本記事は、年末調整業務について税理士を探されている方に対して、税理士が対応しているサービス、税理士の費用・相場感、顧客が抱える課題、税理士を選ぶポイント、について記載をしていきます。
本記事を読んでいただくことで、特にこれまで税理士と契約をされてこなかった方が、税理士のサービス対応範囲を踏まえて、どのような税理士であれば自分に適しているかを判断ができるようになり、適切な税理士探しができるようになります。
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年末調整とは何か?
年末調整とは、会社で従業員を採用している場合、毎月行なっている源泉徴収の過不足を年末に調整して差額を支払う等を行うことを指します。単に計算して納付するだけでなく、年末調整に関する書類を作成し、税務署等へ提出することが求められます(本記事では所得税について言及をいたします)
そもそも会社に雇用されている従業員は通常確定申告をご自身で行う必要がありません。これは、会社の方で毎月源泉徴収という形で所得税を会社が従業員に代わって徴収し、税務署へ納付をしています。ただし毎月行なっている源泉徴収は仮の計算で行なっているため、実際に従業員が支払うべく所得税の金額と異なってきます。例えば、個人の場合、生命保険や介護保険に加入していると保険料控除という形で所得から一定額を控除することができますが、会社が行う源泉徴収では考慮されていないため、実際に支払うべき所得税は源泉徴収された合計金額よりも小さくなるのです(この場合は年末調整で会社より還付という形で給与と併せて支払われます)。
このように年末調整を行わないと、正しい従業員それぞれの所得税の計算および納付ができないため、会社の方で年末調整を行い、正しい所得税の計算の税金の支払いを行なっているのです。年末調整を行なっても、一部の従業員の方はご自身で確定申告を行う必要があるケースがあるので留意ください(例えば住宅ローン控除を受ける方で初年度の方など)。
年末調整の対象とならない従業員
年末調整の対象となる従業員は、正社員かアルバイトに限らずその年の12月末までに在籍している方が原則対象となりますが、一部例外があります。
まずはその年の年収が2,000万円を超える方です。この方については、ご自身で確定申告を行う必要があるため、会社では年末調整が行われません。確定申告を作成・提出の上、必要な場合は追加で納付、もしくは所得によっては還付となる場合もあります。
その他前述の通り年末調整の対象にはなるものの、別途確定申告の提出が必要な従業員もいます。例えば医療費控除を適用したい場合や、保険料控除についてその証明書の提出が期限までに会社へ提出できなかった方などが対象となります。
年末調整に税理士は必要か?
年末調整業務は単に過不足を計算して従業員から追加徴収もしくは還付するだけでなく、法定調書という形で税務署へ年末調整に関係した書類を作成し提出する必要があります。また年末調整作業は結構複雑で、初心者の方が書籍等を見ていきなりミスなしでできるものではないため、ミスをしたくない、自分でやるには時間がないなどの課題を抱えている方にとっては税理士へ依頼をした方が良いでしょう。
ただし、年末調整業務のみを受託している税理士は少ないと言えます。税理士は顧客の全体を把握した上で各種税金のアドバイスや確定申告書の作成・提出を行なっています。年末調整というのは各月の従業員へ支払う給与に係る源泉徴収の積み上げになりますので、通常の源泉徴収がミスなく行われている上で年末調整業務がスタートします。そのため、年末調整という局所的な業務は税理士にとっても全体のリスクが把握できないため、年末調整業務のみを受注するパターンというのはあまりないと思われます。
そのため、年末調整を依頼するにあたっては確定申告の依頼とセットにする、もしくは税務顧問として継続契約とするパターンが一般的かと思います。
年末調整を税理士へ依頼するメリット
メリットとしては年末調整業務そのものをミスなく完結できることです。前述の通り、年末調整業務はかなり専門的な業務で、所得税の確定申告とも全く性質の異なる業務となります。また、単に税金徴収金額の過不足額のみを計算するのではなく、それに付随する法定調書という書類を作成して税務署へ提出する必要があります。そのため初心者であれば、ミスをする可能性は極めて高くなると言えるでしょう。その点税理士へ依頼することで、計算ミスがなくなるのはもちろんのこと、法定調書についてもミスなく作成・税務署へ提出をお願いすることが可能です。提出後、税務署から問い合わせがきた場合にも税理士の方で確認・回答を行なってくれるため、経営者としては安心だと言えます。
また、年末調整にあたっては扶養控除や保険料控除、その他住宅ローン控除など従業員から各種情報や証明書をもらった上で、調整計算を行うことになります。この辺りも専門知識が求められますし、従業員側も会社から言われないとそもそも把握・提出のしようがありません。その点税理士へ任せておけば、従業員からどのような情報を追加で貰えば良いか、情報に過不足はないか、など全てをチェックしてもらえますので、この観点からも税理士へ依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。
年末調整以外で税理士と契約するメリット
会社運営は、ビジネスだけでなく法律や税金、資金調達など様々な専門知識を問われますが、これまでこのような分野にいなかった経営者にとっては大変難しいものです。一方で、届出を一つ忘れるだけで税金の金額が異なったり、有利な選択を見逃すことで支払わなくてよかった税金を支払うことになったり、と判断を誤ることで存することはベンチャー経営において発生します。
税金でよくあるケースとしてまず考えられるのが、消費税の課税選択です。法人の場合、会社設立時に資本金額が一定を超えると課税事業者となりますが、免税事業者と比較して消費税を納めることになる(還付の場合を除く)ため、その分キャッシュアウトになります。また、消費税の計算方法として簡易課税を選択するか否かによって課税金額が変わってきますが、届出をする必要があると同時に届出期限も決まっているため、届出を失念すると不利な選択を強いられる可能性があります。
また消費税以外にも法人税の分野において、多いのが青色申告の承認申請書です。青色申告の場合、発生した赤字を繰り越すことができたり、過去に発生した赤字を繰戻することができたり、少額の減価償却資産を費用化して経費を早期に計上できたり、その他様々な特典を受けることができます。青色申告の承認申請書についても届出期限が決まっているので、こちらも提出し忘れるとその年度は恩恵を受けることができません。青色申告以外にも、役員報酬についても法人税法上、役員へ支払う報酬を自由にいつでも変更できないルールが設定されているため、変更期限を過ぎてしまうと変更ができない(変更はできるのですが、経費として一部認められなくなります)ことになり、大変不利です。
税金以外にも、ビジネスを長期的に安定的にするためにもしっかりと事業計画を作って、会社法などの法律に従い会社を経営し、かつ資金繰りにも困らない状況を目指すことが非常に重要になってきますが、これがご自身でしっかりとできる経営者はなかなかいないのではないかと思います。補助金の活用についても同様です。
この辺り、税理士が経営者の非常に強力なサポーターになってくれます。以下では税理士と契約するメリットについて記載をしていきます。
確定申告・記帳の業務から解放される
税制は複雑であることから、確定申告や記帳代行の難易度は他の業界と比較しても高いと思います。これをご自身でやられる場合、全てご自身で勉強したり調べたりする必要がありますが、当然間違ってしまうリスクもあります。この点、税理士費用は発生するものの、確定申告や記帳業務から解放されるため、本業に集中できかつ売上をアップさせることが可能になること、さらには間違えのない確定申告書を作成・提出することが可能となるため、安心感につながることはメリットと言えます。
また、通常であれば経理経験のある人を雇って帳簿作成や決算作成、税務申告書の作成・提出を行うことになりますが、従業員を1名雇うと、かなり費用が高額になるため、記帳部分も含めて税理士へ依頼することによって高い品質でコストを抑えたサービスを受けることが可能となります。
上記に加えて、ベンチャーにとって税務回りで多くの届出書を作成・提出する必要が出てきます。例えば、すでに述べた青色申告承認申請書や、簡易課税を選択する場合はそれに関連した届出書などです。税理士へ依頼する場合はこの届出書についても作成・提出してくれるので、漏れなく安心できることでしょう。
安心感を持って税務調査対応が可能になる
全く税務経験のない経営者からすると、税務調査と聞くだけで安心ができないことでしょう。さらに税務調査本番では何を回答していいのかわからないなど不慣れでかつ不安も多いことでしょう。また相手は専門家であるため説明不足や誤った説明などにより、追徴となる可能性も0ではありません。税理士であれば税務調査も適切なコミュニケーションで調査官と対応してもらえるので安心です。また申告書についても過去の経験から税務調査の目線でしっかりとアドバイスをしてもらえることも期待できます。
税金以外のサポート
税金以外にも資金調達や補助金などのサポートを得ることができます。前述の通り、税理士によっては税金だけでなく、資金調達や補助金のサポートをサービスとして展開している場合があります。資金調達や補助金申請にあたっては財務諸表の提出や事業計画の提出を求められる場合があり、そもそも作成経験がなけければスタートラインに立つことすらできません。また財務諸表や事業計画は経験ない経営者が書籍やインターネットで手軽に作れるものでもないため(金融機関のようなプロが見たら間違っている財務諸表はすぐにわかってしまうので)、今後事業を拡大するために資金調達や補助金の活用を検討されている場合には、税理士のサポートが必要になってくるでしょう。
マイクロ法人の設立を検討されている方については、こちらの「マイクロ法人に強い税理士を検討するポイント」を参照ください。
経営相談が可能
資金調達や補助金以外にもビジネスに強い税理士であれば集客方法や人材採用のアドバイス、オペレーションの効率化支援など、幅広く経営コンサルティングを提供することが可能です。またコンサルティングまでいかなくても定期的に経営者の悩み相談を税理士とディスカッションするなどの経営相談も可能となります。
節税の相談が可能
合理的な範囲内で、税理士へ節税の相談が可能となります。当然、経済的合理性があり説明できる内容でなければならないので、勝手に経営者側で判断するのではなく税理士へまずは確認しましょう。税務署が認めれくれる程度の合理的な節税に関するアドバイスを期待できるでしょう。インターネットに記載されている真偽不明は情報に基づいて節税を行う方がいらっしゃいますが、過度な節税により税務署から指摘を受けた場合はペナルティである重加算税を受けて、節税をしたはずが結果余計な税金を追加で支払うケースもありますので、中途半端な知識で節税せずに税理士へ確認するようにしたほうが良いです。
年末調整を税理士へ依頼した場合のスケジュール
仮に年末調整業務を会社として税理士へ委託した場合に、どのようなスケジュールで作業が行われていくのかを整理します。まず、10月下旬から11月中旬にかけ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」などの年末調整に必要な書類を税理士へ提出する必要があります。年末調整の対象となる従業員の方全ての分が提出必要となります。
続いて、11月下旬〜12月上旬にかけて税理士側で年末調整の計算業務を行います。この間は不足している書類の依頼や質問等が税理士から来ますので、会社としては適宜返信・回答できるように準備をしておく必要があります。年末調整で従業員の方から追加で税金を徴収するもしくは還付する必要がありますが、一般的には12月の給与もしくは1月の給与で反映させることが通常ですので、税理士とどのタイミングで調整を行うかはスケジュールにも影響してきますので、事前に相談しておくべきでしょう。
最後に1月に年末調整に関する法定調書を税務署へ税理士から提出して完了となります。必要な場合は追加で源泉徴収した金額を会社から税務署へ納付する必要があります。
年末調整含む税理士の費用・相場
税理士の値段:価格が決まる要因
税理士の値段ですが、統一的なものはなく、個々の事務所によって異なるのが実情です。ではどのような要因で値段が変わってくるのかですが、いくつか値段を決定する要素があります。
まずそもそも税理士の値段の体系ですが、月額の税務顧問料と年末の確定申告料金が基本料金としてあり、これに加えてオプション料金が加算される仕組みになっています。まず基本料金部分ですが、顧客の難易度や取引量によって異なってくることが多いです。どのようにこれを図るかというと、一番多くのパターンは業種と年商で値段を決めていることが多いです。例えば業種でいくと、物を取り扱わないサービス業よりも固定資産や在庫を抱える製造表の方が処理が複雑化するのと同時に取引量も増えるため、価格は上乗せされる傾向にあります。また年商についても一般的に同じ業種であれば年商が大きい方が取引量は多く、処理も複雑化し難易度が上がるため、価格は上乗せされる傾向にあります。
続いてオプションですが、例えば帳簿作成を行う記帳を税理士に代行してもらう場合は税務顧問と別途値段が加算されることが多いです(一般的には月額で支払)。また、確定申告以外の作業、例えば年末調整や償却資産税なども申告等を税理士へ依頼する場合には、追加で料金がかかることが一般的です。オプションについても価格の決まり方は基本料金と同じで、作業量が多くなってくると値段は上がりますし、取引の難易度が上がると値段は上がることになります。
今回の年末調整については、このオプション料金として組み込まれることが多いものになります。料金の設定として、基本料金に加えて、従業員1名あたりプラスでいくら、という従量課金をとっているケースが多いように思われます。税理士にとっては基本料金はオプションではなく顧問料や決算料金に入っているケースもあるので、契約の際には事前に税理士へ確認をしてください。
基本料金に何が含まれているかについても税理士によって異なっておりまして、例えば税務関係の届出は基本料金の範囲に入っているが、資金調達や補助金のサポートなどは別途オプションとなるような場合です。必ず契約前には基本料金にはサービスとして何が含まれていて、何がオプションになるのかは確認された方が良いでしょう。
税理士の値段:一般的な相場感
経営者が税理士へ依頼する際に、2つの方法があります。1つ目は、税務顧問として税理士と契約して1年を通して税務アドバイスをもらいながら、決算期末には決算書の作成と確定申告書の作成・提出を依頼する方法です(ケースによっては記帳代行も税理士へ依頼します)。2つ目は、決算申告のみを決算期末に税理士へ依頼する方法です。この場合、決算期末前の期中については税務アドバイスを税理士からもらうことはできず、決算申告のタイミングで併せて税理士と相談しながら確定申告を進めていくことになります。
決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用として、概ね20万円〜となるケースが多いように思います(年商や業種などによって最低料金は当然異なってきます)。もちろん、取引数や取引の複雑性によっても報酬金額は変わってくるため、必ず全ての方が20万円〜ということはないことにご留意ください。
仮に顧問契約で年間の契約を結んでいたとしても、一般的な税理士との契約では月額の顧問料報酬と、決算申告は別途料金が課されることが多いです(顧問料報酬の数ヶ月分ということが多いかと思います)。この場合、決算申告のみを依頼するよりも顧問契約している決算申告の方が安いことが多いです。月額顧問報酬についても、業種や年商、取引数などによって大きく異なりますが、概ね2〜3万円以上で決算申告料金が15万円〜という場合が多いように思われます。
業界が複雑な場合は取引やオペレーションが他の業種等と比較して複雑になる傾向になることから、上記の水準よりももう少し高くなることが予想されます。おすすめとしては、やはり顧問税理士契約を締結することにより定期的に税制面でのアドバイスを受けられるようにしておくことです。
上記に加えて相続税の相場についても解説します。概ね相続対象となる遺産総額の0.5~1%が税理士へ支払う値段だと考えると良いでしょう。ただし税理士の値段設定としては遺産総額の規模別に固定金額の料金を基本料金として設定しているところが多いようで、この基本料金も相続人の数や相続財産の複雑性などの難易度によって変わってきます。
税理士の値段:その他
上記以外に値段の考え方として、①初回面談料金、②時間単価チャージ制度、③成功報酬、④コンサルティングフィー、などがあります。①については初回面談は無料なことが多いですが相談の内容によっては有料になるケースもありますので、事前に確認をしておくようにしましょう。②については一般的にはあまり発生しないかと思いますが、顧客が大手だったりすると時間単価でいくら、と設定してこれに稼働した時間をかけて請求する時間単価制というものがあります。③の成功報酬は例えば税理士が介在することで節税できた部分に対して一定割合を成功報酬として支払うパターンです。この場合でも固定で支払う部分と成功報酬で支払う部分の2つに分かれているケースもあります。④については、具体的に法人化の支援やM&A/事業承継、経営相談、資金調達・補助金サポートが挙げられます。内容によって固定金額だったり成功報酬だったりします。
税理士の値段の例
下記では仮に当事務所が受注する場合の値段を使って税理士の値段の例を記載していきます。
当事務所の場合は、月額顧問報酬と決算申告報酬を基本料金としており、決算申告報酬は年1回支払うものとなっております。値段の決め方ですが、年商によりまずは値段の最低料金を算出しており、そこから業種や顧客の特殊事情により個別に見積もりを行わせていただいております。例えば、年商が1500万円の法人であれば(当事務所は法人も個人事業主も同じ値段となっております)月額報酬3万円の決算申告報酬が15万円になるため、年間の支払総額は基本料金で51万円となります。
上記に加えてオプションを使われる顧客にはオプション料金を加算しております。具体例として記帳代行については、月額2万円より(年商、業種、取引量に応じて個別見積もりとさせていただいております)承っており、例えば上記の事例ですと、2万円の12ヶ月分になりますので24万円が加算され、年額が75万円となります。年末調整や固定資産税の申告をご依頼されたい方は、別途オプション利用となります。
年末調整に強い税理士を探す方法
税理士の探し方は大きく下記の方法があるかと思います。
1つ目は知り合いから紹介してもらうことです。信頼している方からの紹介であれば、安心感があるかと思います。一方で、相性が合わない場合などは紹介をしてもらった手前、なかなか断りづらいという点があると思います。
2つ目はインターネットで検索するです。ご自身が住んでいる地域で検索すると税理士のホームページがインターネット上に出てくるはずです。最近の税理士のホームページは料金体系や強み、サービスの範囲など記載内容が充実しておりますので、その中でご自身のニーズに合った税理士と面談して決められるという方法はあるかと思います。
3つ目は税理士紹介サイトです。こちらもインターネット経由ですが、直接税理士へ問い合わせるのではなく紹介サイトのコーディネーターにご自身のニーズを伝えて、複数名の税理士を紹介してもらう流れになります。一般的に依頼者側は費用がかかりませんので、安心して利用することが可能です。税理士紹介サイト以外にも会計ソフト会社で税理士を紹介しているケースもあります。
年末調整に強い税理士を選ぶポイント
経営者が税理士を検討するためのポイントとして挙げられるものは、①税理士へ支払う費用、②税理士との相性・税理士の経験、③個人事業・法人を今後どれぐらい拡大していくか、④経営者自身で経理業務を行うかどうか、と思います。
①税理士へ支払う費用についてはわかりやすいですが、税理士に依頼することで確保できる時間や効果を勘案した際に、費用対効果があっているかどうかです。単純に数字的な効果だけでなく、税理士に任せているという安心感や本業に集中できるという時間確保の面もあるため、一概に数字面の費用対効果で考えるものではないかと思います。税理士の一般的は相場については後述します。
②税理士との相性・税理士の経験、については中長期のおつきあいになるのである程度経営者の事業に対する理解があり、かつ経営者ご自身と相性の良い方を選んだ方が良いかと思います。相性は多くの税理士と面談して決めていくしかないかと思います。特にベンチャーの場合、ベンチャーを経験したことがある税理士だとベストでしょう。
③個人事業・法人を今後どれぐらい拡大していくか、は①とも関係してきますが、現時点での業績だけで判断するのではなく今後事業を拡大予定であり、経理や税金周りの業務が複雑になることが見えているのであれば税理士へ依頼することも一案となります。
④経営者自身で経理業務を行うか、については①の時間確保とも絡んできますが、税理士と契約しないということは経営者ご自身で確定申告書を作成・提出することになるため、それに必要な勉強を本業と並行して行うことになるということです。時間は有限のため、本業に集中して事業を拡大することを優先する方が、結果としては良いのではないかと思います。
税理士が必要なタイミング
経営者にとって税理士へ依頼するベストなタイミングはいつになるのでしょうか?以下パターンをわけをして記載していきます。
法人設立のタイミング
まずは法人設立のタイミングです。法人税の申告書は個人の所得税の申告と異なり、作成の仕方がかなり複雑です。経営者ご自身でやるには難易度が高いため、税理士へ依頼することを前提に考えた方が良いです。そのため、会社摂理を検討する際が、税理士へ確定申告を依頼する良いタイミングと言えるでしょう。また以下の視点でも依頼をされたほうが良いと考えます。
まず一つ目が決算期の設定や各種定款の記載事項・資本金の設定の相談です。特に決算期は税務申告のタイミングに重要な影響を及ぼすため、慎重な検討が必要です。また資本金についても税金に大きな影響を与えるためいくらに設定すべきかは税理士と相談した方が良いかと思います。
また開業に生じた費用は税務上、創立費や開業費となり経費化することが可能です。どこまでの範囲が経費化できて、どのタイミングで経費にするのが良いのかは、経営者自信で考えるのは悩みどころだと思います。これを税理士に相談すればベストなタイミング含めてアドバイスもらえることでしょう。
ご自身で帳簿をつけられる場合には税理士から帳簿に関する指導を受けることができますし、領収書や請求書などの証憑類は保管が必要になってきますので、記録の仕方や保存の仕方含めて税理士からアドバイスを受けることができます。
さらに、シミュレーションを使ってそもそも会社設立をすべきなのか、個人事業主として続けるのが良いのかのアドバイスも税金の観点から受けることが可能なので、そもそも会社設立しても税制上はほとんどメリットがないケースというのもあるでしょう。
マイクロ法人の設立を検討されている方については、こちらの「マイクロ法人に強い税理士を検討するポイント」を参照ください。
消費税の課税事業者になるタイミング
他には、年商が1000万円もしくはインボイス事業者になると消費税申告が必要になってきますが、この消費税申告は経理経験のない方にはかなりとっつきにくい内容になっているため、税理士でないとミスが発生する可能性があります。そのため、消費税申告を行うか否かは税理士へ依頼するタイミングの1つとなります。
その他
上記以外には、年商がある程度大きくなってきて、処理が複雑になってきた、もしくは節税も併せて検討したいなどのタイミングになるかと思います。年商が大きくなれば取引も大きいため、その分経理処理も複雑になってきます。ご自身で確定申告を対応されている場合はミスが増える可能性もあります。加えて節税も検討されることになると、税理士へ相談をした方が最適な処理を確認することができるでしょう。
税理士との契約の流れ
まず税理士との面談からスタートします。初回面談は無料のことが多く、顧客側が悩んでいることや会計事務所の概要説明を受けて、終了となります。対面やWEB会議などで行われます。
初回の面談が終わると、税理士の方から見積書が提示されます。顧客から聞いた内容に基づいて見積書が作成されるので、顧客側としては何が顧問契約に入ってて、何がオプションなのかを確認することが重要です。不明点があれば税理士へ確認するようにしましょう。
見積書の提示を受けた後は、その税理士を選ぶかどうか、になります。通常は複数の税理士から見積もりをとって相性と含めて判断することになると思います。最終的には一人の税理士との契約になるため、見積もりの後は契約手続に入ります。税理士の方から顧問契約が送られてきますので、その内容を確認し、問題なければサインもしくは押印を行い契約締結となります。契約書の内容は必ずチェックし、こちらも不明点があれば税理士へ確認するようにしましょう。
税理士変更のケース
ケースとして、すでに税理士との契約があり、新しい税理士へ顧問契約を変更する場合があります。この場合は、前税理士との顧問契約を終了することと、新しい税理士との契約を締結する必要があります。顧問契約は解約できない期間が定められている(もしくは解約に必要な費用が発生する)場合もありますので、前税理士との顧問契約は確認するようにしましょう。
また、契約書以外にも帳簿データや決算書データ、申告データなどの引き継ぎも必要になってきます。適切にデータが渡らないと、新しい税理士が正しい対応ができなくなってしまう可能性もあるので、必ず顧客側でデータ連携の調整をするようにしましょう。
税理士と税理士法人の違いについて
よく税理士の事務所で見かけるのが、会計事務所や税理士法人などの表記ですが、これは何が異なるのでしょうか?まず会計事務所については個人で税理士が経営している小規模な事務所であることが多いです(一般的なイメージはこれですが、たまに会計事務所と記載はあるものの税理士法人の場合もありますので、必ずこのパターンに当てはまるわけではありません)。また、会計事務所と税理士事務所という表記がありますが、これは同じく税理士が運営している事務所になりますので、実質的な意味合いの違いはありません。
次に税理士法人ですが、これは複数の税理士が共同で経営をおこなっている税理士の事務所になります。イメージとしては会計事務所や税理士事務所よりも規模が大きいことが多いです。大手の会計事務所は基本的に税理士法人の形式をとっています。
では、会計事務所(/税理士事務所)もしくは税理士法人どちらに頼むのが良いのでしょうか?表記で選ぶというわけではありませんが、事務所もしくは法人の規模が大きいほど、難易度の高いもしくは複雑、海外が絡んでくる税務を扱っているケースが多いです。その場合料金は一般的な事務所よりも高くなる傾向にありますので、通常の顧問報酬や確定申告料金も高くなる傾向にになります(そもそも、このような事務所や法人は小規模な個人や法人の顧客をあまり持っていないので、小規模用の値段設定がないケースがあります)。
逆に事務所もしくは法人の規模が小さくなるほど、小規模な個人や法人を中心にサービスを提供しているケースが多いため、値段も小規模な個人や法人でも支払い可能な設定になっていることが多いかと思います。小規模な会計事務所の場合は、税理士1名でスタッフが数名というケースが多いです。
以上のように会計事務所もしくは税理士法人の規模にとって主に扱っている税務サービスが異なってくるため、税理士と顧問契約をしようと思っている個人もしくは法人の経営者については、まずご自身がどのようなことを依頼したいのかを整理した上で、さまざまな税理士にアプローチすると良いでしょう。
まとめ
以上のように年末調整を税理士へ依頼する際のポイントについて記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。