税理士と契約するメリットと契約のポイントについて徹底解説

税務

事業を経営する、あるいは個人として資産を形成していく上で、「税金」は避けて通れない重要なテーマです。会社員であれば年末調整で完結することがほとんどですが、独立開業した個人事業主や法人経営者、不動産収入がある方、あるいは相続に直面した方にとって、税務申告は複雑で、大きな負担となり得ます。

「確定申告のやり方がわからない」「これで計算が合っているか不安だ」「もっと効果的な節税方法はないのだろうか」「税務調査が来たらどうしよう」。このような悩みを抱えながらも、専門家である税理士に相談することなく、一人で問題を抱え込んでいる方も少なくありません。「税理士は費用が高そう」「どの税理士に頼めば良いかわからない」といったハードルが、その一歩をためらわせる原因かもしれません。

しかし、税理士は単に税金の計算や申告書作成を代行するだけの存在ではありません。あなたの事業や資産状況を深く理解し、未来を見据えた最適な戦略を共に考え、経営の安定と成長を力強くサポートしてくれる、かけがえのないパートナーとなり得るのです。

この記事では、税理士との契約を一度でも考えたことのある全ての方々が、そのメリットと契約のポイントを深く理解し、自信を持って最適なパートナーを見つけ出せるよう、網羅的かつ徹底的に解説していきます。税理士の基本的な役割から、具体的なサービス内容、契約するメリット、費用相場、そして契約に至るまでの具体的な流れまで、あなたのあらゆる疑問や不安にお答えします。

この記事を読み終える頃には、税理士との契約が、単なるコストではなく、あなたの未来を豊かにするための極めて価値の高い「投資」であることを、確信しているはずです。

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税理士と契約するメリットと契約のポイントについて徹底解説

  1. 税理士の役割
    1. 税に関する専門家としての独占業務
      1. 税務代理
      2. 税務書類の作成
      3. 税務相談
    2. 経営と資産を守るパートナーとしての役割
      1. 経営の健康状態を診断する「かかりつけ医」
      2. 資金調達を成功に導く「信頼の証」
      3. 資産承継を円滑に進める「未来への案内人」
  2. 税理士が一般的に提供するサービス(個人向け)
    1. 確定申告のサポート
      1. 個人事業主・フリーランスの確定申告
      2. 不動産所得の確定申告
      3. 株式・FXなどの譲渡所得の申告
      4. 医療費控除や住宅ローン控除
    2. 相続・贈与に関するコンサルティング
      1. 相続税申告
      2. 生前の相続対策(節税コンサルティング)
      3. 贈与税申告
  3. 税理士が一般的に提供するサービス(法人向け)
    1. 創業・会社設立支援
    2. 日常的な税務・会計顧問
      1. 記帳代行・会計帳簿のレビュー
      2. 月次決算と経営分析
      3. 税務相談
    3. 決算・申告業務
    4. その他の専門サービス
  4. 税理士の契約形態
    1. 顧問契約
      1. 顧問契約のメリット
      2. 顧問契約のサービス範囲
    2. スポット契約
      1. スポット契約の例
      2. スポット契約のメリットとデメリット
    3. プロジェクト契約
  5. 税理士と契約するメリット
    1. 本業に集中できる時間と精神的な余裕が生まれる
    2. 正確な会計処理と申告による税務リスクの回避
    3. 合法的な節税によるキャッシュフローの最大化
    4. 経営状況の可視化と的確な意思決定
    5. 社会的信用の向上と資金調達力の強化
  6. 税理士と顧問契約すべき人の特徴
    1. 経理や数字の管理が苦手、または嫌いな人
    2. 本業が忙しく、経理に時間を割く余裕がない人
    3. 節税や資金繰りについて、積極的にアドバイスが欲しい人
    4. 将来的に法人化や事業拡大を視野に入れている個人事業主
    5. 税務調査などのリスクに、万全の備えをしておきたい人
  7. 税理士と契約する際の費用相場
    1. 個人事業主の場合
      1. スポット契約(確定申告のみ)
      2. 顧問契約
    2. 法人の場合
      1. 顧問契約
    3. その他の費用
  8. 税理士の探し方
    1. インターネットでの検索
      1. メリット
      2. デメリット
    2. 知人・同業者からの紹介
      1. メリット
      2. デメリット
    3. 税理士紹介サービスの活用
      1. メリット
      2. デメリット
  9. 税理士を選ぶ際のポイント
    1. 専門性と実績
      1. 自社の業種への専門性
      2. 課題解決の実績
    2. コミュニケーション能力と人間的な相性
      1. 説明の分かりやすさ
      2. レスポンスの速さと誠実さ
    3. 提案力と経営への関与度
    4. 料金体系の明確さと納得感
  10. 税理士と契約する際の流れ
    1. ステップ1:問い合わせと初回面談の予約
    2. ステップ2:初回面談(ヒアリングと相談)
    3. ステップ3:見積書の取得と比較検討
    4. ステップ4:契約の意思決定と連絡
    5. ステップ5:顧問契約の締結
  11. まとめ

税理士の役割

税理士との契約を検討する上で、まず彼らがどのような役割を担う専門家なのかを正しく理解することが重要です。多くの人が抱く「確定申告をしてくれる人」というイメージは、その役割のほんの一側面に過ぎません。

税に関する専門家としての独占業務

税理士の仕事の中核をなすのが、税理士法という法律によって、税理士だけに許可された「独占業務」です。これらは高度な専門知識を要するため、有償で税理士以外の人が行うことは法律で禁じられています。この独占業務は、大きく分けて三つあります。

税務代理

一つ目は「税務代理」です。これは、納税者の代理人として、税務署などに対する申告、申請、届出といった手続きを行ったり、税務調査の際に納税者の代わりに立ち会って、主張や説明を行ったりする業務を指します。特に税務調査においては、専門家が代理人として税務署と対等に交渉してくれることは、納税者にとって計り知れない安心感と利益をもたらします。

税務書類の作成

二つ目は「税務書類の作成」です。これは、確定申告書や法人税申告書、相続税申告書、あるいは税務署に提出する各種届出書など、税務に関する書類を納税者に代わって作成する業務です。複雑な税法のルールに則って、正確かつ有利な申告書を作成することは、税理士の腕の見せ所です。

税務相談

三つ目は「税務相談」です。これは、税金の計算方法や節税対策、あるいは取引を行う上での税務上の取り扱いなど、税に関する具体的な相談に応じる業務です。「この支出は経費になるのか」「どうすれば合法的に税金を抑えられるか」といった個別の質問に、専門家として的確なアドバイスを提供します。

経営と資産を守るパートナーとしての役割

税理士の真価は、独占業務だけにとどまりません。特に、企業経営者や資産家にとっては、数字を通じて現状を分析し、未来への道筋を示す、最も身近なパートナーとしての役割が期待されます。

経営の健康状態を診断する「かかりつけ医」

税理士は、毎月の試算表や決算書を通じて、会社の財務状況という「健康状態」を誰よりも詳しく把握しています。その数字を分析し、「利益率は業界平均と比べてどうか」「資金繰りに問題はないか」といった診断を下し、問題があれば早期に改善策を提案してくれます。いわば、会社の経営における「かかりつけ医」のような存在です。

資金調達を成功に導く「信頼の証」

金融機関から融資を受ける際、税理士が作成に関与した決算書や事業計画書は、その信頼性を大きく高めます。専門家による客観的なチェックが入っていることの証明となり、融資審査において有利に働くケースは少なくありません。税理士の存在そのものが、企業の社会的な信用力を向上させる効果を持つのです。

資産承継を円滑に進める「未来への案内人」

個人の資産家にとっては、自らの資産をいかにして守り、次世代へ円満に引き継いでいくかが大きな課題です。税理士は、相続税や贈与税に関する深い知識を基に、生前のうちから計画的な対策を立案し、円満な資産承継を実現するための「未来への案内人」としての役割を果たします。

このように、税理士は過去の数字を整理するだけの存在ではなく、その数字を基に未来を創造し、経営者や個人の目標達成をサポートする、極めて重要なパートナーなのです。

税理士が一般的に提供するサービス(個人向け)

個人の方が税理士に依頼する場面は、主に確定申告が必要な所得がある場合や、相続・贈与といった資産の移転が関わるケースです。それぞれの状況に応じて、税理士は専門的なサービスを提供します。

確定申告のサポート

会社員であっても、以下のようなケースでは確定申告が必要となり、税理士のサポートが有効です。

個人事業主・フリーランスの確定申告

デザイナーやエンジニア、ライター、あるいは一人親方など、個人で事業を営んでいる方は、毎年確定申告が必要です。税理士は、日々の取引の記帳代行から、青色申告承認申請書の提出、そして節税メリットの大きい青色申告決算書の作成までをトータルでサポートします。何が経費になるのか、減価償却はどう計算するのかといった、判断に迷うポイントも的確に処理してくれます。

不動産所得の確定申告

アパートやマンション、駐車場などを貸して家賃収入を得ている方の確定申告も、税理士の得意分野です。不動産所得の計算には、減価償却費や修繕費の扱いなど、専門的な論点が多く含まれます。税理士に依頼することで、適切な会計処理を行い、キャッシュフローを最大化するための節税策を講じることが可能になります。

株式・FXなどの譲渡所得の申告

株式や投資信託、FXなどの金融商品を売却して利益が出た場合、その利益に対して税金がかかります。複数の証券会社で取引している場合や、損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」を利用する場合には、計算が複雑になります。税理士に依頼すれば、正確な計算と有利な申告が可能です。

医療費控除や住宅ローン控除

年間の医療費が高額になった場合や、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合など、確定申告をすることで税金が還付されるケースがあります。これらの手続きも、税理士に依頼することができます。

相続・贈与に関するコンサルティング

資産の承継は、多くの個人にとって最も専門的な知識が求められる分野です。

相続税申告

ご家族が亡くなられた際、遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要です。相続税の申告は、相続人の確定から、遺産の評価(特に不動産の評価は複雑です)、遺産分割協議書の作成、そして申告書の作成・提出まで、極めて専門的で煩雑な手続きを要します。税理士は、これらのプロセスを一貫してサポートし、円満な相続を実現します。

生前の相続対策(節税コンサルティング)

相続税は、事前の対策の有無によって、納税額が数千万円単位で変わることも珍しくありません。税理士は、将来発生するであろう相続税額をシミュレーションし、生前贈与の活用や、生命保険の非課税枠の利用、不動産の評価額を下げる対策など、あなたの家族にとって最適な相続対策プランを、長期的な視点で設計・実行支援します。

贈与税申告

年間110万円を超える贈与を受けた場合には、贈与税の申告が必要です。また、夫婦間の居住用不動産の贈与の特例や、相続時精算課税制度といった、有利な制度を利用する際にも申告が必要となります。これらの手続きも、税理士が代行します。

税理士が一般的に提供するサービス(法人向け)

法人経営者にとって、税理士は日々の経営に欠かせないパートナーです。そのサービスは、記帳や申告といった基本的な業務から、経営の根幹に関わるコンサルティングまで、非常に多岐にわたります。

創業・会社設立支援

これから事業を始める起業家にとって、税理士は最初の強力な味方となります。

  • 法人設立手続きのサポート: 株式会社と合同会社のどちらが良いか、資本金はいくらにすべきか、事業年度はどうするかといった、会社設立時の重要な意思決定をサポートします。司法書士と連携し、定款作成から設立登記までをワンストップで支援します。
  • 事業計画書の作成と創業融資支援: 日本政策金融公庫などからの創業融資を受けるために不可欠な、事業計画書の作成を支援します。金融機関を納得させられる、説得力のある計画書作りを手伝い、融資の成功確率を高めます。
  • 各種届出書の作成・提出: 法人設立届や青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書など、会社設立後に税務署等へ提出が必要な、数多くの書類の作成・提出を代行します。

日常的な税務・会計顧問

多くの法人が税理士と結ぶのが、この「税務顧問契約」です。継続的な関与を通じて、経営の安定を支えます。

記帳代行・会計帳簿のレビュー

領収書や請求書などの資料を基に、会計データの入力を代行する「記帳代行」や、自社で入力した会計データが正しいかどうかを専門家がチェックする「レビュー(巡回監査)」を行います。クラウド会計ソフトの導入を支援し、経理業務の効率化を図ることも重要な役割です。

月次決算と経営分析

毎月の業績を速やかに締め、月次試算表を作成・報告します。そして、その数字を基に、前年同月比較や、予算との差異分析、各種経営指標(利益率や自己資本比率など)の分析を行い、経営者に対して会社の現状を分かりやすく解説します。この月次でのPDCAサイクルが、経営の質を高めます。

税務相談

日々の取引で生じる税務上の疑問や、節税に関する相談に、いつでも応じます。チャットツールなどを活用し、気軽にスピーディーに相談できる体制を整えている事務所も増えています。

決算・申告業務

事業年度の終わりには、一年間の経営成績をまとめる決算業務が待っています。

  • 決算対策: 決算月の2~3ヶ月前になると、その期の利益予測と納税額のシミュレーションを行い、役員賞与の支給や、短期前払費用の活用、含み損のある資産の売却など、決算日までに実行可能な節税対策を提案します。
  • 決算書の作成: 決算整理仕訳を行い、貸借対照表や損益計算書といった、一年間の集大成である決算書を作成します。
  • 法人税・消費税等の申告: 確定した決算書を基に、法人税、法人住民税、法人事業税、そして消費税の申告書を作成し、税務署等へ提出します。

その他の専門サービス

企業の成長ステージや課題に応じて、以下のような専門的なサービスも提供します。

  • 資金調達支援: 追加の運転資金や設備投資資金が必要になった際の、金融機関への融資申し込みをサポートします。
  • 事業承継コンサルティング: 後継者へのスムーズなバトンタッチを実現するための、自社株対策や相続税対策を支援します。
  • 組織再編(M&A)支援: 事業の売却や買収、合併といった組織再編に関する、税務面でのアドバイザリーを提供します。
  • 税務調査対応: 税務調査の連絡があった際に、事前準備から調査当日の立会い、調査後の交渉まで、一貫して代理人として対応します。

税理士の契約形態

税理士との契約には、関与の深さや頻度に応じて、いくつかの形態があります。自社の状況や、税理士に求める役割に応じて、最適な契約形態を選択することが重要です。

顧問契約

最も一般的で、包括的な契約形態が「顧問契約」です。これは、毎月一定の顧問料を支払うことで、継続的に税務や会計に関するサポートを受ける契約です。

顧問契約のメリット

顧問契約の最大のメリットは、いつでも気軽に専門家に相談できる安心感と、会社の状況を継続的に把握してもらえることによる、質の高いアドバイスが期待できる点です。日頃から会社の数字を見ているからこそ、異変にいち早く気づき、先手を打った対策を提案できます。また、税務調査の際にも、日頃の経理状況を熟知している顧問税理士が対応してくれることは、非常に心強いです。経営の「かかりつけ医」として、長期的な視点で会社の成長をサポートしてもらいたい場合に、最適な契約形態です。

顧問契約のサービス範囲

一般的に、月次での会計帳簿のレビューや、試算表の作成・報告、日常的な税務相談などが含まれます。記帳代行や給与計算は、顧問料に含まれる場合と、別途オプション料金となる場合があります。決算申告料は、月額顧問料とは別に、年に一度発生するのが一般的です。

スポット契約

顧問契約を結ばず、特定の業務が発生した時だけ、単発で依頼する契約形態です。

スポット契約の例

  • 確定申告・決算申告のみ: 一年間の記帳は自分で行い、年に一度の申告書の作成・提出だけを依頼するケース。
  • 相続税申告: 相続が発生した際に、その申告手続きだけを依頼するケース。
  • 税務調査立会い: 税務調査の連絡があった際に、その対応だけを依頼するケース。
  • 単発の税務相談: 特定の取引に関する税務上のアドバイスなど、1回限りの相談。

スポット契約のメリットとデメリット

スポット契約のメリットは、必要な時に必要なサービスだけを利用できるため、コストを抑えられる点です。顧問契約を結ぶほどの売上規模ではない個人事業主や、特定の課題だけを解決したい場合に適しています。 一方、デメリットは、継続的な関与がないため、税理士があなたの事業や資産の全体像を深く理解することが難しく、踏み込んだアドバイスが期待しにくい点です。また、緊急時に相談しても、顧問先が優先されて、すぐに対応してもらえない可能性もあります。

プロジェクト契約

特定の目的を達成するために、期間や業務範囲を定めて契約する形態です。 例えば、「会社設立支援」「創業融資サポート」「事業承継計画の策定」「M&Aのデューデリジェンス」といった、専門性の高いプロジェクトに対して適用されます。料金は、プロジェクトの難易度や期間に応じて、個別に見積もられるのが一般的です。

税理士と契約するメリット

税理士に費用を支払って契約することは、単なるコストの発生ではありません。それは、あなたの事業や資産を守り、育てるための、極めて効果的な「投資」です。具体的に、その投資がどのようなリターン、つまりメリットとなって返ってくるのかを、多角的に見ていきましょう。

本業に集中できる時間と精神的な余裕が生まれる

経営者や個人事業主にとって、最も貴重な資源は「時間」です。慣れない経理作業や、複雑な税金の計算、毎年変わる税法への対応に費やす時間を、本来やるべき本業、つまり、新しい顧客の開拓や、商品・サービスの品質向上、創造的な活動に振り向けることができたら、事業はどれだけ成長するでしょうか。

税理士に専門的な業務を任せることで、あなたは煩雑な事務作業や、「これで合っているだろうか」という不安から解放されます。この時間的、そして精神的な余裕が、事業を成長させるための最大の原動力となるのです。

正確な会計処理と申告による税務リスクの回避

税務申告の内容に誤りがあった場合、後日、税務調査で指摘され、本来納めるべき税金に加えて、過少申告加算税や延滞税といった、重いペナルティが課される可能性があります。特に、意図的な不正と見なされれば、重加算税というさらに重い罰金が科され、企業の信用は大きく損なわれます。

税理士に依頼することで、税法のプロフェッショナルが、正確な会計処理と税務申告を行ってくれます。これにより、申告ミスによる追徴課税のリスクを限りなくゼロに近づけることができ、経営者は安心して事業に専念することができます。

合法的な節税によるキャッシュフローの最大化

税法には、納税者が活用できる、数多くの控除や特例、税制優遇措置が用意されています。しかし、これらの制度は非常に複雑で、専門家でなければ、その存在に気づかなかったり、適用要件を正しく理解できなかったりすることがほとんどです。

税理士は、あなたの事業や資産の状況を分析し、青色申告特別控除や、中小企業向けの各種税制優遇、役員報酬の最適化、各種共済制度の活用など、法律で認められた範囲内で、最も効果的な節税策を提案・実行してくれます。これにより、無駄な税金の支払いをなくし、事業の運転資金となる手元のキャッシュフローを最大化することができます。

経営状況の可視化と的確な意思決定

自分一人で経理を行っていると、どうしても数字の管理がどんぶり勘定になりがちで、自社の本当の経営状態を客観的に把握することは困難です。

税理士と顧問契約を結ぶと、毎月、「試算表」などの信頼できる財務データが提供されます。税理士は、その数字を基に、「売上は伸びているが、利益率が下がっている原因は何か」「資金繰りが来月あたり厳しくなりそうだ」といった、経営上の重要なサインを指摘してくれます。この客観的なデータと専門家のアドバイスが、感覚だけに頼らない、的確でスピーディーな経営判断を可能にします。

社会的信用の向上と資金調達力の強化

税理士が関与しているという事実は、それだけで企業の社会的な信用を高める効果があります。特に、金融機関は、税理士が作成した決算書を、信頼性の高い資料として評価します。

融資を申し込む際に、税理士のサポートを受けて作成した事業計画書や、日頃から月次決算をしっかりと行っているという事実は、融資審査において非常に有利に働きます。必要な時に、必要な資金を円滑に調達できる体制を築けることは、事業の安定と成長にとって、計り知れないメリットです。

税理士と顧問契約すべき人の特徴

税理士との契約、特に継続的なサポートを受ける「顧問契約」は、どのような人に特に必要なのでしょうか。以下に挙げる特徴に当てはまる方は、顧問契約を結ぶことで、大きなメリットを享受できる可能性が高いと言えます。

経理や数字の管理が苦手、または嫌いな人

経営者や事業主としての能力と、経理事務の能力は、全く別のスキルです。領収書の整理や、帳簿の入力といった細かい作業が苦手で、ついつい後回しにしてしまう、という方は少なくありません。

苦手な作業に無理に時間を費やすことは、大きなストレスになるだけでなく、本業のパフォーマンスを低下させる原因にもなります。餅は餅屋、ではありませんが、苦手な分野は潔く専門家に任せ、自らは得意な分野で価値を発揮することに集中する。これは、非常に合理的な経営判断です。

本業が忙しく、経理に時間を割く余裕がない人

事業が順調に成長し、顧客対応や商品開発、サービスの提供といった、売上に直結する業務で手一杯になっている。このような状況で、経営者が経理作業に時間を取られるのは、事業の成長を自ら鈍化させているようなものです。

経営者の時間は、会社にとって最も貴重な資源です。その時間を、経理担当者を雇うよりも安価なコストで、専門家にアウトソーシングできると考えれば、顧問契約は極めて費用対効果の高い投資と言えます。

節税や資金繰りについて、積極的にアドバイスが欲しい人

ただ申告書を作ってもらうだけでなく、会社の財務体質を強化し、事業をさらに成長させるための、プロアクティブな提案を求めている。このような成長意欲の高い経営者にとって、顧問税理士は最高の壁打ち相手となります。

定期的な面談を通じて、自社の経営課題を共有し、専門家の視点から、節税策や資金繰り改善策、新たな補助金の活用といった、具体的なアドバイスを引き出すことで、経営の質は飛躍的に向上します。

将来的に法人化や事業拡大を視野に入れている個人事業主

現在は個人事業主でも、将来的には法人化して、事業を大きくしていきたい。あるいは、新たな店舗の出店や、従業員の採用を計画している。このように、事業の拡大を目指している方にとって、顧問税理士の存在は不可欠です。

法人化の最適なタイミングのシミュレーションや、事業拡大に伴う資金調達の計画、増加する従業員の労務管理など、事業の成長ステージに応じて発生する様々な課題に対して、先回りしてアドバイスを提供してくれます。

税務調査などのリスクに、万全の備えをしておきたい人

税務調査は、いつ、どの会社に来てもおかしくありません。もし調査の連絡が来た時に、慌てて過去の資料を探し始めたり、一人で調査官と対峙したりするのは、精神的な負担が大きく、不利な結果を招きかねません。

日頃から顧問税理士の指導のもとで、適切な経理処理を行い、帳簿や証憑書類を整備しておくことで、税務調査を過度に恐れる必要はなくなります。専門家がバックについているという安心感は、何物にも代えがたいものです。

税理士と契約する際の費用相場

税理士への依頼を検討する上で、最も気になるのが費用でしょう。税理士の報酬は、現在では自由化されており、事務所の方針や、提供するサービス内容、クライアントの事業規模によって様々です。ここでは、一般的な費用相場を、契約形態や事業者の種類別に紹介します。

個人事業主の場合

スポット契約(確定申告のみ)

一年間の記帳は自分で行い、年に一度の確定申告書の作成と提出だけを依頼する場合の相場です。

  • 白色申告: 5万円~10万円程度
  • 青色申告(10万円控除): 7万円~15万円程度
  • 青色申告(65万円控除): 10万円~20万円程度

売上規模や、取引の量(仕訳数)、資料の整理状況によって、料金は変動します。

顧問契約

継続的にサポートを受ける場合の相場です。

  • 記帳を自分で行う場合: 月額顧問料は、2万円~5万円程度
  • 記帳代行も依頼する場合: 月額顧問料は、3万円~6万円程度。取引量によって大きく変動します。

上記に加えて、決算申告料として、月額顧問料の4~6ヶ月分程度が、年に一度、別途必要となるのが一般的です。

法人の場合

顧問契約

法人が顧問契約を結ぶ場合の月額顧問料の目安は、年商規模によって変動します。

  • 年商3,000万円未満: 3万円~5万円程度
  • 年商3,000万円~1億円: 4万円~7万円程度
  • 年商1億円~5億円: 6万円~10万円程度
  • 年商5億円以上: 10万円以上(個別見積もり)

上記は、記帳を自社で行う場合の目安です。記帳代行を依頼する場合は、取引量に応じて、月額1万円~5万円程度が追加されます。 また、決算申告料として、月額顧問料の4~6ヶ月分が、別途必要です。

その他の費用

上記の基本料金以外に、特定の業務を依頼した際に発生する費用です。

  • 会社設立支援: 10万円~30万円程度(司法書士報酬を含む場合が多い)
  • 融資支援: 着手金(5万円~10万円程度)+成功報酬(調達額の1~5%)が一般的
  • 税務調査立会い: 日当として、5万円~10万円程度
  • 年末調整: 基本料金(1万円~3万円程度)+従業員一人あたり数千円

料金はあくまで目安です。重要なのは、料金の安さだけで判断するのではなく、「提供されるサービスの価値」と「料金」のバランスが取れているか、自社にとって納得感があるかを見極めることです。

税理士の探し方

自社にとって最適なパートナーとなる税理士を見つけ出すためには、いくつかの方法を組み合わせ、多角的に候補者を探すことが重要です。ここでは、代表的な探し方と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

インターネットでの検索

現在、最も手軽で、豊富な情報が得られる探し方が、インターネット検索です。「税理士 〇〇(地域名)」「IT業界 強い 税理士」「相続 相談」のように、「地域名」や「自社の業種・課題」をキーワードに検索することで、多くの税理士事務所のウェブサイトを見つけることができます。

メリット

自分の好きな時間に、多くの候補を比較検討できます。ウェブサイトには、税理士の経歴や事務所の強み、料金体系、顧客の声などが詳しく掲載されていることが多く、事前の情報収集に役立ちます。特に、専門分野に関するブログ記事などを積極的に発信している税理士は、その分野に高い専門性を持っている可能性があります。

デメリット

情報量が多すぎるため、どの事務所が本当に信頼できるのかを見極めるのが難しい場合があります。ウェブサイトの情報だけでは実態が分からず、誇大広告に惑わされてしまうリスクもあります。最終的には、複数の事務所に問い合わせて、直接会って話を聞く必要があります。

知人・同業者からの紹介

既に税理士と契約している、同業の経営者仲間や、取引先の社長、あるいは、地域の商工会議所や、金融機関の担当者など、信頼できる人から紹介してもらう方法です。

メリット

紹介者の「お墨付き」があるため、一定の信頼性が担保されています。実際にその税理士と付き合いのある人からの紹介であれば、人柄や仕事ぶりに関する、リアルな評判を聞くことができます。ミスマッチが起こる可能性が、比較的低い方法と言えるでしょう。

デメリット

紹介された手前、相性が合わなかった場合でも断りにくいという、心理的な負担が生じることがあります。また、紹介者にとっては良い税理士であっても、自社の事業規模や課題に合っているとは限りません。紹介された税理士を鵜呑みにせず、必ず自分自身の目で評価することが重要です。

税理士紹介サービスの活用

近年、事業者と税理士を無料でマッチングしてくれる、専門の紹介サービスが増えています。コーディネーターが、事業者の要望(業界、予算、依頼したい業務など)をヒアリングし、登録されている多くの税理士の中から、最適な候補者を複数人、紹介してくれる仕組みです。

メリット

自分で探す手間が省け、効率的に複数の候補者と面談を設定できます。多くの紹介サービスでは、特定の業界に強い税理士が登録されているため、「〇〇業界に強い」といった条件で、絞り込んで探してもらいやすいです。コーディネーターに相談しながら進められるため、税理士探しが初めての方でも安心です。断る際も、紹介サービスを通じて連絡できるため、心理的な負担が少ない点も魅力です。

デメリット

紹介される税理士は、その紹介サービスに登録している事務所に限られます。また、コーディネーターのスキルや経験によって、紹介の質が左右される可能性があります。最終的な判断は自分自身で行う必要があるため、紹介された税理士を鵜呑みにせず、しっかりと面談で見極めることが重要です。

税理士を選ぶ際のポイント

いくつかの候補者が見つかったら、次に、その中から自社にとって最高のパートナーとなる一人を見極める作業が必要です。料金の安さだけで選ぶのではなく、以下のポイントを総合的にチェックし、長期的な視点で慎重に判断しましょう。

専門性と実績

税理士を選ぶ上で、最も重要な基準は、あなたの会社の課題を解決できるだけの、専門性と実績を持っているかという点です。

自社の業種への専門性

あなたの会社が、建設業、飲食業、IT業、医療機関など、特殊な会計処理や税務論点を持つ業界であれば、その業界に関する顧問実績が豊富かどうかは、絶対に確認すべきです。面談の際には、「同業のクライアントはいますか」「私たちの業界で注意すべき税務ポイントは何ですか」といった具体的な質問を投げかけて、その専門性を確かめましょう。

課題解決の実績

あなたが、資金調達や、事業承継、相続といった特定の課題を抱えているのであれば、その分野に関する具体的な解決実績があるかを確認します。「過去にどのような資金調達を成功させましたか」「どのようなスキームで事業承継を支援しましたか」といった質問を通じて、その税理士の実践的な能力を評価します。

コミュニケーション能力と人間的な相性

税理士とは、会社の最もデリケートな情報を共有し、長期にわたって付き合っていくパートナーです。そのため、専門知識と同じくらい、コミュニケーションの取りやすさや、人間的な相性が重要になります。

説明の分かりやすさ

どんなに高度な知識を持っていても、それを経営者が理解できる言葉で伝えられなければ意味がありません。専門用語を並べるのではなく、あなたの目線に立って、平易な言葉で丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。あなたが納得するまで、根気強く対話に応じてくれる姿勢は、信頼できるパートナーの証です。

レスポンスの速さと誠実さ

質問や相談に対する返信の速さは、その税理士の仕事に対する姿勢を測る、重要な指標です。ビジネスのスピードが求められる場面で、迅速に対応してくれるかどうかは非常に重要です。また、面談の際には、あなたの話をどれだけ真剣に聞いてくれるかという「傾聴力」も観察しましょう。誠実な人柄は、長期的な信頼関係の土台となります。

提案力と経営への関与度

過去の数字を正確に処理するのは、税理士として当然の業務です。真に価値のある税理士は、そこから一歩踏み込み、その数字を基に、会社の未来をより良くするための、具体的な提案をしてくれます。

面談の際には、「私たちの決算書を見て、どのような経営課題があると感じますか」「今後、どのような手を打つべきだと思いますか」といった問いを投げかけ、その回答から、税理士の提案力や経営への関与意欲を探りましょう。節税対策はもちろん、資金繰り改善策や、新たな補助金の活用提案など、プロアクティブな姿勢が見られるかどうかが、重要な見極めポイントです。

料金体系の明確さと納得感

費用に関する透明性は、信頼関係の基本です。何にいくらかかるのかが不明瞭なまま契約するのは、絶対に避けましょう。見積書を依頼し、その内訳が具体的で分かりやすいかを確認します。月額顧問料に含まれるサービス範囲はどこまでで、どのような場合に別途料金が発生するのかを、契約前に明確にしておくことが、後のトラブルを防ぎます。料金の絶対額だけでなく、提供されるサービスの価値と見合っているかという、費用対効果の視点で判断することが大切です。

税理士と契約する際の流れ

自社に合った税理士候補が見つかってから、実際に顧問契約を結ぶまでには、いくつかのステップを踏むのが一般的です。焦らず、慎重に進めることで、契約後のミスマッチを防ぐことができます。

ステップ1:問い合わせと初回面談の予約

候補となる税理士事務所のウェブサイトの問い合わせフォームや電話で、連絡を取ります。その際には、自社の業種や売上規模、現在抱えている課題などを簡潔に伝えると、スムーズです。ほとんどの事務所では、初回相談を無料で行っていますので、面談の日時を予約しましょう。できれば、2~3の事務所と面談し、比較検討することをお勧めします。

ステップ2:初回面談(ヒアリングと相談)

初回面談は、税理士を見極めるための最も重要な機会です。直近の決算書や試算表など、自社の経営状況がわかる資料を持参すると、話が具体的になります。面談では、自社の事業内容や将来のビジョン、現在抱えている悩みを、正直に話しましょう。そして、「選ぶポイント」で挙げた項目を中心に、積極的に質問をします。税理士の人柄や相性、説明の分かりやすさなどを、肌で感じ取ってください。

ステップ3:見積書の取得と比較検討

面談後、それぞれの事務所から、正式な見積書を提出してもらいます。見積書を受け取ったら、料金の総額だけでなく、サービス内容の内訳を詳細に比較検討します。どの業務が顧問料に含まれ、何がオプション料金になるのかを、しっかりと確認しましょう。不明な点があれば、遠慮なく質問し、疑問をすべて解消しておくことが重要です。

ステップ4:契約の意思決定と連絡

料金とサービス内容、そして面談での印象を総合的に判断し、契約する税理士を1社に絞り込みます。契約を決めた事務所には、その旨を連絡し、契約手続きに進みます。同時に、お断りする事務所にも、丁重にその旨を伝えましょう。

ステップ5:顧問契約の締結

契約する事務所を訪問し、業務委託契約書の内容を最終確認します。業務範囲や報酬、契約期間、解約条件、守秘義務といった重要事項に、しっかりと目を通し、納得した上で署名・捺印します。これで、正式に顧問税理士として、あなたの事業をサポートしてもらう関係がスタートします。

まとめ

税理士との契約は、単なる事務作業のアウトソーシングではありません。それは、あなたの事業や資産の未来を共に創り上げていく、重要なパートナーを選ぶという、極めて戦略的な経営判断です。

この記事では、税理士の役割から、具体的なサービス内容、契約するメリット、そして最適なパートナーを見つけ出すための具体的な方法とポイントまでを、網羅的に解説してきました。

税理士をパートナーに迎えることで、あなたは煩雑な経理業務や税務申告の不安から解放され、最も価値のある本業に集中することができます。それだけでなく、合法的な節税によるキャッシュフローの最大化、客観的なデータに基づく的確な経営判断、そして金融機関からの信用の向上といった、事業の成長を加速させるための、数多くのメリットを享受できます。

最高のパートナーを見つけ出す鍵は、料金の安さだけで判断するのではなく、あなたの会社の業種や成長ステージに合った「専門性」、未来志向の「提案力」、そして何よりも、「人間的な相性」を、総合的に見極めることです。インターネットや紹介といった多様なチャネルを駆使して候補者を探し出し、面談での直接の対話を通じて、「この人になら、会社の未来を託せる」と心から信頼できる相手を、選び抜いてください。

税理士に支払う費用は、コストではなく、あなたの会社の未来を守り、育てるための、最も効果的な「投資」です。その投資を惜しんだ結果、将来、何倍もの税金を支払うことになったり、成長の機会を逃してしまったりするのでは、本末転倒です。

この記事が、あなたの税理士探しという重要な航海の確かな羅針盤となり、あなたの事業が、輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば、幸いです。まずは、勇気を出して、気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、あなたの未来を大きく変えることになるかもしれません。

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この記事の作成者 
宮嶋 直  公認会計士/税理士 
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。