企業経営という長い航海において、税理士は単なる事務作業の代行者ではなく、羅針盤となり、時には共に嵐に立ち向かう航海士のような存在であるべきです。会社の財務状況を誰よりも深く理解し、専門的な知見をもって経営者の意思決定を支え、事業の成長を共に喜ぶパートナー。それが、理想の税理士像と言えるでしょう。
しかし、現実には、現在の顧問税理士に対して、「期待していたサポートが得られていない」「コミュニケーションがうまく取れない」「もっと未来志向の提案が欲しい」といった、様々な不満や疑問を感じている経営者も少なくありません。長年の付き合いや義理から、その不満に蓋をして関係を続けているケースも多いのではないでしょうか。
税理士の変更は、決してネガティブな行為ではありません。むしろ、事業が新たなステージに進む時や、経営者がより高いレベルのサポートを必要とした時に行われる、極めて前向きで戦略的な経営判断です。最適なパートナーと組むことで、これまで見えなかった経営課題が明らかになったり、新たな節税策によってキャッシュフローが改善したりと、会社を大きく飛躍させるきっかけになり得ます。
この記事では、顧問税理士との契約を一度でも考えたことのある全ての経営者の皆様が、その決断と行動に自信を持てるよう、あらゆる疑問や不安に答えるための完全ガイドを提供します。顧問税理士とは何かという基本的な定義から、提供されるサービス、具体的なメリット、そして最高の新しいパートナーを見つけ出すためのポイントまで、網羅的かつ詳細に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたは税務顧問というパートナーの真の価値を理解し、自社の未来を託すに足る、最適な航海士を見つけ出すための具体的な道筋を手にしているはずです。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
税務顧問のメリット 税理士のサービスから徹底解説
税務顧問とは何か?
まず、「税理士」と「顧問税理士」の違い、そして「税務顧問」という契約が何を意味するのかを正しく理解することが重要です。全ての顧問税理士は税理士ですが、全ての税理士が顧問として機能しているわけではありません。
契約形態としての「顧問契約」
税理士との契約には、大きく分けて二つの形態があります。一つは、確定申告書の作成や会社設立の手続きなど、特定の業務が発生した時だけ単発で依頼する「スポット契約」です。 もう一つが「顧問契約」です。これは、毎月あるいは定期的に一定の顧問料を支払うことで、継続的に税務や会計に関するサポートを受ける契約を指します。この顧問契約に基づき、継続的なパートナーとして関与する税理士のことを、一般的に「顧問税理士」と呼びます。
事業の「かかりつけ医」としての役割
顧問税理士の最大の役割は、あなたの会社や事業の「かかりつけ医」となることです。年に一度の健康診断(決算申告)だけでは、隠れた病気(経営課題)を見つけるのは困難です。顧問税理士は、毎月の会計データ(いわば健康診断の数値)をチェックし、あなたの会社の財務状況を継続的に把握します。
この継続的な関与により、「最近、利益率が落ちている」「このままでは数ヶ月後に資金繰りが悪化しそうだ」といった問題の兆候を早期に発見し、重症化する前に対処法を提案することができます。スポット契約が「救急外来」だとすれば、顧問契約は「総合診療科」であり、日々の健康維持と予防医療を担う存在です。
税理士の独占業務
もちろん、顧問税理士も、税理士法の定めに基づいた「税に関する専門家」です。その中核には、税理士だけに許可された、以下の三つの「独占業務」があります。
税務代理
税務代理とは、納税者の代理人として、税務署などに対する申告、申請、届出といった手続きを行うことです。これには、税務調査の際に、あなたの代わりにあるいはあなたと共に立ち会い、調査官に対して主張や説明を行う、極めて重要な役割も含まれます。税務調査の精神的なプレッシャーは計り知れませんが、専門家が「盾」となってくれることで、その負担は劇的に軽減されます。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、確定申告書や法人税申告書、相続税申告書、消費税申告書、各種届出書など、税務署に提出する専門的な書類を、あなたに代わって作成することです。単に数字を埋めるだけでなく、最新の税法に基づき、あなたにとって最も有利な選択(例えば、特例の適用など)を判断しながら、正確な申告書を完成させます。
税務相談
税務相談とは、税金の計算方法や節税対策、取引の税務上の取り扱いなど、税に関するあらゆる具体的な相談に応じることです。「この支出は経費になりますか?」「新しく始めるこの事業で、税務上注意すべき点は?」「どうすれば合法的に税金を抑えられますか?」といった日々の疑問に、専門家として的確なアドバイスを提供します。
経営のパートナーとしての役割
優れた顧問税理士の真価は、これらの独占業務を「継続的に」行うことで、単なる税務処理の代行者を超えた役割を担う点にあります。
過去の数字を整理して申告書を作るだけなら、スポット契約でも可能です。しかし、顧問税理士は、毎月の試算表などのデータを通じて、あなたの会社の数字の裏側にある「経営の課題」を読み解きます。
そして、「なぜ利益率が下がっているのか」「資金繰りを改善するためにはどうすべきか」「今、設備投資をしても問題ないか」といった、経営者の意思決定に不可欠な、未来志向のアドバイスを提供します。顧問税理士は、経営者が孤独な決断を下す際に、数字という客観的な根拠を持って支えてくれる、最も身近な「経営の参謀」なのです。
税務顧問における基本的なサービスについて
顧問契約を結んだ場合、税理士は具体的にどのようなサービスを提供してくれるのでしょうか。その内容は、契約や事業規模、顧問料によって異なりますが、一般的には日々の会計処理のサポートから、決算業務、そして経営全体に関わるコンサルティングまで、多岐にわたります。
日常的な会計・税務サポート
事業運営において日々発生する、経理や税務に関する業務を幅広くサポートします。これが顧問契約の基盤となります。
記帳代行と会計帳簿のレビュー
日々の取引を帳簿に記録する「記帳」は、経理の基本ですが、非常に手間のかかる作業です。
- 記帳代行: 領収書や請求書、通帳のコピーなどを税理士に渡すだけで、面倒な会計ソフトへの入力を全て代行してもらうサービスです。経理担当者がいない、あるいは経営者が本業に集中したい場合に適しています。「丸投げ」とも呼ばれますが、資料の整理・提出は経営者の重要な役割です。
- 会計帳簿のレビュー(巡回監査): クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワード クラウドなど)を活用して、あなた自身(あるいは自社の経理担当者)が記帳を行い、その入力内容が、会計上・税務上正しく処理されているかを、税理士が毎月チェックするサービスです。これを「自計化(じけいか)」と呼びます。自社でリアルタイムに数字を把握できる体制を築きたい、成長意欲の高い企業に適しています。
月次決算と業績報告
顧問税理士の重要な役割の一つが、「月次決算」の実施と、それに基づく報告です。これは、年に一度の決算とは異なり、毎月末にその月までの業績を速やかに締め、試算表(月次貸借対照表・損益計算書)を作成することです。
税理士は、この試算表を基に、経営者に対して「今月は売上が計画通りに進んでいます」「先月より交際費が増えすぎています」「利益は出ているのに、現金が減っている原因は、売掛金の回収が遅れているためです」といった、具体的な業績報告を行います。これにより、経営者は自社の経営状態をタイムリーに把握し、問題があればすぐに対策を打つことができます。
日常の税務相談
事業を行っていると、「この支出は経費になるのか?」「新しい取引を始めるが、税務上の注意点はあるか?」「従業員を雇うが、源泉徴収はどうすれば?」といった疑問が、日常的に発生します。
顧問契約を結んでいれば、電話やメール、チャットツール(ChatworkやSlackなど)を通じて、こうした日々の小さな疑問を、いつでも気軽に相談することができます。この「すぐに聞ける安心感」が、誤った処理を未然に防ぎ、経営のスピードを落とさないことに繋がります。
年に一度の決算・申告業務
顧問契約の集大成とも言えるのが、年に一度の決算と申告手続きです。
決算書の作成
事業年度の終わりには、一年間の経営成績の集大成である「決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)」を作成します。これは、税務申告のためだけでなく、金融機関や取引先に自社の経営状態を示す、非常に重要な「会社の成績表」です。顧問税理士は、月次決算の積み重ねに基づき、正確で信頼性の高い決算書を確定させます。
法人税・所得税・消費税の申告書作成
作成した決算書を基に、法人税や(個人の場合は)所得税、そして消費税の申告書という、極めて専門的で複雑な税務書類を作成し、税務署へ提出します。これらの申告書は、税法のルールに則って、会社にとって最も有利な選択(特例の適用など)をしながら作成する必要があります。
決算対策(節税提案)
優れた顧問税理士は、決算が締まってから税額を報告するだけではありません。決算日の2~3ヶ月前になると、その期の利益予測と納税額のシミュレーションを行います。 そして、「このままでは税金が多額になるため、役員賞与を出しましょう」「利益が出ているうちに、来期必要な設備投資を前倒しして、税制優遇を活用しましょう」「含み損のある資産を売却して、利益と相殺しましょう」といった、決算日までに実行可能な、具体的な節税対策(決算対策)を提案します。
付随業務(オプションサービス)
上記の基本的なサービスに加え、多くの税理士事務所では、顧問契約のオプションとして、あるいは別途料金で、以下のような専門的なサービスを提供しています。
年末調整・法定調書
従業員を雇用している場合、毎月の給与から天引きした源泉所得税を、年末に精算する「年末調整」の計算が必要です。これは、非常に煩雑で間違いの許されない作業です。また、税務署や市町村へ提出する「法定調書合計表」や「給与支払報告書」の作成も代行します。
償却資産税の申告
土地・家屋以外の事業用資産(機械や備品、PCなど)を保有している法人は、毎年1月に、市町村に対して「償却資産税」の申告を行う義務があります。これも、忘れがちな重要な手続きです。
給与計算
毎月の従業員の給与計算と、給与明細の発行を代行します。社会保険料や源泉所得税の計算も含まれ、専門性の高い労務知識も求められます。
税務調査対応
顧問契約を結んでいる場合、税務調査の連絡が来た際の対応は、通常、顧問業務の範囲内(または、日当制で)請け負います。事前準備から調査当日の立会い、調査後の税務署との交渉まで、一貫して代理人として対応します。
税務顧問を付けることで得られるメリット
顧問税理士と契約し、継続的なパートナーシップを築くことは、単に「面倒な経理を任せられる」というレベルを超えた、事業経営全体にわたる計り知れないメリットをもたらします。
経営者が本業に集中できる
これが、顧問税理士をつける最大のメリットと言っても過言ではありません。 経営者や個人事業主の時間は、会社にとって最も貴重な経営資源です。その時間を、領収書の整理や会計ソフトへの入力といった、慣れない、かつ直接的には利益を生み出さない作業に費やすのは、大きな機会損失です。
顧問税理士に、これらの煩雑なバックオフィス業務を一任することで、経営者は自らが最も価値を発揮できる、商品開発やサービスの向上、営業活動、マーケティング戦略といった「本業」に、100%の時間とエネルギーを集中させることができます。
経営状況のリアルタイムな把握と的確な意思決定
多くのスモールビジネスが失敗する原因の一つに、「どんぶり勘定」があります。「売上は上がっているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない」という状況では、経営は長続きしません。
顧問税理士は、毎月、試算表という形で、あなたの会社の経営状態を客観的な「数字」で示してくれます。そして、その数字の裏にある問題点(「原価率が上がっています」「この経費が突出しています」など)を指摘してくれます。このタイムリーな「経営の見える化」により、経営者は感覚だけに頼るのではなく、データに基づいた的確な意思決定を、迅速に行うことができるようになります。
戦略的な節税対策によるキャッシュフローの最大化
税理士に依頼するメリットとして、多くの人が「節税」を期待します。その期待に応え、合法的な範囲で税負担を最適化するのが、顧問税理士の重要な役割です。
年に一度の申告時に慌てて対策するのではなく、期中から利益状況を把握している顧問税理士だからこそ、「役員報酬の最適な設定」「少額減価償却資産の特例の活用」「各種税制優遇措置の適用」など、計画的かつ効果的な節税対策(タックスプランニング)を提案できます。これにより、無駄な税金の支払いを防ぎ、会社の手元に残るキャッシュフローを最大化することができます。
金融機関からの信用の向上と円滑な資金調達
事業の成長には、資金調達が不可欠です。金融機関が融資を審査する際、最も重視するのが「決算書の信頼性」です。
顧問税理士が作成に関与し、その署名が入った決算書は、それだけで金融機関からの信用度が格段に高まります。また、融資を申し込む際に、税理士がサポートして作成した事業計画書や資金繰り計画書は、説得力が違います。日頃から自社の数字を把握してくれている税理士が、金融機関との交渉の場に同席してくれることも、融資の成功確率を大きく引き上げる要因となります。
税務調査の安心感とリスク回避
税務調査は、どの企業にも、ある日突然やってくる可能性があります。その際、経営者が一人で調査官と対峙するのは、専門知識の面でも、精神的なプレッシャーの面でも、非常に不利です。
顧問税理士がいれば、日頃から税務調査を意識した、適切な経理処理の指導を受けられます。そして、万が一調査の連絡が来た場合でも、慌てる必要はありません。税理士が代理人として、事前準備から当日の立会い、交渉まで、全てを引き受けてくれます。この「プロが守ってくれる」という安心感は、何物にも代えがたいメリットです。
経営に関する「壁打ち相手」の獲得
経営者は、究極的には孤独な存在です。特に中小企業の経営者は、社内に、事業の根幹に関わる財務的な悩みを相談できる相手がいないケースがほとんどです。
顧問税理士は、会社の内部事情に精通しながらも、客観的な第三者の視点を持つ、理想的な「壁打ち相手」となります。「新しい事業を始めたいが、財務的にどう思うか」「後継者について悩んでいる」といった、従業員や家族には話しにくい本音の相談も、守秘義務を持つ税理士になら打ち明けることができます。
良い税務顧問を見つける方法
顧問税理士がもたらすメリットを最大限に享受するためには、自社に最適なパートナーを見つけ出すことが何よりも重要です。ここでは、信頼できる顧問税理士を探すための、具体的な方法を紹介します。
インターネットでの検索
現在、最も手軽で、豊富な情報にアクセスできる探し方が、インターネット検索です。「税理士 〇〇(地域名)」「IT業界 強い 税理士」「相続 相談」のように、「地域名」や「自社の業種・課題」をキーワードに検索することで、多くの税理士事務所のウェブサイトを見つけることができます。
ウェブサイトで確認すべきこと
候補となる税理士事務所のウェブサイトでは、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 専門分野・得意業種: 自社の業種(例:建設業、IT、飲食業など)に関する専門性や、顧問実績が明記されているか。
- 代表税理士の理念・人柄: 代表税理士のプロフィールや、ブログ、コラムなどを読み、経営に対する考え方や人柄が自分と合いそうかを確認します。
- 料金体系: 顧問料の目安や、サービス内容が明確に記載されているか。
- 顧客の声: どのようなクライアントが、どのような点に満足しているかの実例。
税理士紹介サービスの活用
「自分で探す時間がない」「客観的な視点で選びたい」という経営者には、税理士紹介サービスが有効です。専門のコーディネーターに、「年商〇〇円のIT業で、クラウド会計に強く、資金調達も相談できる税理士を、予算〇〇円で探している」といった具体的な要望を伝えることが成功の秘訣です。
コーディネーターは、あなたの要望を基に、登録されている多くの税理士の中から、最適な候補者を複数紹介してくれます。面談の日程調整や、断りの連絡も代行してくれるため、忙しい経営者の心理的・時間的負担を軽減できます。
金融機関や信頼できる経営者仲間からの紹介
自社のビジネスを深く理解してくれている、取引金融機関の担当者に相談するのも、非常に有効な方法です。金融機関は、多くの企業の財務状況を見ており、どの税理士がクライアントの成長に貢献しているかを、客観的に評価しています。
また、同業種で、自社よりも少し先のステージに進んでいる、信頼できる経営者仲間に紹介を依頼するのも良いでしょう。実際にサービスを利用している人からの、リアルな評判は何よりも信頼できます。
地域の商工会議所や青色申告会など
地域の商工会議所や青色申告会は、中小企業や個人事業主のサポートを使命としており、会員向けに税理士の紹介を行っている場合があります。これらの団体は、地域の事業者の事情に精通しているため、親身に相談に乗ってくれる税理士を見つけやすいでしょう。
税務顧問を見直す場合について
現在、すでに顧問税理士がいるものの、そのサービス内容に不満や疑問を感じている経営者もいるかもしれません。税理士の変更は、決してネガティブなことではなく、会社の成長のために必要な、前向きな経営判断です。
税理士の変更は可能か
結論から言えば、いつでも可能です。税理士との顧問契約は、法的には準委任契約であり、雇用契約とは異なります。経営者の判断で、いつでも解約し、新しい税理士と契約することができます。 「長年の付き合いだから」「紹介してもらった手前」といった義理人情で、自社の成長を阻害する関係を続けることは、経営者として避けるべきです。
変更を検討すべきサイン
以下のような状況が続いている場合、顧問税理士の見直しを真剣に検討すべきサインかもしれません。
コミュニケーションの不足
- レスポンスが遅い: 質問や相談への返信が、数日かかるのが常態化している。
- 説明が不十分: 専門用語ばかりで、経営者が理解できる言葉で説明してくれない。
- 相談しにくい: 税理士が高圧的であったり、担当者が頻繁に変わったりして、話しにくい。
サービスの品質への不満
- 積極的な提案がない: 節税対策や、経営改善に関する提案が、税理士側から一切ない。
- 業界への理解不足: 自社の業界特有の商習慣や、税務論点を理解してくれない。
- ITへの対応が遅い: クラウド会計の導入に非協力的であったり、今だに紙ベースのやり取りを強要されたりする。
事業の変化への対応不足
- 会社のステージが変わり(例:法人化、売上急増)、より高度なアドバイス(例:資金調達、事業承継)が必要になったが、現在の税理士では対応できない。
スムーズな切り替え(引き継ぎ)のプロセス
税理士を変更する際は、トラブルを避けるために、正しい手順を踏むことが重要です。
- 新しい税理士の内定: まず、現在の税理士に解約を申し出る前に、必ず次の依頼先となる新しい税理士を見つけ、内定させておくことが鉄則です。税理士がいない空白期間を作るのを防ぎます。
- 解約の申し出: 新しい税理士が決まったら、現在の税理士に、契約書に定められた予告期間(通常1~3ヶ月前)を守って、解約の意向を伝えます。
- 資料の引き継ぎ: 過去数年分の決算書・申告書控え、総勘定元帳などの会計データを返却してもらい、新しい税理士への引き継ぎを依頼します。通常は、新旧の税理士間で、直接データのやり取りをしてもらうのが最もスムーズです。
税理士を選ぶ際のポイント
候補となる税理士と面談する際には、その実力と相性を見極めるために、以下のポイントを重点的にチェックしましょう。
専門性(業種・課題)
あなたの会社の業種(建設、IT、医療など)に関する顧問実績が豊富かどうかは、絶対に確認すべきです。また、自社が抱える課題(資金調達、事業承継など)に関する、具体的な解決実績があるかを確認します。
提案力(未来志向)
面談の際に、自社の決算書などを見せ、「どのような経営課題がありそうか」「どのような節税策が考えられるか」と、あえて質問してみましょう。その回答の具体性や、積極性から、単なる「作業屋」なのか、未来を共に考える「パートナー」なのかを見極めます。
コミュニケーションの相性
どんなに優秀でも、話が通じなければ意味がありません。あなたの話を親身に聞いてくれるか、専門用語をかみ砕いて説明してくれるか、そして何よりも、人として信頼でき、長期的に付き合っていけそうか。あなたの直感を大切にしてください。
ITへの対応力
クラウド会計ソフト(freee, マネーフォワードなど)に精通しているか、チャットツールやオンライン面談に柔軟に対応してくれるかは、現代のビジネスにおいて、業務効率を左右する重要なポイントです。
料金体系の明確さ
見積書の内容が、明確で、納得感があるか。「月額顧問料には、どこまでのサービスが含まれ、何がオプション(別料金)になるのか」を、契約前に徹底的に確認し、曖昧な点を残さないようにしましょう。
税務顧問におけるよくある質問の例と回答
ここでは、顧問税理士との契約を検討する際に、多くの経営者や事業主が抱く、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1. 売上がまだ少ないのですが、顧問契約は必要ですか?
A1. 売上が少ない段階では、顧問契約は必須ではないかもしれません。その場合は、年に一度の確定申告だけを依頼する「スポット契約」から始めるのも、賢明な選択です。ただし、個人事業主で青色申告65万円控除を受けたい場合や、法人を設立したばかりのタイミングでは、経理の基盤を正しく作るために、最初から顧問契約を結ぶメリットは非常に大きいです。多くの事務所では、創業期向けのリーズナブルなプランを用意していますので、一度相談してみることをお勧めします。
Q2. 顧問料を安く抑える方法はありますか?
A2. はい、あります。最も効果的な方法は、自社で経理業務を行う「自計化」を進めることです。クラウド会計ソフトなどを活用して、日々の記帳を自社で行えば、税理士に支払う「記帳代行料」を削減できます。また、税理士との面談を、毎月の訪問から、四半期に一度、あるいはZoomなどのオンラインのみに切り替えることで、顧問料を抑えられる場合もあります。
Q3. 顧問税理士がいれば、税務調査は絶対に来ませんか?
A3. いいえ、それは保証されません。税務調査は、どのような企業にも、公平に行われる可能性があります。しかし、顧問税理士がいることのメリットは、調査の「確率」を下げることと、調査が「来た時」の対応にあります。日頃から適正な申告を行っていること、そして申告書に税理士の署名があることで、税務署からの信頼が高まり、調査対象に選ばれにくくなる傾向はあります。そして、万が一調査が来ても、専門家が全て対応してくれるという安心感が最大のメリットです。
Q4. 税理士は何でも相談して良いのですか?
A4. 税理士は、「税務」と「会計」のプロフェッショナルです。したがって、お金や数字が関わる経営の相談(節税、資金繰り、融資、経営分析など)については、何でも相談すべきです。 ただし、例えば「法律トラブル(契約書の作成や、取引先との訴訟など)」は弁護士の専門分野であり、「社会保険の手続きや、従業員との労務トラブル」は社会保険労務士の専門分野です。 しかし、優れた顧問税理士は、弁護士や社労士といった他の専門家と強力なネットワークを持っています。あなたが税務以外の問題で困った時も、まずは顧問税理士に相談すれば、「それなら、この分野に強い弁護士先生を紹介しますよ」と、適切な専門家に繋いでくれる「総合窓口」としての役割も果たしてくれます。
まとめ
顧問税理士。それは、単に税金の計算を代行するだけの存在ではなく、あなたの事業の未来を共に創造し、経営者の孤独な戦いを支える、かけがえのないパートナーです。
この記事では、顧問税理士の役割から、具体的なサービス内容、契約するメリット、そして最適なパートナーを見つけ出すための具体的な方法とポイントまでを、網羅的に解説してきました。
顧問税理士と契約することで、あなたは煩雑な経理業務や税務申告の不安から解放され、最も価値のある本業に集中することができます。それだけでなく、合法的な節税によるキャッシュフローの最大化、客観的なデータに基づく的確な経営判断、そして金融機関からの信用の向上といった、事業の成長を加速させるための、数多くのメリットを享受できます。
最高のパートナーを見つけ出す鍵は、料金の安さだけで判断するのではなく、あなたの会社の業種や成長ステージに合った「専門性」、未来志向の「提案力」、そして何よりも、「人間的な相性」を、総合的に見極めることにあります。インターネットや紹介といった多様なチャネルを駆使して候補者を探し出し、面談での直接の対話を通じて、「この人になら、会社の未来を託せる」と心から信頼できる相手を、選び抜いてください。
顧問税理士に支払う費用は、コストではありません。あなたの会社の未来を守り、育てるための、最も効果的な「投資」です。その投資を惜しんだ結果、将来、何倍もの税金を支払うことになったり、成長の機会を逃してしまったりするのでは、本末転倒です。
この記事が、あなたの税理士探しという重要な航海の確かな羅針盤となり、あなたの事業が、輝かしい未来へと力強く発展していく一助となれば、幸いです。まずは、勇気を出して、気になる税理士事務所の無料相談の扉を叩くことから始めてみてはいかがでしょうか。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
