事業を経営する、あるいは個人として資産を形成していく上で、「税金」は避けて通れない重要なテーマです。会社員であれば年末調整で完結することがほとんどですが、独立開業した個人事業主や法人経営者、不動産収入がある方、あるいは相続に直面した方にとって、税務申告は複雑で、大きな負担となり得ます。
「確定申告のやり方がわからない」「これで計算が合っているか不安だ」「もっと効果的な節税方法はないのだろうか」「税務調査が来たらどうしよう」。このような悩みを抱えながらも、専門家である税理士に相談することなく、一人で問題を抱え込んでいる方も少なくありません。「税理士は費用が高そう」「どの税理士に頼めば良いかわからない」といったハードルが、その一歩をためらわせる原因かもしれません。
しかし、税理士は単に税金の計算や申告書作成を代行するだけの存在ではありません。あなたの事業や資産状況を深く理解し、未来を見据えた最適な戦略を共に考え、経営の安定と成長を力強くサポートしてくれる、かけがえのないパートナーとなり得るのです。
特に、年に一度の確定申告だけを依頼する「スポット契約」とは一線を画す、「顧問税理士」という存在は、経営者にとって「かかりつけ医」のような役割を果たします。日々の経営活動に寄り添い、継続的に関与するからこそ得られるメリットは計り知れません。
この記事では、顧問税理士との契約を一度でも考えたことのある全ての経営者や事業主の皆様が、そのメリットと契約のポイントを深く理解し、自信を持って最適なパートナーを見つけ出せるよう、網羅的かつ徹底的に解説していきます。顧問税理士の基本的な役割から、具体的なサービス内容、契約するメリット、費用相場、そして契約に至るまでの具体的な流れまで、あなたのあらゆる疑問や不安にお答えします。
この記事を読み終える頃には、顧問税理士との契約が、単なるコストではなく、あなたの未来を豊かにするための極めて価値の高い「投資」であることを、確信しているはずです。
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顧問税理士をつけるメリットについて徹底解説
顧問税理士とは何か?
まず、「税理士」と「顧問税理士」の違いを明確に理解することが重要です。全ての顧問税理士は税理士ですが、全ての税理士が顧問として機能しているわけではありません。
継続的なパートナーシップ
一般的に、税理士との契約には、年に一度の確定申告書の作成だけを依頼する「スポット契約」と、年間を通じて継続的に契約を結ぶ「顧問契約」があります。
「顧問税理士」とは、後者の顧問契約を締結し、クライアントである個人事業主や法人の経営状況を、継続的に把握し、サポートする税理士のことを指します。
年に一度だけ関係を持つ税理士とは異なり、顧問税理士はあなたの事業の「かかりつけ医」のような存在です。毎月の業績をチェックし、日々の小さな疑問にも答えることで、大きな問題が発生する前に対処し、常に健康な経営状態を維持するためのお手伝いをします。この「継続性」こそが、顧問税理士の最も重要な本質です。
税務の専門家としての独占業務
顧問税理士も、もちろん税理士法の定めに基づいた「税に関する専門家」です。その中核には、税理士だけに許可された以下の三つの「独占業務」があります。
- 税務代理: あなたの代理人として、税務署への申告や申請、税務調査の立会いを行います。
- 税務書類の作成: 確定申告書や法人税申告書、各種届出書など、税務署に提出する書類を作成します。
- 税務相談: 「この支出は経費になるか」といった日常的な疑問から、節税対策の立案まで、税に関するあらゆる相談に応じます。
経営の参謀としての役割
顧問税理士の真価は、上記の独占業務を「継続的に」行うことで、単なる税務処理の代行者を超えた役割を担う点にあります。
過去の数字を整理して申告書を作るだけなら、スポット契約でも可能です。しかし、顧問税理士は、毎月の試算表などのデータを通じて、あなたの会社の数字の裏側にある「経営の課題」を読み解きます。
そして、「なぜ利益率が下がっているのか」「資金繰りを改善するためにはどうすべきか」「今、設備投資をしても問題ないか」といった、経営者の意思決定に不可欠な、未来志向のアドバイスを提供します。顧問税理士は、経営者が孤独な決断を下す際に、数字という客観的な根拠を持って支えてくれる、最も身近な「経営の参謀」なのです。
顧問税理士が提供するサービス
顧問契約を結んだ場合、税理士は具体的にどのようなサービスを提供してくれるのでしょうか。その内容は、契約や事業規模によって異なりますが、一般的には日々の会計処理のサポートから、決算業務、そして経営全体に関わるコンサルティングまで、多岐にわたります。
日常的な会計・税務サポート
事業運営において日々発生する、経理や税務に関する業務を幅広くサポートします。
記帳代行と会計帳簿のレビュー
日々の取引を帳簿に記録する「記帳」は、経理の基本ですが、非常に手間のかかる作業です。
- 記帳代行: 領収書や請求書、通帳のコピーなどを税理士に渡すだけで、面倒な会計ソフトへの入力を全て代行してもらうサービスです。経理に割くリソースがない場合に適しています。
- 会計帳簿のレビュー(巡回監査): クラウド会計ソフトなどを活用して、あなた自身(あるいは自社の経理担当者)が記帳を行い、その内容が正しく処理されているかを、税理士が毎月チェックするサービスです。これを「自計化」と呼びます。自社でリアルタイムに数字を把握できる体制を築きたい場合に最適です。
月次決算と業績報告
顧問税理士の重要な役割の一つが、「月次決算」の実施です。これは、毎月末にその月までの業績を締め、試算表(月次貸借対照表・損益計算書)を作成することです。 税理士は、この試算表を基に、経営者に対して「今月は売上が計画通りに進んでいます」「先月より交際費が増えすぎています」といった業績報告を行います。これにより、経営者は自社の経営状態をタイムリーに把握し、問題があればすぐに対策を打つことができます。
日常の税務相談
事業を行っていると、「この支出は経費になるのか?」「新しい取引を始めるが、税務上の注意点はあるか?」といった疑問が、日常的に発生します。顧問契約を結んでいれば、電話やメール、チャットツールなどを通じて、こうした日々の小さな疑問を、いつでも気軽に相談することができます。
決算・申告業務
年に一度の、最も重要な税務イベントである決算と申告手続きも、顧問税理士の重要なサービスです。
決算書の作成
事業年度の終わりには、一年間の経営成績の集大成である「決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)」を作成します。これは、税務申告のためだけでなく、金融機関や取引先に自社の経営状態を示す、非常に重要な書類です。
法人税・所得税・消費税の申告書作成
作成した決算書を基に、法人税や(個人の場合は)所得税、そして消費税の申告書という、極めて専門的で複雑な税務書類を作成し、税務署へ提出します。
経営支援サービス
顧問税理士の付加価値は、ここから先の経営支援サービスにあります。
戦略的な節税対策(タックスプランニング)
決算が締まった後では、打てる節税対策は限られています。顧問税理士は、決算期が近づく前から、あるいは期中を通じて、あなたの会社の利益状況を予測し、「今期は利益が出そうなので、役員賞与を出しましょう」「このタイミングで設備投資をすれば、税制優遇が使えます」といった、未来志向の節税対策を積極的に提案します。
資金繰り管理と融資支援
会社の倒産は、赤字だから起こるのではなく、お金が足りなくなる(資金ショートする)から起こります。顧問税理士は、「資金繰り表」の作成を支援し、将来のキャッシュの動きを予測します。 また、事業拡大のための設備投資や、運転資金の確保が必要になった際には、金融機関に提出する「事業計画書」の作成をサポートします。税理士が関与した事業計画書は、金融機関からの信頼性が高く、融資の成功確率を大きく引き上げます。
その他の専門的サービス
上記に加えて、顧問契約には、以下のような重要なサービスが含まれることが一般的です。
税務調査対応
多くの経営者が恐れる「税務調査」。その連絡があった際、顧問税理士は、事前準備から調査当日の立会い、そして調査後の税務署との交渉まで、あなたの代理人として全ての対応を行います。専門家が盾となってくれる安心感は、計り知れません。
年末調整・法定調書・償却資産税の申告
従業員を雇用している場合、毎月の給与計算から、年末に行う「年末調整」の計算、そして税務署や市町村へ提出する「法定調書合計表」や「給与支払報告書」の作成も代行します。また、土地・家屋以外の事業用資産にかかる「償却資産税」の申告も、忘れがちな重要な業務です。
顧問税理士をつけるメリット
顧問税理士と契約し、継続的なパートナーシップを築くことは、単に「面倒な経理を任せられる」というレベルを超えた、事業経営全体にわたる計り知れないメリットをもたらします。
経営者が本業に集中できる
これが、顧問税理士をつける最大のメリットと言っても過言ではありません。 経営者や個人事業主の時間は、会社にとって最も貴重な経営資源です。その時間を、領収書の整理や会計ソフトへの入力といった、慣れない、かつ直接的には利益を生み出さない作業に費やすのは、大きな機会損失です。 顧問税理士に、これらの煩雑なバックオフィス業務を一任することで、経営者は自らが最も価値を発揮できる、商品開発やサービスの向上、営業活動、マーケティング戦略といった「本業」に、100%の時間とエネルギーを集中させることができます。
経営状況のリアルタイムな把握と的確な意思決定
多くのスモールビジネスが失敗する原因の一つに、「どんぶり勘定」があります。「売上は上がっているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない」という状況では、経営は長続きしません。 顧問税理士は、毎月、試算表という形で、あなたの会社の経営状態を客観的な「数字」で示してくれます。そして、その数字の裏にある問題点(「原価率が上がっています」「この経費が突出しています」など)を指摘してくれます。このタイムリーな「経営の見える化」により、経営者は感覚だけに頼るのではなく、データに基づいた的確な意思決定を、迅速に行うことができるようになります。
戦略的な節税対策によるキャッシュフローの最大化
税理士に依頼するメリットとして、多くの人が「節税」を期待します。その期待に応え、合法的な範囲で税負担を最小限に抑えるのが、顧問税理士の重要な役割です。 年に一度の申告時に慌てて対策するのではなく、期中から利益状況を把握している顧問税理士だからこそ、「役員報酬の最適な設定」「少額減価償却資産の特例の活用」「各種税制優遇措置の適用」など、計画的かつ効果的な節税対策(タックスプランニング)を提案できます。これにより、無駄な税金の支払いを防ぎ、会社の手元に残るキャッシュフローを最大化することができます。
金融機関からの信用の向上と円滑な資金調達
事業の成長には、資金調達が不可欠です。金融機関が融資を審査する際、最も重視するのが「決算書の信頼性」です。 顧問税理士が作成に関与し、その署名が入った決算書は、それだけで金融機関からの信用度が格段に高まります。また、融資を申し込む際に、税理士がサポートして作成した事業計画書や資金繰り計画書は、説得力が違います。日頃から自社の数字を把握してくれている税理士が、金融機関との交渉の場に同席してくれることも、融資の成功確率を大きく引き上げる要因となります。
税務調査の安心感とリスク回避
税務調査は、どの企業にも、ある日突然やってくる可能性があります。その際、経営者が一人で調査官と対峙するのは、専門知識の面でも、精神的なプレッシャーの面でも、非常に不利です。 顧問税理士がいれば、日頃から税務調査を意識した、適切な経理処理の指導を受けられます。そして、万が一調査の連絡が来た場合でも、慌てる必要はありません。税理士が代理人として、事前準備から当日の立会い、交渉まで、全てを引き受けてくれます。この「プロが守ってくれる」という安心感は、何物にも代えがたいメリットです。
経営に関する「壁打ち相手」の獲得
経営者は、孤独な存在です。特に中小企業の経営者は、社内に、事業の根幹に関わる財務的な悩みを相談できる相手がいないケースがほとんどです。 顧問税理士は、会社の内部事情に精通しながらも、客観的な第三者の視点を持つ、理想的な「壁打ち相手」となります。「新しい事業を始めたいが、財務的にどう思うか」「後継者について悩んでいる」といった、従業員や家族には話しにくい本音の相談も、守秘義務を持つ税理士になら打ち明けることができます。
顧問税理士の探し方
顧問税理士がもたらすメリットを最大限に享受するためには、自社に最適なパートナーを見つけ出すことが何よりも重要です。ここでは、信頼できる顧問税理士を探すための、具体的な方法を紹介します。
インターネットでの検索
現在、最も手軽で、豊富な情報が得られる探し方が、インターネット検索です。「税理士 〇〇(地域名)」「IT業界 強い 税理士」「相続 相談」のように、「地域名」や「自社の業種・課題」をキーワードに検索することで、多くの税理士事務所のウェブサイトを見つけることができます。
ウェブサイトで確認すべきこと
候補となる税理士事務所のウェブサイトでは、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 専門分野・得意業種: 自社の業種(例:建設業、IT、飲食業など)に関する専門性や、顧問実績が明記されているか。
- 代表税理士の理念・人柄: 代表税理士のプロフィールや、ブログ、コラムなどを読み、経営に対する考え方や人柄が自分と合いそうかを確認します。
- 料金体系: 顧問料の目安や、サービス内容が明確に記載されているか。
- 顧客の声: どのようなクライアントが、どのような点に満足しているかの実例。
税理士紹介サービスの活用
「自分で探す時間がない」「客観的な視点で選びたい」という経営者には、税理士紹介サービスが有効です。専門のコーディネーターに、「年商〇〇円のIT業で、クラウド会計に強く、資金調達も相談できる税理士を、予算〇〇円で探している」といった具体的な要望を伝えることが成功の秘訣です。
コーディネーターは、あなたの要望を基に、登録されている多くの税理士の中から、最適な候補者を複数紹介してくれます。面談の日程調整や、断りの連絡も代行してくれるため、忙しい経営者の心理的・時間的負担を軽減できます。
金融機関や信頼できる経営者仲間からの紹介
自社のビジネスを深く理解してくれている、取引金融機関の担当者に相談するのも、非常に有効な方法です。金融機関は、多くの企業の財務状況を見ており、どの税理士がクライアントの成長に貢献しているかを、客観的に評価しています。
また、同業種で、自社よりも少し先のステージに進んでいる、信頼できる経営者仲間に紹介を依頼するのも良いでしょう。実際にサービスを利用している人からの、リアルな評判は何よりも信頼できます。ただし、紹介された手前、断りにくいという側面もあるため、複数の情報源を持つことが望ましいでしょう。
地域の商工会議所や青色申告会など
地域の商工会議所や青色申告会は、中小企業や個人事業主のサポートを使命としており、会員向けに税理士の紹介を行っている場合があります。これらの団体は、地域の事業者の事情に精通しているため、親身に相談に乗ってくれる税理士を見つけやすいでしょう。
顧問税理士を選ぶ際のポイント
いくつかの候補者が見つかったら、次に、その中から自社にとって最高のパートナーとなる一人を見極める作業が必要です。料金の安さだけで選ぶのではなく、以下のポイントを総合的にチェックし、長期的な視点で慎重に判断しましょう。
専門性と実績
税理士を選ぶ上で、最も重要な基準は、あなたの会社の課題を解決できるだけの、専門性と実績を持っているかという点です。
自社の業種への専門性
あなたの会社が、建設業、飲食業、IT業、医療機関など、特殊な会計処理や税務論点を持つ業界であれば、その業界に関する顧問実績が豊富かどうかは、絶対に確認すべきです。面談の際には、「同業のクライアントはいますか」「私たちの業界で注意すべき税務ポイントは何ですか」といった具体的な質問を投げかけて、その専門性を確かめましょう。
課題解決の実績
あなたが、資金調達や、事業承継、相続といった特定の課題を抱えているのであれば、その分野に関する具体的な解決実績があるかを確認します。「過去にどのような資金調達を成功させましたか」「どのようなスキームで事業承継を支援しましたか」といった質問を通じて、その税理士の実践的な能力を評価します。
コミュニケーション能力と人間的な相性
税理士とは、会社の最もデリケートな情報を共有し、長期にわたって付き合っていくパートナーです。そのため、専門知識と同じくらい、コミュニケーションの取りやすさや、人間的な相性が重要になります。
説明の分かりやすさ
どんなに高度な知識を持っていても、それを経営者が理解できる言葉で伝えられなければ意味がありません。専門用語を並べるのではなく、あなたの目線に立って、平易な言葉で丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。あなたが納得するまで、根気強く対話に応じてくれる姿勢は、信頼できるパートナーの証です。
レスポンスの速さと誠実さ
質問や相談に対する返信の速さは、その税理士の仕事に対する姿勢を測る、重要な指標です。ビジネスのスピードが求められる場面で、迅速に対応してくれるかどうかは非常に重要です。また、面談の際には、あなたの話をどれだけ真剣に聞いてくれるかという「傾聴力」も観察しましょう。誠実な人柄は、長期的な信頼関係の土台となります。
提案力と経営への関与度
過去の数字を正確に処理するのは、税理士として当然の業務です。真に価値のある税理士は、そこから一歩踏み込み、その数字を基に、会社の未来をより良くするための、具体的な提案をしてくれます。
面談の際には、「私たちの決算書を見て、どのような経営課題があると感じますか」「今後、どのような手を打つべきだと思いますか」といった問いを投げかけ、その回答から、税理士の提案力や経営への関与意欲を探りましょう。節税対策はもちろん、資金繰り改善策や、新たな補助金の活用提案など、プロアクティブな姿勢が見られるかどうかが、重要な見極めポイントです。
料金体系の明確さと納得感
費用に関する透明性は、信頼関係の基本です。何にいくらかかるのかが不明瞭なまま契約するのは、絶対に避けましょう。見積書を依頼し、その内訳が具体的で分かりやすいかを確認します。月額顧問料に含まれるサービス範囲はどこまでで、どのような場合に別途料金が発生するのかを、契約前に明確にしておくことが、後のトラブルを防ぎます。料金の絶対額だけでなく、提供されるサービスの価値と見合っているかという、費用対効果の視点で判断することが大切です。
顧問税理士と契約するまでの流れ
自社に合った税理士候補が見つかってから、実際に顧問契約を結ぶまでには、いくつかのステップを踏むのが一般的です。焦らず、慎重に進めることで、契約後のミスマッチを防ぐことができます。
ステップ1:問い合わせと初回面談の予約
候補となる税理士事務所のウェブサイトの問い合わせフォームや電話で、連絡を取ります。その際には、自社の業種や売上規模、現在抱えている課題などを簡潔に伝えると、スムーズです。ほとんどの事務所では、初回相談を無料で行っていますので、面談の日時を予約しましょう。できれば、2~3の事務所と面談し、比較検討することをお勧めします。
ステップ2:初回面談(ヒアリングと相談)
初回面談は、税理士を見極めるための最も重要な機会です。直近の決算書や試算表など、自社の経営状況がわかる資料を持参すると、話が具体的になります。面談では、自社の事業内容や将来のビジョン、現在抱えている悩みを、正直に話しましょう。そして、「選ぶポイント」で挙げた項目を中心に、積極的に質問をします。税理士の人柄や相性、説明の分かりやすさなどを、肌で感じ取ってください。
ステップ3:見積書の取得と比較検討
面談後、それぞれの事務所から、正式な見積書を提出してもらいます。見積書を受け取ったら、料金の総額だけでなく、サービス内容の内訳を詳細に比較検討します。どの業務が顧問料に含まれ、何がオプション料金になるのかを、しっかりと確認しましょう。不明な点があれば、遠慮なく質問し、疑問をすべて解消しておくことが重要です。
ステップ4:契約の意思決定と連絡
料金とサービス内容、そして面談での印象を総合的に判断し、契約する税理士を1社に絞り込みます。契約を決めた事務所には、その旨を連絡し、契約手続きに進みます。同時に、お断りする事務所にも、丁重にその旨を伝えましょう。
ステップ5:顧問契約の締結
契約する事務所を訪問し、業務委託契約書の内容を最終確認します。業務範囲や報酬、契約期間、解約条件、守秘義務といった重要事項に、しっかりと目を通し、納得した上で署名・捺印します。これで、正式に顧問税理士として、あなたの事業をサポートしてもらう関係がスタートします。
顧問税理士との契約を検討した方が良い人
税理士との契約、特に継続的なサポートを受ける「顧問契約」は、どのような人に特に必要なのでしょうか。以下に挙げる特徴に当てはまる方は、顧問契約を結ぶことで、大きなメリットを享受できる可能性が高いと言えます。
法人(株式会社・合同会社)の経営者
法人の場合、会計処理や税務申告の複雑さが個人事業主とは比較にならないため、顧問税理士との契約は、ほぼ必須と言えます。申告の正確性を担保するだけでなく、金融機関からの信用獲得や、節税対策、経営アドバイスなど、そのメリットは計り知れません。赤字であっても申告義務があり、その赤字を将来に繰り越すためにも、専門家の関与は不可欠です。
青色申告(65万円控除)を目指す個人事業主
個人事業主であっても、青色申告の最大のメリットである「65万円の特別控除」を受けたい場合は、顧問契約を強くお勧めします。この控除の要件である「複式簿記」による記帳は、専門的な知識が必要であり、自力で完璧に行うのは非常に困難です。税理士に依頼することで、控除を確実に受けられるだけでなく、記帳の手間からも解放されます。
売上が急成長している事業者
売上が順調に伸びている時こそ、税理士の力が必要です。売上が1,000万円を超えれば、消費税の課税事業者となり、申告業務はさらに複雑になります。また、利益が増えれば、当然、納税額も大きくなります。税理士と顧問契約を結び、計画的な節税対策や、資金繰り管理を行うことが、成長をさらに加速させるための鍵となります。
経理業務に本業の時間を奪われている人
経営者や事業主が、領収書の整理や会計ソフトへの入力といった経理作業に、多くの時間を費やしていませんか。その時間は、本来、売上を上げるための営業活動や、商品開発に使うべきです。顧問契約は、あなたの貴重な時間を買い戻し、本業に集中するための、最も効果的な手段です。
資金調達や設備投資を計画している人
金融機関からの融資や、補助金の活用を考えている場合、専門家が作成した信頼性の高い事業計画書や、月次試算表は、審査を通過するための強力な武器となります。顧問税理士は、あなたの事業計画を、金融機関が納得する「数字」に落とし込み、資金調達の成功を強力にバックアップします。
税務調査が不安な人
「いつか税務調査が来るかもしれない」という不安を、常に抱えながら事業を行うのは、大きな精神的ストレスです。顧問税理士がいれば、日頃から適正な経理処理の指導を受けられ、万が一の際も、代理人として全て対応してもらえます。この「安心」を得るためだけにでも、顧問契約の価値は十分にあります。
顧問税理士の費用相場
顧問税理士に依頼する上で、最も気になるのが費用でしょう。税理士の報酬は、現在では自由化されており、事務所の方針や、提供するサービス内容、クライアントの事業規模によって様々です。ここでは、一般的な費用相場を、事業者の種類別に紹介します。
費用の構成要素
まず、税理士に支払う費用は、主に以下の要素で構成されていることを理解しましょう。
- 月額顧問料: 毎月の会計データのレビューや、経営相談、税務相談の対価として支払う固定費用です。
- 記帳代行料: 領収書や請求書の整理、会計ソフトへの入力を税理士に丸ごと任せる場合の費用です。自社で記帳(自計化)する場合は、発生しません。
- 決算申告料: 年に一度の決算書作成と、法人税や所得税、消費税などの申告書作成・提出に対する費用です。一般的に、月額顧問料の4~6ヶ月分が相場です。
- オプション料金: 年末調整や給与計算、税務調査立会い、融資支援など、基本の顧問契約に含まれない業務を依頼した場合に、別途発生します。
個人事業主の費用相場
記帳代行なし(自計化)の場合
日々の記帳は自分で行い、税理士には帳簿のチェックと相談、決算申告を依頼するケースです。
- 月額顧問料: 1万円~3万円程度
- 決算申告料: 5万円~15万円程度
- 年間合計: 約20万円~50万円
記帳代行ありの場合
日々の記帳作業も、まとめて税理士に依頼するケースです。
- 月額顧問料(記帳代行料含む): 2万円~5万円程度
- 決算申告料: 10万円~20万円程度
- 年間合計: 約35万円~80万円 (※記帳代行料は、取引量(仕訳数)によって大きく変動します。)
法人の費用相場
法人の場合は、売上規模によって料金が変動するのが一般的です。
年商3,000万円未満
- 記帳代行なし: 月額顧問料 2万円~4万円 + 決算料 10万円~20万円
- 年間合計:約35万円~70万円
- 記帳代行あり: 月額顧問料 3万円~5万円 + 決算料 15万円~25万円
- 年間合計:約50万円~85万円
年商3,000万円~1億円
- 記帳代行なし: 月額顧問料 3万円~6万円 + 決算料 15万円~30万円
- 年間合計:約50万円~100万円
- 記帳代行あり: 月額顧問料 4万円~8万円 + 決算料 20万円~40万円
- 年間合計:約70万円~130万円
年商1億円以上
年商が1億円を超えると、取引の複雑性や、求められるコンサルティングのレベルも高まるため、月額顧問料は5万円以上、決算料は25万円以上となるのが一般的で、個別見積もりのケースが多くなります。
顧問税理士に関するよくある質問例と回答
ここでは、顧問税理士との契約を検討する際に、多くの経営者や事業主が抱く、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1. 売上がまだ少ないのですが、顧問契約は必要ですか?
A1. 売上が少ない段階では、顧問契約は必須ではないかもしれません。その場合は、年に一度の確定申告だけを依頼する「スポット契約」から始めるのも、賢明な選択です。ただし、個人事業主で青色申告65万円控除を受けたい場合や、法人を設立したばかりのタイミングでは、経理の基盤を正しく作るために、最初から顧問契約を結ぶメリットは非常に大きいです。多くの事務所では、創業期向けのリーズナブルなプランを用意していますので、一度相談してみることをお勧めします。
Q2. 顧問料を安く抑える方法はありますか?
A2. はい、あります。最も効果的な方法は、自社で経理業務を行う「自計化」を進めることです。クラウド会計ソフトなどを活用して、日々の記帳を自社で行えば、税理士に支払う「記帳代行料」を削減できます。また、税理士との面談を、毎月の訪問から、四半期に一度、あるいはZoomなどのオンラインのみに切り替えることで、顧問料を抑えられる場合もあります。
Q3. 顧問税理士がいれば、税務調査は絶対に来ませんか?
A3. いいえ、それは保証されません。税務調査は、どのような企業にも、公平に行われる可能性があります。しかし、顧問税理士がいることのメリットは、調査の「確率」を下げることと、調査が「来た時」の対応にあります。日頃から適正な申告を行っていること、そして申告書に税理士の署名があることで、税務署からの信頼が高まり、調査対象に選ばれにくくなる傾向はあります。そして、万が一調査が来ても、専門家が全て対応してくれるという安心感が最大のメリットです。
Q4. 税理士は何でも相談して良いのですか?
A4. 税理士は、「税務」と「会計」のプロフェッショナルです。したがって、お金や数字が関わる経営の相談(節税、資金繰り、融資、経営分析など)については、何でも相談すべきです。 ただし、例えば「法律トラブル(契約書の作成や、取引先との訴訟など)」は弁護士の専門分野であり、「社会保険の手続きや、従業員との労務トラブル」は社会保険労務士の専門分野です。 しかし、優れた顧問税理士は、弁護士や社労士といった他の専門家と強力なネットワークを持っています。あなたが税務以外の問題で困った時も、まずは顧問税理士に相談すれば、「それなら、この分野に強い弁護士先生を紹介しますよ」と、適切な専門家に繋いでくれる「総合窓口」としての役割も果たしてくれます。
まとめ
顧問税理士。それは、単に税金の計算を代行するだけの存在ではなく、あなたの事業の未来を共に創造し、経営者の孤独な戦いを支える、かけがえのないパートナーです。
この記事では、顧問税理士の役割から、具体的なサービス内容、契約するメリット、そして最適なパートナーを見つけ出すための具体的な方法とポイントまでを、網羅的に解説してきました。
顧問税理士と契約することで、あなたは煩雑な経理業務や税務申告の不安から解放され、最も価値のある本業に集中することができます。それだけでなく、合法的な節税によるキャッシュフローの最大化、客観的なデータに基づく的確な経営判断、そして金融機関からの信用の向上といった、事業の成長を加速させるための、数多くのメリットを享受できます。
最高のパートナーを見つけ出す鍵は、料金の安さだけで判断するのではなく、あなたの会社の業種や成長ステージに合った「専門性」、未来志向の「提案力」、そして何よりも、「人間的な相性」を、総合的に見極めることにあります。インターネットや紹介といった多様なチャネルを駆使して候補者を探し出し、面談での直接の対話を通じて、「この人になら、会社の未来を託せる」と心から信頼できる相手を、選び抜いてください。
顧問税理士に支払う費用はコストではありません。あなたの会社の未来を守り育てるための、最も効果的な「投資」です。その投資を惜しんだ結果、将来何倍もの税金を支払うことになったり、成長の機会を逃してしまったりするのでは、本末転倒です。
この記事が、あなたの税理士探しという重要な航海の確かな羅針盤となり、あなたの事業が輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば、幸いです。まずは、勇気を出して気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。
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この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
