本記事では、獣医の方が開業されるにあたって、税理士との契約はそもそも必要なのか、契約した際のメリットや費用・相場感について解説をしていきます。本記事を参考にいただくことによって正しい知識に基づいて税理士選びができるようになります。
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獣医における税務の特徴
獣医の場合は、独立開業される方もいれば、企業に就職してキャリアを形成される方、大学等の研究機関で働かれる方色々といらっしゃると思います。ここでは独立開業されて獣医のサービスを提供している方に絞って記載をしていきます。獣医の場合、当然法律は異なってきますが、医師や歯科医と同じような事業形態になることが多いです(もちろん医療法人という概念はないので、法人化する際には株式会社や合同会社が選択肢になってきますが)。
主な特徴としては、まず開業時に多額の借入と固定資産が発生するという点です。特に設備関連は非常に投資金額が高額になりがちなので、貸借対照表の資産と負債が大きく膨らみます。また借入金額が大きくなることで、支払う利息も大きくなる傾向にあります。加えて、固定資産についても金額が大きくなるため、償却資産税の対象になってきますし、減価償却費も多額になる傾向になります。そのため実務上固定資産を管理するための台帳(一般的に固定資産台帳と呼んでいます)を適切に作成して管理することが非常に重要になってきます(ここにはリースで持っている固定資産も含まれてきます)
開業医等と異なってくるポイントとしては獣医の場合保健治療というものがないため(民間の保険はありますが、ここでは国民皆制度の保険のことを指します)、基本的にはペットの飼い主である顧客からの診療報酬がそのまま売上になるため、いわゆる開業医で発生するレセプトの処理は発生してきません。民間の保険を飼い主が活用している場合も保険は獣医への支払う後に飼い主へ保険会社から支払われるため、獣医側の税務処理には直接関係してきません。
その他特徴としては、助手などを雇用する場合には給与計算や年末調整等の作業が発生します。また月次の支払給与については源泉徴収を行なって、税務署へ納付する必要があります(併せて、厚生年金などの社会保険も別途計算して納付する必要があります)。そのため比較的規模の大きい動物病院を運営している獣医の方には、従業員の給与計算等に係る業務が重たくなってくる傾向になります。
また獣医業として比較的年数が経過してくると事業が軌道に乗ってくるため、比較的獣医個人としての年収が高くなる傾向にあります。そのため、個人所得税率が累進課税で高くなってきますので、税負担が重たくなってくることでしょう。税負担を考慮して、前述した法人化(ここでは株式会社や合同会社が想定される)も併せて検討する必要が出てくると思われます。法人化について税理士を活用するメリット、もしくは税理士として提供できることについては後述させていただきます。
獣医が税理士へ具体的に依頼できること
獣医の方が税理士へ依頼できる具体的なサービスとはなんでしょうか?まず税理士のメインのサービスですが、確定申告書の作成代行と税務相談です。確定申告は毎年税法が変更になるため、税理士のように税務の専門家に依頼をした方が効率的ですし、新しいサービス等を行うにあたって税務上損をしないようにするためにはどうすればいいかを税理士に相談することで、税メリットもしっかりと取れるようになります。
次に、年末調整などの従業員に関する業務です。給与計算については税理士によってサービス提供しているところとしていないところに分かれますが、年末調整は多くの税理士がサービスとして提供しております。具体的には年末に従業員分の源泉徴収すべき金額を確定して、多く取り過ぎた分については従業員に返還し、源泉徴収金額が不足していた分については追加で従業員から徴収する必要があります。源泉徴収金額については、従業員個々の扶養状況や保有している保険などによって異なってくるため、これらの資料を従業員から入手して年末調整を行う必要があります。
そのほかのサービスとしては、資金調達に関連するアドバイスや法人化に関するアドバイスが挙げられます。資金調達に関しては前述の通り開業時の資金負担が大きいことから、全て自己資本で開業することはほとんどないかと思います。資金調達を行う場合には金融機関に対して事業計画を提出する必要がありますが、獣医の方で事業計画を作成した経験のある方はほとんどいらっしゃらないと思いますので、税理士へ依頼することで作成代行を行なってくれます。また法人化については前述の通り、法人化することである程度の節税が可能になることから(節税目的の法人化はNGで、あくまでも法人化する合理的な理由がある場合のみです)、法人化の検討についても税理士にアドバイスをもらうことが可能です。
獣医にとって税理士と契約するベストなタイミング
獣医の方にとって税理士と契約するベストなタイミングはいつになるのでしょうか?最もおすすめなのは、独立開業前になります。なぜなら前述の通り、獣医の方が独立開業される場合、資金調達など開業時に非常に多くの財務・税務関連の業務が発生しますし、全く経験のない方にとっては非常に難易度が高いものになっております。そのため、最初から税理士へ相談をした方が、本業に集中することができ効率的に開業を進めることが可能となるのです。
そのほかのタイミングとしては、年商が1,000万円を超えるタイミングです。獣医の方の場合は、早々に超える可能性が高いと思われますが、この年商を超えるタイミングで消費税の申告が必要になってきます。消費税の計算方法として簡易課税を選択するなど様々な選択肢がありますが、採用した選択によってそもそも支払う消費税額が変わってきます。特に年商が大きくなると税金へ与える影響も大きくなるため、消費税課税事業者になりそうなタイミングで税理士と相談されるのが良いかと思います。
獣医が税理士へ依頼することで得られるメリット
獣医に強い税理士と契約することで得られるメリットとしては、まず確定申告業務が楽になるという点です。確定進行業務は年1回行わなければならない業務であり、毎年変わる税法のアップデートに対応しながら確定申告業務を行うことは経営者にとって多大なる負担となります。また経理担当者を雇う場合でも税法については詳しくないケースの方が多いため、結果として税理士へ依頼した方がコスト的にも正確性の観点からもベストな選択肢になると考えております。不動産仲介業の場合、年末調整等の業務も発生するため、この業務も税理士へ依頼できるのは非常に魅力的と言えるでしょう。
次に、法人化や消費税などさまざまな場面で税務的に有利な選択肢のアドバイスを受けることが可能なことです。毎年変わる税制を踏まえた上で、申告者によって最適なアドバイスを税理士は行うことが可能となります。これによって節税の取りこぼし等がなくなるため経営者にとっては安心です。
そのほか、資金調達などのサポートです。資金調達を金融機関から行う際には過去の決算書や事業計画書の提出を金融機関から求められることになります。この際に税理士が決算書や事業計画書の作成に関与することでそれらの信頼性が増すという観点で非常にメリットがあります。
上記以外の視点では経営相談というものがあります。特に年商が大きくなりがちな獣医業にとって、顧客の獲得方法やコストの適正化、複数の動物病院の展開など、様々な経営課題が発生するかと思います。税理士の中には経営コンサルタント経験が豊富な税理士もおりますので、このような税理士であれば単なる税務アドバイスのみならず数字視点を切り口にした経営アドバイスを提供することも可能です。なかなか個人で経営コンサルタントを雇うことは金銭的に難しいと思いますので、税理士の経営相談を活用するのも一つのやり方になります。
ご参考までに当事務所(宮嶋公認会計士・税理士事務所)は、代表が公認会計士・税理士でありながら、外資系の戦略コンサルタントも経験があるため、財務及び経営の視点から獣医の方の経営をサポートすることが可能です。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。
獣医が税理士と契約する際の料金
獣医の方が税理士と契約する際に支払う料金はどの程度になるのでしょうか?そもそも税理士の料金体系は、月額で支払う税務顧問料金と、決算時に支払う決算料金に分けられます。前者については税務相談を行うために支払う料金になりますので、仮に帳簿作成を税理士へ依頼したい場合には、この税務顧問料金に加えて記帳代行料金を税理士へ毎月支払う必要があります。また決算料金は、年1回の確定申告の際に税理士が顧客の決算書と税務申告書を作成するためにかかる費用のことです。決算書とは貸借対照表と損益計算書から成り立つもので、前者は年度末における獣医の方の財産状況を示したもの(ただし申告の対象となる事業に限られるので、獣医の方の個人の財産がここに全て載るわけでありません)、後者は獣医の事業における年間の成績を表すもので、売上高やそれにかかったコストである売上原価、最終的な利益が記載されることになります。
獣医業の場合は開業医などと同じように比較的他の業種と比べて取引量や処理の難易度、税務論点などが多くなりがちのため、税理士の料金は高くなる傾向にあります。最低料金で行くと、月額の税務顧問料が2〜3万円以上、決算料金が税務顧問料の4〜6ヶ月分になることが多いかと思います。当然年商や獣医の方が税理士へ依頼される税務の内容によって料金はさらに高くなります。一般的に税理士の標準料金に入っているのは一般的な所得税もしくは法人税になってくるため、例えば不動産所得があって不動産所得申告をしなければならない、や相続税申告を依頼したい場合などは別料金となってきます。
獣医に強い税理士の具体例
獣医に強い税理士にはどのような方がいるのでしょうか、インターネットの公開情報で検索した結果も踏まえて下記に記載をしていきます。
まずは税理士法人YFPクレア様です(https://www.yfpcrea.com/720)。動物病院向けの税理士サービスを展開されていて、税務会計のみならず、経営支援や資金調達の支援、相続対策など幅広く獣医向けのサービスを提供されています。
続いてはやしあけみ税理士事務所様です(https://www.hayashiakemi-tax.com/)。埼玉県ふじみ野市でサービスを展開されていて、ご自身も獣医師の資格をお持ちのようです。そのご経験と知識を活かして、動物病院を中心に税務サービスを提供されています。
最後に、当事務所になりますが、宮嶋公認会計士・税理士事務所です。(https://tax-miyajima.com/)。当事務所も、確定申告や記帳代行などの税務サービスのみでなく、外資系経営コンサルティング会社やCFO経験を活かした、経営コンサルティングサービスおよびDX・デジタルに非常に強みを持っている特徴的な事務所になります。特にデジタル経験も豊富ですので獣医である顧客のお悩みを深く理解し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
まとめ
以上のように獣医にとって税理士は必要かについて記載してきました。こちらの記事を参考にして、ぜひ税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
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この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。