リフォーム業はお客様の住まいを快適で価値ある空間へ生まれ変わらせます。その仕事はお客様の夢を形にする創造性と現場を動かす確かな技術力が求められる素晴らしい専門職です。多くの経営者は優れた職人としてあるいは現場監督として、品質の高い工事を提供することに誇りと情熱を注いでいます。
しかし一人の職人や現場監督から「経営者」へと立場が変わったとき、道具や図面だけでは解決できない大きな課題に直面します。それが「お金」の流れすなわち「経営管理」です。工事ごとの原価計算や材料費と外注費の支払い、そして複雑な建設業会計に基づいた決算と税務申告。これらは良い家を造る技術とは全く異なる専門知識を要求します。
「忙しく現場をこなしているはずなのになぜか会社にお金が残らない」「どの現場が儲かってどの現場が赤字だったのか後からではよく分からない」「建設業許可の更新が近づいてきたが決算書の内容が不安だ」。多くの実直な経営者がこのような悩みを抱えながら日々の業務に追われています。
この「どんぶり勘定」という危険な航海から抜け出し、あなたの会社を安定した成長軌道に乗せるための羅針盤。それが「リフォーム業に強い税理士」という存在です。彼らは単に税金の計算をするだけではありません。建設業会計を熟知し工事ごとの利益を可視化します。そして資金繰りを安定させあなたの会社が地域で勝ち残っていくための戦略を共に考えるまさに経営のパートナーなのです。
この記事では日々現場で汗を流すリフォーム業経営者の皆様へ向けて、自社の未来を託するにふさわしい「最強の税理士」をいかにして見つけ出し、その力を最大限に活用していくべきか、その具体的な方法論を網羅的に解き明かしていきます。
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リフォーム業に強い税理士を探す方法
- リフォーム業の定義
- リフォーム業ビジネスの特徴
- リフォーム業ビジネスの環境
- リフォーム業経営者の税理士に対するニーズ
- リフォーム業における経理や税務の特徴
- リフォーム業における税理士の提供するサービス
- リフォーム業における税理士を活用するメリット
- リフォーム業における税理士を活用するデメリット
- どのようなリフォーム業者が税理士へ依頼すべきか?
- リフォーム業に強い税理士を探すポイント
- リフォーム業に強い税理士を探す方法
- リフォーム業で税理士を探すタイミング
- リフォーム業に強い税理士の費用相場
- リフォーム業に強い税理士と契約するまでのプロセス
- リフォーム業において税理士の切替を検討する場合
- リフォーム業で税理士に対してよくある質問と回答
- リフォーム業に強い税理士の具体例
- リフォーム業に強い税理士を探す方法 まとめ
リフォーム業の定義
「リフォーム業に強い税理士」を探す旅の第一歩は対象となる「リフォーム業」がどのような事業なのか、その法的・社会的な位置付けを明確に理解することです。その事業の特性を知ることがなぜこの業界に特化した税理士が必要とされるのかを理解する鍵となります。
建設業法上の位置付け
リフォーム業は一般的に既存の建物の改修や増築、修繕を行う事業を指します。法律上は「建設業法」という法律の規制を受ける「建設業」の一分野です。
建設業法では建設工事を29の業種に分類しています。リフォーム工事はその内容に応じてこれらの複数の業種にまたがることが特徴です。例えば内装の改修であれば「内装仕上工事業」、屋根の葺き替えであれば「屋根工事業」、キッチンや浴室の入れ替えであれば「管工事業」、外壁の塗装であれば「塗装工事業」といった具合です。
そして一件の請負代金が500万円以上(建築一式工事の場合は1500万円以上)の工事を請負うためには、これらの業種ごとに「建設業許可」を都道府県知事または国土交通大臣から受けなければなりません。この建設業許可の取得と維持がリフォーム業の経営において極めて重要なテーマとなります。税理士はこの許可要件、特に財務状況に関する要件をクリアするための決算書作成において重要な役割を担います。
新築工事との違い
リフォーム業は同じ建設業の中でもゼロから建物を建てる「新築工事」とは異なる特性を持っています。
新築工事は設計図に基づいて計画通りに進めやすいのに対し、リフォーム工事は既存の建物を解体してみて初めて予期せぬ問題、例えば柱の腐食や雨漏りなどが発覚することが少なくありません。そのため当初の見積もりからの仕様変更や追加工事が発生しやすく原価管理が複雑になりがちです。
また工事期間中はお客様がその家に住みながら行われることも多く、騒音やほこりへの配慮などお客様とのきめ細かなコミュニケーションが求められます。このようにリフォーム業は単なる施工技術だけでなく現場での対応力や顧客との関係構築能力が事業の成功を大きく左右するのです。
関連業種との関わり
リフォーム業は多くの関連業種との連携の中で成り立っています。デザイン性の高いリフォームを手がける「設計事務所」や「インテリアデザイナー」。地域に根差して新築からリフォームまで幅広く手がける「工務店」。そしてキッチンやユニットバスといった住宅設備を製造・販売する「建材メーカー」やそれらを供給する「建材商社」。
さらに実際の工事現場では大工や電気工事士、水道設備工、塗装工といった様々な専門分野の「職人」たちの力が不可欠です。これらの職人との関係は正社員として雇用する場合もあれば、工事ごとに仕事を依頼する「外注(一人親方など)」の場合もあります。この多様なプレイヤーとの連携とそれぞれに対する支払いの管理がリフォーム業の経理を複雑にする大きな要因となっています。
リフォーム業ビジネスの特徴
リフォーム業の経営は他の業種にはない独自の力学と課題を持っています。そのビジネスモデルの特性を深く理解することが適切な経営戦略を立て税理士と効果的な対話を行うための基盤となります。
地域密着型と顧客紹介の重要性
リフォーム業はその事業の性質上極めて「地域密着型」のビジネスです。施工エリアが物理的に限定されるため事業の成否はその地域社会でどれだけ良い評判を築けるかにかかっています。
新規の顧客獲得において最も強力な武器となるのが既存のお客様からの「紹介」や「口コミ」です。満足度の高い工事を提供すればそのお客様がご近所の方やご友人、ご親戚に「あの会社は良かったよ」と勧めてくれます。この良い評判の連鎖が広告費をかけずとも安定した受注をもたらす最大の資産となるのです。
逆に一度でもずさんな工事や不誠実な対応をしてしまえば悪い評判はあっという間に地域に広がります。したがって一件一件の工事に誠実に向き合いお客様との長期的な信頼関係を築くことが経営の最重要課題となります。
職人の技術力への依存
リフォームの品質は最終的に現場で働く「職人」の腕(技術力)によって決まります。どれだけ優れた設計や高品質な材料を用意しても、それを形にする職人の技術が未熟であればお客様を満足させることはできません。
そのためリフォーム業は優秀な職人をいかにして確保しその技術力を維持・向上させていくかという課題と常に隣り合わせです。自社で職人を雇用し育成していくのか。あるいは信頼できる腕の良い一人親方や専門工事業者との協力関係を築くのか。その選択は会社の経営スタイルや原価構造に大きな影響を与えます。
この「人」への依存度の高さは財務上支出の中で「労務費(自社職人の給与)」や「外注費」が大きな割合を占めることを意味します。これらのコストを適切に管理し職人の生産性を高めることが利益を確保する上での鍵となります。
プロジェクトごとの収支管理
リフォーム業の会計管理における最大の特徴は会社全体の収支を見るだけでなく、工事一件一件すなわち「プロジェクト(現場)」ごとに収支を正確に管理する必要がある点です。
A邸のキッチンリフォーム工事で売上はいくらで材料費や外注費はいくらかかり、最終的にどれだけの利益(粗利)が出たのか。B邸の外壁塗装工事は黒字だったのか赤字だったのか。このように現場ごとの採算性を把握しなければ会社の本当の経営状況は見えてきません。
この現場ごとの収支を管理するための帳票が「工事台帳」です。この工事台帳を正確に作成し活用することがどんぶり勘定から脱却し利益体質の会社を作るための第一歩です。税理士にはこの工事台帳に基づいた経営分析と赤字工事を減らすための具体的なアドバイスが求められます。
資金繰りの難しさ
リフォーム業はビジネスの構造上資金繰りが厳しくなりやすいという特徴を持っています。「勘定合って銭足らず」という言葉がまさに当てはまる業種なのです。
その最大の理由は「出ていくタイミング」と「入ってくるタイミング」のお金のズレにあります。工事を始めるにあたりまずキッチンやユニットバスといった材料をメーカーや商社から仕入れなければなりません。その支払いは工事が始まる前や工事中に行われることがほとんどです。また外注した職人への支払いも工事の進捗に応じて発生します。
一方お客様からの工事代金の入金は工事がすべて完了し引き渡しが終わった後になるのが一般的です。つまり支出が先行し収入が後から入ってくるため、その間の資金を手元に用意しておく必要があるのです。この資金のタイムラグを管理できなければたとえ帳簿上は黒字でも支払いができずに倒産する「黒字倒産」のリスクに陥ります。
リフォーム業ビジネスの環境
リフォーム業を取り巻く経営環境は社会の変化や経済の動向を敏感に反映し常に変動しています。これらの外部環境の潮流を的確に捉え自社の事業を適合させていくことがこれからの時代を生き抜くために不可欠です。
中古住宅市場の拡大
新築住宅の着工戸数が減少傾向にある一方で、中古住宅を購入して自分たちのライフスタイルに合わせてリフォームやリノベーションを施して住むという選択をする人が増えています。国も既存住宅の流通を促進する政策を打ち出しており中古住宅市場は今後ますます拡大していくと予測されています。
このトレンドはリフォーム業者にとって大きな追い風です。新築中心だった住宅市場の構造が変化しリフォームの需要が安定的に見込める時代になったと言えます。特にデザイン性の高いリノベーションや断熱性能などを向上させる大規模な改修工事へのニーズが高まっています。
空き家問題とリフォーム需要
全国的に増加している「空き家」もリフォーム業にとって新たなビジネスチャンスとなり得ます。放置された空き家は地域の景観や治安の悪化を招く社会問題です。しかしこれをリフォームして賃貸物件や移住者向けの住宅、あるいは地域の交流拠点として再生させるという動きが活発化しています。
自治体によっては空き家の改修に対する補助金制度を設けている場合もあります。こうした制度を活用した提案を行うことで新たな受注に繋がる可能性があります。空き家という社会課題の解決に貢献することは企業の社会的意義を高める上でも重要です。
省エネ・耐震需要の高まり
地球環境への関心の高まりや頻発する自然災害への備えから、住宅の「省エネ性能」や「耐震性能」を向上させるリフォームへの需要が着実に増加しています。
例えば壁や窓の断熱性能を高めるリフォームや太陽光発電システム、高効率な給湯器(エコキュートなど)の設置は光熱費の削減に繋がります。それだけでなく国や自治体から手厚い補助金を受けられることが多く顧客にとってもメリットの大きい投資です。
また古い木造住宅の耐震補強工事も住民の安全を守る上で極めて重要です。これらの専門的な分野に関する知識と技術を習得し、補助金制度の活用と合わせた提案ができるリフォーム業者は他社との大きな差別化を図ることができます。
資材価格の高騰と職人不足
一方でリフォーム業は厳しい課題にも直面しています。その一つがウッドショックやウクライナ情勢などに端を発する建築資材の価格高騰(いわゆるコストプッシュインフレ)です。木材や金属製品、住宅設備機器などあらゆる資材の価格が上昇しており工事の原価を圧迫しています。
このコスト上昇分を適切に工事価格に転嫁できなければ利益はどんどん減少してしまいます。正確な原価計算と顧客への丁寧な説明に基づいた適正な見積もりの作成能力がこれまで以上に重要になっています。
さらに建設業界全体が抱える職人の「高齢化」と「担い手不足」も深刻です。腕の良い職人を確保することが年々難しくなっており人件費や外注費も上昇傾向にあります。この課題に対処するためには若手職人の育成や多能工化、あるいはITを活用した生産性の向上が急務です。
リフォーム業経営者の税理士に対するニーズ
多くのリフォーム業経営者は現場を知り尽くした実務家です。しかし会社の数字の管理となると途端に苦手意識を感じるという声も少なくありません。彼らが税理士に寄せる期待は単なる申告業務にとどまりません。会社の羅針盤となり経営の不安を解消してくれる頼れる相談相手としての役割です。
どんぶり勘定からの脱却支援
リフォーム業経営で最も危険なのが会社全体の売上と支出だけを見て、なんとなく経営を行ってしまう「どんぶり勘定」です。この状態ではどの現場が儲かりどの現場が赤字だったのかが全く分かりません。
経営者が税理士に求める最も根源的なニーズはこのどんぶり勘定から脱却させてくれることです。工事一件ごとの売上と原価を正確に管理する「工事台帳」の仕組みを導入し経営を「見える化」してほしいと願っています。
税理士にはまず毎月工事ごとの利益が一覧できる分かりやすいレポートを作成してほしいのです。そしてその数字の意味を解説しなぜこの現場は利益が出たのか、なぜあの現場は赤字になったのか、その原因を共に分析してくれることを期待しています。
深刻な資金繰りの改善
リフォーム業は材料の仕入れや外注費の支払いが先行し顧客からの入金が後になるため、常に資金繰りの悩みを抱えています。売上はあるのに支払いのための現金が足りない。この恐怖は多くの経営者が経験するところです。
経営者は税理士に対してこの深刻な資金繰りの問題を解決するための具体的な処方箋を求めています。将来の入出金を予測した「資金繰り表」を作成し資金がショートする危険性を事前に警告してほしいのです。
そして資金繰りを改善するための具体的なアドバイスを期待しています。例えば顧客との契約における入金条件の見直しや仕入先との支払いサイクルの交渉、あるいは金融機関からの短期的な運転資金の借入などを提案し、その実行をサポートしてくれることを望んでいます。
税務調査への備え
リフォーム業は原価の把握が複雑であることや外注費と給与の区分が曖昧になりがちなことなどから、税務調査において指摘を受けやすい業種の一つです。
経営者はいつ来るか分からない税務調査に対して常に漠然とした不安を抱えています。税理士にはまず日々の経理処理の段階から税務調査で問題となりやすいポイントを指導し、調査に耐えうる証拠書類の整備をサポートしてほしいと願っています。
そして万が一税務調査の対象となった場合には専門家として立ち会います。調査官の質問に対して会社の代理人としてあるいは経営者に寄り添いながら論理的かつ冷静に対応してくれることを期待します。この専門家によるサポートが経営者の精神的な負担を大きく和らげます。
リフォーム業における経理や税務の特徴
リフォーム業の会計と税務は一般の商業とは根本的に異なる「建設業会計」という特殊なルールに基づいて行われます。この独自の世界を理解することが健全な経営と適切な納税の第一歩です。
工事完成基準と工事進行基準
リフォーム業の売上と原価をどのタイミングで計上するか。これには主に二つの基準があります。
一つは「工事完成基準」です。これは工事が完成しお客様への引き渡しが完了した時点で、その工事の売上と原価をまとめて計上する方法です。工期が短い比較的小規模な工事ではこの基準が一般的に用いられます。会計処理がシンプルであるというメリットがあります。
もう一つが「工事進行基準」です。これは決算日時点で工事の進捗度合いを見積もり、その進捗度に応じて売上と原価の一部を計上する方法です。工期が1年以上にわたるような大規模で長期の工事に適用されます。この基準を用いることで長期工事であっても毎年の業績をより実態に即して把握できるというメリットがあります。
どちらの基準を適用するかは会社の利益計算と納税額に大きな影響を与えます。税理士は工事の性質に応じて適切な基準の選択とそれに基づいた正確な計算を指導します。
工事原価の集計(工事台帳)
リフォーム業の利益管理の心臓部となるのが現場ごとの原価を正確に把握することです。工事の原価は主に「材料費」「労務費(自社職人の給与など)」「外注費」「経費(現場で直接かかった経費)」の四つの要素で構成されます。
これらの原価を工事現場ごとに集計・管理するための帳票が「工事台帳」です。A邸の工事で材料費がいくらかかりB社に外注した費用がいくらで、といった情報をこの台帳に日々記録していきます。
そして会計上まだ完成していない工事(未成工事)のために支出したこれらの原価は、その期の費用にはなりません。「未成工事支出金」という資産の勘定科目で貸借対照表に計上されます。そして工事が完成した時点で初めて「完成工事原価」という費用の勘定科目に振り替えられ売上と対応させられるのです。この仕組みが建設業会計の最大の特徴です。
未成工事支出金と完成工事未収入金
建設業会計の貸借対照表には一般の会社では見られない特有の勘定科目が登場します。その代表が「未成工事支出金」と「完成工事未収入金」です。
「未成工事支出金」は前述の通りまだ完成していない工事のためにすでに支払った材料費や外注費などの原価の合計額です。これは将来売上を生み出すための「仕掛品」のようなものであり資産として扱われます。
一方「完成工事未収入金」は工事は完成しお客様への引き渡しも終わっているものの、まだ代金が回収できていない売掛金のことです。一般の商業でいう「売掛金」と同じ性質のものです。
これらの勘定科目を正しく使うことでリフォーム業特有のお金の流れと利益の発生タイミングのズレを、会計帳簿上で正確に表現することができます。
外注費と給与の区分
リフォーム業では多くの職人を「外注」として活用します。この外注の職人に支払う費用は「外注費」として経費処理します。
一方で自社で直接雇用している職人に支払うのは「給与」です。この「外注費」と「給与」は税務上全く異なる取り扱いとなるため、その区分を明確にすることが極めて重要です。
給与の場合会社は社会保険料の負担が生じ消費税の計算上仕入税額控除の対象にはなりません。一方外注費の場合社会保険料の負担はなく消費税の仕入税額控除の対象となります。
税務調査では実態は雇用関係に近いにもかかわらず外注費として処理していないか(偽装外注)という点が厳しくチェックされます。その判断は契約内容だけでなく指揮命令関係の有無や時間的な拘束の程度など総合的に行われます。税理士はこの法的な区分を正しく判断し税務リスクを回避するためのアドバイスを行います。
リフォーム業における税理士の提供するサービス
リフォーム業という専門性の高い業界を支援するためこの分野に精通した税理士は、単なる申告業務にとどまらない経営者の実務に深く寄り添った多様なサービスを提供します。
建設業会計に準拠した記帳代行・月次決算
多くの経営者が苦手とする日々の経理業務を建設業会計の専門家として全面的に代行するのが「記帳代行」です。
経営者は工事の見積書や請求書、材料費や外注費の領収書といった資料を税理士に渡します。税理士事務所はそれらの資料をもとに建設業会計のルールに則って正確に会計ソフトへ入力し会計帳簿を作成します。
そしてそのデータに基づき毎月「月次決算」を行い会社全体の損益計算書や貸借対照表を作成します。さらに後述する「工事台帳」と連動させ工事一件ごとの利益状況をまとめたレポートを提出します。この月次での報告と対話がどんぶり勘定から脱却しデータに基づいた経営を行うための基盤となります。
工事台帳の作成支援と利益管理
リフォーム業の利益管理の核心である「工事台帳」。税理士はこの工事台帳を正確に作成し経営に活用するための仕組み作りを支援します。
工事管理ソフトなどを活用し材料費や外注費といった原価データを各工事現場にスムーズに紐付けられるような業務フローの構築を提案します。これにより経営者はリアルタイムで各現場の原価の発生状況と利益の見込みを把握できるようになります。
そして月次決算の際にはこの工事台帳のデータを分析し経営者と共にレビューを行います。「なぜこの現場は予定より利益が少なかったのか」「原価の中で想定を超えてしまったのはどの項目か」。こうした議論を通じて赤字工事の原因を究明し次の現場での見積もり精度向上や原価管理の改善に繋げます。
資金繰り表の作成と改善提案
お金の流れが滞りやすいリフォーム業の経営者にとって資金繰りの管理は死活問題です。税理士は会社の生命線であるキャッシュフローを守るための具体的なサービスを提供します。
まず過去の入出金データと将来の工事予定をもとに、向こう数ヶ月から一年間の資金の動きを予測する「資金繰り表」を作成します。これによりいついくらくらいの資金が不足しそうかという危険信号を早期に察知することができます。
そして資金繰りを改善するための具体的な対策を経営者と共に考えます。例えばお客様との契約時に着手金や中間金といった形で工事代金の一部を前受けする入金サイトの見直し。あるいは材料の仕入先や外注先との支払い条件の交渉。さらには金融機関からの短期的な運転資金の調達など会社の状況に応じた最適な処方箋を提示しその実行をサポートします。
建設業許可の更新・業種追加支援
5年ごとの建設業許可の更新手続きや毎年の決算変更届の提出は、経営者にとって負担の大きい事務作業です。税理士はこれらの行政手続きを提携する行政書士と連携しながら代行または支援します。
決算変更届に必要な工事経歴書や建設業法様式の財務諸表の作成をサポートします。また更新時に求められる財務要件をクリアできるよう日々の経営からアドバイスを行います。さらに事業の拡大に伴い新たな業種の許可を取得したい(業種追加)という際の相談にも乗り、必要な手続きを円滑に進める手助けをします。
リフォーム業における税理士を活用するメリット
専門家である税理士と顧問契約を結ぶことは単なるコスト増ではありません。会社の成長と安定のための戦略的な「投資」です。その投資はコストを遥かに上回る経営のあらゆる側面にわたる具体的なメリットとなって返ってきます。
現場ごとの利益を可視化できる
税理士を活用する最大のメリットはこれまで曖昧だった経営状況を客観的な「数字」で正確に把握できるようになることです。特に工事台帳を活用することで現場ごとの利益が明確になります。
どの現場が儲かっていてどの現場が赤字なのか。どのタイプの工事が得意でどの工事が苦手なのか。これらの事実がデータとして明らかになります。
このデータに基づいて得意な工事に営業を集中させたり赤字工事の原因を分析して見積もり方法を改善したりといった具体的な経営改善のアクションに繋げることができます。どんぶり勘定から脱却し利益の出る体質へと会社を変革できるのです。
資金繰りが安定し精神的に楽になる
税理士による資金繰り表の作成とモニタリングはキャッシュフローの安定に直結します。将来の資金状況を予測できることは経営者に大きな安心感をもたらします。「来月の支払いは大丈夫だろうか」という夜も眠れないような不安から解放されます。
資金ショートのリスクを事前に回避できるだけでなく計画的な経営も可能になります。例えば「半年後には資金に余裕ができるから新しい機材を導入しよう」とか「今のうちに融資を申し込んでおこう」といった戦略的な財務運営が実現します。精神的な安定がより良い経営判断を生むのです。
税務調査のリスクを大幅に減らせる
リフォーム業は税務調査の対象になりやすい業種です。税務調査は多くの経営者にとって精神的に大きな負担となります。またもし申告漏れなどが指摘されれば多額の追徴課税という金銭的なダメージも受けます。
税理士と顧問契約を結び日頃から適正な経理処理を行っておくことは、この税務調査に対する最も有効な防衛策です。税理士が作成に関与した申告書は信頼性が高く調査の対象となる確率そのものを下げると言われています。万が一調査の対象となっても税理士が代理人として立ち会い専門家として冷静かつ論理的に対応してくれます。
金融機関や官公庁からの信用が向上する
会社を成長させていく上で金融機関や官公庁からの信用は不可欠です。税理士が関与し作成された信頼性の高い決算書は金融機関からの信用を大きく高めます。これにより融資審査がスムーズに進みより有利な条件での資金調達が期待できます。
また建設業許可の維持・更新や公共工事への入札参加(経営事項審査)においても、正確な財務諸表の提出は絶対条件です。税理士のサポートによりこれらの行政手続きを滞りなく行うことで官公庁からの信用も得られます。会社の社会的信用を高めることがさらなるビジネスチャンスを呼び込むのです。
リフォーム業における税理士を活用するデメリット
税理士との連携は多くのメリットをもたらします。しかし一方でデメリットや注意すべきリスクも存在します。これらのマイナス面を事前に理解し対策を講じることが後悔のない専門家選びとより良いパートナーシップの構築に繋がります。
顧問料という固定コストの発生
最も直接的で避けられないデメリットは税理士に支払う報酬すなわち「顧問料」というコストが発生することです。特に継続的なサポートを受ける顧問契約を結んだ場合、月々の顧問料は会社の売上に関わらず毎月発生する固定費となります。
独立したばかりでまだ仕事量が安定しない時期や経営が厳しい状況にある会社にとっては、この月々数万円からの固定費がキャッシュフローを圧迫する大きな負担に感じられるかもしれません。
このコストをどう捉えるかは経営者の判断次第です。税理士から得られる経営改善効果や資金繰りの安定、あるいは将来のリスク回避といったメリットが支払う顧問料を上回ると判断できるなら、それは「価値のある投資」です。しかしコスト負担が重いと感じる場合は記帳は自分で行い顧問料を抑えるプランを選ぶなど会社のステージに合った柔軟な契約形態を検討する必要があります。
丸投げによる経営感覚の鈍化
税理士に経理や財務を任せることで経営者は本業である現場仕事に集中できます。しかしこれが過度になると「丸投げ」状態に陥り経営者として最も重要な「経営感覚」を失ってしまうというリスクを生みます。
「数字のことは全部先生に任せているから自分はよく分からない」という状態になってしまうと自社の事業の健康状態を正確に把握できなくなります。今月の利益はいくらか、資金繰りの状況はどうか、どの現場が儲かっているのか。こうした基本的な経営数値を把握せずして適切な経営判断を下すことは不可能です。
税理士から毎月提出される試算表やレポートに目も通さずただ印鑑を押すだけという状態は非常に危険です。税理士はあくまで経営のサポーターであり事業の最終的な責任者は経営者自身です。税理士に業務を委託しつつも報告される数字には常に当事者意識を持って向き合い、疑問点があれば積極的に質問する姿勢が重要です。
どのようなリフォーム業者が税理士へ依頼すべきか?
税理士との顧問契約は特定のステージや課題を抱えるリフォーム業者にとって、その後の成長を左右するほど重要な経営判断となります。自社が以下のいずれかに当てはまると感じたらそれは専門家への相談を具体的に検討すべきサインです。
一人親方から法人化を考える職人
腕一本で仕事をこなしてきた一人親方が事業の拡大を目指し初めて従業員を雇用したり、法人を設立したりすることを考え始めたとき。それは経営者としての新たなスタートラインです。
しかし法人化には設立手続きや社会保険の加入といった多くのハードルがあります。また個人事業主とは税金の計算方法も全く異なります。この重要な転換期に建設業に強い税理士に相談することで、最適な法人形態の選択から設立後の経理体制の構築までスムーズに進めることができます。
赤字工事が多く利益が残らない会社
「毎日忙しく現場をこなしているのに月末になると手元にお金が残らない」「どんぶり勘定でどの現場が赤字だったのか分からない」。このような悩みを抱える会社は一刻も早く税理士に相談すべきです。
リフォーム業に強い税理士は工事台帳の導入を支援し現場ごとの利益を「見える化」します。赤字工事の原因をデータに基づいて分析し見積もり精度の向上や原価管理の改善に向けた具体的なアドバイスを提供します。利益の出る体質へと会社を変革するための外科手術を専門家と共に行うのです。
事業承継を考える経営者
経営者が高齢化し引退後の会社の未来について考え始めたとき、事業承継は避けて通れないテーマです。長年かけて築き上げた会社と技術、そしてお客様を誰にどのようにして引き継ぐのか。
この重大な決断には税務や法務に関する専門的な知識が不可欠です。税理士はまず会社の価値を客観的に評価します。その上で親族や従業員への承継あるいはM&Aといった選択肢ごとのメリット・デメリットを提示します。そして後継者が困らないよう税負担を抑えながら円滑にバトンタッチするための計画を立案し実行をサポートします。
リフォーム業に強い税理士を探すポイント
リフォーム業のパートナーとなる税理士を選ぶ際には一般企業の顧問税理士を選ぶのとは異なる、業界に特化した選定基準が必要です。資格を持っていることは当然としてその専門性が本当に自社の経営に貢献できるレベルにあるのか、以下のポイントから慎重に見極める必要があります。
建設業会計の実績
これがすべての土台となる最も重要なポイントです。その税理士が工事完成基準や工事進行基準、未成工事支出金といった建設業会計特有のルールを深く理解し、実務で扱った経験が豊富かどうか。
面談の際には「建設業の顧問先は何件くらいありますか」と直接質問しましょう。そして「当社のようリフォーム業で特に注意すべき会計処理は何ですか」といった具体的な質問を投げかけてみてください。多くの顧問実績を持つ税理士は業界の課題をすぐに理解し的確な回答をしてくれるはずです。
建設業許可に関する知識
税理士が建設業許可制度についてどれだけ詳しいかも重要な判断基準です。許可の新規取得や更新、業種追加に必要な財務要件を正確に把握しているか。毎年の決算変更届の作成に対応できるか。
「建設業許可の更新を考えているのですが決算書で注意すべき点は何ですか」と尋ねてみてください。財務要件をクリアするための具体的なアドバイスができる税理士は頼りになります。また行政書士との連携体制が整っているかも確認しておくと良いでしょう。
資金繰り改善の提案力
リフォーム業の生命線である資金繰り。税理士がこの課題に対してどれだけ親身にかつ具体的に相談に乗ってくれるかは極めて重要です。単に過去の数字をまとめるだけでなく未来の資金繰りを予測し、改善策を積極的に提案してくれる姿勢が求められます。
「最近資金繰りが厳しいのですが先生ならどのような対策を提案しますか」と問いかけてみましょう。入金サイトの見直しや金融機関との交渉術など具体的な引き出しを多く持っている税理士こそが真のパートナーとなり得ます。
ITツール(工事管理ソフト等)への理解
現代のリフォーム業において工事管理ソフトやクラウド会計といったITツールの活用は生産性向上の鍵です。税理士がこれらのツールに精通しその導入や連携を積極的に支援してくれるかどうかは重要なポイントです。
「当社では〇〇という工事管理ソフトを使っているのですがこれと連携できるクラウド会計はありますか」といった質問をしてみてください。ITに明るく業務効率化に前向きな税理士を選ぶことで会社のDX化を加速させることができます。
リフォーム業に強い税理士を探す方法
リフォーム業に特化した優秀な税理士は決して数が多くありません。そのため最適なパートナーを見つけ出すためには一般的な探し方ではなくより的を絞ったアプローチが必要です。
建設業協会や組合からの紹介
最も信頼性が高くミスマッチが少ない方法が地域の建設業協会や各種専門工事業の組合など、業界団体から評価の高い税理士を紹介してもらうことです。
これらの団体は加盟企業の経営を支援するために業界に精通した税理士を顧問として抱えていたり、推薦できる事務所のリストを持っていたりすることが多いです。団体の事務局に相談すれば実績のある税理士の情報を提供してくれる可能性があります。
建材メーカーや商社からの紹介
日頃から付き合いのある建材メーカーや住宅設備機器の商社の営業担当者も有力な情報源です。彼らは数多くのリフォーム業者や工務店と取引があるため、どの会社が成長していてその会社がどの税理士と付き合っているかといった裏情報に精通しています。
「経営がうまくいっている会社さんはどんな税理士さんと付き合っているんですか」と尋ねてみてください。彼らは自社の取引先であるリフォーム業者が成功することを望んでいるため親身に情報を提供してくれる可能性があります。
金融機関からの紹介
取引のある銀行や信用金庫の融資担当者に相談するのも有効な手段です。金融機関は融資先企業の経営が安定することを望んでいます。そのため信頼できる優秀な税理士を紹介してくれることが多いです。特に建設業への融資に積極的な金融機関であれば業界に詳しい税理士とのネットワークを持っている可能性が高いでしょう。
専門特化した税理士のウェブサイト
インターネットで探す場合は検索キーワードが重要です。「リフォーム業 専門 税理士」や「建設業会計 税理士」、「建設業許可 決算変更届」といった具体的で専門的なキーワードで検索します。
そうすると建設業の支援に特化した税理士事務所のウェブサイトが見つかります。そのウェブサイトの内容を精査しどれだけの実績があるか、どのような理念でサービスを提供しているかを確認します。特に建設業経営者向けに具体的なノウハウを解説したブログなどが充実している事務所は、専門性と情報発信力が高く信頼できる可能性が高いと判断できます。
リフォーム業で税理士を探すタイミング
税理士との連携は会社のどのステージでも重要です。しかし特にその必要性が高まり導入効果が最大化されるいくつかの重要な「節目」があります。そのタイミングを逃さず適切な税理士を経営チームに加えることが会社の未来を左右します。
独立開業時
これから自分の会社を立ち上げようとするまさにその準備段階こそが、税理士を探し始める最も理想的なタイミングです。個人事業主として始めるのか法人を設立するのか。自己資金はいくら必要で運転資金はいくら借りればよいのか。これらの最初の選択を誤ると後から修正するのは大変です。開業支援に強い税理士は最適な事業形態の選択から創業融資の事業計画書作成まで夢への第一歩を全面的にサポートします。
建設業許可の取得を考えた時
事業が軌道に乗り500万円以上の大きな工事を受注するために建設業許可の取得を目指すとき。それは会社が新たなステージに進む重要なタイミングです。許可取得には厳しい財務要件をクリアした決算書が不可欠です。このタイミングで建設業に強い税理士に相談し許可取得を見据えた会計体制を構築することが成功への近道です。
初めて従業員や専属外注を抱えた時
一人親方からステップアップし初めて従業員を雇用したり、特定の職人と専属の外注契約を結んだりしたとき。それは経営者として新たな責任を負う瞬間です。給与計算や源泉徴収、社会保険そして外注費の適切な税務処理など複雑な事務手続きが発生します。これらの労務・税務管理を正確に行うために税理士のサポートを受けるべきです。
資金繰りが厳しくなった時
「支払いが集中して手元の現金が足りない」。多くの経営者が経験する資金繰りの危機は会社の存続を揺るがす重大な問題です。資金繰りが厳しくなったと感じたらそれはすぐに税理士に相談すべきサインです。税理士は資金繰り悪化の原因を分析し改善策を提案します。そして金融機関からの緊急融資の交渉なども支援してくれます。手遅れになる前に専門家の力を借りることが重要です。
リフォーム業に強い税理士の費用相場
リフォーム業者が税理士に支払う報酬は会社の規模や依頼内容によって大きく変動します。ここでは一般的な費用相場と料金を決定する要因について解説します。あくまで目安として捉え最終的には必ず個別の事務所から見積もりを取得してください。
顧問料の基本的な考え方
税理士との契約で最も一般的なのは継続的なサポートを受ける「顧問契約」です。その料金は主に毎月支払う「月額顧問料」と年に一度の決算申告時に支払う「決算料」または「確定申告料」で構成されます。月額顧問料には通常日々の会計・税務に関する相談や会計帳簿のレビュー、月次試算表の作成と報告などが含まれます。決算料は年度末の決算書と申告書の作成に対する報酬であり、一般的に月額顧問料の4ヶ月分から6ヶ月分程度が相場です。
売上規模(年間完工高)による費用相場
税理士の報酬は事業の規模、具体的には年間の売上高(建設業では「完成工事高」)によって変動するのが一般的です。
例えば年間売上高が3,000万円未満の個人事業主や小規模法人の場合、記帳代行を含めた月額顧問料は4万円~8万円程度が目安です。
年間売上高が3,000万円から1億円程度の中規模な会社になると月額顧問料は6万円~15万円程度が相場となります。建設業会計の複雑さが加味されるため一般の商業よりは高くなる傾向があります。
年間売上高が1億円を超えるような会社ではより高度な経営管理が求められるため月額顧問料は10万円以上となることが一般的です。
記帳代行や工事台帳作成の有無
顧問料は記帳代行を依頼するかどうかで大きく変わります。経営者自身が会計ソフトを使って日々の取引を入力(自計化)すれば税理士の作業量が減るため顧問料を安く抑えることができます。
またリフォーム業に特有なのが「工事台帳」の作成です。この作成を税理士に全面的に依頼する場合はその作業量に応じて追加の料金が発生します。顧問契約の範囲にどこまでの業務が含まれているのかを事前にしっかりと確認することが重要です。
リフォーム業に強い税理士と契約するまでのプロセス
自社に最適な税理士を見つけ出し実際に契約を結ぶまでにはいくつかの慎重なステップを踏む必要があります。このプロセスを丁寧に進めることが長期的に良好なパートナーシップを築くための礎となります。
候補者選定と情報収集
まず最初のステップは候補となる会計事務所を複数できれば3社以上リストアップすることです。同業者からの紹介や業界団体からの推薦、専門特化したウェブサイトなどを活用して可能性のある候補者を見つけ出します。リストアップしたらそれぞれの事務所のウェブサイトを徹底的に読み込み、建設業への専門性や実績、料金体系などを比較検討します。
面談と建設業会計の知識確認
候補を2〜3社に絞り込んだら必ず直接面談を行います。この面談で最も重要なのはその税理士が建設業会計を本当に理解しているかを確認することです。「工事完成基準と工事進行基準の使い分けはどう判断しますか」とか「当社の決算書で建設業許可の財務要件はクリアできそうでしょうか」といった具体的な質問を投げかけ、その応答から専門性の高さを判断します。
見積もり比較と契約締結
面談で良い感触を得た事務所には具体的な業務範囲を伝えた上で正式な見積書を依頼します。複数の見積書を比較しサービス内容と料金のバランスが最も良い事務所を選定します。そして「税務顧問契約書」を取り交わします。契約書に署名・捺印する前には業務の範囲や報酬、解約に関する条項などを隅々まで確認し、すべての内容に納得した上で契約を締結します。
リフォーム業において税理士の切替を検討する場合
一度顧問契約を結んだ税理士との関係も永遠ではありません。会社の成長や経営方針の変化あるいは現在のサービスへの不満など、様々な理由からパートナーを見直す「切替」が必要になることがあります。これは会社が健全性を保ちさらなる発展を目指すための前向きな経営判断です。
切替を検討すべきサイン
現在の顧問税理士に対して以下のようなサインを感じたらそれは関係の見直しを検討すべきタイミングかもしれません。まず試算表は出てくるが「現場ごとの利益」について明確な説明ができない場合です。次に資金繰りの相談をしても「それは専門外です」といった態度で親身になってくれない場合も危険信号です。そして建設業許可の更新や決算変更届の重要性を理解しておらず手続きが遅れがちになる場合も切替を考えるべきでしょう。会社の成長に税理士の専門性が追いついていないと感じたら行動すべきです。
円満な引き継ぎの進め方
税理士の切り替えを決断したら現在の税理士との関係を円満に終了させ、新しい税理士へスムーズに業務を引き継ぐことが重要です。まずは現在の税理士との顧問契約書を確認し解約に関する規定に従って正式に解約の意思を丁寧に伝えます。その際にはこれまでの協力への感謝を伝えるとともに新しい税理士への引き継ぎに協力してほしい旨を丁重にお願いする姿勢が大切です。次に新しい税理士と相談の上引き継ぎに必要な資料、例えば過去数年分の決算書や総勘定元帳、工事台帳などをリストアップしてもらいそれを前の税理士に依頼して漏れなく返却してもらいます。
リフォーム業で税理士に対してよくある質問と回答
最後にリフォーム業経営者が税理士に対して抱きがちなよくある質問とその回答をまとめました。多くの経営者が同じような疑問を持っています。ここで不安を解消し専門家との対話に臨んでください。
Q1: 赤字の現場の損失は他の黒字現場と相殺できますか?
A1: はい、できます。会計上は会社全体の損益として計算するため、A工事で出た赤字はB工事で出た黒字と相殺されます。年間のすべての工事の損益を通算した結果として会社全体の最終的な利益または損失が決まります。税理士の役割はまずこの現場ごとの損益を正確に把握することです。そして赤字工事の原因を分析し将来の損失を減らすための経営改善をサポートすることにあります。
Q2: 材料の仕入れはいつ経費になりますか?
A2: 材料を仕入れた時点ではまだ経費にはなりません。その材料が実際に工事で使われ、その工事が完成しお客様に引き渡された時点で初めて「完成工事原価」という経費になります。期末時点でまだ使われずに倉庫にある材料は「材料貯蔵品」という資産として計上します。またまだ完成していない工事に使われた材料は「未成工事支出金」という資産として計上されます。この建設業特有のルールを正しく適用することが正確な利益計算の鍵です。
Q3: 一人親方への外注費で源泉徴収は必要ですか?
A3: 原則として一人親方への支払いは源泉徴収の対象ではありません。源泉徴収が必要なのは弁護士や税理士、デザイナーなど特定の専門家への報酬などに限定されています。大工や塗装工といった職人への支払いはこれに該当しないため源泉徴収は不要です。ただしその一人親方との関係が実質的に「雇用」とみなされる場合は「給与」として源泉徴収が必要になります。その判断は専門的ですので税理士に相談することをお勧めします。
Q4: 建設業許可の決算変更届もお願いできますか?
A4: はい、多くの建設業に強い税理士事務所が対応しています。決算変更届の提出自体は行政書士の業務範囲ですが、その届出に添付する建設業法様式の財務諸表の作成は税理士が行います。そのため税理士と行政書士が連携してワンストップでサービスを提供している事務所がほとんどです。顧問税理士に依頼すれば決算から税務申告、そして決算変更届の提出までをスムーズに進めることができます。
リフォーム業に強い税理士の具体例
山田税理士事務所様
山田税理士事務所様は、リフォーム業をはじめとする建設業界に特化した豊富な経験を持つ税理士が在籍しています。中小規模のリフォーム会社の会計処理や税務申告を数多く手がけており、特に原価計算の精度向上や資金繰り管理のコンサルティングに定評があります。
顧問契約では、クラウド会計の導入支援から補助金申請のサポート、税務調査対策まで幅広く対応。経営相談にも積極的で、売上拡大や法人化を検討している事業者に向けて具体的なアドバイスを提供しています。
鈴木税理士法人様
鈴木税理士法人様は、リフォーム業の特有のニーズに応じたきめ細やかなサービスを特徴としています。特に、工事ごとの収支管理や多様な補助金の申請支援に強みがあり、リフォーム業者が活用できる最新の税制情報をタイムリーに提供しています。
また、ITを活用した経理の効率化にも注力しており、クラウド会計ソフトの操作指導や業務フローの見直しを支援。顧問料も比較的リーズナブルで、これからリフォーム業を拡大したい中小企業に人気の事務所です。
宮嶋公認会計士・税理士事務所
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。
リフォーム業に強い税理士を探す方法 まとめ
リフォーム業の経営は現場での確かな技術とお客様との信頼関係そして見えない部分を支える強固な経営管理という三つの柱で成り立っています。優れた職人であり現場のプロであるあなたが経営者としても成功するためには、この三つの柱をバランスよく育てていく必要があります。しかし職人としての情熱が深いほど数字と向き合う経営の現実は重荷に感じられるかもしれません。
その重荷を共に背負いあなたの現場での力を経営の力へと変換する存在。それがリフォーム業に強い税理士です。彼らは単なる計算の代行者ではありません。どんぶり勘定からあなたを解放し、現場ごとの利益を「見える化」します。そして会社の成長を阻む資金繰りの不安を取り除き未来への挑戦を後押しします。
この記事で解説してきた専門家の見極め方や探し方、そして活用法を参考にぜひあなたの会社の理念に共感し、未来を共に創造してくれる最高のパートナーを見つけ出してください。
優秀な税理士に支払う顧問料は決して単なる経費ではありません。それはあなたの貴重な時間を本業である現場仕事に集中させ経営の不安から心と体を守り、そして会社の未来を切り拓くための最も確実で効果的な「戦略的投資」なのです。その投資があなたの職人としての人生、そして経営者としての人生をより豊かで輝かしいものにすることを心から願っています。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
