介護事業経営者が税理士を活用するメリットを解説

税務

本記事では、介護事業の経営者が税理士との契約を検討する際に、税理士を活用するメリットや、一般的な費用相場間はどの程度か、税理士と契約する際に留意すべきポイント、などについて解説をしていきます。本記事をご参考いただくことで税理士と契約する際の基礎知識を習得することができます。

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介護事業経営者が税理士を活用するメリットを解説

介護事業における税理士の活用:税務の特徴

介護事業においては、介護保険が適用されるものと、適用されないものに分けることができます。介護保険が適用されるサービスであれば介護保険利用者から患者負担分を収受するとともに、国民健康保険団体連合会に対して保険部分の請求を行うことになります。また介護保険が適用されないサービスについては、利用者から全額料金を徴収することで売上計上が完結します。この介護保険請求の業務がレセプトと言って非常に複雑で、正しい請求を行わないと請求内容を修正もしくは却下される可能性があり、想定した収入が介護事業者にとって見込まれなくなる可能性もあります。一方で、請求自体は結構複雑な業務にもなりますので、業務としての負荷は重たいと考えて良いでしょう。

介護事業においては、訪問介護の方式や、建物を用意して施設としてサービスを提供する場合などが考えられます。前者の訪問介護の場合は、事務所等で建物を利用する以外は基本的に介護利用者の自宅へ訪問する形式になりますので、固定資産等の処理は複雑にはなりません。一方で、後者については自前で建物を用意してそこでサービスを提供することになりますので、固定資産の管理が煩雑になります。具体的には、まず賃貸物件なのか自分で用意した自己物件なのかによっても処理方法が異なってきます。賃貸物件の場合、建物そのものは賃貸なので賃貸料を毎月支払い、その賃貸料を経費計上することで完結します。また建物に行った内装などは建物附属設備という形で固定資産計上が必要になります。費用も支払った年度に一括計上できず、固定資産台帳を通じて減価償却の形で耐用年数に応じて経費として計上されることになります。

自前の建物の場合は、建物の減価償却費が経費として計上されます。100%利用ではなく、一部プライベート利用している場合は占有面積等を使い、使用している部分を経費として計上することになrます。建物附属設備の考え方は賃貸の場合と同じです。建物や土地については、固定資産税を支払うことになりますが、固定資産税の金額については各市区町村から通知がきますので、個人や法人で何か対応するものではありません。一方で、建物附属設備のようなものについては、償却資産税として各人が市区町村へ申告書を提出することになります。その申告書を踏まえて市区町村へ税金を納めることになります。

介護事業の他の特徴としては、人件費部分です。人を中心としたサービス提供になりますので、人を採用したり育成したりする負荷は他の業種と比較しても影響が大きいと思います。自社雇用の従業員については、給与支払いが毎月必要になります。給与支払いにあたっては給与計算を行う必要がありますが、単に支払うべき給与のみを計算するのではなく、所得税の納付に必要な源泉徴収金額を併せて計算する必要があります。計算した結果、必要金額を従業員から徴収し、税務署へ毎月納付する必要があります。従業員の人数によっては事前に税務署へ届出を行うことで、納付するタイミングを半年に1回とすることが可能ですが、こちらは半年分をまとめて納付することになりますので、源泉徴収金額が減額されるわけではない点に留意ください。

給与に関連して、上記は所得税の源泉徴収でしたが、これに加えて住民税や社会保険の納付もありますので、給与計算関連の業務は従業員の数が増えるほど複雑になっていきます。また社会保険については雇用や退職によって適宜届出が必要になりますので、この業務についてももれなく雇用主側で対応する必要があるのです。加えて年末には年末調整という業務を行う必要があります。年末調整業務は、各月で発生した源泉徴収金額について過不足がある場合は年末にその金額を調整して追加で納付するか、もしくは取り過ぎていた場合は従業員へ返還することになります。年末調整を行うにあたっては、従業員の方の扶養状況を確認したり、従業員の方が入っている保険の内容を確認したりする必要があります。

介護事業における税理士の活用:事業の特徴

介護事業の事業の特徴としてはどのようなものでしょうか?介護については、今後介護が必要となる人口がどんどん増えてくることが予想されることから、ニーズとしてはますます増えていくと思います。一方で非常に重要なポイントとしては介護の担い手がなかなか安定的に確保できないという点です。介護事業は、主に介護保険と介護保険を利用しないサービスで成り立っていますが、基本的には介護利用者が1ヶ月に支払える金額に限界があるのと、介護保険も適用できる範囲が決まっていることから、介護士に対して支払える報酬も自ずと上限が決まってきます。一方で、非常に負担の大きい肉体労働であることから、年数の経過とともに長期的に仕事を継続できる内容でもありません。また、年数の経過とともに給与が増える職種でもないため、雇用の継続という視点で非常にハードルが高いのが特徴になっています。

事業継続のポイントとしては、収入側は一定の限度があることを前提に、いかに介護士を確保していくか、という点です。そのためには魅力的な働き方を提供する、キャリアイメージをしっかりと持ってもらう、従業員の精神的なケアを会社としてしっかりと行う、などさまざまな支援をしていく必要があります。今後ますます人口が減っていく中で介護士としての人材を確保していくのはますます難しくなっていくため、経営者としてはいかに人材を定着させていくかが鍵になることは間違えないと思われます。

介護事業にとってよくある課題

稼働率が上がらない

入居者様が入らず、稼働率が低水準もしくは安定しない課題です。集客面やサービス提供面での課題が原因であることが多いです。

赤字の改善

売上が想定よりも低く、一方で人件費などの固定費が重たく、継続的に赤字状態になっていることです。コストの見直しや、集客のみなしを図る必要があります。

職員の採用・継続

職員の採用がうまくいかない、採用してもすぐに辞めてしまうなどで慢性的に人不足に陥っている状態です。報酬水準や労働条件などの見直しが必要になります。

事業所の差別化が必要

介護事業所が周辺の事業所と類似しており、顧客が取りづらい状況になっていることです。顧客のニーズを把握し差別化の施策を検討する必要があります。

銀行融資

銀行から融資が出ない、もしくは銀行との交渉がうまくいかない、など資金面での課題です。事業計画書の作成の仕方など様々な原因が考えられます。

介護事業者によくある悩み

経理処理がIT化されておらず非効率

経理処理がエクセルなどで手作業が中心になっているため、決算書を作成するのに非常に時間がかかっているケースです。

経理専門の人員がいない

経理をよくわかっている人員がおらず、経理経験のない人材が自己学習しながら経理を進めているケースです。ミスが発生したり効率が悪いなどの課題があります。

介護事業の会計制度が複雑

介護事業の会計制度は他の業種の会計と異なり特殊です。そのため、専門性が高いため、ミスが発生したり法制度の改正に対応する必要があります。

介護事業における税理士のサービス内容

税務顧問・確定申告

日々の税務に関するアドバイスを行うサービスです。税理士にとって最も基本的なサービスとなります。また年度末には顧客に代わり確定申告書を作成し、税務署へ提出を行います。

経営指導

日々の顧問で把握できた情報に基づいて、介護事業の経営アドバイスを行うサービスになります。財務面をはじめ、事業効率化など様々なアドバイスが考えられます。

創業支援

介護事業を創業する際の各種支援サービスです。税理士によっては税務面だけでなく創業融資や事業開始にあたっての各種コンサルティングなどがあります。

介護事業経営者にとって税理士が必要なタイミング

介護事業経営者にとって、いつ税理士と契約するのが良いのでしょうか?まず考えられるのは消費税の課税事業者になるタイミングです。免税事業者であっても、年商1000万円を超える段階で課税事業者となるため、消費税申告が必要になってきます。この消費税申告ですが、所得税や法人税と異なり帳簿の付け方がやや複雑なものになっておりますし、消費税申告も原則課税と簡易課税で計算方法も計算結果も変わってくるため、採用した方法によって税額のメリット・デメリットが発生します。このように消費税が入ると考えるべき事項が増えるため、税理士のアドバイスを受けるのがおすすめです。

他に考えられるのが、開業時です。金融機関からの借入等を検討する際には、しっかりと決算書・税務申告書を税理士に作成してもらい、事業計画書についても必要に応じて税理士のサポートをもらう方が、いざという時金融機関から資金調達をスムーズにするためには良いと考えております。

介護事業経営者が税理士へ依頼できる内容・税理士を活用するメリット

介護事業経営者が税理士へ依頼できる内容及びそのメリットとはどのようなものでしょうか?

資金繰り・融資サポート

まずは、資金繰り関連で過去の決算書やそれに関する税務申告書を税理士に作成してもらうことで信頼性の高い書類を金融機関へ提出することが可能となります。加えて、事業計画書作成のサポートも税理士からもらうことができます(サポートの範囲については税理士によって異なってきます)。

ミスのない確定申告

また、上記と関連しますが、帳簿作成から決算書、税務申告書の作成・提出までを税理士へ丸投げすることで、本業に集中できるようになるという点です。介護事業経営者ご自身で勉強されて帳簿作成から税務申告書作成までを対応されるのは非現実的です。特に法人税になると所得税よりも難易度が上がります。そのため、税務のプロである税理士へ依頼することで、効率的に経営を行うことが可能となってくるのです。

本業に集中できる

税務業務や経理業務から解放されることで、本業である介護事業に集中することが可能です。本業に集中することでさらに利益を増やすことが可能でしょう。

クラウド会計の導入・経理効率化の推進

クラウド会計や経理効率化が得意な税理士であれば、クラウドの導入支援もしくは経理業務の効率化推進を期待することができます。

介護事業経営者が税理士と契約する際の料金

税理士の料金は主に、月額顧問報酬と決算申告時の報酬から構成されています。前者については、毎月税理士と税務相談に関してコミュニケーションをとるのに必要な金額になってきます。記帳代行を依頼する場合にはオプション料金として、毎月の月額顧問報酬に加算して金額を支払うことになります。月額顧問報酬は概ね2〜3万円以上となることが一般的かと思います。

後者の決算申告は、確定申告に際に税理士が作成する決算書及び確定申告書の作成料金として請求されるものになります。概ね月額顧問報酬の4〜6ヶ月分を請求されることが多いかと思います。また基本的には最低限のサービスしか入っていないことが多いので、例えば従業員がいて年末調整をお願いしたり、消費税の課税事業者のため消費税申告書が必要な場合は、別途プラスで料金がかかってきます。

介護事業に強い税理士の選び方

介護事業の顧問経験があるか?

適切な税務アドバイスを行う上で、介護事業の顧問経験があることは非常に重要です。

税務調査の対応が可能か?

税務署から不定期にくる税務調査に対して立会の対応が可能かどうかは、経営者として安心感を得る上で非常に重要です。

経理改善のアドバイスはあるか?

経理業務を効率化する上で、税理士からアドバイスがあるかどうかは、介護事業の効率化を実現する上で非常に重要な要素です。

事業計画・予算管理に強いか?

介護事業の経営を適正化する上で、介護事業の事業計画策定や予算管理に強いかどうかは、税理士から経営指導を受ける上で重要なポイントになります。

介護事業に強い税理士の具体例

介護事業に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます。

さすがや税理士法人様

まずは、さすがや税理士法人様です(https://fujio-atf.jp/)。東京都文京区白山を拠点とされている税理士事務所様になります。通常の税務申告サービスのみならず、介護アドバイザリーサービスなど幅広いサービスを提供されている税理士事務所様になります。

宮嶋公認会計士・税理士事務所

続いて当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。特にコンサルティング経験も豊富ですので介護事業経営者の方のお悩みを深く理解し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。

介護事業経営者が税理士を活用するメリットを解説 まとめ

以上のように介護事業にとって税理士は必要かについて記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。

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この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士 
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。