本記事では、公認会計士が提供する任意監査についての解説を行います。任意監査について興味はあるが、具体的にどんなものなのかがわからない、任意監査を依頼したいが誰にどのように依頼すれば良いかわからないなどの経営者の疑問に応えられるように記事を作成しております。本記事をご参考に、任意監査を公認会計士へ依頼する際のサポート材料としてお使いいただけると幸いです。
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任意監査とは?法定監査との違いや、任意監査のメリットやデメリットを解説
任意監査とは何か?
監査の依頼を検討されている方については併せて、会計監査を依頼する場合どうすれば良い?現役会計士が徹底解説、の記事もご覧ください。
まず任意監査とはなんでしょうか?そもそも監査という意味から考えていきましょう。監査には、業務監査と会計監査の2つが存在しております。業務監査とは、監査役が行う監査で、会社の業務を行う取締役が適切に業務を執行しているかを確認するための行う監査となります。一方で会計監査とは業務監査の一つではありますが、その中でも取締役により作成された決算の数字が正しいかどうかを確認する監査を指します。監査役は業務監査全体を行う義務がありますが、会計については一定の専門性が要求されることから、公認会計士へ会計監査業務を委託することが認められています。
続いて会計監査は、法定監査と任意監査に分けることができます。法定監査とは法律上で会計監査することが義務となっている会社に対して行う監査になります。具体的に、上場会社に求められる金融商品取引法監査や、一定規模の株式会社に求められる会社法監査などが挙げられます。その他、株式会社以外でもそれぞれの業法に基づいて監査が義務付けられている会社があります。
一方で任意監査とは、法定監査以外の法律で定めれられていない任意で行う監査になります。このような会社は法律上監査が求められていないので、特段公認会計士による監査を行わなくても罰則等を受けることはありませんが、さまざまな理由により監査を受けているケースとなります。例えば、他社と共同で事業を行っており決算書の正確性を検証するために外部の公認会計士監査を入れている場合や、経営にほとんど関与していない大株主であるオーナーが雇っている社長や役員の作成する決算書の正確性を把握するために監査を入れたり、もしくは契約等によって会計監査が契約書上の義務として発生したり、などです。
任意監査と金融商品取引法に基づく監査
金融商品取引法に基づく監査とは、主に上場会社が受ける監査のことです。IPOを目指す会社についても、IPO前は金融商品取引法に基づく規制は受けないものの、IPOを行うにあたっては上場企業と同水準の財務諸表の開示レベルが求められるため、監査人である監査法人からも準金融商品取引法監査という形で同レベルの監査を受けることになります。会計処理の種類や開示項目など最も数が多く、かつ複雑な監査です。
任意監査と会社法監査
会社法監査とは、会社法に要請に基づいて公認会計士もしくは監査法人の会計監査が必要となる会社のことです。全ての会社が必要になるわけではなく、一定の規模以上の監査に義務付けられているものになります。なお、会社法では会社法上の決算書にあたる計算書類については全ての会社に作成を義務付けています(会社の規模等により作成する内容は異なります)。
任意監査について内部監査と外部監査の違いは?
監査を主体別に大別すると内部監査と外部監査に分けることができます。また準拠する法律に基づいて前述の通り法定監査か任意監査に分けられる事ができます。内部監査とは、企業内の内部監査専門部署が企業内部の内部統制の整備や運用状況を確認するために行う監査のことで、内部監査の一つとしてJ-SOXの監査があります。J-SOXは内部監査の一つの構成要素なので、内部監査にはJ-SOX以外にもさまざまな監査項目があります。内部監査専門部署は一般的に企業のトップであるCEOの直下に配置されることが多いです。
一方外部監査は、内部監査のように企業に所属する専門職人材が対応するものではなく、その会社から独立した外部機関と契約して監査を行うものになります。代表的なものとして先述の法定監査(例えば、会社法上の会計監査など)が挙げられます。
任意監査は一般的に外部の機関によって実施されるものを指すことが多く、内部監査において任意監査という言葉を使うことはあまりないのが一般的です。その背景としては、内部監査はJ-SOXを除き、法的な要請で監査をするものではなく、企業のガバナンス力向上のために、日々の業務の適切性をチェックしたり、経営者のコーポレートガバナンスへの準拠状況を確認したりするものなので、その大半がある意味任意監査だからです。
任意監査とは具体的に何をするのか?
では、具体的に任意監査とはどんなことをするのでしょうか?任意監査と言っても、その内容は通常の会計監査と変わりありません。そのため、公認会計士として実施することは法定監査と何ら変わりはありません。異なる部分で行くと、法定監査の場合は法律上で公認会計士監査を受けるスケジュールが決まっているので、そのスケジュールに合うように監査を進めていく必要がありますが、任意監査簿場合はこのような法律上の要請がありませんので、顧客と公認会計士の間でスケジュール調整を行い決めていく必要があります。
任意監査は法定監査と同じということで、公認会計士としては任意監査だったとしても財務諸表が適切に作成されているかどうかを全体的に監査していくことになります(特定の勘定科目や領域だけに対して監査を行うことはありません)。任意監査の流れとしては、まず経営者(主には財務経理の役員以下とのコミュニケーションが多くなりますが)に対して、会社の事業がわかる資料や過去の決算書、帳簿類を一式依頼をして会社全体の概要と数字の流れを公認会計士側で確認します。それを踏まえて、さまざまなヒアリングを経理部署に対して行い、加えて決算数字の根拠となった証憑類のチェックを行うことになります。
証憑類のチェック等が細かく終わった後は、いよいよ監査意見を表明することになります。具体的には、監査報告書というものを公認会計士の方で作成し、そのなかで財務諸表が適切に作成されていた胸の記載がなされ、その報告書が経営者や監査役へ提出されることになります。
任意監査を行うことで得られるメリット
では、任意監査を行うメリットとはなんでしょうか?
適切な財務諸表の作成
まずあるのが、経営者として正確な財務諸表を作成したいという点です。監査を入れていない場合、経理部署が作成する財務諸表をそのまま経営者が確認することになるため、万が一数字が間違っていた場合、経営判断を誤ることになります。一方で、経営者は数字の専門家ではないため、ご自身で決算書の数字が正しいかを確認することは難しいです。そのため、公認会計士へ依頼することで、自社の決算書の正しさを検証ができ、正しい経営判断ができるようになるのです。
不正のチェック
続いて、経営は雇った社長や役員等へ任せていて、基本的にオーナーがほとんど関与していないケースです。この場合、オーナーとしては正しい数字を決算書を社長が報告してきているか、不正を行っていないか、などのチェックとして外部の公認会計士の任意監査を入れるケースがあります。不正の観点からは、例えば共同事業を行っており、相手先企業に共同事業は全部任せている場合、相手先企業が正しく決算書を作成しているか、不正を行っていないかなどの目的で会計監査を公認会計士へ依頼する場合があります。
自社の信頼性や透明性を高めることが可能
自ら任意監査を行うことで、外部に対して自社に対する信頼性や透明性を高める事が可能になります。特に金融機関から資金調達を行う場合、会計監査を受けている財務諸表とそうでない財務諸表では金融機関から見た際の財務諸表に対する信頼性が異なってきます(外部監査を受けているからといって必ず資金調達できるわけではないので、ご留意ください)。
任意監査を行うことのデメリット
自社の対応工数が発生する
監査を受けるということは、企業内部の人員の作業時間も取られるということになります。具体的には、監査人からの資料依頼に対する準備や質問に対する回答、その他監査人への対応など、総合するとかなりの人員を割かれることになります。また会計監査のケースで行くと経理部署だけでなく、営業部署やその他の部署など財務に関わる全ての部署でも一部対応事項が発生するため、対応する部署が多岐に渡ることには留意しなければなりません。
監査法人等との対応が必要
監査を受ける場合には監査を行う専門家(例えば会計監査の場合であれば公認会計士や監査法人)とのやりとりが必要になります。工数がかかるのは前述の通りですが、それ以外にも監査人の質問や依頼等を正しく理解し正しく対応できるように人材を教育したりする必要があります。組織として監査人の対応ができなければそもそも正しい監査を行うことはできません。
監査実施によりコストが発生する
監査を受ける場合はそれなりのコストが発生します。料金については後述しますが、決して安い費用ではありませんし、前述の通り内部での対応コストやそれなりの対応人員を揃える必要があります。そのため、監査にかかる効果とコストを勘案して、監査を受けるかどうかを判断する必要があります。
任意監査の料金はどれぐらいか?
任意監査の料金はどの程度になるのでしょうか?会社の規模やビジネスの複雑性によっても変わってきますが、少なくとも年間数百万円からスタートになることが多いと思われます。これは公認会計士側も監査報告書という意見書を提出して監査リスクを負う義務があるため、そもそもの料金は高めです。また公認会計士の作業工数によっても報酬は変わってくるのです。
任意監査の作業範囲を減らすことで監査報酬を減らせないかというのもありますが、残縁ながら任意監査であったとしても公認会計士は監査諸表全体に対して意見を述べる義務があるため、特定の箇所だけ作業をしないということはできないのです。そのため、任意監査で報酬を減らすことはほとんどできません(2年目以降で、ビジネス理解が進んでヒアリング等の時間が省略できる結果、報酬を下げられるという可能性はあります)。
一方で、合意された手続き(AUPと呼ばれます)であれば一定料金を引き下げられる可能性があります。AUPとは監査と異なり、財務諸表の適切性について意見を述べるものではなく、顧客と合意した内容について公認会計士が手続きを行いその結果を報告するものになります(不正目的での公認会計士チェックなどもこちらに該当します)。AUPの場合はそもそも財務諸表全体に対して適切性の意見を述べるものではないため、勘定科目を特定したチェックなど自由に作業スコープを切り替えることが可能です。そのため、顧客側でチェックしてもらいたい箇所や目的が明確になっているのであれば、AUPを活用した場合任意監査よりも作業量を減らすことができ、結果として公認会計士の報酬金額を下げられる可能性があります。
任意監査のメリット:具体例
任意監査のメリットについては前述しましたが、具体的にどのようなケースが考えられるでしょうか?例えば、1つ目のケースとして経営を雇っていた経営者に任せていたが、業務上の横領などが実際は行われていて、オーナーへの手残りが本来あるべき金額よりも少額になってしまっているようなケースです。決算書へその数字が計上されていればすぐにわかりますが、横領の事実を隠蔽するために粉飾決算を行い、決算書だけ見ても実態がわからなくなっているようなケースだとオーナー側は全く把握することができません。そのようなケースの場合、外部公認会計士の監査を入れることで実態を把握することができますし、継続して監査を行うことで不正の防止するための牽制機能を働かせることが可能となります。このケースは、社長が経理担当者や経理部長へ全て決算書について任せている場合も同じです。経理担当者や経理部長が不正を行って、横領+粉飾決算でその事実を隠蔽している場合、経営者としては気付くのが難しい状況ですので、外部の公認会計士の任意監査を入れることで、不正チェックや防止機能を発揮することが可能となるのです。
なお、税務署による税務調査は目的が異なるため、不正をチェックすることはできません。税務調査はあくまで税法上の処理で追徴が発生する部分について指摘を行うもので、従業員や経営者による不正に対して指摘をするものではないからです。このような不正を適切に把握するためには、やはり公認会計士の監査か前述をしたAUPを行う必要があります。
任意監査はどのような場合に取り入れるとよいか?
任意監査はどのような場合に取り入れるとよいのでしょうか?まず対象となるのは、上場企業以外の非上場企業で会社法監査の対象外になっている企業を前提として、資金調達や取引先への信頼性確保の観点から監査を受ける場合が挙げられます。また株式会社や合同会社以外で、公益法人や一般社団法人、一般財団法人、医療法人、NPO法人(特定非営利活動法人)、学校法人、社会福祉法人、生活協同組合や農業協同組合などで、関係者に対する透明性や信頼性を高めたいという場合が挙げられます。
任意監査で外部監査の進め方
外部監査において任意監査を進める場合の手順としては、まず外部監査人の選定になります。これは公認会計士や監査法人が一般的でしょう。そして監査契約内容に合意できれば具体的に監査契約書を締結して、監査サービスの実施に進みます。監査人側では監査を行う前に監査契約というものを立案します。監査は全てをチェックするわけではなく顧客へのヒアリングを通じてミスが生じやすそうな箇所をある程度当たりをつけて効率的にチェックをおこなっていきます。
また監査も決算後の期末監査のみ行うのでは効率が悪いため、期中の取引については期中に監査を実施することが多いです。これを期中監査と言います。また業種や監査契約によっては期末日に棚卸資産の立会や現金の実査などを行うケースもあります。
任意監査での内部監査の進め方
一方で内部監査の場合はどうでしょうか?内部監査については、外部監査人を活用しないため、契約締結というフェーズはありません。まずは内部監査計画の策定からスタートすることになります。監査計画に基づいて調査が行われ、その結果が監査報告書という形でまとめられます。一般的には監査報告書の内容が内部監査部署からCEOへ報告され、その報告結果に基づきCEOからの改善指示及び内部監査部署による改善状況の確認が行われることになります。
任意監査のまとめ
以上のように、任意監査の内容や、任意監査の一般的な料金の考え方、AUPを活用した料金の低減の可能性などについて解説してまいりました。会計監査をご依頼の方、当事務所(宮嶋公認会計士・税理士事務所)は公認会計士業務と税理士業務の両方に対応しており、法定監査はもちろんのこと、任意監査・AUPについても対応が可能です。もし一度任意監査について相談したい、などのご要望があればお気軽にお問い合わせください。
公認会計士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください。料金表は税務顧問になっていますが、もちろん公認会計士なので、会計監査も対応可能です(初回無料相談)。
この記事の作成者
宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。