海外在住の人は確定申告必要か?確定申告のポイントなど徹底解説

税務

グローバル化が加速する現代において、日本企業から海外支社への転勤、海外企業への転職、あるいはリタイア後の海外移住など、生活の拠点を日本国外へ移すケースはもはや珍しいことではありません。日本を離れて海外で生活を始めると、「もう日本の税金とは無縁になる」と安易に考えてしまう方が少なくありません。しかし、実際の税務手続きはそう単純なものではありません。

海外に住んでいたとしても、日本国内に不動産を所有して賃貸収入を得ている場合や、日本国内の資産を売却した場合など、日本の税務署に対して確定申告を行わなければならないケースは多々存在します。日本の税法は、どこに住んでいるかだけでなく、「どこで稼いだ所得なのか」という点に厳格な基準を設けているからです。

しかしながら、海外在住者(非居住者)の税務は、日本在住者(居住者)の税務とはルールが根本的に異なり、非常に複雑な構造を持っています。「納税管理人」という代理人を立てる必要性や、源泉徴収の仕組み、さらには租税条約の適用など、専門的な知識が求められる場面が次々と現れます。もし「海外にいるからバレないだろう」と申告を怠れば、後になって重いペナルティが科され、将来日本に帰国した際の生活設計や社会的信用に大きなダメージを与えることになりかねません。

この記事では、海外在住の人が直面する確定申告の義務、非居住者特有の税務ルール、申告を怠った際のリスク、そして物理的な距離の壁を乗り越えて適正な申告を行うための具体的な方法について、徹底的に解説していきます。

税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
  1. 海外在住の人は確定申告が必要か?
    1. 「居住者」と「非居住者」の判定基準
    2. 課税の対象となる「国内源泉所得」とは
    3. 確定申告が不要なケース
  2. 確定申告の提出期限
    1. 原則的な申告期間
    2. 年の途中で出国する場合の特例
  3. 海外在住の人が確定申告を行わない場合のペナルティ
    1. 無申告加算税による負担増加
    2. 延滞税の発生
    3. 重加算税という重い処分
    4. 社会的信用の低下と帰国時のトラブル
  4. 海外在住の人は自分で確定申告を行うことが可能か?
    1. 納税管理人の選任が事実上の必須条件
    2. e-Tax利用のハードル
  5. 海外在住の人が自分で確定申告を行うことメリット
    1. 専門家への依頼費用の節約
    2. 自身の資産状況の正確な把握
  6. 海外在住の人が自分で確定申告を行うことデメリット
    1. 納税管理人となる親族等への過度な負担
    2. 国際税務特有の計算ミスと二重課税のリスク
  7. 海外在住の人が自分で確定申告をするための流れ
    1. 納税管理人の選任と税務署への届出
    2. 収入と経費の整理・計算
    3. 申告書の作成
    4. 税務署への提出と納税
  8. 海外在住の人が自分で確定申告をするために必要な資料等
  9. 海外在住の人が税理士を活用するメリット
    1. 納税管理人としての業務委託
    2. 租税条約や外国税額控除の適正な処理
    3. 税務調査への対応と精神的な安心感
  10. 海外在住の人が税理士を活用するデメリット
    1. 専門家への依頼コストの発生
    2. 国際税務に明るい税理士が限られていること
  11. 海外在住の人が税理士へ依頼する場合の費用相場
  12. 海外在住の人が税理士を探す方法
  13. 海外在住の人が税理士を選ぶ際のポイント
    1. 非居住者の申告実績と納税管理人受任の可否
    2. 海外とのコミュニケーション体制の充実度
  14. まとめ

海外在住の人は確定申告が必要か?

結論から申し上げますと、海外在住の人であっても、日本国内で発生した特定の所得がある場合には、日本の税務署に対して確定申告を行う必要があります。この義務の有無を判断するためには、日本の所得税法における「居住者」と「非居住者」の区分、そして「国内源泉所得」という重要な概念を正しく理解しなければなりません。

「居住者」と「非居住者」の判定基準

日本の税法では、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」の二つに分けています。居住者とは、日本国内に住所があるか、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人のことを指します。居住者は、日本国内で稼いだ所得だけでなく、海外で稼いだ所得も含めた「全世界所得」に対して日本で課税されます。

一方、非居住者とは、居住者以外の個人のことを指します。一般的に、1年以上の予定で海外に赴任したり移住したりする場合は、出国した日の翌日から非居住者として扱われます。非居住者の場合、海外の企業から受け取る給与や海外での事業収入については、日本で課税されることはありません。しかし、日本国内で生じた一定の所得に対しては、引き続き日本での納税義務が残ります。この記事では、この「非居住者」を海外在住の人として解説を進めます。

課税の対象となる「国内源泉所得」とは

海外在住の人が日本で確定申告をしなければならないのは、「国内源泉所得」と呼ばれる、日本国内を源泉として生じた所得がある場合です。これにはいくつかの典型的なパターンがあります。

最も代表的なケースが、日本国内にある不動産の賃貸収入です。海外赴任に伴い、日本の持ち家を賃貸に出して家賃収入を得ている場合や、元々日本国内でアパート経営などの不動産投資を行っていた場合は、その不動産から生じる所得は国内源泉所得となり、確定申告の対象となります。

また、日本国内にある土地や建物を売却して利益が出た場合も同様です。海外に住んでいても、売却した物件が日本に存在する以上、日本の税法が適用され、譲渡所得として申告が必要になります。さらに、日本国内に支店や事業所などの恒久的施設を持って事業を行っている場合の事業所得や、弁護士や芸能人などが日本国内で行った人的役務の提供に対する報酬なども、国内源泉所得に該当します。

確定申告が不要なケース

一方で、国内源泉所得であっても確定申告が不要なケースもあります。例えば、海外在住の人が受け取る日本の銀行預金の利子や、上場株式の配当金などは、支払われる際に日本の所得税が源泉徴収され、それで課税関係が終了する仕組みになっていることが一般的です。これを源泉分離課税と呼びます。ただし、不動産賃貸収入などは、借り主が法人である場合などに源泉徴収が行われますが、これはあくまで前払いの性質であり、最終的には確定申告を行って精算する必要があります。

確定申告の提出期限

海外在住の人の確定申告期限は、すでに海外に住んでいて代理人を立てている場合と、まさにこれから年の途中で海外へ出国する場合とで、適用されるルールが異なります。

原則的な申告期間

すでに海外に生活の拠点を移しており、後述する「納税管理人」を日本国内に定めている場合、確定申告の提出期間は日本在住者と全く同じスケジュールになります。原則として、対象となる所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、所轄の税務署へ申告書を提出しなければなりません。提出期限の最終日が土曜日、日曜日、または祝日に重なる場合は、その翌開庁日が期限として扱われます。

年の途中で出国する場合の特例

年の途中で海外へ移住し、非居住者となる場合は注意が必要です。この場合、出国する日までに、その年の1月1日から出国日までの間に発生した所得について確定申告と納税を済ませなければなりません。これを準確定申告と呼びます。引越しの準備で慌ただしい時期に税務手続きを行わなければならないため、大きな負担となります。

しかし、出国の日までに日本国内に住む人を「納税管理人」として選び、税務署に届出書を提出した場合は、この出国前の準確定申告を省略することができます。納税管理人を立てておけば、出国した年の翌年2月16日から3月15日までの通常の申告期間に、出国前の所得と出国後の国内源泉所得を合わせて、納税管理人に確定申告を行ってもらうことが可能になります。

海外在住の人が確定申告を行わない場合のペナルティ

「海外に住んでいるのだから、日本の税務署に状況を把握されることはないだろう」と考えるのは非常に危険な思い込みです。現在、日本の税務当局は各国の税務当局と租税条約等に基づく情報交換ネットワークを構築しており、海外の金融口座情報なども共有される仕組みが整っています。また、日本国内の不動産管理会社や取引先からの支払調書を通じて、国内での収入はガラス張りになっています。もし確定申告の義務があるにもかかわらず無申告であったことが発覚した場合、本来納めるべき本税に加えて、厳しいペナルティが科されます。

無申告加算税による負担増加

法律で定められた期限内に確定申告書を提出しなかった場合、本来の税額に加えて「無申告加算税」という罰金的な税金が課されます。この加算税は、納付すべきだった税額をベースに計算され、税額が大きくなるほど負担も重くなる段階的な仕組みがとられています。税務調査の通知を受ける前に自ら期限後申告を行った場合は負担が軽減される措置もありますが、税務署から指摘を受けた後では重い負担を背負うことになります。海外にいるからといって免除されることはありません。

延滞税の発生

無申告加算税に加えて、法定納期限の翌日から実際に税金を納付するまでの日数に応じて、利息に相当する「延滞税」が発生します。延滞税は、納付が遅れれば遅れるほど金額が膨らんでいく仕組みです。海外に住んでいると、税務署からの通知や督促に気づくのが遅れる可能性があり、結果として長期間にわたって延滞が続き、本来の税額を大きく上回るような多額の延滞税を支払う羽目になるリスクが潜んでいます。

重加算税という重い処分

単なる申告忘れではなく、意図的に日本の不動産収入を隠蔽したり、架空の経費を計上して所得を少なく見せかけたりといった悪質な仮装・隠蔽行為があったと認定された場合は、無申告加算税に代わって「重加算税」という極めて重いペナルティが課されます。行政処分の中でも最も厳しい部類に入るものであり、これを科されると税務当局からの信用を完全に失うことになります。

社会的信用の低下と帰国時のトラブル

金銭的なペナルティに留まらず、無申告は社会的信用の低下に直結します。将来、日本に帰国して新たに住宅ローンを組もうとした際や、事業資金の融資を受けようとした際に、過去の所得を証明する納税証明書が提出できず、審査に通らないといった事態に陥ります。日本の税制を軽視することは、将来の自分の首を絞める行為に他なりません。

海外在住の人は自分で確定申告を行うことが可能か?

結論から申し上げますと、海外在住の人が、日本国内に協力者を一切置かずに自分一人だけで確定申告を完結させることは、現在の日本の税務システム上、極めて困難であり非現実的です。

納税管理人の選任が事実上の必須条件

海外在住の人は、物理的に日本国内にいないため、税務署からの郵便物を受け取ったり、税務署からの問い合わせに電話や対面で対応したりすることができません。また、日本の税金は原則として日本円で日本の金融機関を通じて納付する必要があるため、海外の口座から直接納付することは困難です。

こうした問題を解決するため、日本の税法では「納税管理人」という制度を設けています。海外在住の人は、日本国内に住所または居所を有する人を納税管理人として選任し、所轄の税務署長に届け出なければなりません。納税管理人は、確定申告書の作成や提出、税金の納付、還付金の受け取り、税務署からの書類の受領など、納税に関する一切の事項を本人に代わって処理する役割を担います。つまり、自分で確定申告をするにしても、日本に住む親族や友人などに納税管理人になってもらい、その人の手を通すことが事実上の必須条件となります。

e-Tax利用のハードル

日本国内に住んでいれば、マイナンバーカードを使って自宅のパソコンからe-Tax(電子申告)を行うのが一般的です。しかし、海外へ移住するために市区町村に海外転出届を提出すると、マイナンバーカードは原則として失効または返納扱いとなっていました。近年では国外転出者向けのマイナンバーカード継続利用の制度も整備されつつありますが、利用環境の制限や電子証明書の更新手続きの煩雑さなど、技術的なハードルが依然として存在します。そのため、海外から本人が直接e-Taxで申告を完結させることは容易ではありません。

海外在住の人が自分で確定申告を行うことメリット

海外在住の人が、親族などに納税管理人を頼み、税理士を使わずに自分たちで協力して確定申告を行う場合のメリットについて考察します。

専門家への依頼費用の節約

自分たちで確定申告を行う最大のメリットは、税理士に支払う報酬が発生しないことです。海外在住者(非居住者)の確定申告は、国内居住者の申告に比べて国際税務の専門知識が求められるため、税理士の報酬相場も高めに設定される傾向があります。特に、日本の不動産収入が少額である場合などは、税理士費用を支払うと手元の利益がなくなってしまうこともあるため、費用を節約できることは経済的に大きな利点となります。

自身の資産状況の正確な把握

専門家に任せきりにせず、自分で日本の不動産の収支計算や領収書の整理を行うことで、日本に残してきた資産の運用状況や為替の影響、維持管理にかかるコストなどを正確に把握することができます。自分自身で数字を管理することは、遠く離れた資産に対する意識を高く保つことに繋がります。

海外在住の人が自分で確定申告を行うことデメリット

一方で、自分と親族の協力のみで確定申告を乗り切ろうとすることには、見過ごせない大きなデメリットやリスクが伴います。

納税管理人となる親族等への過度な負担

親族や友人に納税管理人をお願いする場合、その人に多大な時間と精神的な負担をかけることになります。納税管理人は単なる郵便物の受け取り係ではなく、税金の納付手続きや、場合によっては税務署からの専門的な内容の問い合わせに対応しなければなりません。税金の知識がない親族にとって、他人の税務処理を背負うことは大きなプレッシャーとなり、人間関係のトラブルに発展するリスクも孕んでいます。

国際税務特有の計算ミスと二重課税のリスク

非居住者の税務は、国内居住者の税務とは異なる特殊なルールが適用されます。例えば、非居住者が所有する不動産を法人に貸し付けている場合、支払われる家賃から20.42%の所得税が源泉徴収されます。確定申告では、この源泉徴収された税額を精算する手続きを行いますが、この処理を誤り、本来還付されるべき税金を取り戻し損ねるケースが頻発します。

さらに、日本での所得に対して日本の税務署に税金を納めた後、今度は居住している国の税務当局に対しても、全世界所得の一部として申告しなければならないケースがあります。この場合、両国で二重に税金を支払う「二重課税」の状態になりますが、これを解消するための「外国税額控除」などの仕組みを素人が正確に理解し、両国の制度をすり合わせて申告することは至難の業です。

海外在住の人が自分で確定申告をするための流れ

それでも、費用を抑えるために親族の協力を得て自分で確定申告を進める場合、以下のような流れで手続きを行うことになります。

納税管理人の選任と税務署への届出

まず第一のステップとして、日本国内に住む親族などを納税管理人に選任します。そして、本人の出国前、または確定申告を行う必要が生じた時点で速やかに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を作成し、本人の日本の納税地(出国前の住所地や、不動産の所在地など)を管轄する税務署へ提出します。この手続きが完了して初めて、税務署との窓口が納税管理人に設定されます。

収入と経費の整理・計算

次に、日本国内で発生した収入と経費を集計します。海外にいながら日本の不動産管理会社から送られてくる家賃明細や、修繕費の領収書、固定資産税の納付書などを確認します。これらの書類は、あらかじめ納税管理人の自宅へ郵送されるように手配しておくか、データ化して海外の本人と共有する工夫が必要です。集めた資料をもとに、帳簿を作成して所得金額を計算します。

申告書の作成

国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」などを利用して、申告書を作成します。非居住者の確定申告においては、源泉徴収された税額の記入漏れがないように細心の注意を払います。また、非居住者は日本国内の基礎控除は受けられますが、生命保険料控除や扶養控除など、適用を受けられない所得控除も多数存在するため、誤って適用させないように注意して作成を進めます。

税務署への提出と納税

完成した申告書を印刷し、納税管理人が本人の所轄税務署へ郵送または持参して提出します。納税が必要な場合は、納税管理人が金融機関の窓口等で代わりに納付手続きを行います。逆に還付金が発生する場合は、原則として日本国内の口座(納税管理人の口座を指定するケースが多い)に振り込んでもらい、その後、納税管理人から海外の本人へ送金してもらうといった連携が必要になります。

海外在住の人が自分で確定申告をするために必要な資料等

確定申告の作業を滞りなく進めるためには、事前の準備が鍵となります。海外と日本という物理的な距離があるため、資料の不足が発覚すると取り寄せに時間がかかってしまいます。以下のような書類を漏れなく準備することが求められます。

収入を証明する各種書類としては、不動産賃貸を行っている場合は不動産管理会社が発行する家賃の送金明細書や年間の収支報告書、そして入居者と交わした賃貸借契約書の控えが必要です。もし借り主が法人であり源泉徴収が行われている場合は、支払調書を必ず入手して源泉徴収税額を確認しなければなりません。不動産を売却した場合は、売買契約書や譲渡対価の受け取りを証明する書類が必要です。

経費を証明する資料としては、日本国内の不動産にかかる固定資産税の納税通知書と領収書、火災保険や地震保険の証券および支払明細、物件の修繕費やクリーニング代の請求書と領収書などが必要です。ローンを組んで不動産を購入している場合は、金融機関から発行される借入金返済予定表を用意し、経費となる利息部分を正確に抜き出す必要があります。

また、手続きの前提として、「納税管理人の届出書」の控えや、申告書にマイナンバーを記載するための確認書類(マイナンバーカードのコピーや住民票の除票など、税務署の指示に従ったもの)を納税管理人の手元に揃えておく必要があります。

海外在住の人が税理士を活用するメリット

海外在住者の税務手続きは、一般的な確定申告よりも遥かに複雑であり、ミスをした場合のリスクも大きいです。そのため、国際税務の知見を持つ税理士を専門家として活用することには、費用を上回る大きなメリットがあります。

納税管理人としての業務委託

税理士に依頼する最大のメリットは、税理士事務所そのものに「納税管理人」になってもらえるという点です。日本の税理士を納税管理人に指定すれば、税務署からの郵便物はすべて税理士事務所に届くようになり、親族や友人に面倒な負担や迷惑をかけることが一切なくなります。税金の納付書の受け取りや還付金の手続きもスムーズに行われ、海外にいながらにして日本の税務処理を完全にアウトソーシングすることができます。

租税条約や外国税額控除の適正な処理

日本と居住している国との間で「租税条約」が結ばれている場合、特定の届出を提出することで、日本での源泉徴収税率が軽減されたり免除されたりする恩恵を受けられることがあります。また、日本で確定申告をして税金を納めた後、居住国でも同じ所得を申告しなければならない場合、税理士のアドバイスに基づいて「外国税額控除」の制度を適切に利用することで、二重課税を防ぐことが可能になります。このような国際的な視点での高度な税務判断は、素人には極めて困難であり、専門家の力が必須となる領域です。

税務調査への対応と精神的な安心感

海外にいながら「日本の税金処理は正しくできているだろうか」と不安を抱え続けるのは精神的に良くありません。万が一、日本の税務署から問い合わせがあったり、税務調査が入ることになった場合でも、税理士を納税管理人にしていれば、税理士が納税者の代理人として税務署の矢面に立って論理的に対応してくれます。専門家が後ろ盾になってくれているという安心感は、海外生活を謳歌する上で非常に大きな価値を持ちます。

海外在住の人が税理士を活用するデメリット

税理士の活用は非常に有効ですが、留意すべきデメリットもいくつか存在します。

専門家への依頼コストの発生

当然のことながら、税理士に業務を依頼すれば報酬が発生します。非居住者の確定申告は、通常の居住者の申告に比べて確認すべき事項が多く、国際的なルールの適用可否を調べる手間がかかるため、料金が高めに設定されるのが一般的です。日本の不動産収入がごくわずかである場合などは、税理士費用によって利益が圧迫されてしまう可能性があるため、費用対効果を見極める必要があります。

国際税務に明るい税理士が限られていること

日本の税理士であれば誰でも非居住者の税務に詳しいわけではありません。日常的に国内の中小企業をメインに支援している税理士の場合、租税条約の手続きや非居住者の源泉徴収ルールに不慣れなケースもあります。そのため、依頼内容に合致する「国際税務に強い税理士」を探し出すことに手間がかかるというデメリットがあります。

海外在住の人が税理士へ依頼する場合の費用相場

海外在住の人が税理士に依頼する場合、主に「申告書作成の基本料金」と「納税管理人としての業務費用」の二つの要素から報酬が決定されます。

申告書の作成そのものの基本料金については、依頼する内容の複雑さによって変動します。例えば、日本国内にワンルームマンションを1〜2室所有しており、単純な不動産賃貸収入の申告を行う場合であれば、おおよそ10万円から15万円程度が目安となります。しかし、日本の不動産を売却した際の譲渡所得の計算が必要な場合や、過去に遡って複数年分の無申告を解消する手続きを依頼する場合は、計算作業が膨大になるため、20万円から30万円以上かかることも珍しくありません。

また、税理士に「納税管理人」を引き受けてもらう場合は、申告書の作成料金とは別途で、納税管理人としての維持管理費用が発生することが多いです。これには、税務署からの郵便物の受け取りや内容の確認、必要に応じた海外の本人への連絡業務などが含まれます。この費用は、年額で一括して5万円から10万円程度請求されるケースや、月額顧問料として少額ずつ請求されるケースなど、事務所によって体系が異なります。必ず事前見積もりを取得し、トータルの費用を確認することが重要です。

海外在住の人が税理士を探す方法

遠く離れた海外から、自分に合った日本の税理士を見つけるための効果的な方法をいくつかご紹介します。

まずは、インターネットによる検索です。「非居住者 確定申告 税理士」や「海外赴任 納税管理人 税理士」といったキーワードで検索を行うと、国際税務や海外在住者のサポートを専門的に行っている、あるいは強みとしている税理士事務所や税理士法人のウェブサイトが見つかります。こうした事務所はホームページ上に海外在住者向けの情報を詳しく掲載しているため、比較検討の材料になります。

次に、税理士紹介サービスの活用です。インターネット上には、希望の条件を入力するとマッチする税理士を無料で紹介してくれる仲介サービスが多数存在します。こうしたサービスを利用する際に、「現在海外に居住しており、納税管理人を引き受けてくれて、オンラインでのやり取りが可能な税理士を探している」と具体的な要望を伝えることで、条件に合致する専門家を効率的に見つけることができます。

また、日本の不動産を管理会社に任せている場合は、その不動産管理会社から紹介してもらうというルートもあります。非居住者のオーナーを多く抱えている管理会社であれば、日常的に連携している、非居住者税務に慣れた税理士ネットワークを持っている可能性が高いです。

海外在住の人が税理士を選ぶ際のポイント

海外という物理的な距離がある中で依頼先を決めるため、失敗しないためのいくつかの重要なチェックポイントがあります。

非居住者の申告実績と納税管理人受任の可否

まず大前提として、その税理士事務所が「納税管理人」の業務を引き受けてくれるかどうかを明確に確認する必要があります。申告書の作成は行うが、納税や書類の受け取りのための管理人業務は親族に頼んでほしいというスタンスの事務所では、根本的な問題解決になりません。その上で、非居住者の確定申告や租税条約に関する届出など、国際税務の実務経験が豊富にあるかどうかを確認しましょう。対象となる居住国(アメリカ、シンガポール、イギリスなど)の事情に触れた実績があれば、より安心です。

海外とのコミュニケーション体制の充実度

海外在住者にとって、税理士とのコミュニケーション手段は極めて重要です。時差がある中で、電話だけでなく、メール、Chatwork、Slack、LINEなどのテキストベースのチャットツールで円滑に連絡が取れる体制が整っているかを確認しましょう。また、初回相談や詳細な打ち合わせの際に、ZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議システムを使ってオンラインで対面コミュニケーションができるかどうかも、信頼関係を築く上で欠かせないポイントです。ペーパーレス化が進んでおり、領収書などをクラウドの共有フォルダでやり取りできる事務所であれば、国際郵便のやり取りを最小限に抑えることができます。

まとめ

生活の拠点を海外へ移したからといって、日本国内で発生する所得に対する納税義務が消滅するわけではありません。日本の不動産の家賃収入や売却益などがある海外在住者にとって、確定申告は避けては通れない重要な手続きです。

非居住者の税務は、居住者のルールとは異なる独自の計算方法や源泉徴収の仕組みがあり、さらに居住国との租税条約や外国税額控除など、二つの国の税制が複雑に絡み合う高度な領域です。「日本にいないからバレない」「どう手続きしていいかわからないから放置する」という対応は、後に重いペナルティを招き、将来日本に帰国した際や資産を動かそうとした際に、大きな障害となってご自身に跳ね返ってきます。

海外在住の人が適正に確定申告を行うためには、日本国内に「納税管理人」を置くことが実務上のカギとなります。親族に負担をかけたくない場合や、複雑な国際税務のリスクを確実に取り除きたい場合は、費用をかけてでも国際税務に強い税理士を納税管理人として選任し、申告を代行してもらうことが最も安全で確実な選択肢と言えるでしょう。

物理的な距離が離れているからこそ、日本の税金に対する対応はクリアにしておく必要があります。適切な専門家をパートナーに迎え、国境を越えたスマートな資産管理と税務コンプライアンスを実現し、安心して海外での生活やビジネスに邁進してください。

税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。