本記事では、小売業経営者にとって税理士を活用するメリットについて解説をしていきます。本記事を参考にいただくことで、税理士からどのようなサービスを提供してもらうことが可能なのか、税理士と契約した場合どれぐらいの必要がかかるのか、などの基礎知識が身に付きます。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
本記事での小売の定義
本記事では、小売を「何かしら物を仕入れて在庫を抱えて販売をする」業種という定義を置いております。具体的には、スーパーのような業態、もしくは雑貨屋のような業態をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。飲食店やホテルのように仕入れた物を販売する業態でない、もしくは加工して販売する業態は本記事には含まれておりません。また規模についても制約はなく、複数店舗を持っている個人事業主もしくは法人から1店舗しかない場合も本記事の対象としております。
小売における税務の特徴
小売の場合、建物の内装からスタートし、サービスに必要な設備などの導入や人材の採用など、事業をスタートするにあたって大きな投資が必要となってきます。加えてその投資は自己資本でやることは多くなく、一般的には金融機関からの借入やリースを使うことが多いでしょう。一方で収入はお客さんからの収入とになるため、初期で投資したお金をその後数年以上にわたって徐々に回収していく形となります。また小売の場合は物を仕入れて販売をするため、商品を仕入れるための運転資金が多額に発生するのが特徴です。運転資金は初期投資だけでなく、商売を続ける限りは常に発生し続けるものになります。
特に最初の段階で多額の資金が必要になるケースが多いことから、綿密な事業計画は必要になってくると思います。小売の場合は競争も激しいため開業する地域の顧客想定はしっかりとリサーチした上で、どの程度の資金が必要なのか(金利支払も含めて)、いつ損益分岐点を超えそうか、については最低限事前に固めておくべきでしょう。また従業員・パートを雇うことも多いため、給与計算や年末調整、源泉徴収、社会保険周りが複雑になりがちですが、センシティブな内容なのでミスは許されません。
処理で間違えやすい部分としては、初期投資にかかるもので償却資産に該当するものを一回で経費計上してしまったり、売上に関して実際の入金が入ってきたタイミングで売上計上するのではなく、正しくは請求権が発生した瞬間に売上計上になりますので、皆様が思っているよりも早いタイミングで売上計上されるというポイントで間違えていることが多いかと思います。
また小売の特徴として期末に棚卸資産のカウントを行う必要があるということです。期中は仕入として処理しているため、期末に棚卸資産の金額を固めることで、ようやく売上に見合った売上原価を費用として計上することが可能となるのです。また棚卸資産の調査は、在庫管理が適切にできているか、劣化した商品等はないかの確認の視点からも重要と言えるでしょう。
小売業の資金繰り
前述の通り、小売は費用が先行しやすく、一方で収入については仕入れて在庫を抱えてから実際の入金まで数ヶ月になる場合もあり、収支のタイミングがずれやすい業種だと言えます。よって資金繰りは小売業にとって非常に重要な事項の1つでしょう。また仕入れ〜在庫管理〜販売までに必要な運転資金も初期投資時のみならずビジネスをやる上で常に発生し続ける課題なので、必要に応じて資金調達も検討すべきです。資金調達で一般的なのは日本政策金融公庫による融資と信用保証付の銀行融資の2つになります。この2つは創業時から比較的融資がおりやすく検討すべき融資ですので、まずはご検討ください。
小売業のビジネスモデルの特徴について
小売業のビジネスモデルの特徴ですが、まずは競争環境が非常に厳しいということがポイントです。従来は実店舗型の小売業でしたが、ここにインターネットが登場し、オンラインで販売する人々も増えてきました。また小売そのものがグローバル化し、インターネットを活用した海外からの直接販売も増えてきております。加えて従来は事業者から一般人への販売ということが一般的でしたが、一般人から一般人に販売するいわゆるCtoCも活況になってきて、ますます小売業界の競争は激しくなっております。
商品そのものに差別化がないのと、インターネットで調べることによって世界のものが瞬時に手に入る環境下ですので、あまり商品での差別化というのは有効ではありません。そして検索しているユーザーに対して訴求していくハードルは非常に高くなっています。工夫の余地として、まだ購入意欲の手前にいるユーザーに対してブランディング含めマーケティング活動を行なっていくというのがあります。そのためには単に販売するだけでなくメディアサイトやSNSなどで顧客へのナーチャリングを積極的に展開し、実店舗まで来てもらって購入してもらうような導線が考えられます。
このように仕入れた商品についてはほとんど差別化がなくなっているため、売り方や情報発信などで差別化を徹底的にしてかないとリピート顧客を捕まることが難しく、継続的に事業を展開していくのが困難になってしまいます。また販売できない商品を仕入れた場合、それが在庫となって滞留してしまうため、資金負担や金利負担が厳しくなってきてしまうため、差別化は小売において非常に重要となっています。
小売業経営者に税理士が必要なタイミング
小売にとって、いつ税理士と契約するのが良いのでしょうか?まず考えられるのは消費税の課税事業者になるタイミングです。免税事業者であっても、年商1000万円を超える段階で課税事業者となるため、消費税申告が必要になってきます。この消費税申告ですが、所得税や法人税と異なり帳簿の付け方がやや複雑なものになっておりますし、消費税申告も原則課税と簡易課税で計算方法も計算結果も変わってくるため、採用した方法によって税額のメリット・デメリットが発生します。このように消費税が入ると考えるべき事項が増えるため、税理士のアドバイスを受けるのがおすすめです。
他に考えられるのが、開業時です。前述した通り、業種として小売業は資金繰りがタイトになりやすい業種ですので、しっかりと決算書・税務申告書を税理士に作成してもらい、事業計画書についても必要に応じて税理士のサポートをもらう方が、いざという時金融機関から資金調達をスムーズにするためには良いと考えております。
小売業経営者が税理士へ依頼できる内容・税理士を活用するメリット
小売業が税理士へ依頼できる内容及びそのメリットとはどのようなものでしょうか?まずは前述しておりますが、資金繰り関連で過去の決算書やそれに関する税務申告書を税理士に作成してもらうことで信頼性の高い書類を金融機関へ提出することが可能となります。加えて、事業計画書作成のサポートも税理士からもらうことができます(サポートの範囲については税理士によって異なってきます)。
また、上記と関連しますが、帳簿作成から決算書、税務申告書の作成・提出までを税理士へ丸投げすることで、本業に集中できるようになるという点です。特に建設業は経理処理が複雑なることと、取引数も多いため、経営者ご自身で勉強されて帳簿作成から税務申告書作成までを対応されるのは非現実的です。特に法人税になると所得税よりも難易度が上がります。そのため、税務のプロである税理士へ依頼することで、効率的に経営を行うことが可能となってくるのです。
小売業経営者が税理士と契約する際の料金
税理士の料金は主に、月額顧問報酬と決算申告時の報酬から構成されています。前者については、毎月税理士と税務相談に関してコミュニケーションをとるのに必要な金額になってきます。記帳代行を依頼する場合にはオプション料金として、毎月の月額顧問報酬に加算して金額を支払うことになります。月額顧問報酬は概ね2〜3万円以上となることが一般的かと思います。
後者の決算申告は、確定申告に際に税理士が作成する決算書及び確定申告書の作成料金として請求されるものになります。概ね月額顧問報酬の4〜6ヶ月分を請求されることが多いかと思います。また基本的には最低限のサービスしか入っていないことが多いので、例えば従業員がいて年末調整をお願いしたり、消費税の課税事業者のため消費税申告書が必要な場合は、別途プラスで料金がかかってきます。
小売業に強い税理士を選ぶ方法について
まず小売業に強い税理士を探す方法として、1つ目は同じ同業経営者の友人からの紹介が考えられます。小売業に対しての経験がある税理士という保証があるので、紹介はその視点からは安心感があります。次に近所で小売業に強い税理士をインターネットで検索して、面談して行く方法です。一人つづ面談して行くので、時間はかかりますが、自分に合った税理士を探せる可能性が高いです。最後に紹介するのは税理士紹介サイトの活用です。税理士紹介サイトはエージェントが小売業の方のニーズを聞いて、複数名の税理士を紹介する仕組みです。エージェントは税理士から紹介手数料をもらうのが一般的なので、ユーザーである小売業の方は無料であることが多いです。
続いて税理士の選び方ですが、最も重要なのは小売う業に対する理解と税理士との相性です。小売業に対する理解については、税務は日々の取引をどれぐらい理解しているかによってアドバイスの深みが変わります。そのため、小売のビジネスモデルを正しく理解をしている方が経営者とのコミュニケーションもスムーズになりますし、適切なアドバイスも税理士からもらえることになります。また、相性については税務においては税理士とコミュニケーションをとる機会が多いため、やはりコミュニケーションがとりやすい税理士と契約する方が経営者にとって最大限税理士を活用できるかと思います。
小売に強い税理士
小売に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます。
まずは、飯田税理士事務所様(https://www.zeirishi-iida.com/)です。東京都文京区に拠点を構えられている税理士事務所様で、サービス業・小売業を中心にサービスを提供されています。個人事業主のお客様から法人のお客様まで幅広く対応されている事務所様になります。
次に、中野税務会計事務所様です(https://www.nakanokaikei.com/retail.html)。名古屋を拠点にされている税理士事務所様で、こちらも小売業に強みをお持ちの事務所様になります。所得税・法人税・消費税の確定申告や税務相談はもとより、開業や融資の支援まで幅広く対応されています。
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。特にコンサルティング経験も豊富ですので小売企業様のお悩みを深く理解し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
まとめ
以上のように小売にとって税理士は必要かについて記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。