本記事では、不動産に強い税理士の探し方について記載しております。具体的に、不動産業界に対して税理士がどのようなサービスを提供しているのか、どのように税理士を探したら良いのか、税理士をつけるメリット、などを記載しております。
本記事を読んでいただくことで、税理士をつけるかどうか迷っている方が、税理士と契約するメリットを理解し、税理士を選ぶ判断軸を得ることができた上で、税理士と契約するかどうかを判断することができるようになります。
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不動産に関する税金の種類
不動産ビジネスにおいて、まずはどのような税金が発生してくるのかを整理したいと思います。発生する税金の種類としては、①購入する際に発生するもの、②所有時に発生するもの、③売却する際に発生するもの、④相続/贈与する際に発生するものに分けられます。
①は不動産取得税と登録免許税の2つがかかってきます。不動産取得税は不動産を取得した際に発生する税金で、都道府県に支払う税金となっております。登録免許税は、不動産の登記を行う際に発生する税金で、国へ支払う税金となっております。
②は固定資産税と都市計画税がかかってくるとともに、賃貸に出している方には所得税もしくは法人税、場合によっては消費税等も発生してきます。固定資産税と都市計画税は保有している不動産に対して毎年発生するもので、市町村へ支払うことになります(都市計画税は、その対象になっている地域のみ)。賃貸に出しており、家賃を収受している場合は、個人の方であれば所得税(年商にとって+消費税)、法人の方であれば法人税(年商にとって+消費税)がかかってくることになり、所得税・法人税・消費税は確定申告が必要になります。
③不動産の売却時に発生するものとしては、所得税(譲渡所得、法人の場合は譲渡損益にかかる法人税)、及び所得税(もしくは法人税)にかかる住民税となります。こちらは賃貸用の不動産か否かにかかわらず譲渡した際に販売した価格と購入した価格及び付随費用との間に差がある場合には譲渡損益が発生しますので、売買する方が個人の場合は所得税が、法人の方の場合は法人税がそれぞれかかることになります。こちらは②と同じく確定申告をする必要があります。
④は相続税もしくは贈与税がかかってきます。贈与税は贈与する人から贈与された人に不動産が渡った段階で、贈与された方に贈与税がかかります。相続税も同じで相続される人から相続する人に不動産が渡った段階で、相続する人に相続税がかかることになります。こちらも所得税や法人税と同じく、相続税もしくは贈与税に関する確定申告が必要になってきます。
不動産に対する顧客の税理士へ対するニーズ整理
不動産ビジネスにおいて、顧客は税理士に対してどのようなニーズを抱えているのでしょうか?まずは税務顧問及び確定申告(記帳代行を含む)の対応です。賃貸ビジネスや売買が発生した方はほとんどの場合確定申告が必要となりますが、税務に対する専門知識がない場合自力で確定申告の対応を行うのは難易度が高いです。特に不動産においては税制上の特例処理もあるため、計算によっては税金面での有利不利が発生することが多いです。そのため税理士へ依頼するケースがあります。
続いて相続・贈与関連です。すでに相続が発生していて相続税の申告書を作成もしくは税務調査の対応をしなくてはならないという方もいらっしゃれば、相続対策で税理士を活用したいもしくは事業承継など含めて全体的に税理士へ相談をしたいというニーズもあります。
また、不動産ビジネスが大きくなってきたため法人化を検討されている方もいらっしゃると思います。この場合、法人化する際の税制や会社設立のサポート、法人税の申告や税務顧問の対応などで税理士を検討する場面が出てくるかと思います。
最後に、不動産に強い税理士に対して税金だけでなく不動産の活用方法やリフォームの検討、相続対策も含む不動産購入等の検討など、よりビジネスに近いコンサルティングを依頼する方もいらっしゃいます。
不動産に強い税理士が提供しているサービス
確定申告
まずは確定申告です。これは、原則年1回、税務署へ提出する税額を計算した書類になります。個人で開業されている方含めて提出が必要になります。税理士と聞くとまずはこの確定申告の代行を想像される方が多いのではないかと思います。確定申告は確定申告書類を作成するのみならず、その土台となる帳簿の作成や年間の数字結果を示した貸借対照表や損益計算書(併せて決算書)を作成する必要がありまして、全て確定申告書作成に必要な基礎的な書類となります。帳簿や決算書についても税理士へ依頼することが可能です。納税に関する予測データを依頼することもあります。
月次決算
毎月の損益の状況を把握し、不動産経営として問題ないかどうかを確認するために、月次決算書というものを使うことがあります。確定申告書と異なり必ず作成しなくてはならないものではありませんが、経営の状況をリアルタイムで把握するためには必要なものになります。この月次決算についても税理士に依頼することが可能です。月次試算表という言葉で呼んだりすることもあります。
経理アウトソーシング
帳簿作成や月次決算も経理業務ではありますが、経理全体の中の一部の業務になります。経理業務はそのほかに、請求している金額の入金処理や支払処理、その他給与計算など、お金に関するあらゆる業務があります。医療経営していると、この辺りの重要だけど本業ではない業務に時間を取られることが多いかと思いますが、このような業務を税理士へ委託することができます。
クラウド会計導入支援
税理士はクラウドソフトを使って顧客へサービスを提供することが多いため、顧客自身が自らクラウドソフトを入れたいというニーズにも応えることが可能です。特に経営者ご自身で数字はしっかり管理したいからクラウド会計ソフトを導入したいという場合、システム会社だと会計や税金の細かいルール設定まで対応できないケースがあるため、税理士にサポートを依頼するケースもあります。
管理会計の導入
月次決算とも関係してきますが、賃料や空室率を分析して不動産経営に役立てたいなどのニーズがあるかと思います。このように経営の分析に役立つ数字を作成して管理することを管理会計と呼んだりしますが、この導入支援を税理士へ依頼するケースもあります。
法人化支援
節税などさまざまな目的で法人化(不動産管理会社など)を検討される方へ、法人化によるメリット試算や法人設立手続のサポート、資金調達などの融資サポートなどを提供しています。また、不動産管理会社などの法人に対する税務顧問・記帳代行・確定申告書の作成なども併せて提供しています。
マイクロ法人の設立を検討されている方については、こちらの「マイクロ法人に強い税理士を検討するポイント」を参照ください。
相続・贈与・事業承継への支援
不動産は相続対策とワンセットになることが多いため、不動産の所得税や法人税申告のみならず、相続税や贈与税の申告それに関するアドバイス、もしくは事業承継のアドバイスを提供している税理士もいます。
不動産に強い税理士の特徴
不動産に強い税理士にはどのような特徴があるのでしょうか?不動産は購入、保有、売却、相続などその動きが多岐にわたるため、幅広い税務面でのスキル、及び不動産に関する知見が求められます。また税制も不動産においては特殊ですので、経験値が重要となってきます。不動産に強い税理士はこのような特徴を持っているのです。
不動産に強い税理士の相場・費用
不動産に強い税理士の相場はいくらぐらいになるのでしょうか。
経営者が税理士へ依頼する際に、2つの方法があります。1つ目は、税務顧問として税理士と契約して1年を通して税務アドバイスをもらいながら、決算期末には決算書の作成と確定申告書の作成・提出を依頼する方法です(ケースによっては記帳代行も税理士へ依頼します)。2つ目は、決算申告のみを決算期末に税理士へ依頼する方法です。この場合、決算期末前の期中については税務アドバイスを税理士からもらうことはできず、決算申告のタイミングで併せて税理士と相談しながら確定申告を進めていくことになります。
決算申告のみを税理士へ依頼する場合の費用として、概ね20万円〜となるケースが多いように思います(年商や業種などによって最低料金は当然異なってきます)。もちろん、取引数や取引の複雑性によっても報酬金額は変わってくるため、必ず全ての方が20万円〜ということはないことにご留意ください。
仮に顧問契約で年間の契約を結んでいたとしても、一般的な税理士との契約では月額の顧問料報酬と、決算申告は別途料金が課されることが多いです(顧問料報酬の数ヶ月分ということが多いかと思います)。この場合、決算申告のみを依頼するよりも顧問契約している決算申告の方が安いことが多いです。月額顧問報酬についても、業種や年商、取引数などによって大きく異なりますが、概ね2〜3万円以上で決算申告料金が15万円〜という場合が多いように思われます。
不動産業界の場合は取引やオペレーションが他の業種等と比較して複雑になる傾向になることから、上記の水準よりももう少し高くなることが予想されます。おすすめとしては、やはり顧問税理士契約を締結することにより定期的に税制面でのアドバイスを受けられるようにしておくことです。
不動産に強い税理士をどのように探すか?
不動産に強い税理士の探し方は大きく下記の方法があるかと思います。
1つ目は知り合いから紹介してもらうことです。信頼している方からの紹介であれば、安心感があるかと思います。一方で、相性が合わない場合などは紹介をしてもらった手前、なかなか断りづらいという点があると思います。
2つ目はインターネットで検索するです。ご自身が住んでいる地域で検索すると税理士のホームページがインターネット上に出てくるはずです。最近の税理士のホームページは料金体系や強み、サービスの範囲など記載内容が充実しておりますので、その中でご自身のニーズに合った税理士と面談して決められるという方法はあるかと思います。
3つ目は税理士紹介サイトです。こちらもインターネット経由ですが、直接税理士へ問い合わせるのではなく紹介サイトのコーディネーターにご自身のニーズを伝えて、複数名の税理士を紹介してもらう流れになります。一般的に依頼者側は費用がかかりませんので、安心して利用することが可能です。税理士紹介サイト以外にも会計ソフト会社で税理士を紹介しているケースもあります。
不動産に強い税理士の選び方
不動産に強い税理士の選び方は以下のように考えられます。
不動産の税務に関する経験値・実績
繰り返しになりますが、不動産の税務は他の税務よりも特殊論点が多いため、その税理士が過去どの程度不動産に関する税務に経験があって顧客対応をしていたかは、判断する一つの指標になるかと思います。税理士でも得意な業界や得意な税金の領域がある程度決まっているため、なるべく不動産の経験値がある税理士を選ぶ方が良いかと思われます。
また不動産と言っても不動産に譲渡所得だけでなく、不動産賃貸や、不動産管理会社、不動産仲介会社など多岐に渡りますので、幅広く経験している税理士の方が良いでしょう。また税金としても所得税や法人税・消費税だけでなく、相続税や贈与税、事業承継などにも詳しい税理士の方が良いかと思います。
積極的なアドバイスが可能か
やはり、税理士に期待するところとしては節税等に関するアドバイスの部分だと思いますが、この辺りの提案を積極的に行ってくれる税理士が良いかと思います。不動産については単に保有しているだけでなく譲渡したり、相続したりと多岐にわたるため、例えば将来譲渡することを見越して所得税や法人税で有利なように進めることや、相続対策を踏まえた選択など。相続であれば不動産の評価も影響を与えますので、この辺り総合的にアドバイス可能な税理士がいると心強いでしょう。その他、法人化や生前贈与、その他相続に関する手続(遺言書など含む)についても検討にあたっては必要となってくるため、不動産においては税務以外の領域も多岐に及んできます。
税金以外の不動産に関するサポートも可能か
不動産においては出口戦略など、税金以外でもさまざまな知識が求められます。このような顧客の多岐にわたるニーズを解決するために税理士のみでなく、不動産会社・不動産コンサルタント、弁護士、司法書士など各種専門家と力を合わせて課題に解決できるような税理士が良いかと思います。このようにまとめ上げるだけでなく、税理士自身が不動産ビジネスに詳しいと、より深い提案や課題解決ができるでしょう。
不動産に強い税理士と契約するメリット
不動産に強い税理士と契約するメリットは主に下記と考えられます。
不動産に関する確定申告・記帳の業務から解放される
不動産については税制も複雑であることから、確定申告や記帳代行の難易度は他の業界と比較しても高いと思います。これをご自身でやられる場合、全てご自身で勉強したり調べたりする必要がありますが、当然間違ってしまうリスクもあります。この点、税理士費用は発生するものの、確定申告や記帳業務から解放されるため、本業に集中できかつ売上をアップさせることが可能になること、さらには間違えのない確定申告書を作成・提出することが可能となるため、安心感につながることはメリットと言えます。
安心感を持って税務調査対応が可能になる
不動産は特殊な税務の論点が多いため、不動産に強い税理士であれば税務調査も適切なコミュニケーションで調査官と対応してもらえるので安心です。また申告書についても過去の経験から税務調査の目線でしっかりとアドバイスをしてもらえることも期待できます。
確定申告だけでなく相続や事業承継など総合的にアドバイスがもらえる
不動産に関する税金は所得税や法人税だけにとどまらず、相続税や贈与税、事業承継など幅広く関連してきます。不動産に強い税理士であれば単に所得税や法人税の観点からだけではなくて、相続税・贈与税等の視点からの節税に関するアドバイスや税務調査に関するアドバイスが期待できます。また不動産の売却時や相続時における税務面でもサポート、相続税計算における土地や建物の評価、もしくは税制の選択適用など不動産特有のサポートを受けることも可能です。
税金以外の不動産に関するサポートももらえる
不動産に強い税理士であれば不動産に関する税金のサポート以外にも、例えば不動産コンサルタントや不動産会社、司法書士・弁護士などと連携して幅広い不動産に関する顧客の課題に対応できたり、税金以外に顧客が持つ不動産に関する悩みに回答できたりすることが可能となります。
不動産に強い税理士の具体例
以下では、インターネットを通じて不動産に強い税理士について、具体的にどのような方々がいらっしゃるのかを記載します。
まずはマルイシ税理士法人様です(https://maruishi-tax.jp/column/column061/)。不動産と相続を専門に扱われていて、不動産に特化されてサービスを提供されている特徴のある事務所様になります。確定申告のみならず相続に関する節税のアドバイスなど多岐にわたってサービスを展開されているようです。
次に、税理士法人根本税理士事務所様です(https://www.etokyo-fudosan.com/)。こちらは新小岩、市川に拠点を構えられている事務所様になります。事務所様として、申告のみならず法人化の検討や相続対策など不動産に関する課題を総合的に対応されております。
まとめ
以上にように、不動産に強い税理士の概要について記載をしてまいりました。
これから不動産業界で開業を検討されている方、すでに不動産経営されている方についても、ぜひ上記の記事をお読みいただき税理士選びの参考にしていただければと思います。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。