個人事業主やフリーランスとして活動する方あるいは副業や不動産投資で収入を得ている方にとって年に一度訪れる確定申告は大きな関心事であり時に悩みの種となるものです。会社員であれば多くの場合年末調整で税金の手続きが完了しますが事業所得や不動産所得などがある場合は原則として自分で所得を計算し税務署へ申告納税する必要があります。
「申告書の書き方が複雑でわからない」「計算が合っているか自信がない」「もっと有利な申告方法があるのではないか」「そもそも忙しくて申告準備をする時間がない」。確定申告の時期が近づくにつれてこのような不安や焦りを感じる方は決して少なくありません。申告内容に誤りがあれば後日税務署から指摘を受け追加の税金やペナルティを支払うことになる可能性もあります。
そんな時に頼りになるのが税金の専門家である税理士です。税理士に確定申告を依頼することで煩雑な手続きや計算から解放されるだけでなく正確な申告による安心感や節税メリットの最大化といった多くの恩恵を受けることができます。
しかし一方で「税理士に頼むと費用が高そう」「どの税理士に依頼すれば良いかわからない」「どんな準備が必要なのか」といった疑問や不安から依頼をためらっている方もいるでしょう。
この記事では確定申告を税理士に依頼することを検討しているすべての方に向けてそのメリットや注意点費用相場税理士の選び方や探し方そして依頼する際の手順までを網羅的かつ徹底的に解説していきます。
この記事を読み終える頃にはあなたは確定申告における税理士の役割と価値を深く理解し自分にとって税理士への依頼が必要かどうかを自信を持って判断できるようになっているはずです。そしてもし依頼すると決めたならば最適なパートナーを見つけスムーズに手続きを進めるための具体的な道筋が見えていることでしょう。
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確定申告を税理士へ依頼する場合の注意点や費用相場について
確定申告とは何か?
税理士への依頼を考える前にまず確定申告そのものについて基本的な理解を深めておくことが重要です。確定申告とは何か何のために行う必要があるのかを知ることは税理士と円滑にコミュニケーションを取る上でも役立ちます。
確定申告の定義と目的
確定申告とは個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間で得たすべての所得を計算しそれに対する所得税及び復興特別所得税の額を算出して国(税務署)に報告し納税するための一連の手続きのことです。
日本の所得税は納税者自身が所得と税額を計算して申告する「申告納税制度」を採用しています。会社員の場合は通常会社が給与から源泉徴収を行い年末調整で過不足を精算してくれるため個人で確定申告を行う必要がないケースが多いです。しかし個人事業主やフリーランスのように給与以外の所得がある人や複数の会社から給与を受け取っている人などは原則として自分で確定申告を行う義務があります。
確定申告の主な目的は一年間の所得に対する税額を正しく計算し納付することですがそれだけではありません。納めすぎた税金がある場合に還付を受けるための手続き(還付申告)も確定申告を通じて行われます。例えば多額の医療費を支払った場合や住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合などは確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
確定申告が必要な所得の種類
確定申告が必要となるのは主に以下のような所得がある場合です。
事業所得
個人事業主やフリーランスとして事業を営むことによって得た所得です。売上から必要経費を差し引いて計算します。
不動産所得
アパートやマンション駐車場などを貸し出すことによって得た家賃収入などの所得です。収入から管理費や修繕費固定資産税減価償却費などの必要経費を差し引いて計算します。
給与所得(特定のケース)
通常は年末調整で完了しますが年間の給与収入が2000万円を超える人や2か所以上から給与を受け取っていて年末調整されなかった給与収入と各種所得(給与所得退職所得を除く)の合計額が20万円を超える人などは確定申告が必要です。
副業による所得(雑所得など)
会社員などが副業で得た所得(原稿料やアフィリエイト収入など)でその所得金額(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超える場合は原則として確定申告が必要です。所得の種類としては事業所得または雑所得に分類されることが多いです。
その他の所得
土地や建物を売却して得た譲渡所得株式や投資信託を売却して得た譲渡所得生命保険の一時金や満期金を受け取った場合の一時所得なども確定申告が必要となる場合があります。
所得税の計算方法の概要
所得税は以下のステップで計算されます。
- 各種所得金額の計算: 上記のような所得の種類ごとに収入金額から必要経費などを差し引いて所得金額を計算します。
- 所得控除額の計算: 基礎控除配偶者控除扶養控除社会保険料控除生命保険料控除医療費控除など納税者の個人的な事情を考慮するための所得控除額を計算します。
- 課税所得金額の計算: 各種所得金額の合計額から所得控除額の合計額を差し引いて課税所得金額を算出します。
- 所得税額の計算: 課税所得金額に所得税の税率(超過累進税率)を掛けて所得税額を計算します。
- 税額控除額の計算: 配当控除や住宅ローン控除など計算された所得税額から直接差し引かれる税額控除額を計算します。
- 申告納税額の計算: 所得税額から税額控除額を差し引きさらに源泉徴収されている税額などがあればそれも差し引いて最終的な申告納税額(または還付額)を確定させます。
この計算プロセスは非常に複雑であり特に複数の所得がある場合や適用できる控除特例が多い場合は専門家である税理士の知識が不可欠となります。
確定申告の提出時期は?
確定申告はいつ行っても良いわけではありません。法律によって定められた期間内に申告書の提出と納税を完了させる必要があります。この期限を守ることは納税者としての基本的な義務であり遅れた場合にはペナルティが課されることもあります。
原則的な申告期間
所得税及び復興特別所得税の確定申告は原則として所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までの1ヶ月間に行う必要があります。この期間内に確定申告書を作成し所轄の税務署に提出しなければなりません。
提出方法にはいくつかの選択肢があります。
- 税務署の窓口へ直接持参する
- 郵送(通信日付印が提出日とみなされます)
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用してオンラインで提出する
土日祝日にあたる場合は翌平日が期限となります。
納税期限
申告書の提出だけでなく計算された所得税額の納税も原則として同じ3月15日が期限となります。期限までに納税を完了させる必要があります。
主な納付方法としては以下のようなものがあります。
- 金融機関や税務署の窓口で現金納付
- 口座振替(振替納税):事前に手続きをしておけば指定した口座から自動的に引き落とされます。振替日は通常4月中旬頃になります。
- クレジットカード納付:専用サイトを通じてクレジットカードで納付できます(決済手数料がかかります)。
- コンビニ納付:納付額が30万円以下の場合バーコード付きの納付書を使ってコンビニで納付できます。
- ダイレクト納付:e-Taxを利用して事前に登録した口座から即時または期日を指定して納付できます。
還付申告の場合
確定申告によって納めすぎた税金が戻ってくる「還付申告」の場合は申告期間が異なります。還付申告は所得が発生した年の翌年1月1日から5年間行うことができます。例えば医療費控除やふるさと納税の申告を忘れていた場合でも過去5年分であればさかのぼって申告し還付を受けることが可能です。
期限に間に合わせることの重要性
確定申告の期限を守ることは納税者としての基本的な義務です。期限に遅れると後述するようなペナルティが課されるだけでなく社会的信用にも影響が出る可能性があります。特に個人事業主やフリーランスの方にとっては期限内に正確な申告を行うことが事業を継続していく上での信頼の基盤となります。
税理士に依頼する場合でも資料の準備や打ち合わせには時間がかかります。期限ギリギリになって慌てて依頼すると税理士側も十分な検討ができず最適な申告ができなかったりそもそも依頼を受けてもらえなかったりする可能性もあります。余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。
確定申告を行わなかった・遅れた場合のリスクは?
確定申告の義務があるにもかかわらず申告しなかったり期限に遅れてしまったりした場合その代償は決して軽いものではありません。本来納めるべき税金に加えて様々なペナルティが課され経済的にも精神的にも大きな負担を強いられることになります。無申告や期限後申告のリスクを正しく理解しておくことは適正な申告の重要性を再認識する上で不可欠です。
無申告・期限後申告のリスク
確定申告の期限(原則3月15日)までに申告書を提出しなかった場合それは「無申告」または「期限後申告」として扱われます。税務署は様々な情報網を通じて所得があるにもかかわらず申告していない人を把握しています。「バレないだろう」という安易な考えは非常に危険です。
追加で課される税金(附帯税)
無申告や期限後申告が発覚した場合本来納めるべき所得税(本税)に加えて以下のような附帯税がペナルティとして課されます。
無申告加算税
期限内に申告しなかったこと自体に対する罰金です。原則として納付すべき税額のうち50万円までの部分には15%、50万円を超える部分には20%という高い税率が課されます。ただし税務署から指摘される前に自主的に期限後申告をした場合はこの税率が5%に軽減されます。この軽減措置があるため一日でも早く自主的に申告することが非常に重要です。
延滞税
納税が期限に遅れたことに対する利息に相当するペナルティです。法定納期限(原則3月15日)の翌日から実際に納税が完了する日までの日数に応じて日割りで計算されます。税率はその年の金利水準によって変動しますが納期限から2ヶ月を経過すると税率が大きく跳ね上がる仕組みになっています。納税が遅れれば遅れるほど負担は雪だるま式に増えていきます。
重加算税(悪質な場合)
もし無申告や申告内容の誤りが意図的な所得隠しや事実の隠蔽といった悪質な行為(仮装・隠蔽)と判断された場合には無申告加算税や過少申告加算税に代わって最も重いペナルティである「重加算税」が課されます。無申告の場合は納付すべき税額の40%、過少申告の場合は追加納付額の35%という極めて高い税率が適用されます。二重帳簿の作成や売上の除外などがこれに該当する可能性があります。
青色申告の特典が受けられないリスク
青色申告の承認を受けている人が期限内に確定申告書を提出しなかった場合その年は青色申告の大きなメリットである最大65万円(または55万円)の青色申告特別控除を受けることができません。控除額は10万円に減額されてしまいます。また2年連続で期限後申告となった場合には青色申告の承認自体が取り消されてしまう可能性もあります。これにより将来の節税メリットを失うことになります。
社会的信用の低下
確定申告を怠ることは税法違反であり社会的な信用を大きく損なう行為です。確定申告書は所得証明として住宅ローンや自動車ローンクレジットカードの申し込みあるいは賃貸契約の際などに提出を求められることがあります。申告をしていない場合や期限後申告の記録があるとこれらの審査で不利になる可能性があります。また許認可が必要な事業を行っている場合適正な申告納税が許可の維持要件となっていることもあります。
最悪の場合の刑事罰
特に悪質な脱税行為と判断された場合は所得税法違反として刑事告発され「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(またはその両方)」といった刑事罰が科される可能性もあります。これは決して他人事ではありません。
このように確定申告を怠るリスクは非常に大きいものです。「知らなかった」「忘れていた」では済まされません。不安を感じている方は今すぐにでも専門家である税理士に相談し問題を解決するための一歩を踏み出すべきです。
確定申告を税理士へ依頼するメリット
確定申告の手続きは複雑で時間もかかります。税理士に依頼すれば費用はかかりますがそれ以上に多くのメリットを享受することができます。それは単に手間が省けるというだけでなくあなたの事業や資産を守り育てるための重要な戦略となり得ます。
正確な申告による安心感と税務リスクの回避
税法は非常に複雑で毎年のように改正が行われます。専門家でない人がすべてのルールを正確に理解し完璧な申告書を作成することは容易ではありません。計算ミスや控除・特例の適用誤りによって本来よりも多く税金を納めてしまったり逆に少なく申告してしまい後日税務署から指摘を受け追徴課税されたりするリスクが常に伴います。
税理士に依頼すれば税法のプロフェッショナルが最新の法令に基づいて正確な計算と申告書の作成を行ってくれます。これにより申告ミスによる税務リスクを限りなくゼロに近づけることができ「これで大丈夫だろうか」という不安から解放され精神的な安心感を得ることができます。
節税メリットの最大化(控除・特例の見落とし防止)
所得税法には納税者の状況に応じて税負担を軽減するための様々な控除や特例制度が設けられています。しかしこれらの制度は自分で調べて申請しなければ適用されません。専門知識がなければ自分に適用できる制度があること自体に気づかないケースも少なくありません。
税理士はあなたの所得状況や家族構成事業内容などを詳細にヒアリングし青色申告特別控除はもちろんのこと医療費控除や生命保険料控除住宅ローン控除さらには事業に関連する各種税制優遇措置など適用可能な控除や特例を漏れなく見つけ出し最大限に活用してくれます。結果として合法的な範囲で納税額を最小限に抑え手元に残る資金を増やすことができます。
時間と手間の大幅な削減(本業への集中)
確定申告の準備には領収書の整理や帳簿の作成申告書の記入など膨大な時間と手間がかかります。特に繁忙期と重なる個人事業主やフリーランスの方にとっては大きな負担です。
税理士に依頼すればこれらの煩雑な作業から解放されあなたは最も価値のある本業である事業活動やクリエイティブな仕事に時間とエネルギーを集中させることができます。経営者や事業主の時間は有限であり最も重要な経営資源です。その時間を専門家に任せられる業務ではなく売上や事業の成長に直結する活動に振り向けることは極めて合理的な判断と言えます。
精神的な負担の軽減
税金に関する手続きは多くの人にとってストレスの原因です。「計算が合っているか」「期限に間に合うか」「税務署から何か言われないか」。こうした不安は日々のパフォーマンスにも影響を与えかねません。
税理士に依頼することでこれらの精神的なプレッシャーから解放され安心して事業や生活を送ることができます。特に税務調査のような事態が発生した場合でも専門家が代理人として対応してくれるという安心感は何物にも代えがたい価値があります。
税務調査への備えと対応力向上
税理士は税務調査のプロセスや調査官がどのような点をチェックするかを熟知しています。日頃から税理士の指導のもとで適切な帳簿や証憑書類を整備しておくことで税務調査が入ったとしても慌てることなく冷静に対応することができます。
調査当日の立会いを依頼すれば専門家としてあなたの代わりに調査官と対話し不利な指摘や誤解を未然に防いでくれます。税理士が作成し署名した申告書はそれ自体が税務署からの信頼性を高める効果もあります。
経営や資産に関する相談も可能(顧問契約の場合)
確定申告の依頼をきっかけに税理士と顧問契約を結べば年に一度の申告だけでなく日々の経営や資産運用に関する様々な相談に乗ってもらうことができます。月次決算による業績管理や資金繰りのアドバイス節税対策の立案法人化のシミュレーション相続対策など税務会計の枠を超えた経営参謀としての役割を果たしてくれます。
確定申告を税理士へ依頼すべき人
税理士に確定申告を依頼するメリットは大きいですが全ての人が必ず依頼しなければならないわけではありません。しかし以下のような状況にある方は税理士への依頼を積極的に検討することで時間やコスト以上の価値を得られる可能性が高いと言えます。
初めて確定申告をする個人事業主・フリーランス
独立開業して初めて確定申告を迎える方は何から手をつけて良いかわからないことが多いでしょう。開業届や青色申告承認申請書の提出方法帳簿の付け方経費の範囲確定申告書の書き方など疑問点は山積みです。最初の申告でつまずいてしまうと後々まで影響が尾を引くこともあります。スタート段階で税理士に依頼し正しい申告の基礎を学ぶことはその後のスムーズな事業運営にとって非常に重要です。
売上規模が大きい・取引が複雑な事業者
年間の売上が数千万円を超える事業や取引先が多数ある事業仕入れや外注費の種類が多い事業複数の事業を営んでいる場合などは経理処理や税金の計算が格段に複雑になります。自分だけで正確に処理するには限界がありミスが発生するリスクも高まります。事業規模が大きくなるほど税理士に依頼するメリットは大きくなり専門家によるチェック体制が不可欠となります。
複数の所得がある人(不動産、副業など)
本業の事業所得に加えてアパート経営による不動産所得や副業による雑所得株式投資による譲渡所得など複数の種類の所得がある場合所得税の計算は非常に複雑になります。それぞれの所得計算の方法が異なるだけでなく所得の種類によっては損益通算(赤字と黒字を相殺すること)ができる場合とできない場合があります。税理士に依頼すればこれらの複雑な計算を正確に行い有利な申告方法を選択してくれます。
青色申告65万円控除を受けたいが記帳が苦手な人
青色申告の最大のメリットである65万円の特別控除を受けたいと考えているものの複式簿記による記帳が難しくてできないあるいは面倒だと感じている方は税理士への依頼を検討すべきです。記帳代行を依頼すれば煩雑な作業から解放され確実に65万円控除のメリットを享受できます。控除による節税額が税理士費用を上回るケースも少なくありません。
本業が忙しく申告準備に時間を割けない人
確定申告の時期が本業の繁忙期と重なってしまいどうしても申告準備に十分な時間を割くことができないという方もいるでしょう。無理をして自分でやろうとすると本業に支障が出たり申告内容にミスが生じたりする可能性があります。時間は有限です。専門家に任せられることは任せ自分は本業に集中するという判断も重要です。
税金計算や手続きに強い不安がある人
「数字が苦手」「法律や制度を理解するのが難しい」「税務署からの問い合わせが怖い」。税金に対してこのような強い苦手意識や不安を感じている方は無理に自分でやろうとせず専門家である税理士に頼るのが精神衛生上も良い選択です。プロに任せることで税金に関するストレスから解放され安心して事業に取り組むことができます。
過去に申告漏れやミスを指摘されたことがある人
以前に税務調査で申告漏れや計算ミスを指摘され追徴課税を受けた経験がある方は特に税理士への依頼を検討すべきです。一度指摘を受けた項目は次回の調査でも重点的にチェックされる可能性が高いです。専門家の目で申告内容をチェックしてもらい同じ過ちを繰り返さない体制を築くことが重要です。
確定申告を税理士へ依頼する最適なタイミング
「いつ税理士に依頼すれば良いのか」これも多くの人が悩むポイントです。結論から言えば確定申告の依頼は早ければ早いほど良いと言えます。余裕を持った準備が正確で有利な申告そして税理士との良好な関係構築に繋がります。
早ければ早いほど良い理由
確定申告の手続きには資料の収集整理帳簿の作成税額計算申告書作成といった多くのステップがあり相応の時間がかかります。特に初めて税理士に依頼する場合税理士があなたの事業内容や取引状況を理解するためのヒアリングや過去の資料の確認にも時間が必要です。
期限ギリギリになって慌てて依頼すると税理士側も十分な検討時間が取れず本来適用できたはずの控除や特例を見逃してしまったり資料不足で正確な計算ができなかったりするリスクがあります。また繁忙期には依頼自体を断られてしまう可能性もあります。
余裕を持った準備が可能
早めに依頼することで必要な資料を余裕を持って準備できます。不足している資料があれば税理士からアドバイスを受けて取り寄せたり再発行を依頼したりする時間も確保できます。
節税対策の検討時間が取れる
申告期限が近づいてからでは打てる節税対策は限られてしまいます。早い段階で相談すればその年のうちに実行できる節税策(例えば少額減価償却資産の購入や共済制度への加入など)を検討し実行に移すことが可能です。
税理士とのコミュニケーションが円滑に
繁忙期を避けて依頼することで税理士も時間に余裕を持って丁寧に対応してくれます。疑問点をじっくり質問したり今後の経営について相談したりとより質の高いコミュニケーションを取ることができます。
具体的な依頼のタイミング
では具体的にいつ頃依頼するのが良いのでしょうか。
開業・事業開始時
これから事業を始める方にとっては開業届や青色申告承認申請書の提出と同時に税理士を探し始めるのが理想的です。最初の段階から専門家のアドバイスを受けることでスムーズなスタートを切ることができます。
確定申告時期が近づく前(秋~年末頃)
すでに事業を行っている方でその年の確定申告を税理士に依頼したいと考えている場合は年内の秋頃から年末にかけて相談を開始するのがお勧めです。この時期であれば税理士も比較的余裕がありじっくりと話を聞いてもらえます。年間の収支がある程度見えてくる時期でもあるため効果的な節税対策を検討するのにも適しています。
所得が増加した・事業規模が拡大した時
売上が大きく伸びたり従業員を雇ったりするなど事業の状況が変化した時も税理士への依頼を検討する良いタイミングです。経理処理が複雑になり税務上の判断も難しくなるため専門家のサポートが必要になります。
期限ギリギリでも諦めずに相談すべきか?
理想は早めの相談ですがもし期限が迫ってしまっていても諦めずに税理士に相談してみましょう。経験豊富な税理士であれば限られた時間の中でも最善の方法を見つけ出してくれる可能性があります。ただし追加料金が発生したり依頼を断られたりするリスクは覚悟しておく必要があります。
確定申告を税理士へ依頼する際に必要なもの
税理士に確定申告をスムーズに進めてもらうためには依頼者であるあなたが必要な資料をきちんと準備し提供することが不可欠です。どのような資料が必要になるのか事前に把握しておきましょう。
収入に関する資料
一年間の収入金額を証明するための資料です。所得の種類によって異なります。
事業所得・不動産所得の場合
- 売上台帳・請求書の控え: いつ誰にいくらで商品やサービスを提供したかがわかるもの。
- 売掛帳: まだ代金を受け取っていない売掛金の状況がわかるもの。
- 銀行の預金通帳: 売上金の入金履歴が確認できるもの。
- 家賃収入の明細: 不動産所得の場合月々の家賃収入額や入金日がわかるもの。
- 支払調書: 取引先から報酬を受け取る際に発行される源泉徴収税額などが記載された書類(受け取っている場合)。
給与所得・雑所得(副業など)の場合
- 源泉徴収票: 勤務先から発行される給与や報酬の支払額源泉徴収税額などが記載された書類。
- 副業の収入がわかるもの: 支払明細や銀行の振込履歴など。
経費に関する資料
事業を行うために必要となった支出を証明するための資料です。
- 領収書・レシート: 商品の仕入れや消耗品の購入交通費交際費など経費の支払いを証明するもの。日付金額支払先内容が明記されていることが重要です。
- 請求書・納品書: 仕入れや外注費などの支払いに関するもの。
- クレジットカードの利用明細: 事業用のカード利用分について。
- 銀行の預金通帳: 経費の引き落とし履歴が確認できるもの。
- 家賃・水道光熱費・通信費などの明細: 自宅兼事務所の場合家事按分の計算に必要です。
- 借入金の返済予定表: 事業資金の借入がある場合利息部分を経費計上するために必要です。
- 固定資産台帳: 車両や機械設備など減価償却が必要な資産の情報。
控除に関する資料
所得控除や税額控除を受けるために必要な証明書類です。
- 社会保険料(国民年金保険料国民健康保険料など)の控除証明書または支払額がわかるもの
- 小規模企業共済等掛金の控除証明書(iDeCoなど)
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 医療費の領収書・医療費通知: 医療費控除を受ける場合。一年分をまとめておく必要があります。
- 寄付金の受領証: 寄付金控除を受ける場合。
- 住宅借入金等特別控除申告書・残高証明書: 住宅ローン控除を受ける場合(2年目以降)。
その他
- マイナンバーカードまたは通知カードのコピーと本人確認書類のコピー: 申告書へのマイナンバー記載と本人確認のため。
- 過去の確定申告書・決算書の控え: 税理士が過去の申告状況を把握するために必要です(あれば)。
- 開業届・青色申告承認申請書の控え: 青色申告を行う場合。
資料整理の重要性
これらの資料をただ税理士に渡すだけでなく月別や費目別に整理しておくことがスムーズな申告と費用抑制に繋がります。日頃から領収書を整理し会計ソフトに入力する習慣をつけておくと確定申告の準備が格段に楽になります。税理士に記帳代行を依頼する場合でも資料が整理されている方が料金が安くなることがあります。
確定申告を税理士へ依頼する際の手順・手続
税理士に確定申告を依頼すると決めたら具体的にどのような流れで手続きが進んでいくのでしょうか。一般的な手順を理解しておくことでスムーズに準備を進めることができます。
税理士探しと候補の選定
まずは自社に合った税理士を探し候補を2~3社に絞り込みます。探し方については後述しますがインターネット検索や紹介などを活用します。
初回相談・ヒアリング
候補の税理士事務所に連絡を取り初回相談(無料の場合が多い)の予約を入れます。面談ではあなたの事業内容や所得状況確定申告に関する悩みなどを具体的に話します。税理士からはサービス内容や料金体系今後の進め方などについての説明があります。この場で疑問点を解消し信頼できる相手かどうかを見極めます。
見積もりの取得と検討
面談後税理士から正式な見積書が提示されます。料金だけでなくサービス範囲や契約条件などを詳細に確認し複数の事務所の見積もりを比較検討します。
契約の締結
依頼する税理士が決まったら業務委託契約書を取り交わします。契約内容を十分に理解し納得した上で署名・捺印します。
必要資料の提出
契約後税理士から確定申告に必要な資料のリストが提示されます。あなたは指示に従って資料を収集し税理士に提出します。提出方法は郵送データ共有など税理士の指示に従います。資料の収集で不明な点があれば税理士に相談しましょう。
税理士による帳簿・申告書作成と内容確認
あなたが提出した資料をもとに税理士が会計帳簿(必要な場合)と確定申告書を作成します。作成途中で不明点があれば税理士から質問がありますので協力して回答します。申告書が完成したら税理士から内容の説明を受け最終的な税額などを確認します。
申告書の提出と納税
あなたが申告内容を確認し承認したら税理士が代理で税務署へ申告書を提出します(通常はe-Taxを利用)。納税が必要な場合は税理士から納付書が送られてくるか納付方法について指示がありますので期限までに納税を済ませます。還付の場合は後日指定した口座に還付金が振り込まれます。
申告書控えの受け取り
申告完了後税理士から確定申告書の控えと関連資料一式が返却されます。これらの書類は後々必要になることがあるため大切に保管しておきましょう。
確定申告を依頼できる税理士を探す方法
いざ税理士に確定申告を依頼しようと思ってもどこでどのように探せば良いのか迷ってしまう方も多いでしょう。自分に合った信頼できる税理士を見つけるための具体的な探し方を紹介します。
インターネット検索
現在最も一般的で手軽な方法です。「確定申告 税理士 〇〇(地域名)」「個人事業主 確定申告 依頼」「フリーランス 青色申告」といったキーワードで検索すると多くの税理士事務所が見つかります。
ウェブサイトでは事務所の得意分野(個人事業主向け不動産所得向けなど)料金体系代表税理士のプロフィールなどを確認できます。ブログやコラムで確定申告に関する情報を積極的に発信している事務所は知識が豊富である可能性が高いです。
税理士紹介サービス
税理士を探す時間がない方や客観的な視点で選びたい方には税理士紹介サービスが便利です。専門のコーディネーターがあなたの状況や要望(予算業種依頼したいことなど)をヒアリングし条件に合った税理士を複数紹介してくれます。紹介料は無料で面談の設定や断りの連絡も代行してくれることが多いです。
知人・同業者からの紹介
すでに税理士を利用している友人や同業の経営者からの紹介は信頼性が高い方法です。実際にサービスを受けている人のリアルな評判(人柄レスポンスの速さなど)を聞けるのが最大のメリットです。ただし紹介された手前断りにくいという側面もあるため他の方法と併用するのが良いでしょう。
地域の商工会議所・青色申告会など
地域の商工会議所や青色申告会では会員向けに税理士の紹介を行っている場合があります。これらの団体は地域の事業者の事情に詳しく個人事業主のサポートに慣れている税理士との繋がりを持っています。記帳指導なども行っているのでまずは相談してみる価値があります。
金融機関からの紹介
取引のある銀行や信用金庫の担当者に相談してみるのも一つの方法です。金融機関は取引先の経営状況を把握しており信頼できる税理士を知っていることがあります。特に融資を検討している場合は金融機関と連携しやすい税理士を紹介してもらえる可能性があります。
確定申告を依頼できる税理士を選ぶ際のポイント
候補となる税理士が見つかったら次は面談などを通じて実際に依頼する一人を選び出すステップです。料金の安さだけで決めるのではなく以下のポイントを総合的にチェックし長期的に信頼できるパートナーを選びましょう。
個人の確定申告(特にあなたの所得種類)の実績
まずあなたの所得の種類(事業所得不動産所得など)に関する確定申告の実績が豊富かどうかを確認しましょう。法人税務がメインで個人の確定申告はあまり扱っていないという事務所もあります。ウェブサイトの実績や面談での質問を通じて個人のクライアントをどのくらい抱えているかを確認します。
青色申告(複式簿記)への対応力
青色申告特に65万円控除を目指す場合は複式簿記への対応が不可欠です。税理士自身が複式簿記を深く理解していることはもちろんクラウド会計ソフトなどを活用して効率的に対応できるかどうかも重要です。
コミュニケーションの取りやすさ・相性
税理士とはお金に関するデリケートな情報を共有する関係です。専門知識だけでなくあなたが気軽に何でも相談できる相手かどうかが非常に重要です。
- 説明の分かりやすさ: 専門用語を多用せずあなたのレベルに合わせて丁寧に説明してくれるか。
- レスポンスの速さ: 質問や連絡に対する返信が迅速か。
- 人柄: 高圧的でなく親身になって話を聞いてくれるか。
面談を通じてこれらの点をしっかり見極めましょう。
料金体系の明確さ
契約後のトラブルを避けるためにも料金体系が明確であることは必須です。確定申告の料金だけでなく記帳代行や税務相談など他のサービスを依頼した場合の料金も事前に確認しておきましょう。見積書の内訳が具体的で分かりやすいかどうかもチェックポイントです。
節税に対する姿勢
ただ申告書を作成するだけでなくあなたの状況に合わせて積極的に節税策を提案してくれる税理士を選びたいものです。面談の際に「何か利用できる節税策はありますか」と質問してみてその回答から節税に対する知識や意欲を探ってみましょう。
ITツール(クラウド会計など)への対応力
近年はクラウド会計ソフトの利用が一般的になっています。あなたがクラウド会計を使いたいと考えている場合そのソフトに対応しているか導入や運用をサポートしてくれるかは重要なポイントです。またメールやチャットツールなどでのスムーズなやり取りが可能かどうかも確認しましょう。
確定申告を税理士へ依頼する場合の費用相場
税理士に確定申告を依頼する際の費用は所得の種類や売上規模記帳代行の有無などによって大きく異なります。ここでは一般的な費用相場をケース別に紹介します。
費用の決定要素
税理士費用は主に以下の要素で決まります。
- 所得の種類: 事業所得不動産所得譲渡所得など所得の種類によって計算の複雑さが異なります。
- 売上規模・所得金額: 売上や所得が大きいほど取引量が多くなり税額計算も複雑になるため費用は高くなる傾向があります。
- 記帳代行の有無: あなたが自分で記帳を行うか税理士に記帳から依頼するかで費用は大きく変わります。
- 申告の種類: 白色申告か青色申告か青色申告の中でも10万円控除か65万円控除かによって手間が異なります。
- 資料の整理状況: 領収書などが整理されておらず税理士側での整理作業が多い場合は追加料金がかかることがあります。
個人事業主・フリーランスの場合(スポット契約)
年に一度確定申告のみを依頼する場合の相場です。記帳は自分で行う前提です。
- 白色申告: 5万円~10万円程度
- 青色申告(10万円控除): 7万円~15万円程度
- 青色申告(65万円控除): 10万円~20万円程度 記帳代行も依頼する場合は上記に5万円~15万円程度が加算されることが多いです(仕訳数によります)。
不動産所得がある場合(スポット契約)
所有物件数や収入規模によりますが個人事業主の事業所得に準じた料金設定が多いです。区分マンション1室程度であれば5万円前後から1棟アパートなど規模が大きくなると10万円以上になることもあります。
副業所得がある会社員の場合(スポット契約)
副業の所得金額や取引の量によりますが比較的シンプルな場合は3万円~10万円程度が相場です。事業所得として青色申告を行う場合は個人事業主の相場に近くなります。
医療費控除・住宅ローン控除のみの場合(スポット契約)
還付申告のみを依頼する場合で比較的簡単な計算であれば1万円~5万円程度で対応してくれる事務所もあります。
費用を抑えるためのポイント
- 自分でできることは自分で行う: 記帳を自分で行うクラウド会計ソフトを導入するなど税理士の作業負担を減らすことで費用を抑えられます。
- 資料を整理しておく: 領収書を月別・費目別に整理しておくだけでも税理士の手間が省けます。
- 早めに依頼する: 期限ギリギリの依頼は特急料金がかかる場合があります。
- 複数の事務所から見積もりを取る: 料金体系は事務所によって様々です。比較検討することで納得のいく料金で依頼できます。
まとめ
確定申告。それは納税者としての義務であると同時に一年間の事業活動や資産運用の成果を確認し未来への計画を立てるための重要なプロセスです。しかしその手続きは複雑で多くの人にとって大きな負担となっています。
この記事では確定申告を税理士に依頼することのメリットや注意点費用相場そして最適なパートナーを見つけるための具体的な方法までを網羅的に解説してきました。
税理士に確定申告を依頼することは単に面倒な作業を代行してもらうというだけではありません。それは正確な申告による税務リスクの回避合法的な節税によるキャッシュフローの最大化そして何よりもあなたの貴重な時間を最も価値のある活動に集中させるための戦略的な「投資」なのです。
最高のパートナーとなる税理士を見つけ出す鍵は料金の安さだけで判断するのではなくあなたの状況に合った「専門性」と「実績」コミュニケーションの「相性」そして未来に向けた「提案力」を総合的に見極めることにあります。インターネットや紹介といった多様なチャネルを駆使して候補者を探し出し直接対話する中で「この人になら安心して任せられる」と心から信頼できる相手を選び抜いてください。
確定申告の期限は毎年必ずやってきます。不安やストレスを抱えながらギリギリで対応するのではなく早めに専門家である税理士に相談し万全の準備で臨むことがあなたの事業や資産を守り育てるための賢明な選択です。
この記事があなたの税理士探しという重要な航海の確かな羅針盤となりあなたが安心して確定申告を終え晴れやかな気持ちで未来へ向かうための一助となれば幸いです。まずは勇気を出して気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
