本記事では、会計士に依頼を検討する場合にどの程度費用がかかるのかを解説していきます。会計士と税理士の違いについても併せて解説をしていきます。会計士を顧問として採用したい、会計士・税理士どちらに頼んで良いかわからないので、そもそも業務内容の違いや費用の違いについて教えてほしいなど、会計士への依頼を検討している経営者に活用いただけるように記事をまとめております。
会計士と税理士の違いとは?
そもそも会計士と税理士の違いから解説をしていきます。会計士は正式名称が公認会計士で、独占業務として監査業務を生業としています。監査業務というのがわかりづらいので解説しますが、監査業務というのは企業が作成した財務諸表が正しく作成されているかどうかについて監査意見を付与するものになります。この監査が必要な企業は、証券取引所に上場している企業を中心に、その他会社法上などで監査することが義務付けられている会社になります。日本にある企業すべての比率からすると監査義務のある会社は少数になりますし、中小企業ではあまり監査を受ける機会はないかと思います。また会計士は、税理士になれる資格も有しており、登録することで税理士になることも可能です。そのため多くの独立した会計士は税理士の資格も有しており、事業を展開しております。
会計士は上記の監査業務以外にも財務アドバイザリー業務ということで、M&Aのアドバイザリー業務をおこなったり、IPOのコンサルティング業務をおこなったりと、幅広く財務に関連したアドバイザリー・コンサルティング業務を提供しています。下記では、具体的に会計士が提供しているサービスについて詳細を解説していきます。
会計士に相談できること
会計士(公認会計士)と税理士は似たような印象を持つ職業ですが、それぞれ専門性が異なります。下記では会計士及び税理士へそれぞれどのような相談が可能なのかを整理して記載します。
会計監査
会計士の主な専門性で1つ目は会計監査です。これは企業が作成した財務諸表が正しいかどうかを判断するために会計士が監査を行い、監査報告書という意見を出すものになります。財務諸表は主に、上場会社が作成する有価証券報告書・四半期報告書と言われる法定で定められた財務諸表、もしくは会社法に基づいて作成が要請されている会社法計算書類の2つになります。上場会社の場合は、有価証券報告書・四半期報告書と、会社法計算書類の2つの監査を受ける必要があります。
その他、上記以外にも法律に基づいて、もしくはその団体の任意の判断に基づいて監査を入れる場合があります。例えば学校監査などが該当します。
内部統制監査
こちらも会計士の専門性の1つですが、内部統制が適切に整備され運用されているかを証するために、会計士が企業が構築する内部統制を監査し、内部統制統制監査報告書というのを出すものになります。内部統制監査は主に上場会社が受けるもので、上場しているマーケットの種類によっては一定会計士による監査を免除されているマーケットもあります。
IPOに関するコンサルティング
IPOにあたっては、上場後に適切に有価証券報告書をはじめとする財務諸表を期限内に作成・提出することが求められると同時に、規程類の整備や内部統制の構築・運用など内部統制関連の対応が求められます。会計士は会計監査や内部統制監査で培った意見を活かしてIPOを目指す会社のコンサルティングを提供しています。具体的には内部統制で必要な書類の作成や運用支援、IPOにあたって審査の対象となる書類(会計に関するもの)の作成やレビュー、もしくはコンサルタントとしてIPOを目指す会社の監査人との折衝など、幅広くIPOに関連したコンサルティングを提供しています。
会計コンサルティング
IPOコンサルティングとも近いですが、こちらはIPOに関わらず会計士の監査を受ける必要がある企業に対して、会計基準の変更に対応するためのドキュメントや監査人対応などのコンサルティング、連結決算を初めて作成する会社には連結決算の作成支援などを提供しています。またITが得意な会計士であれば会計ソフトウェアの入れ替えに関するコンサルティングも併せて提供することが可能です。
M&Aに関するアドバイザー
会計士のM&Aにおける得意分野は財務デューデリジェンスと価値を算定するバリュエーションになります。バリュエーションはM&A時だけでなく、減損会計を踏まえてすでに保有している株式の評価を行ったり、無形資産を評価したりする際にも用いれられるため、幅広く会計士が活躍できる場があります。
税理士登録による税務業務
会計士は、登録することにより税理士として税理士業務を提供することが可能です。この業務については税理士が行う税理士業務と同じものになります。
事業計画や資金調達に関する支援
これは後述する税理士とも被りますが、顧客の事業計画作成を支援するとともに、資本や借入による資金調達をサポートします。補助金のサポートについても会計士が対応可能です。その他事業計画に関連して、企業の財務状況をより細かく分析して改善アクションにつなげるための経営管理(管理会計)の導入コンサルティングを行う場合もあります。
税理士に相談できること
そもそも税理士と契約することによって、税理士を探されている方々は、どのようなサービスを受けることができるのでしょうか?
確定申告・税務顧問・記帳サービス
まずは確定申告です。これは、原則年1回、税務署へ提出する税額を計算した書類になります。個人で開業されている方含めて提出が必要になります。税理士と聞くとまずはこの確定申告の代行を想像される方が多いのではないかと思います。確定申告は確定申告書類を作成するのみならず、その土台となる帳簿の作成や年間の数字結果を示した貸借対照表や損益計算書(併せて決算書)を作成する必要がありまして、全て確定申告書作成に必要な基礎的な書類となります。帳簿や決算書についても税理士へ依頼することが可能です。納税に関する予測データを依頼することもあります。
また、確定申告と併せて月次の税務顧問や記帳サービス(実際に税理士側で記帳する場合と、顧客側で記帳したものを税理士側でレビューする記帳支援の2つがある)があります。税務顧問は確定申告に向けて、毎月顧客から税務に関連する相談を税理士にできるサービスになります。確定申告のみの依頼の場合は、決算以外のタイミングで発生した税務に関連する相談を税理士に適宜できなかったりとさまざまな制約が発生することが多いので、税務顧問とセットで確定申告を税理士に依頼するパターンもあります。
また記帳代行に関しては、日々の帳簿作成を行うもので、経営者がご自身で対応されるパターンと、税理士側が記帳代行という形で対応するパターンに分かれます。当然記帳代行に関する料金が発生するため、料金と労力の見合いで税理士へ記帳代行を依頼するかどうかを判断することになりますが、最近はクラウド会計も普及してきており、ITが得意な経営者はクレジットカードや銀行口座を連携して記帳はご自身で対応し、記帳支援という形で税理士にチェックをしてもらうパターンも増えてきているように思います。
会社設立・起業支援
会社設立や開業前から実際の会社設立・開業を税理士が支援するパターンもあります。会社設立・開業においては、資金調達のニーズや会社設立手続きそのもののニーズ、各種税務に関する届出のサポートなど、サポート範囲が多岐に及びます。税理士だけでは対応できない部分もあるため、司法書士や行政書士、社会保険労務士などさまざまな士業と連携しながらサービスを提供しています。
マイクロ法人の設立を検討されている方については、こちらの「マイクロ法人に強い税理士を検討するポイント」を参照ください。
月次決算
毎月の損益の状況を把握し、経営として問題ないかどうかを確認するために、月次決算書というものを使うことがあります。確定申告書と異なり必ず作成しなくてはならないものではありませんが、経営の状況をリアルタイムで把握するためには必要なものになります。この月次決算についても税理士に依頼することが可能です。月次試算表という言葉で呼んだりすることもあります。
経理アウトソーシング
帳簿作成や月次決算も経理業務ではありますが、経理全体の中の一部の業務になります。経理業務はそのほかに、請求している金額の入金処理や支払処理、その他給与計算など、お金に関するあらゆる業務があります。経営していると、この辺りの重要だけど本業ではない業務に時間を取られることが多いかと思いますが、このような業務を税理士へ委託することができます。
クラウド会計導入支援
税理士はクラウドソフトを使って顧客へサービスを提供することが多いため、顧客自身が自らクラウドソフトを入れたいというニーズにも応えることが可能です。特に経営者ご自身で数字はしっかり管理したいからクラウド会計ソフトを導入したいという場合、システム会社だと会計や税金の細かいルール設定まで対応できないケースがあるため、税理士にサポートを依頼するケースもあります。
管理会計の導入
月次決算とも関係してきますが、財務データを分析して経営に役立てたいなどのニーズがあるかと思います。このように経営の分析に役立つ数字を作成して管理することを管理会計と呼んだりしますが、この導入支援を税理士へ依頼するケースもあります。
相続申告や事業承継の検討
経営が安定してきて将来はご子息に相続というケースで、事業承継を考えることになるかと思います。相続や贈与・事業承継については税金の問題が大きく影響を与えるため、税理士の関与はかなり重要だと言えます。また事業承継の一つのやり方としてM&Aで他の経営者への売却等も可能性としてはあるかと思いますので、この辺りも税理士のサポート領域となります。
また事業承継までなかったとしても相続税というものは発生しますので、相続対策が重要になります。相続・贈与の仕方によって税金の発生金額が異なってくるのと、税制は非常に複雑なので、税理士を活用して節税を実現する経営者も増えてきているように思います。
その他:税務調査対応・セミナー・事業計画作成支援など
上記以外の業務として、税務調査の対応(税務調査の立ち合い)から、税金に関するセミナーの提供、補助金などで必要になってくる事業計画の作成支援など、さまざまなサービスを税理士は展開しております。制度対応として、認定支援機関となっている税理士もあります。
その他社会保険労務士や行政書士、司法書士などの資格を持っている税理士であれば、給与計算や労務に関する各種届出のサポート、もしくは許認可申請・登記申請サポートなど、税務にとどまらず、幅広いサービスを展開しております。経営に強い税理士であれば税務のみならず数字面を切り口にした経営コンサルティングを提供している場合もあるでしょう。
会計士の費用
費用相場が決まる要因
会計士については、統一された費用というものはなく、提供するサービスの種類や難易度、かかる工数に応じて値段kがかかってきます。費用の取り方としては大きく、①月額顧問料金として費用を請求するケース、②コンサルティング案件としてプロジェクト1つでいくらという形でプロジェクト終了後に請求するケース、に大別されます。
月額顧問料金として発生するようなパターンは、会計顧問という形で企業の会計処理に関するアドバイスや監査法人との間に入って議論をまとめたり、その他財務や会計に関連する全般的なアドバイスをする立場として入ることが多いと思われます。その場合の相場ですが、おおよそ月額10万円ぐらいからスタートして、工数にもよりますが10〜20万円が多いのではないかと思います。会計顧問という立場で入った場合、IPOコンサルティングや内部統制コンサルティングは会計顧問報酬に加えて別途請求という形になります。
続いてコンサルティング案件ですが、主には先述の通りIPOコンサルティングや内部統制コンサルティング、もしくは会計ソフト導入支援、M&Aのアドバイザリーなど様々なコンサルティングがあります。事業計画の策定支援や不正調査なども会計士の仕事の範囲に入ってきます。コンサルティング案件の場合は月額フィーと異なり、さらに個別性が強いですが、会計士1名あたりの1ヶ月フルでサービスを提供した場合の請求相場は100万円〜200万円程度になるかと思います。M&Aアドバイザリー案件だと、月額の請求に加えて成功報酬で請求する場合もあります。
会計士の費用:その他
会計士を活用することよる費用ですが、上記以外で行くとスポット相談のようなものもあります。こちらは会計士が働いた時間×時間単価で会計士から顧客へ費用を請求するものになります。税理士のスポット税務相談と比較すると、そんなに発生する仕事ではないように思えます。会計士の1時間あたりの請求レートになりますが、そもそも会計士としてのスポット相談がそこまでメジャーではないので一概には言えませんが、税理士に近いレートで時間単価1万円〜が1つの目安になるかと思います。
会計士と税理士の費用比較
会計士と税理士の費用の違いですが、税理士の場合も会計士と費用の請求の仕方は近く、①月額顧問料金として費用を請求するケース、②コンサルティング案件としてプロジェクト1つでいくらという形でプロジェクト終了後に請求するケース、に大別されます。ただし、税理士の場合は対象となる企業の規模が最大手から中小規模もしくは個人事業主まで会計士と異なりかなり幅広いことから、費用規模が全く異なってきます。会計士の場合、基本的には上場企業もしくはそのグループ企業などが顧客の中心となってくるので、そもそも高額の報酬に支払える余力がある関係で、そもそも費用も高くなっています。税理士の場合も大手顧客であれば、同じような形になりますので、大手税理士法人の報酬金額は相当高くなってきます。
一方で、個人事業主になってくると安い場合は年間10万円規模もありますので、先述の通り税理士は顧客によって費用が全く異なってくるのです。また顧客の事業規模が小さくなればなるほど、月額顧問料の費用が中心となってきて、あまりコンサルティングプロジェクトで費用を請求するということは極めて事例としては少なくなってくるのも特徴です。
会計士については、上場企業もしくはそのグループ会社、非上場企業だが監査報酬等が払える利益水準のある一定規模以上の企業が顧客の中心となるので、必然的に請求する費用規模も高くなる傾向にあります。ただしこちらも先述の通り企業が限定されるので、顧客の幅という点においては税理士の方が幅広くなる傾向にあります。
会計士・税理士の選び方
経営者が会計士・税理士を検討するためのポイントとして挙げられるものは、①会計士・税理士へ支払う費用、②会計士・税理士との相性・税理士の経験、③個人事業・法人を今後どれぐらい拡大していくか、④経営者自身で経理業務を行うかどうか、と思います。
①会計士・税理士へ支払う費用についてはわかりやすいですが、会計士・税理士に依頼することで確保できる時間や効果を勘案した際に、費用対効果があっているかどうかです。単純に数字的な効果だけでなく、会計士・税理士に任せているという安心感や本業に集中できるという時間確保の面もあるため、一概に数字面の費用対効果で考えるものではないかと思います。
②会計士・税理士との相性・会計士及び税理士の経験、については中長期のおつきあいになるのである程度経営者の事業に対する理解があり、かつ経営者ご自身と相性の良い方を選んだ方が良いかと思います。相性は多くの会計士・税理士と面談して決めていくしかないかと思います。
③個人事業・法人を今後どれぐらい拡大していくか、は①とも関係してきますが、現時点での業績だけで判断するのではなく今後事業を拡大予定であり、経理や税金周りの業務が複雑になることが見えているのであれば会計士・税理士へ依頼することも一案となります。
④経営者自身で経理業務を行うか、については①の時間確保とも絡んできますが、会計士・税理士と契約しないということは経営者ご自身で確定申告書を作成・提出することになるため、それに必要な勉強を本業と並行して行うことになるということです。時間は有限のため、本業に集中して事業を拡大することを優先する方が、結果としては良いのではないかと思います。
会計士の費用:まとめ
以上のように会計士の費用について記載をしてきました。また会計士と税理士についても業務内容・費用における違いについても記載しました。こちらの記事を参考にして、ぜひ会計士・税理士選びのサポートとしていただけると光栄です。
税理士をお探しの方は、宮嶋公認会計士・税理士事務所へお問合せください(初回無料相談)
この記事の作成者 宮嶋 直 公認会計士/税理士 京都大学理学部卒業後、大手会計事務所であるあずさ監査法人(KPMGジャパン)に入所。その後、外資系経営コンサルティング会社であるアクセンチュア、大手デジタルマーケティング会社であるオプトの経営企画管掌執行役員兼CFOを経験し、現在に至る。