会社を経営する、あるいは個人事業主として事業を運営する。その過程で避けて通れないのが、「税金」の問題です。日々の取引を記録し、法律に基づいて利益を計算し、年に一度、申告と納税を行う。この一連の税務会計プロセスは、事業を継続する上で不可欠な義務です。
しかし、多くの経営者にとって、このプロセスは大きな負担となっています。「本業が忙しくて経理作業に手が回らない」「税法のルールが複雑でよくわからない」「計算が合っているかいつも不安だ」。こうした悩みを抱えている方は少なくありません。
そこで頼りになるのが、税理士という専門家の存在です。税理士に業務を依頼することで、これらの悩みから解放され、経営者は安心して本業に集中できます。しかし、その一方で、多くの経営者が抱く大きな疑問があります。それは、「税理士に依頼すると、一体いくらかかるのか」という費用に関する問題です。
税理士の費用は、分かりにくいと思われがちです。料金表が明確でなかったり、事務所によって金額が大きく異なったりするため、「相場がわからない」「提示された金額が適正なのか判断できない」と不安に感じるのも無理はありません。
税理士の費用は、単なるコストではありません。その費用を支払うことで、どれだけの価値が得られるのかという「投資」の視点で考えることが重要です。
この記事では、これから税理士を探そうとしている経営者や個人事業主の方、あるいは現在の顧問料に疑問を感じている方のために、税理士へ依頼する場合の費用について、その構造から相場、適正料金の見極め方、そしてどのような税理士を選ぶべきかまでを、徹底的に解説していきます。
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税理士へ依頼する場合の費用について徹底解説
税理士の報酬の考え方
税理士の費用相場を知る前に、まず、税理士の報酬がどのような考え方で成り立っているのか、その基本的な構造を理解することが重要です。
税理士報酬は「自由化」されている
かつて、税理士の報酬は、税理士会が定めた「報酬規定」によって基準額が決められていました。しかし、2002年の税理士法改正により、この報酬規定は廃止されました。 現在では、税理士の報酬は、各税理士事務所が自由に設定できる「自由報酬」となっています。これが、事務所によって料金に大きな差が生まれる最大の理由です。価格競争が起こる一方で、より高い専門性や付加価値を提供する税理士は、高めの報酬を設定するといった、多様化が進んでいます。
報酬を構成する主な要素
法人が税理士と契約する場合、その報酬体系は、主に「月額顧問料」と「決算申告料」という二つの柱で構成されていることが一般的です。
顧問料とは
顧問料とは、税理士と継続的な「顧問契約」を結び、毎月(あるいは四半期ごとなど)支払う定額の報酬です。これは、あなたの会社や事業の「かかりつけ医」として、日々の健康状態をチェックし、相談に乗るための費用と言えます。 具体的には、毎月の会計データが正しく処理されているかのチェック(レビュー)や、試算表の作成・報告、そして日常的に発生する税務相談や経営相談(資金繰りなど)への対応がこれに含まれます。
決算申告料とは
決算申告料とは、年に一度の決算業務と、税務申告書の作成・提出に対して支払う報酬です。月額顧問料とは別に、事業年度の終了時に発生します。 法人の決算申告は、個人の確定申告とは比較にならないほど複雑で、膨大な量の申告書を作成する必要があります。この専門的な作業に対する対価が、決算申告料です。一般的には、月額顧問料の4ヶ月分から6ヶ月分程度に設定されているケースが多く見られます。
その他の費用
顧問料と決算申告料のほかにも、依頼する業務内容に応じて、様々な費用が発生します。
記帳代行料
記帳代行料とは、日々の領収書の整理や会計ソフトへの入力を、税理士に丸ごと依頼する(丸投げする)場合の費用です。経営者自身が会計ソフトに入力する「自計化」を行っている場合は、この費用は発生しません。 記帳代行料は、作業の手間に比例するため、取引の量(領収書や通帳の行数=仕訳数)によって、月額1万円から数万円といった形で変動するのが一般的です。
スポット業務料
顧問契約に含まれない特定の業務を、単発で依頼する際に発生する費用です。代表的なものには、以下の業務があります。
- 年末調整・法定調書作成: 従業員の年末調整計算や、源泉徴収票、法定調書合計表の作成など。
- 給与計算: 毎月の従業員の給与計算と、給与明細の作成。
- 償却資産税申告: 会社が保有する固定資産(機械や備品など)の申告書作成。
- 税務調査立会い: 税務調査の際に、経営者の代理人として立ち会うための日当。
- 融資支援(資金調達): 事業計画書の作成支援や、金融機関との面談同行など。
初期費用・コンサルティング料
会社設立の手続き支援や、相続税申告、事業承継のプランニング、M&Aのアドバイスといった、高度な専門知識を要するプロジェクト型の業務については、別途個別の見積もりでコンサルティング料が発生します。
税理士の費用相場について
税理士の報酬が自由化されているとはいえ、ある程度の「相場」は存在します。この相場は、主に依頼者の事業形態や規模、依頼する業務内容によって形成されています。
相場を決定する主な要因
税理士の費用は、「税理士の作業量」と「専門性の高さ・責任の重さ」によって決まります。具体的には、以下のような要因で変動します。
事業形態(個人事業主 vs 法人)
法人は、個人事業主と比べて会計処理が複雑(複式簿記が必須)であり、申告書の種類も多くなります。また、社会保険の手続きなども絡むため、一般的に法人の方が個人事業主よりも費用は高くなります。
売上規模(年商)
売上規模(年商)は、税理士が顧問料を決める上で、最も一般的に使用する指標です。売上が大きいほど取引量が多くなり、会計処理の手間が増えます。また、税務上のリスクや税理士が負う責任も重くなるため、売上規模に比例して費用は高くなる傾向があります。
記帳代行の有無(自計化)
経営者自身がクラウド会計ソフトなどを利用して日々の記帳を行う「自計化」の場合、税理士の作業はデータのチェックと修正がメインとなります。一方、記帳を丸ごと依頼する「記帳代行」の場合、税理士の入力作業が大幅に増えるため、その分の費用(月額1万円~3万円以上)が顧問料に上乗せされます。
訪問頻度
税理士に毎月会社を訪問してもらい、対面で業績報告や経営相談を行う契約は、最も手厚いサポートですが、税理士の移動時間や拘束時間が発生するため、費用は高くなります。 訪問が四半期に一度、あるいは年に一度(決算時のみ)となる場合や、訪問は行わずZoomなどのオンライン面談のみで対応する場合は、費用を安く抑えることができます。
業種の特殊性
建設業や医療(クリニック・歯科医院)、不動産業、IT業界、製造業などは、その業界特有の会計処理(工事進行基準や原価計算、医療法人会計など)や税制優遇措置があり、専門知識が求められます。こうした専門特化型のサービスを提供する場合、一般的な業種よりも顧問料が高めに設定されることがあります。
費用相場の具体例(個人事業主)
スポット契約(確定申告のみ)
年に一度、確定申告書の作成と提出だけを依頼する場合の相場です。
- 白色申告・青色申告(10万円控除): 5万円 ~ 15万円程度
- 青色申告(65万円控除・複式簿記): 10万円 ~ 20万円程度
- ※上記に記帳代行を依頼する場合は、別途5万円~15万円程度が加算されます。
顧問契約(月額)
継続的にサポートを受ける場合の相場です。
- 記帳代行なし(自計化): 月額顧問料 2万円~5万円 + 決算申告料(顧問料の4~6ヶ月分)
- 記帳代行あり: 月額顧問料 3万円~6万円 + 決算申告料(顧問料の4~6ヶ月分)
費用相場の具体例(法人)
法人の場合は、年商規模別の相場が一般的です。
年商3,000万円未満
- 記帳代行なし: 月額顧問料 3万円~5万円 + 決算申告料 15万円~25万円
- 記帳代行あり: 月額顧問料 4万円~6万円 + 決算申告料 20万円~30万円
年商5,000万円~1億円
- 記帳代行なし: 月額顧問料 4万円~7万円 + 決算申告料 20万円~35万円
- 記帳代行あり: 月額顧問料 5万円~9万円 + 決算申告料 25万円~45万円
年商1億円~5億円
- 記帳代行なし: 月額顧問料 6万円~10万円 + 決算申告料 30万円~50万円
- 記帳代行あり: 記帳代行料は取引量に応じた個別見積もりとなることが多いですが、年間の総額で120万円~200万円程度が目安です。
税理士の適正な料金とは?
相場を理解した上で、次に考えるべきは、「自社にとっての適正な料金」とは何か、です。提示された見積もりが高いか安いかを判断する基準は、金額そのものではなく、「支払う費用に対してどれだけの価値が得られるか」という費用対効果にあります。
「安い=良い」ではない理由
税理士の費用は、提供されるサービス品質の裏返しでもあります。相場よりも極端に安い料金には、注意が必要です。その安さの裏には、「サービス内容が必要最低限に絞られている」「担当者が経験の浅いスタッフである」「一人の担当者が数百件を抱え、対応が雑」といった理由が隠れているかもしれません。
費用対効果で考えるべき4つの価値
適正な料金かどうかは、以下の4つの価値を総合して判断すべきです。
節税効果
税理士の専門的なアドバイスによって、適用漏れだった税制優遇を活用できたり、役員報酬の最適化で社会保険料を含めたトータルの手取りが増えたりする。その結果として、顧問料を支払ってもそれ以上の金額が節約できるのであれば、その料金は「適正」あるいは「安い」と言えます。
時間的コストの削減(本業への集中)
経営者や従業員が煩雑な経理作業から解放され、その時間を売上を上げるための本業に集中できる。その結果として生み出される利益は、税理士費用を上回る価値があります。
リスク回避の効果
税務調査で申告漏れを指摘された場合の、追徴課税や延滞税は多額になる可能性があります。税理士に依頼することで、このリスクを最小限に抑えられるという「安心感」は、数字には表れない大きな価値です。
経営改善の効果
顧問税理士から提供される月次試算表や経営分析を通じて、自社の経営課題(利益率の低下や資金繰りの悪化など)を早期に発見し、改善策を打つことができる。これにより、会社の収益性が向上し、事業が成長するならば、それは非常に価値の高い投資です。
自社のニーズとサービス内容の一致
適正な料金とは、自社が必要とするサービスが、過不足なく提供されている状態です。 例えば、「税務申告だけを正確に行ってくれれば、経営アドバイスは不要」という会社にとっては、低料金型の税理士が適正でしょう。逆に、「資金調達や経営戦略まで深く相談したい」という会社にとっては、たとえ料金が高くても、付加価値型の税理士が適正ということになります。
適正価格を見極めるためには、まず自社が税理士に何を求めているのかを明確にし、複数の税理士から見積もりを取り、そのサービス内容と料金を詳細に比較検討することが不可欠です。
顧問料が相場よりも高い税理士の特徴
相場よりも高い顧問料を設定している税理士事務所には、それ相応の理由があります。多くの場合、それは高い付加価値を提供していることの表れです。
高い専門性と豊富な実績
特定の業種(例えば、医療、建設、IT、不動産など)や、特定の業務分野(例えば、相続・事業承継、国際税務、M&Aなど)に特化している税理士は、一般的な税理士では対応が難しい、高度なノウハウと豊富な実績を持っています。 こうした専門特化型の税理士は、希少価値が高いため、報酬も高めに設定されます。しかし、その分野の課題を抱える経営者にとっては、料金以上の価値があります。
付加価値の高いコンサルティングサービス
税務申告書の作成という「守り」の業務だけでなく、経営者のパートナーとして「攻め」のコンサルティングを提供する税理士は、報酬が高くなります。 具体的には、中期経営計画の策定支援、幹部社員向けの研修、資金調達(エクイティファイナンス含む)の戦略立案、M&Aのアドバイザリーなど、社外CFO(最高財務責任者)のような役割を担います。
手厚いサポート体制と訪問頻度
毎月必ず経営者が納得するまで時間をかけて対面で面談を行う、経営会議に出席するなど、手厚いコミュニケーションを重視する事務所は、報酬が高くなります。 また、所長税理士だけでなく、複数の専門スタッフがチームで担当するなど、サポート体制が充実している場合も、人件費が反映されるため料金は上がります。
事務所のブランド力と立地
都心の一等地にオフィスを構え、メディア露出も多い著名な税理士事務所は、事務所のブランド力や信頼性そのものにも価値があり、料金も高く設定される傾向にあります。
顧問料が相場よりも安い税理士の特徴
一方で、相場よりも安い顧問料を提示する税理士事務所にも、明確な理由があります。その理由を理解し、自社のニーズと合致するかを見極める必要があります。
サービス内容の限定(申告特化型)
顧問料が安い最大の理由は、提供するサービスを「税務申告書の作成」という必要最低限の業務に限定しているためです。 記帳代行は行わず、自計化が前提。面談は年に一度の決算時のみ。日常の相談はチャットやメールのみで、電話対応は別料金。節税提案や経営相談は一切行わない。このように、サービスを徹底的に絞り込むことで、低価格を実現しています。
ITの徹底活用による効率化
クラウド会計ソフトの導入を必須とし、銀行口座やクレジットカードとの連携(API連携)を前提とすることで、記帳やチェックの作業を大幅に自動化・効率化しています。 また、訪問を一切行わず、コミュニケーションをオンラインに限定することで、税理士側の移動コストや人件費を削減し、低料金に反映させています。
大量処理(薄利多売)モデル
ITを活用した効率化を推し進め、一人の担当者が数百件といった大量のクライアントを担当する(あるいは、記帳業務を海外にアウトソーシングする)ことで、一人あたりの単価を下げる、薄利多売モデルを採用している事務所もあります。 この場合、業務は徹底的にマニュアル化・定型化されるため、個別の柔軟な対応や、深い経営相談を期待するのは難しいかもしれません。
どのような税理士を選べば良いのか?
顧問料の高い税理士と安い税理士。どちらが良い、悪いという問題ではありません。あなたの会社が今どのような状況にあり、税理士に何を求めているのかによって、「最適な」税理士は変わってきます。
自社の「目的」と「ステージ」に合わせる
税理士選びは、自社の「目的」と「成長ステージ」に合わせることが最も重要です。
創業期・小規模事業者(コスト重視型)
- 目的: まずはコストを最小限に抑えたい。赤字なので節税より正確な申告をしてほしい。
- 最適なタイプ: 低料金型の税理士。クラウド会計の導入を前提に、日々のやり取りはチャットで完結するような事務所と相性が良いです。ただし、創業融資だけは手厚くサポートしてくれるかなど、特定のニーズは確認しましょう。
成長期・事業拡大期(付加価値重視型)
- 目的: 利益が出始めたので積極的に節税したい。資金調達をして事業を拡大したい。経営アドバイスが欲しい。
- 最適なタイプ: **付加価値型(コンサルティング型)**の税理士。料金は相場より高くても、節税提案や融資支援でそれ以上のリターンが期待できます。金融機関とのネットワークも重要です。
成熟期・事業承継期(専門特化型)
- 目的: 安定した経営を維持しつつ、将来の事業承継や相続に備えたい。
- 最適なタイプ: 専門特化型(事業承継・資産税に強い)の税理士。法人税務だけでなく、相続税や自社株評価に精通した、高度な専門家が必要です。
特殊な業種(専門特化型)
- 目的: 建設業、医療、不動産、ITなど、業界特有の会計・税務ルールに的確に対応してほしい。
- 最適なタイプ: 専門特化型(業種特化)の税理士。業界の商習慣や、特有の税制優遇を熟知している専門家を選ぶことが必須です。
最終的には「相性」
専門性や料金も重要ですが、税理士は長期的なパートナーです。最終的には、経営者が「この人になら会社の数字を全て任せられる」「この人とは本音で話せる」と心から信頼できるかどうかという、人間的な相性が最も重要な決め手となります。
税理士の探し方
顧問料の考え方や、選ぶべき税理士のタイプが明確になったら、次は、どうやってその候補者を見つけるかです。最適な税理士と出会うための、具体的な探し方を紹介します。
インターネットでの検索
現代において最も一般的で、豊富な情報にアクセスできる方法がインターネット検索です。
検索エンジンの戦略的活用
GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、「税理士 〇〇(地域名)」と検索するだけでは、情報が膨大すぎます。「〇〇(業種名) 強い 税理士」や、「創業融資 税理士 〇〇(地域名)」、「相続 専門 税理士」といったように、自社の業種や、現在抱えている具体的な課題をキーワードに加えることで、候補を効果的に絞り込むことができます。
税理士事務所のウェブサイトの精査
検索結果から見つけた税理士事務所のウェブサイトは、単なる連絡先ではなく、その事務所の姿勢や専門性を判断するための重要な情報源です。代表税理士のプロフィールや経営理念、料金体系の明確さはもちろんのこと、特に注目すべきはブログやコラム、実績紹介のページです。自社の業界に関連する記事や、具体的な課題解決の事例が豊富に掲載されていれば、その分野に高い専門性を持っている可能性が高いと判断できます。
知人・経営者仲間からの紹介
既に税理士と契約している、信頼できる知人や、同業の経営者仲間から紹介してもらう方法です。
信頼性の高い情報源
この方法の最大のメリットは、実際にサービスを利用している人からの、リアルな評判を聞けることです。ウェブサイトだけでは決してわからない、税理士の人柄や、レスポンスの速さ、提案の質といった「生の情報」は、ミスマッチを防ぐ上で非常に価値があります。
紹介の注意点
ただし、後述するように、紹介だからといって手放しで信頼するのは危険です。その人にとっては最高の税理士でも、あなたの会社の事業ステージや業種、あなたが税理士に求める価値観と一致するとは限りません。紹介はあくまで有力な候補の一つとして捉え、必ず自分自身で面談し、判断することが重要です。
税理士紹介サービス(プラットフォーム)の活用
近年、事業者と税理士を無料でマッチングしてくれる、専門の紹介サービス(プラットフォーム)が増えています。
効率的なマッチング
これらのサービスは、多忙な経営者にとって非常に効率的です。専門のコーディネーターが、あなたの会社の状況や予算、税理士に求める条件などを詳細にヒアリングした上で、登録されている多くの税理士の中から、最適な候補者を複数選定してくれます。 面談の日程調整や、断りの連絡も代行してくれることが多いため、心理的な負担が少ないのも大きなメリットです。
メリットとデメリット
メリットは、無料で効率的に、自社のニーズに合った候補者と出会える点です。一方で、紹介される税理士は、そのサービスに登録している事務所に限られるというデメリットもあります。また、コーディネーターのスキルや経験によって、紹介の質が左右される可能性も考慮しておく必要があります。
金融機関や商工会議所からの紹介
自社が取引している金融機関や、所属している商工会議所、青色申告会といった公的・準公的な機関からの紹介も、信頼性の高い方法の一つです。
信用の裏付け
特に金融機関(銀行や信用金庫)は、融資先の経営が安定することを望んでいます。そのため、彼らが推薦する税理士は、金融機関との交渉に慣れており、資金調達に強い、信頼できる事務所である可能性が高いです。創業融資などを検討している場合には、特に有効な手段と言えるでしょう。
地域の情報網
商工会議所や青色申告会は、その地域の中小企業や個人事業主の事情に精通しています。地域の特性を理解し、親身になって相談に乗ってくれる、地元に根差した税理士を紹介してもらえることが期待できます。
税理士へ依頼する場合の費用についてよくある質問の例と回答
ここでは、税理士への依頼費用に関して、多くの経営者や事業主が抱く、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1. 顧問料にはどこまでのサービスが含まれますか?
A1. これは、事務所によって全く異なります。契約前に必ず確認すべき最重要ポイントです。一般的に「月額顧問料」に含まれるのは、会計データのチェック(または記帳代行)と、月次試算表の作成・報告、日常的な税務相談です。「決算申告料」は別途かかるのが普通です。 年末調整や給与計算、償却資産税申告、税務調査立会いなどは、顧問料とは別料金(オプション)となっていることがほとんどです。トータルで年間いくらかかるのかを、必ず見積書で確認しましょう。
Q2. 記帳代行は依頼した方が良いですか?
A2. これは、あなたの会社の状況と、何を重視するかによります。 記帳代行を依頼するメリットは、何よりも経営者が本業に集中できることです。経理作業から解放され、その時間を売上向上のために使うことができます。 依頼しない(自計化)メリットは、コストを抑えられることと、自社でリアルタイムに経営状況を把握できることです。クラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識が少なくても、自計化は十分に可能です。 最初は記帳代行を依頼し、事業が軌道に乗ってから自計化に移行する、あるいは、経理担当者を採用するまでの一時的な措置として活用する、といった柔軟な考え方がお勧めです。
Q3. 顧問料の値引き交渉は可能ですか?
A3. 交渉自体は可能ですが、安易な値引き要求はお勧めしません。税理士の顧問料は、その専門的な知識と経験、時間に対する対価です。無理な値引きを要求することは、提供されるサービスの質(例えば、経営アドバイスの時間が減るなど)の低下に繋がりかねません。 もし費用を抑えたいのであれば、値引きを求めるのではなく、「記帳は自院で行う」「訪問頻度を毎月から四半期に一度に減らす」といったように、業務範囲を見直すことで料金を調整できないか、相談する方が建設的です。
まとめ
税理士へ依頼する場合の費用。それは、多くの経営者にとって分かりにくく、不安なものであったかもしれません。しかし、この記事で解説してきたように、税理士の費用は、明確な理由と構造に基づいて設定されています。
税理士の報酬は自由化されており、事務所によって価格は多様です。その相場は、依頼者の事業規模や、依頼内容(記帳代行の有無など)によって変動します。
重要なのは、提示された金額が相場と比べて高いか安いかではなく、その費用で「どのような価値が得られるのか」という、費用対効果の視点です。
顧問料が相場より高い税理士は、多くの場合、専門特化型のサービスや、手厚い経営コンサルティングといった、高い付加価値を提供しています。逆に、顧問料が安い税理士は、サービスを必要最低限に絞り込み、ITを活用して徹底的に効率化を図っています。
どちらが良いかは、あなたの会社が税理士に何を求めるかによって決まります。コストを最優先するのか、事業成長のためのアドバイスを求めるのか。自社の目的と成長ステージを明確にし、複数の税理士と面談して、その専門性と相性を見極めること。これが、最適な税理士を選ぶための王道です。
税理士との契約は、コストではなく、あなたの事業の未来を守り、育てるための「投資」です。この記事が、あなたの賢明な投資判断の一助となれば幸いです。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。
