M&Aにおける税理士の役割や報酬相場とは?

税務

本記事ではM&Aを行う際にどのように税理士を活用するのか、税理士が担うM&Aにおける役割とは、またその報酬相場について解説を行っていきます。

税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)

M&Aにおける税理士の役割や報酬相場とは?

  1. M&Aとは何か?
    1. M&Aとは?
      1. M&A = 企業の合併や買収を通じた事業再編や経営戦略
    2. M&Aの主な目的
    3. M&Aの種類(代表的な形態)
    4. M&Aのメリットとデメリット
  2. M&Aにおける税理士の主な業務内容
    1. 税務デューデリジェンス(税務調査)
    2. M&Aスキームの税務面からのアドバイス
    3. 企業価値評価・税務的な価格算定の補助
    4. 売却・買収に伴う税務申告・手続き
    5. PMI(統合後の税務・会計体制支援)
  3. 税理士がM&Aに関わるタイミング
  4. 税理士へM&Aを依頼するメリット
    1. 税務面のリスク回避と節税対策ができる
    2. 税務デューデリジェンス(調査)による正確なリスク把握
    3. 複雑な税務申告・届出を正確かつスムーズに対応
    4. 企業価値評価や価格交渉の税務面サポート
    5. M&A後の会計・税務統合(PMI)支援
    6. ワンストップで継続的な経営サポートが受けられる
  5. 税理士にM&Aを依頼するデメリット
    1. コストがかかる
    2. 対応に時間がかかることがある
    3. 税理士の専門性にばらつきがある
    4. 他の専門家(弁護士・会計士・FA)との連携が必要
    5. 税務視点が中心になりすぎる可能性
  6. M&Aに強い税理士の選び方ポイント
    1. M&Aの実績が豊富か?
    2. 税務だけでなく、M&A全体の流れを理解しているか?
    3. コミュニケーションが円滑か?
    4. 中小企業向けか大企業向けか、自社に合っているか?
    5. 報酬体系が明確か?
    6. 最新の税制やM&Aに関する法改正に詳しいか?
  7. M&Aにおける税理士の報酬体系
    1. 1. 着手金(着手報酬)
    2. 2. 成功報酬
    3. 3. 時間単価制・顧問料
    4. 4. 追加報酬・実費
  8. 報酬を決める際のポイント
  9. 税理士と公認会計士の違い(M&Aにおける役割比較)
  10. 税理士と弁護士の違い(M&Aにおける役割比較)
  11. M&Aで税理士を活用するよくある質問と回答
    1. Q1. M&Aで税理士に相談するタイミングはいつが良いですか?
    2. Q2. 税理士に依頼するとどんな手続きや作業をお願いできますか?
    3. Q3. 税理士と他の専門家(弁護士・会計士)はどう違いますか?
    4. Q4. M&Aの税務でよくあるリスクは何ですか?
    5. Q5. 税理士の費用はどのくらいかかりますか?
    6. Q6. M&A後も税理士に関与してもらえますか?
    7. Q7. どんな税理士を選べば良いですか?
  12. M&Aにおける税理士の役割や報酬相場とは? まとめ

M&Aとは何か?

M&A(エムアンドエー)」とは、企業の買収や合併を通じて、会社の経営権や資産を移転する取引のことを指します。正式には「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略です。

M&Aとは?

M&A = 企業の合併や買収を通じた事業再編や経営戦略

  • M(Merger)= 合併
     → 複数の会社が1つに統合されること
  • A(Acquisition)= 買収
     → ある会社が別の会社を買い取って、自社の傘下に収めること

たとえば:

  • A社がB社を買収 → B社の経営権はA社に移る(B社は存続または吸収)
  • A社とB社が合併 → 新会社Cを設立 or どちらかに統合

M&Aの主な目的

目的内容例
事業拡大新たな市場や顧客を獲得する
ノウハウ・人材の取得技術力や経営陣を取り込む
業務の効率化重複する業務を整理しコスト削減
後継者問題の解決経営者が高齢で、会社を売却したい
競合を取り込む市場シェアを拡大する

M&Aの種類(代表的な形態)

種類内容
株式譲渡株主が自社の株を譲渡して、経営権を売却
事業譲渡会社全体ではなく、一部の事業のみを売買
合併会社同士が統合して、1つの法人になる
吸収合併一方が存続、もう一方は消滅して統合
新設合併両社とも解散し、新会社を設立する
分割(会社分割)一部事業を切り出して新会社に承継

M&Aのメリットとデメリット

メリットデメリット・リスク
すぐに人材・資産・顧客を得られる組織文化や経営方針の衝突リスク
競争力を強化できる財務負担(借入・買収コストなど)
廃業せずに事業承継できる(売り手側)情報漏洩・社員の反発などの不安要素も

M&Aにおける税理士の主な業務内容

M&A(合併・買収)において税理士は非常に重要な役割を果たします。
単に税金を計算するだけではなく、M&Aの初期検討から契約、実行、統合後まで関わる専門家として活躍します。

税務デューデリジェンス(税務調査)

  • 目的:買収対象企業(または自社)の税務リスクや隠れた負債をチェック
  • 内容
    • 過去の申告漏れ・税務調整の誤り
    • 繰越欠損・未払税金の状況
    • 税務調査リスクの有無
  • これはM&Aにおける「健康診断」にあたります。

M&Aスキームの税務面からのアドバイス

  • M&Aには複数の手法(株式譲渡/事業譲渡/合併/会社分割など)があり、それぞれ税負担が異なります
  • 税理士は、
    • どのスキームが最も節税効果が高く、合理的か
    • 法人税・消費税・所得税の影響
      を事前に分析・提案します。

例:

  • 株式譲渡では売主に譲渡所得税がかかる
  • 事業譲渡では譲渡益に法人税がかかり、買主側に消費税が発生 など

企業価値評価・税務的な価格算定の補助

  • 税理士は財務諸表をもとに、
    • のれんの金額
    • 資産・負債の正味価値
      を評価し、価格交渉の材料を提供します。

※「企業評価そのもの」は公認会計士やM&Aアドバイザーが中心になるケースもありますが、税理士が実務的な税金コストを反映した見積りを補完することが多いです。


売却・買収に伴う税務申告・手続き

  • 株式譲渡益の申告(所得税・法人税)
  • 事業譲渡後の消費税や法人税の計算
  • 吸収合併・分割後の法人税の特例適用手続き
  • 税務署への異動届、合併届、解散・清算の申告など

M&A実行後の「税務実務」は非常に複雑なため、税理士が必須です。


PMI(統合後の税務・会計体制支援)

  • M&A後、2社が統合されると、
    • 会計処理の統一(例:減価償却、税効果会計)
    • 税務上の申告方法の調整(例:繰越欠損金の取り扱い)
      など、**統合プロセス(PMI)**における税務面での整理が必要。

税理士は、新体制での申告や会計処理を指導し、トラブルや調査リスクを最小限に抑えます

税理士がM&Aに関わるタイミング

フェーズ税理士の主な役割
① 検討段階節税スキームの助言、資産・負債の棚卸し
② デューデリ税務調査、税務上のリスク洗い出し
③ 価格交渉税金を加味した企業価値の試算
④ 契約・実行税務書類の整備、届出、申告、納税手続きなど
⑤ PMI(統合後)統合後の会計・税務フロー整備、税務署対応など

税理士へM&Aを依頼するメリット

税務面のリスク回避と節税対策ができる

  • M&Aでは多額の税金(法人税、譲渡所得税、消費税など)が発生するため、
    適切な税務処理と節税スキームの提案が重要。
  • 税理士は税法の専門家として、無駄な税負担を減らし、トラブルのリスクを下げられます。

税務デューデリジェンス(調査)による正確なリスク把握

  • 買収対象企業の税務リスク(過去の申告漏れ、未払い税金、繰越欠損など)を洗い出すことで、
    安心して取引ができる判断材料を提供します。

複雑な税務申告・届出を正確かつスムーズに対応

  • M&Aには様々な税務申告・届出(譲渡所得の申告、合併届、消費税の処理など)が必要。
  • 専門家が対応することで、申告漏れや誤りを防ぎ、スムーズな手続きが可能になります。

企業価値評価や価格交渉の税務面サポート

  • 税理士は財務情報をもとに税金を考慮した企業価値算定を補助し、
    買い手・売り手の双方が納得できる価格交渉をサポートします。

M&A後の会計・税務統合(PMI)支援

  • M&A完了後の税務会計処理の統一や、繰越欠損の取り扱いなど、
    統合後の複雑な税務課題を専門的にサポートします。

ワンストップで継続的な経営サポートが受けられる

  • M&A後も税務顧問として関与し、経営の税務相談や節税対策を継続的に支援。
  • 経営の安定化・成長につなげやすい。

税理士にM&Aを依頼するデメリット

コストがかかる

  • 税理士への相談や手続き代行には顧問料や成功報酬などの費用が発生
  • 小規模なM&Aや予算が限られている場合は負担に感じることも。

対応に時間がかかることがある

  • 税理士が忙しい時期や専門外の複雑案件の場合、対応が遅れることがある。
  • M&Aはスピード勝負の面もあるため、スピーディな対応を求めるとストレスになる場合も。

税理士の専門性にばらつきがある

  • M&A経験や知識に差があり、必ずしもすべての税理士がM&Aに強いわけではない
  • 専門外の場合、期待したアドバイスが得られないことも。

他の専門家(弁護士・会計士・FA)との連携が必要

  • M&Aは多方面の専門知識が必要なため、税理士だけでは対応しきれないことが多い。
  • 他の専門家と調整や連携が必要になり、手間やコミュニケーションコストが増える場合も。

税務視点が中心になりすぎる可能性

  • 税理士は税金面の視点が強いため、経営戦略や法務リスク、人的側面の判断は別の専門家の意見が必要。
  • 税務だけに偏った判断にならないよう注意が必要。

M&Aに強い税理士の選び方ポイント

M&Aの実績が豊富か?

  • 過去にM&A案件を多数扱った経験がある税理士だと安心。
  • 特に「自社の業種」や「規模感」が似ている案件を扱ったことがあるかがポイント。
  • 実績の有無は、税理士事務所のWebサイトや紹介先の評判で確認できます。

税務だけでなく、M&A全体の流れを理解しているか?

  • M&Aは税務だけでなく、法務・会計・経営戦略など複合的。
  • それらの専門家とスムーズに連携できる知識やネットワークがあるかも重要。

コミュニケーションが円滑か?

  • 複雑な案件が多いので、質問や相談がしやすく、説明がわかりやすい税理士が望ましい。
  • 何度か面談や電話相談をしてみて、信頼できるかどうか判断しましょう。

中小企業向けか大企業向けか、自社に合っているか?

  • 税理士には得意分野や対応企業規模の違いがあります。
  • 自社の規模や業種に合った税理士を選ぶことで、最適なアドバイスが期待できます。

報酬体系が明確か?

  • 相談料、着手金、成功報酬など報酬体系がわかりやすく説明されているか。
  • 不明瞭な料金設定だと後々トラブルになるリスクがあります。

最新の税制やM&Aに関する法改正に詳しいか?

  • M&A関連の税制は改正が多いので、最新情報に強い税理士を選びましょう。
  • セミナー参加や専門誌への執筆歴などもチェックポイント。

M&Aにおける税理士の報酬体系

税理士の報酬は、案件の内容や規模によって変わりますが、一般的に以下のような形態があります。

1. 着手金(着手報酬)

  • M&Aの契約が成立する前に、税理士が調査や初期検討に着手するための費用です。
  • 数十万円〜数百万円程度が目安(案件規模による)。
  • 税務デューデリジェンスなど初期調査のために発生します。

2. 成功報酬

  • M&Aが無事成立した場合に発生する報酬です。
  • 取引金額の1〜3%程度が相場ですが、税理士によって幅があります。
  • 成功報酬型にすると、税理士も成功にコミットしやすいメリットがあります。

3. 時間単価制・顧問料

  • 相談や作業時間に応じて時間単価で報酬を計算する場合。
  • また、M&A期間中や後も継続して顧問契約を結び、月額顧問料を払うケースもあります。

4. 追加報酬・実費

  • 出張費や資料作成費、専門家連携のための費用などが別途請求されることがあります。
  • 事前に見積もりや費用の範囲を確認することが大切です。

報酬を決める際のポイント

  • 明確な見積もりをもらうこと
    事前に料金体系や見積もりを明確に提示してもらい、後からのトラブルを防ぐ。
  • 成果に見合った報酬かを判断すること
    単なる作業量だけでなく、税務リスクの回避や節税効果を踏まえた価値で報酬を評価する。
  • 複数の税理士に相談して比較検討すること
    料金だけでなく、対応の質や経験も考慮し総合的に判断する。

税理士と公認会計士の違い(M&Aにおける役割比較)

観点税理士公認会計士(会計士)
主な専門分野税務申告、税務相談、節税、税務リスクの管理会計監査、財務諸表の作成・監査、財務分析、企業評価
M&Aでの主な役割・税務デューデリジェンス(税務調査)
・節税スキーム提案
・税務申告や納税手続き
・M&A後の税務会計統合支援
・財務デューデリジェンス(財務・会計面の調査)
・企業価値評価
・財務諸表の作成や監査
・内部統制評価
資格の性質税務の専門家で、税金に関する相談・申告代理が主会計の専門家で、監査法人で監査業務ができる
関わるタイミングM&Aの税務問題や申告、実務対応で終始関与することが多いM&Aの評価段階や監査段階、財務面のリスク分析で関与
重視するポイント税金の負担軽減や適切な税務処理財務の正確性、企業価値の透明性、公正な会計処理
代表的な仕事例税務申告、税務調査対応、消費税計算、納税計画策定財務諸表監査、内部統制評価、企業価値算定レポート作成

税理士と弁護士の違い(M&Aにおける役割比較)

観点税理士弁護士
主な専門分野税務(法人税、所得税、消費税など)に関する相談、申告、節税対策法務(契約、紛争、コンプライアンス、企業法務全般)に関する相談・代理
M&Aでの主な役割・税務デューデリジェンス(税務リスク調査)
・節税スキーム提案
・税務申告・納税手続きの代行
・契約書作成・チェック
・M&A契約交渉支援
・法的リスクの評価・対応
・紛争対応や訴訟代理
資格の性質税務申告代理権を持ち、税務専門の国家資格者法律相談・代理権を持ち、法律問題を扱う国家資格者
関わるタイミングM&Aの税務面の調査・申告・節税対策の段階で関与M&Aの契約交渉から契約締結、紛争や問題発生時に関与
重視するポイント税務リスクの把握と回避、税負担の最適化法的リスクの防止と解決、契約の正確性と強制力の確保
代表的な仕事例税務デューデリジェンス、節税スキームの提案、税務申告契約書ドラフト作成、株式譲渡契約や合併契約の交渉、訴訟代理

M&Aで税理士を活用するよくある質問と回答

Q1. M&Aで税理士に相談するタイミングはいつが良いですか?

A:
できるだけ早い段階で相談するのがおすすめです。
M&Aの初期検討段階から税務面の影響や節税策を検討できるので、後から税務リスクが発覚するリスクを減らせます。


Q2. 税理士に依頼するとどんな手続きや作業をお願いできますか?

A:
主に以下のような業務を依頼可能です。

  • 税務デューデリジェンス(税務調査)
  • 節税スキームの提案
  • 税務申告書の作成・提出
  • 合併届・譲渡届など税務関連の届出
  • M&A後の税務会計の整理と支援

Q3. 税理士と他の専門家(弁護士・会計士)はどう違いますか?

A:

  • 税理士は税金に関する専門家で、税務リスクの分析や節税策提案、税務申告を担当。
  • 会計士は財務諸表や企業価値評価に強く、財務面の調査や監査を担当。
  • 弁護士は法務面の契約チェックや紛争対応を担当します。
    M&Aではそれぞれの専門家が連携して進めることが多いです。

Q4. M&Aの税務でよくあるリスクは何ですか?

A:

  • 過去の税務申告漏れや未納税金の発覚
  • 譲渡所得税や消費税の過大な負担
  • 繰越欠損金の利用制限
  • 合併・分割の税務上の特例の適用ミス
    これらを事前にチェックし回避するのが税理士の役目です。

Q5. 税理士の費用はどのくらいかかりますか?

A:
案件の規模や内容によりますが、

  • 相談料(月額顧問料や時間単価)
  • 成功報酬(取引額の数%程度が目安)
    が一般的です。事前に報酬体系を明確にしておくことが重要です。

Q6. M&A後も税理士に関与してもらえますか?

A:
はい、M&A後の税務申告や会計統合(PMI)支援、継続的な経営税務相談などで引き続き関与可能です。
経営の安定化や次の成長戦略のサポートにも役立ちます。


Q7. どんな税理士を選べば良いですか?

A:

  • M&A実績が豊富で、同業種や自社規模の案件を扱った経験があるか
  • 税務だけでなく、M&A全体の流れを理解しているか
  • 連携できる弁護士や会計士のネットワークがあるか
  • 料金体系が明確で説明がわかりやすいか
    がポイントです。

M&Aにおける税理士の役割や報酬相場とは? まとめ

M&Aにおける税理士の役割は、税務リスクの軽減や節税対策、申告の適正化など経営に直結する重要な支援を担っています。
費用対効果を見極めて、信頼できる税理士と連携することがM&A成功の鍵です。

税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。