登記簿謄本):土地の面積、所有権の移転日などを確認します。法務局で取得できます。
- 印鑑証明書:申告書に添付する場合や、税理士への委任状に使用します。
これらの書類は、適用を受けたい特例によって異なりますので、税理士の指示に従って漏れなく取得しましょう。
土地売却の確定申告を自分で行うことは可能か?
ここまで税理士に依頼するメリットを解説してきましたが、必ずしも全員が税理士に依頼しなければならないわけではありません。状況によっては、自分で行うことも十分可能です。
自分で行うハードル
自分で確定申告を行うためのハードルは、主に「知識」「時間」「ITリテラシー」の3点です。 まず、税法の仕組みを理解し、自分のケースに当てはまる計算方法や特例を調べる必要があります。次に、平日の日中に役所で書類を集めたり、税務署へ相談に行ったりする時間の確保が必要です。そして最近は、国税庁のウェブサイトで申告書を作成するのが主流となっているため、パソコンやスマートフォンの操作に慣れていることも求められます。
自分で申告しても問題ないケース
以下のような条件に当てはまる場合は、自分で申告を行うハードルは比較的低く、税理士に依頼しなくても対応可能でしょう。
- 資料がすべて揃っている:購入時の契約書や領収書が完璧に残っており、取得費や譲渡費用の金額が明確である場合。
- 取引がシンプル:単独所有の土地を単純に売却し、利益が出ていない(税金がかからない)場合や、特殊な事情がない場合。
- 特例を使わない:複雑な特例を使わず、基本的な計算のみで済む場合。
- 時間に余裕がある:調べ物や書類作成に十分な時間を割くことができる場合。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は年々使いやすくなっており、画面の案内に従って入力していけば自動計算される仕組みになっています。シンプルな案件であれば、これを利用して自分で作成・提出することは十分可能です。
専門家に任せるべきケース
一方で、以下のようなケースでは無理をせず税理士に依頼することを強くお勧めします。
- 取得費が不明:購入時の資料がなく、どう計算すれば有利になるか判断が難しい場合。
- 複雑な特例を利用したい:買い換え特例や、相続空き家の特例など、適用要件が細かく、提出書類が多い特例を使う場合。失敗した場合のダメージが大きいため、プロのチェックが不可欠です。
- 売却益が非常に大きい:税額が大きくなるため、計算ミスによるリスクが高く、税務署のチェックも厳しくなりがちです。
- 権利関係が複雑:共有名義、借地権、底地権、区画整理地などが絡む場合。
- 精神的な負担を減らしたい:数字に弱く、間違っていないか不安を感じながら作業するのがストレスになる場合。
土地売却の確定申告に対応できる税理士を探す方法
「税理士なら誰でもいい」というわけではありません。税理士にも得意分野があります。不動産税務に強い税理士を見つけるための主な方法を紹介します。
紹介(知人・不動産会社)
最も一般的なのは、紹介を受けることです。 もし知人に不動産投資家や地主の方がいれば、その方が付き合っている税理士を紹介してもらうのは有効です。また、土地の売却を仲介してくれた不動産会社の担当者に相談するのも良いでしょう。不動産会社は日常的に不動産税務に強い税理士と連携していることが多いため、信頼できる専門家を紹介してくれる可能性が高いです。
ただし、紹介の場合は「断りにくい」というデメリットもあります。相性が合わないと感じた場合に備えて、あくまで候補の一人として紹介してもらうスタンスが良いでしょう。
インターネット検索・ポータルサイト
自分で探す場合は、インターネット検索が便利です。「地域名 + 不動産売却 + 確定申告 + 税理士」などのキーワードで検索してみましょう。 また、税理士検索のポータルサイトを利用すれば、地域や得意分野で絞り込んで検索することができます。「不動産」「譲渡所得」「資産税」といったキーワードが得意分野として挙げられているかどうかがチェックポイントです。多くの事務所がホームページを持っているので、実績や料金体系、代表税理士のプロフィールなどを事前に確認できます。
税理士紹介サービス
自分で探す時間がない、あるいはどうやって選べばいいか分からないという場合は、税理士紹介サービスを利用するのも一手です。専任のコーディネーターが要望をヒアリングし、条件に合った税理士を無料で紹介してくれます。複数の税理士と面談して比較検討することも可能なため、納得のいくパートナーを見つけやすい方法です。
土地売却の確定申告に対応できる税理士を選ぶ際のポイント
数ある税理士の中から、土地売却の申告を任せるのにふさわしい一人を選ぶためには、どのような点に注目すればよいのでしょうか。
譲渡所得(資産税)への専門性
これが最も重要なポイントです。税理士の業務は多岐にわたり、多くの税理士は企業の決算や法人税の申告をメイン業務としています。一方で、不動産売却などの「資産税」と呼ばれる分野は、非常に専門性が高く、特有のノウハウが必要です。
法人税が得意な税理士でも、不動産の譲渡所得については経験が浅いというケースは珍しくありません。選ぶ際には、「不動産売却の申告実績が豊富か」「資産税専門、あるいは資産税に強いと謳っているか」を必ず確認しましょう。ホームページの実績紹介やブログ記事の内容などが判断材料になります。
コミュニケーション能力と相性
税金の話は難解になりがちです。専門用語を並べ立てるのではなく、一般の人にも分かる言葉で噛み砕いて説明してくれる税理士が理想的です。 また、こちらの質問に対して明確に答えてくれるか、レスポンスは早いか、こちらの事情(節税したい、手間を省きたいなど)を汲み取ってくれるかといった「相性」も重要です。初回相談などを利用して、実際に話してみた感覚を大切にしましょう。
報酬の明瞭さ
後々のトラブルを防ぐために、料金体系が明確であることも大切です。 「一式」という曖昧な見積もりではなく、基本料金、従量料金、特例適用料などが細かく明記されているか確認しましょう。また、想定外の事態(税務調査など)が発生した場合の追加料金についても、事前に説明してくれる事務所は信頼できます。契約前に必ず見積書をもらい、内容に納得した上で依頼するようにしましょう。
土地売却に関する確定申告を税理士へ依頼する際によくある質問の例と回答
Q: 遠方の土地を売りましたが、地元の税理士に依頼すべきですか?それとも土地がある場所の税理士ですか? A: 基本的には、あなたがお住まいの地域の税理士に依頼するのがスムーズです。現在は電話やメール、ウェブ会議などでやり取りができるため、物理的な距離はあまり問題になりません。ただし、その土地特有の地域事情(条例や慣習など)が税務判断に関わる可能性がある場合は、その土地の事情に詳しい税理士のほうが良いケースもありますが、稀なケースです。まずは通いやすい、相談しやすい税理士を探すのが良いでしょう。
Q: 購入時の契約書が見つかりません。税理士に頼めばなんとかなりますか? A: 契約書がない場合、通常は「概算取得費(売却額の一定割合)」を使って計算しますが、これでは税金が高くなりがちです。税理士に依頼すれば、当時の相場データや、通帳の出金履歴、住宅ローンの記録など、契約書以外の資料を積み上げて、実額に近い取得費を税務署に主張できる可能性があります。これを「推計」と言いますが、高度な専門知識が必要なため、自分で行うのは困難です。ぜひ資産税に強い税理士に相談してみてください。
まとめ
土地売却に伴う確定申告は、扱う金額が大きく、税制も複雑であるため、一般の方にとっては非常に重い負担となる手続きです。
税理士へ依頼することで、確かに費用はかかります。しかし、それと引き換えに「正確な申告によるリスク回避」「最大限の節税効果」「面倒な作業からの解放」「将来への安心感」という大きなメリットを得ることができます。特に、取得費が不明な場合や、複雑な特例を利用する場合など、判断に迷う要素がある案件では、プロの知識が税理士報酬以上の節税効果を生むことも珍しくありません。
一方で、取引内容がシンプルで、時間的な余裕と学習意欲がある方は、国税庁のツールなどを活用してご自身で申告にチャレンジするのも一つの選択肢です。
重要なのは、ご自身の置かれている状況(売却益の規模、資料の有無、時間的余裕など)と、コスト対効果を冷静に見極めることです。まずは無料相談などを利用して専門家の意見を聞き、自分にとってベストな選択をすることをお勧めします。この「最後の仕上げ」である確定申告を適切に乗り切ることで、土地売却という一大イベントを気持ちよく完結させましょう。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
