歯科医院の経理を税理士へ依頼するメリット

税務

歯科医院の院長先生は、日々の診療業務に追われる一方で、経営者としての重責も担っています。患者様の口腔内の健康を守るという崇高な使命を果たしながら、同時に医院の利益を確保し、スタッフを雇用し、組織を運営していかなければなりません。その経営活動の中で、避けては通れないのが「経理」です。お金の流れを正確に把握し、適切に税金を納めることは、医院の存続と発展に不可欠な要素です。しかし、歯科医院特有の会計処理や税務は複雑であり、多くの院長先生が頭を悩ませているのが現状ではないでしょうか。

本記事では、歯科医院の経理業務の全体像を明らかにし、それを自分で行うことの難しさやリスク、そして専門家である税理士に依頼することの真のメリットについて、徹底的に解説していきます。これから開業を考えている先生や、現在の経理体制に疑問を感じている院長先生にとって、経営の羅針盤となるような情報を提供します。

税理士をお探しの方は、併せて「歯科医師が税理士と契約するメリットを徹底解説」の記事もご覧ください。

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歯科医院の経理を税理士へ依頼するメリット

歯科医院の経理には具体的にどのような業務があるか?

歯科医院の経理と一口に言っても、その業務範囲は非常に多岐にわたります。日々の現金の動きから、月ごとの集計、そして年に一度の決算まで、息つく暇もないほど多くの作業が存在します。まずは、具体的にどのような業務が発生するのかを詳細に見ていきましょう。

日々の現金管理と帳簿付け

歯科医院は、一般的な企業と異なり、窓口での現金授受が頻繁に発生する業態です。そのため、日々の現金管理は経理の基本にして最も重要な業務となります。毎日、診療終了後にレジの中にある現金と、窓口での領収書控えや日計表を照らし合わせ、金額が一致しているかを確認する「現金実査」を行わなければなりません。もし金額が合わない場合は、その原因を究明する必要があります。釣り銭の渡し間違いなのか、記載ミスなのか、あるいはスタッフによる不正の可能性があるのか、原因を特定し記録に残す作業は精神的にも負担のかかるものです。

また、日々の取引を帳簿に記録する「記帳」も欠かせません。診療収入だけでなく、材料の仕入れ、技工所への支払い、消耗品の購入、水道光熱費の支払いなど、医院から出ていくお金についても、領収書や請求書に基づいて正確に会計ソフト等に入力していく必要があります。特に歯科医院では、保険診療収入と自由診療収入を明確に区分して管理する必要があるため、一般的な小売店よりも記帳の難易度が高くなる傾向にあります。

請求書の発行と支払業務

歯科医院の運営には多くの業者が関わっています。歯科材料店、医薬品卸、歯科技工所、医療機器メーカー、テナントのオーナー、清掃業者など、取引先は多岐にわたります。これらの業者から届く請求書を管理し、支払期日までに正確に振り込みを行う業務も経理の重要な仕事です。

特に歯科技工所への支払いは、製作物の内容や点数と請求額が合致しているかをチェックする必要があり、専門的な知識も求められます。支払いが遅れれば医院の信用問題に関わりますし、二重払いなどのミスがあれば無駄な出費となってしまいます。資金繰りを管理しながら、適切なタイミングで支払いを行うことは、経営の安定性を保つ上で不可欠です。

給与計算と労務管理

スタッフを雇用している歯科医院にとって、毎月の給与計算は絶対にミスの許されない業務です。基本給だけでなく、残業代の計算、交通費の支給、職能手当や皆勤手当などの各種手当の計算を正確に行わなければなりません。特に歯科医院は診療時間が延長することも多く、残業代の計算が複雑になりがちです。

さらに、給与から天引きする源泉所得税、住民税、社会保険料(健康保険、厚生年金)、雇用保険料などの計算も必要です。これらは頻繁に料率や計算方法が変わるため、常に最新の法令を把握しておく必要があります。年末には年末調整を行い、スタッフ一人ひとりの税金を確定させ、過不足を精算する業務も発生します。これらに付随して、スタッフの入退社に伴う社会保険や雇用保険の手続きも経理担当者が行うケースが多く見られます。

決算と確定申告

一年の総決算として行われるのが、決算書の作成と確定申告です。個人の歯科医院であれば所得税の確定申告を、医療法人であれば法人税の申告を行います。日々の記帳を集計し、減価償却費の計算や棚卸資産の評価を行い、貸借対照表と損益計算書を作成します。

歯科医院特有の論点として、社会保険診療報酬の所得計算の特例(措置法26条)を適用するかどうかの判定があります。これは、社会保険診療収入が5000万円以下の場合に、概算経費率を使って所得を計算できる制度ですが、どちらが有利になるかをシミュレーションして選択する必要があります。また、消費税の申告においては、課税売上割合の計算など専門的な知識が不可欠です。これらの複雑な計算を正確に行い、期限内に申告・納税を済ませることは、経理業務の最大の山場と言えるでしょう。

歯科医院の経理に対する悩み

多くの院長先生は、診療技術の向上や患者様へのサービス提供には情熱を注いでいますが、経理業務に対しては苦手意識やストレスを感じていることが多いものです。ここでは、歯科医院の現場でよく聞かれる経理に対する悩みについて掘り下げてみます。

診療後の事務作業による長時間労働

歯科医師の本分は患者様の治療です。しかし、診療が終わった後に待っているのは、山のような領収書の整理や帳簿付けです。一日中立ち仕事で診療を行い、心身ともに疲弊した状態で、細かい数字と向き合う作業は大変な苦痛を伴います。

多くの院長先生が、診療後の深夜や休日に経理作業を行っており、プライベートな時間が削られています。また、疲れている状態で作業を行うため、計算ミスや入力ミスが発生しやすく、その修正にさらに時間を取られるという悪循環に陥ることも少なくありません。「もっと診療や経営の勉強に時間を使いたいのに、事務作業に忙殺されてしまう」という声は、非常に多くの院長先生から聞かれます。

専門知識の不足と税務リスクへの不安

歯学部では歯科医療の技術や知識は学びますが、経理や税務について詳しく学ぶ機会はほとんどありません。そのため、開業してから初めて経理の現実に直面し、戸惑う院長先生が多いのです。

「この支出は経費になるのか」「減価償却の耐用年数は何年なのか」「消費税の区分はどうすればいいのか」といった疑問が次々と湧いてきますが、自分で調べても確信が持てないことが多々あります。間違った処理をしてしまい、後から税務調査で指摘されて追徴課税を受けるのではないかという不安は、常に経営者の頭をよぎります。特に歯科医院は税務調査が入りやすい業種の一つとも言われているため、適正な申告ができているかどうかのプレッシャーは相当なものです。

スタッフに任せることの難しさ

経理業務をスタッフに任せたいと考えても、現実には難しい側面があります。まず、お金に関わる業務であるため、信頼できるスタッフでなければ任せることができません。しかし、小規模な医院では経理専任のスタッフを雇う余裕はなく、受付や歯科助手が兼任することになります。

彼女たちは経理のプロではないため、教育に時間がかかりますし、退職してしまえばまた一から教え直さなければなりません。また、院長の給与や医院の利益といった機密情報をスタッフに知られることに対する抵抗感を持つ院長先生もいます。さらに、現金を扱う業務を任せることで、万が一の横領などの不正リスクを懸念する声もあります。結果として、院長自身あるいは院長の配偶者が経理を抱え込んでしまい、負担が解消されないというケースが多く見られます。

歯科医院の経理は自分でできるのか?

結論から申し上げますと、歯科医院の経理を院長自身で行うことは「可能」ですが、「推奨はできない」というのが実情です。もちろん、簿記の知識があり、時間に余裕がある開業初期であれば、自分で行うことで経費を節約し、お金の流れを肌感覚で理解するというメリットはあります。

開業初期の小規模な段階での可能性

開業したばかりで、患者数もまだ少なく、スタッフも数名程度という段階であれば、取引の数も限られているため、自分で経理を行うことは物理的には可能です。最近では使いやすい会計ソフトも普及しており、銀行口座やクレジットカードを連携させることで、ある程度の自動化も可能です。この時期に自分で帳簿をつけることで、何にどれくらいのお金がかかっているのか、利益構造はどうなっているのかを理解することは、経営者としての数字感覚を養う上で無駄ではありません。

規模拡大に伴う限界とリスク

しかし、患者数が増え、スタッフが増え、ユニット数が増えてくると、状況は一変します。取引数は飛躍的に増加し、給与計算や労務管理の手間も増大します。さらに、売上が上がれば消費税の課税事業者となり、税務処理の複雑さは格段に増します。

この段階になっても自分で経理を続けようとすると、診療に支障をきたす可能性が高くなります。経理作業のために診療時間を短縮したり、休診日を事務作業に充てたりすることは、本末転倒です。また、税制は毎年改正されるため、最新の情報を常にキャッチアップし続けることは、専門外の院長先生にとって非常に困難です。自己流の経理処理は、意図せず脱税行為とみなされたり、逆に使えるはずの節税策を見逃したりするリスクを高めます。時間的なコストとリスクを天秤にかけると、ある程度の規模になった段階でプロに任せるのが賢明な判断と言えるでしょう。

歯科医院が自分で経理をする際に会計ソフトを選ぶポイント

それでもまずは自分で経理を行いたい、あるいは基礎的な入力までは院内で行いたいと考える場合、会計ソフトの選び方が非常に重要になります。歯科医院という特殊な業態に合ったソフトを選ばなければ、かえって手間が増えてしまうこともあります。

レセプトコンピュータ(レセコン)との連携機能

歯科医院の収入の柱は保険診療報酬です。このデータはレセプトコンピュータ(レセコン)で管理されています。したがって、会計ソフトを選ぶ際には、レセコンのデータを取り込めるか、あるいはスムーズに連携できるかが重要なポイントになります。レセコンで集計された日々の窓口入金や、月ごとの保険請求額を手入力するのはミスのもとであり、時間の無駄です。CSVデータでのインポート機能や、API連携機能などが充実しているソフトを選ぶことで、収入の計上を効率化することができます。

銀行口座・クレジットカードとの自動連携

経費の支払いや入金の管理を効率化するためには、インターネットバンキングやクレジットカードの明細を自動で取り込む機能が必須です。歯科材料の購入や公共料金の支払いなどをクレジットカードや口座振替に集約し、それらのデータを会計ソフトに自動連携させれば、日付や金額の入力ミスを防ぎ、記帳の手間を大幅に削減できます。最近のクラウド型会計ソフトの多くはこの機能を備えていますが、対応している金融機関やカード会社の種類、連携の安定性などを事前に確認しておくことが大切です。

勘定科目のカスタマイズ性と操作性

歯科医院には特有の勘定科目が存在します。例えば「医薬品費」「歯科技工費」「診療材料費」などです。一般的な会計ソフトの初期設定は、小売業やサービス業向けになっていることが多いため、歯科医院用の勘定科目を簡単に追加・設定できるかどうかがポイントになります。

また、簿記の知識があまりない場合でも直感的に操作できるかどうかも重要です。専門用語ばかりが並ぶ画面ではなく、家計簿をつけるような感覚で入力できるインターフェースや、自動仕訳ルール(「〇〇電力」という明細なら自動的に「水道光熱費」にするなど)を学習してくれる機能があると、作業効率は格段に上がります。サポート体制が充実しているかどうかも、導入時のトラブルを防ぐために確認しておきましょう。

歯科医院に適した会計ソフトの具体例

市場には数多くの会計ソフトが存在しますが、その中でも歯科医院での利用に適している、あるいはシェアが高い代表的なソフトをいくつか紹介します。それぞれの特徴を理解し、自院の環境に合ったものを選ぶことが大切です。

マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワード クラウド会計は、金融機関やクレジットカード、電子マネー、POSレジなど、連携できるサービスの多さが最大の特徴です。銀行口座の入出金明細やクレジットカードの利用履歴を自動取得し、AIが勘定科目を提案してくれるため、入力作業を大幅に自動化できます。また、給与計算ソフトや経費精算ソフトなど、同シリーズのバックオフィスツールとの連携も強力で、将来的に業務範囲を広げた場合にも対応しやすい拡張性を持っています。税理士事務所での採用率も高く、税理士とのデータ共有がスムーズに行える点もメリットです。

freee(フリー)

freeeは、「経理の知識がなくても使える」ことをコンセプトに設計されたクラウド会計ソフトです。複式簿記の知識がなくても、質問に答えるような形式や、直感的な操作で帳簿を作成できるため、簿記に苦手意識がある院長先生に人気があります。レシートをスマホで撮影して自動で読み取る機能の精度も高く、日々の経費入力が楽になります。ただし、従来の会計ソフトとは操作感が大きく異なるため、税理士によっては対応していない場合や、慣れるまでに時間がかかる場合がある点には注意が必要です。

弥生会計 オンライン

弥生会計は、日本で長年にわたり高いシェアを誇る会計ソフトの老舗ブランドです。そのクラウド版である弥生会計オンラインは、これまでのインストール版の使い勝手を踏襲しつつ、クラウドの利便性を取り入れています。多くの税理士事務所が弥生会計を使用しているため、税理士とのデータのやり取りや相談が非常にスムーズに進むという安心感があります。操作画面もオーソドックスでわかりやすく、簿記の知識がある程度ある方や、将来的に税理士に依頼することを前提としている場合には非常に有力な選択肢となります。

歯科医院に強い税理士が提供するサービス

税理士であれば誰でも同じサービスを提供してくれるわけではありません。特に歯科医院は、医療法や診療報酬制度など特殊なルールが存在するため、「歯科医院に強い」税理士を選ぶことが重要です。そのような専門性の高い税理士が提供するサービスは、単なる計算代行を超えた価値を持っています。

歯科特有の税務・会計処理の適正化

歯科医院に強い税理士は、歯科特有の会計処理に精通しています。例えば、高額な医療機器を購入した際の減価償却の方法や、ユニットのリース契約の処理、技工所への外注費の取り扱い、金属屑の売却収入の計上漏れ防止など、専門的な知識に基づいた適正な処理を行います。

また、概算経費率(措置法26条)の適用判定についても、シミュレーションを行い、実額経費で計算した場合とどちらが税金が安くなるかを的確に判断します。さらに、税務調査で指摘されやすいポイント(自費診療の計上漏れや、個人的な支出の経費混入など)を熟知しているため、日頃からリスクを回避するための指導を行い、万が一の税務調査の際にも頼れる存在となります。

経営分析とコンサルティング

数字をまとめるだけでなく、その数字が何を意味しているのかを分析し、経営改善につながる提案を行うのも、歯科に強い税理士の重要な役割です。例えば、レセプト枚数、点数、自費率、ユニット一台あたりの売上高、スタッフ一人あたりの生産性などの重要指標(KPI)を算出し、全国平均や同規模の他の歯科医院と比較・分析します。

「材料費率が平均より高いので、在庫管理を見直しましょう」「リコール率が下がっているので、対策を打ちましょう」「人件費率が高騰しているので、スタッフの配置を見直しましょう」といった、具体的な経営アドバイスを提供します。これにより、院長は感覚ではなく、客観的なデータに基づいた経営判断が可能となります。

医療法人化の支援

歯科医院の経営が順調に拡大し、利益が増えてくると、個人事業から医療法人化を検討する段階が訪れます。医療法人化には、節税効果や事業承継のしやすさといったメリットがある一方で、社会保険への強制加入や事務手続きの複雑化といったデメリットもあります。

歯科に強い税理士は、最適な法人化のタイミングを見極め、シミュレーションを行います。そして、都道府県への設立認可申請という非常に煩雑で時間のかかる手続きをサポートします。設立後も、医療法に基づいた運営や、理事長の役員報酬の設定、分院展開のサポートなど、医療法人特有の経営課題に対して継続的な支援を提供します。

歯科医院の経理を税理士へ依頼するメリット

ここまでの内容を踏まえ、改めて歯科医院が経理を税理士へ依頼するメリットを整理してみましょう。それは単に「面倒な作業を代行してもらう」以上の、経営資源の最適化という意味合いを持ちます。

本業である歯科診療への専念

最大のメリットは、院長先生が経理という慣れない業務から解放され、本業である歯科診療に100%のエネルギーを注げるようになることです。診療時間を増やせば、それだけ多くの患者様を診ることができ、売上アップに直結します。また、最新の治療技術の習得や、スタッフ教育、患者様とのコミュニケーションに時間を使うことで、医院の質を高め、競争力を強化することができます。「時間は金なり」と言いますが、高収益を生み出す院長先生の時間を事務作業に費やすことは、経営的な観点から見れば大きな損失なのです。

正確な会計処理と節税対策

プロである税理士に依頼することで、会計処理の正確性が担保されます。ミスによる追徴課税のリスクを減らし、金融機関からの信頼性も高まります。また、税理士は最新の税制改正情報を常に把握しているため、設備投資減税や賃上げ促進税制など、その時々で利用可能な有利な税制を提案してくれます。自己流では気づかないような節税対策を講じることで、税理士報酬以上のキャッシュを残せるケースも少なくありません。適正な納税を行いながら、無駄な税金の流出を防ぐことができるのです。

経営のパートナーとしての安心感

院長先生は孤独な立場に置かれることが多いものです。スタッフには相談できない資金繰りの悩みや、将来の不安、経営方針の迷いなどを、数字を共有している税理士には相談することができます。歯科業界の動向に詳しい税理士であれば、他の医院の成功事例や失敗事例を参考にしながら、客観的なアドバイスをくれるでしょう。

また、スタッフの採用や給与設定、融資の相談など、お金に関わるあらゆる局面で相談できるパートナーがいることは、精神的な安定にもつながります。経営の「守り」を税理士に任せることで、院長先生は安心して「攻め」の経営に集中できるのです。

歯科医院が経理を税理士へ依頼する際の費用相場(確定申告と税務顧問含む)

税理士に依頼する際の費用は、医院の規模(売上高やスタッフ数)、依頼する業務の範囲、訪問頻度、そして個人の歯科医院か医療法人かによって変動します。ここでは一般的な相場の目安をご紹介します。

個人の歯科医院の場合

個人の歯科医院の場合、月額の顧問料と、年に一度の決算・確定申告料がかかるのが一般的です。

  • 月額顧問料:2万円〜5万円程度
    • 毎月の記帳チェック、試算表の作成、税務相談などが含まれます。
    • 記帳代行(領収書の丸投げ)を依頼する場合は、別途月額1万円〜3万円程度が加算されることが多いです。
    • 訪問頻度(毎月、3ヶ月に1回、半年に1回など)によっても金額は変わります。
  • 確定申告料:10万円〜20万円程度(月額顧問料の4〜6ヶ月分が目安)
    • 一年の総決算と所得税の申告書作成費用です。消費税の申告が必要な場合は、別途費用がかかることがあります。

したがって、年間のトータルコストとしては、およそ35万円〜80万円程度が相場となります。開業したばかりで売上が少ない場合は、これよりも安く設定されているプランがある事務所もあります。

医療法人の場合

医療法人になると、会計処理や税務申告が個人よりも複雑になるため、費用は高くなる傾向にあります。

  • 月額顧問料:3万円〜8万円程度
    • 個人の場合と同様に、記帳代行や訪問頻度によって変動します。
  • 決算申告料:15万円〜30万円程度(月額顧問料の4〜6ヶ月分が目安)
    • 法人税、法人住民税、事業税などの申告書作成に加え、都道府県への事業報告書等の届出作成費用が含まれる場合もあります。

年間のトータルコストとしては、およそ50万円〜120万円程度が相場となります。分院がある場合や、役員報酬のシミュレーションなど高度なコンサルティングを求める場合は、さらに費用がかかることもあります。

費用だけで選ばないことが重要

費用は安いに越したことはありませんが、安さだけで税理士を選ぶのは危険です。極端に安い報酬の事務所は、サービス内容が最低限であったり、歯科業界の知識が乏しかったり、担当者が頻繁に変わったりする可能性があります。

逆に、多少費用が高くても、歯科業界に特化しており、経営改善の提案や融資のサポートが手厚い税理士であれば、支払った報酬以上のメリット(増患、増収、節税効果など)をもたらしてくれるでしょう。提示された金額の中に、どこまでのサービスが含まれているのか、記帳代行は込みなのか別料金なのか、年末調整や税務調査の立会いはどうなるのかなど、見積もりの内容をしっかりと確認し、費用対効果を見極めることが大切です。

まとめ

歯科医院の経営において、経理業務は避けて通れない重要な基盤です。しかし、その業務は複雑で専門知識を要し、多忙な院長先生が一人で抱え込むにはあまりにも負担が大きいものです。日々の現金管理から給与計算、そして決算・申告に至るまで、正確性とスピードが求められる業務の連続です。

自分で行うことでコストを削減できる側面はありますが、それによって診療時間が削られたり、精神的なストレスが増大したり、税務リスクを抱えたりすることは、長期的な視点で見れば大きな損失となりかねません。会計ソフトの進化により作業自体は効率化されていますが、最終的な税務判断や経営分析にはプロの知見が必要です。

歯科医院に強い税理士に経理を依頼することは、単なる「事務代行」ではありません。それは、院長先生が診療に専念できる時間を確保し、正確な会計によって税務リスクを排除し、客観的なデータに基づいた経営戦略を立てるための「投資」です。適切な節税対策や資金調達のサポートを受け、経営のパートナーを得ることで、医院はより健全に、より力強く成長していくことができるでしょう。

これからの歯科医院経営は、質の高い医療の提供とともに、安定した経営基盤の構築が求められます。そのためには、信頼できる税理士というパートナーの存在が必要不可欠です。ぜひ、ご自身の医院の状況や将来のビジョンに合った、歯科業界に精通した税理士を見つけ、二人三脚で理想の歯科医院を作り上げてください。

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この記事の作成者

宮嶋 直  公認会計士/税理士
京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。